きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「三国志 4 列肆の星」北方謙三 (ハルキ文庫―時代小説文庫)
時代が動きつつある。
だが、まだ大きな流れには至らない。
誰にでも手が届き得るものであり、蜃気楼に等しいものでもある。
それが天下。
それぞれの戦。
それぞれの駆け引き。
その在り様が魅力的な男たち。
戦の采配や情勢の読み方、そして自らの在り方。
それらをみていれば、戦場で勝つべきものは勝ち、
負けるべきものは負けることに合点がいく。
そして、将来がとても楽しみだった輝ける星が、
戦場に立つ前に夭逝してしまったことが残念でならない。
三国志でも「志」が語られていたことはすっかり記憶から抜け落ちていて、
おぉ!となりました。
「しっかりしろ。あとわずかでいい。しっかりしていろ」
あの状況でのこの言い回し、北方だなぁ、と思う。
わかっていても、胸に響く。
「会いたかった」の言葉に、何故かロイエンタールの死の場面が頭を過ったわ。
「遅いじゃないか、ミッターマイヤー」うっっ、泣ける……
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「ラブ・ストーリー ある愛の詩」エリック・シーガル (角川文庫)
将来有望な男女が恋に落ち、歳若くして結婚をし、
金銭に苦労しながらも、仲睦まじく日々を過ごし、
漸く色々なことが軌道に乗り始めた時に直面した出来事。
彼らが向き合わねばならなかったのは自らの、或は最愛の者の死。
誰しもが平等に迎える終焉の時。
違うのは、それが「いつなのか」ということ。
病院に何を持っていきたいか?と尋ねられたジェニファーの答えに
オリバーへの想いが詰まっている気がして、胸に刺さった。
ジェニファーの父とオリバーの父。
接し方はそれぞれだけど、そこにも確かに愛がある。
透明なイメージの読後。
泣きつくした彼に笑顔が戻ることを信じて。
絶対に泣かないように。
声が震えてしまわないように。
それだけはどうにか頑張ってトイレに駆け込んで号泣した父の病室での出来事。
でも、お葬式では泣けなかったんだよね。多分それは私の意地。
蟠りがあるなら生きている間に解消してもらいたい。
今になって切実に思う。
【ガーディアン必読 70/1000】
「凶犬の眼」柚月裕子(角川書店)
読了後、嘘でしょ?と叫び、
ぶわっと胸を侵食したやるせなさ。
暴力に美談はない、
ということを、思い知らされた瞬間。
だから、警察がいる。法律がある。
決められたルールを逸脱することは許されない。
だけど。
だーけーどー!
と、ジタバタしながら叫ぶほど、肩入れしてしまった魅力的な男たちだった。
「正義ではなく仁義」
この言葉には納得。
前作からの日岡の成長ぶりが頼もしい。
そして、ちょっとだけ痛々しい。
でも、彼自身、その在り方に後悔はないんだろうな。
同じく国光も。
プロローグの位置づけが相変わらず秀逸。
おもしろかった!
続編『暴虎の牙』。タイトルで既にそそられる。
手に取る日が楽しみ。
映画を観た後だったので、脳内映像は役柄の彼らでした。
「天国でまた会おう 下」ピエール・ルメートル (ハヤカワ・ミステリ文庫)
嘘に重ねた嘘。
事を始めたのち、その重大さに怯えるアルベールと、
現状を豪胆にとらえるエドゥアール。
その先の未来を意識しているか否かの違いだったのかな。
と、両者の想いが垣間見れる瞬間瞬間がなんだか切ない。
そして重ねた嘘……というか悪事に首が回らなくなっていくプラデル。
自らの仕事を愚直なまでにきっちりと果たしたメルランと、
そして悲嘆に暮れていても判断を誤らなかったペリクール氏にも敬意を。
歪んでしまった彼らの人生の根底にあるのは戦争ではあるんだけど。
直接的な原因を作ったプラデルはクズだわ。
駅でのアルベールの涙に何故か安堵しての読了。
一体どうなるのかドキドキしながら読み進めた結果、
すべての事象が収まるべきところに収まったと言える結末。
「永遠の昨日」榎田尤利(白泉社)
愛の物語。
そして、生と死の物語。
コミカルからのシリアス。
ファンタジーなのにリアル。
避けられない現実は、どうしたってそこにある。
生きとし生けるものすべてが、いつかは直面する死。
彼らはまさにその瞬間に立っていた。
刻々と近づく別れの時。
浩一が終始身にまとっていたあたたかさと穏やかなやさしさが、
終わりの時が近づくにつれ、とても切なくなってくる。
「俺は大丈夫だから」
そんな満の言葉を、浩一は確かに聞き届けたのだと思う。
この状況を生み出したのは二人の想い。
人の想いは、こんなにも強くて、純粋で、やさしくい。
「あたしにはもう時間がないから」
決して人生を悲観しているわけではなく。
現実を直視して今できることにエネルギッシュに取り組んでいらっしゃる方と
電話をした直後にこの作品。
初読の時以上に胸に刺さった。
「天国でまた会おう 上」ピエール・ルメートル (ハヤカワ・ミステリ文庫)
第一次世界大戦終戦直前。
戦場で敵との戦闘ではなく、味方による悪辣な行為によって
その後の人生を大きく狂わされた若者が二人。
アルベールの命を救ったことで、エドゥアールが被った代償。
そんなエドゥアールの為のアルベールの献身。
困窮する生活の中、不器用なりに懸命に日々を生きようとする
アルベールの姿に頑張れ!と言いたくなる。
生きることに倦んでしまったエドゥアールが、
アルベールとルイーズの存在によって少しずつ取り戻した気力。
よかった……と思ったのは束の間、
え?そっち!?と、驚いたところで下巻へ。
とりあえず“奴”には天罰が下ることを願いつつ。
その人を失ってしまってから愛情を伝えることはできない。
喪失に泣くなら、どうしようもない状態に陥った時に
「家に帰りたい」と思ってもらえるような関係を
ちゃんと築いておけばよかったのに……
あんな状態になっても尚、
家族の元に帰りたくないと泣くエドゥアールが痛々しかった。
「アイズオンリー」一穂ミチ (SHY NOVELS)
日常生活で誰かと築く関係は、相手と何らかのコンタクトをとりあって成り立つもの。
事情の説明もなく、理由も一切知らされないまま突然シャットアウトされた相手に
更にアプローチをしていくのは割と勇気がいる。
そこで諦めればフェードアウト。
だけど数真は縁と関係を断つまいと、頑張ってコンタクトを取り続けた。
緑のことが好きだから。
失いたくないから。
だから手にすることのできた幸せだと。
緑には覚えていてほしい。
そして、数真にそこまでの行動を起こさせたのは縁自身なのだと。
自信を持ってほしい。
一途に想い続けた気持ちに嘘はない。お幸せに♪
有言実行で縁の働ける場所を作った訓はすごいなーと。
そんな訓に殴られる覚悟で「マウスピースでも含んでいくか」とひとりごちた数真。
そういえば、怒り心頭のお客さんに「ヘルメット被って来いよ」と言われた人いたなぁ、と
笑いながら思い出してみました。
「三国志 3 玄戈の星」北方謙三 (ハルキ文庫―時代小説文庫)
戦いを回避する策はいくつかあった筈。
だが、彼らはそれを選択しない。
天下を獲るものはただ一人。
自らの力量を天に計り、
この男とはいずれ戦場で相まみえる。
そう確信する相手と言葉を交わす心境は如何ほどのものなのか。
稀代の英雄になれたはずの男が散った。
いや、彼は間違いなく英雄だった。
立ちはだかった男の影を、
この先を生きる男たちは永遠に踏み越えることはできないのだから。
曹操、劉備、呂布。ついでに袁紹。
彼らの戦とは別のところで繰り広げられた、孫策と周瑜の男の夢を賭けた一世一代の戦。
あの作戦は若くないと無理!
もしも馬が語れるのなら?
馬鹿げた問いかけではあるものの、赤兎の想いを聞いてみたい。
叶うなら、百里風の想いも。
北方の描く馬は、意思を持って彼らの主と対話している。
海辺での赤兎の行為には涙しかなかった。
そして、劉備に欠けているもの。わかっているからじれったくなる。
早く~~!
「第九代ウェルグレイヴ男爵の捜査録」エマ・ジェイムソン (ハーパーBOOKS)
この本、表紙のインパクトだけで勝ち組だと思う。
目があったらじっと見ちゃう。
そこに置いてあったら目線がいっちゃう。
で、とても気になる。
表紙のダンディな警視正は確かに風変りではあったけれども、
しっかり地に足の着いた人でした。
事件そのものはちゃんと筋道立てて読ませてくれるけど、
事件からちょっと外れたところでは突っ込みどころ満載。
そして、その突っ込みどころが
面白いスパイスになっている気がします。
バハールくん、良いキャラしてるわ。
色々抱えながらもまっすぐに育っている子どもたちの姿に
ほんわり和んで読了。
クズな上司ジャクソンを公衆の面前でやりこめるケイトの言葉は、
「能無し」までが許容範囲。
その先は場所をちょっと考えようか。
とはいえ、ジャクソンも同レベルなので、どっちもどっち。
こんな応酬をしないといけない職場、ヤだわ~。
あの手の発言は笑って流せるところまででSTOPなのです。
その先はどっちサイドもアウト☆
読友さんからの感謝のプレゼント本。
ありがとう!