きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「てのひらにひとつ」夕映月子 (ディアプラス文庫)
マイノリティであることで深い孤独を抱え、
家の事情もあって「諦める」ことを常に己に課してきた宮下。
そんな彼が塾の生徒として出逢った、一回り年上の日下部。
日下部と過ごす時間が増えるにつれ、彼に心を許し
誰にも伝えることのできなかった想いを吐露し、
恋に落ちていく宮下のとても繊細な気持の機微が伝わってきて、きゅんとなるわけですが。
「私も好きです」の日下部の台詞に、え?いつの間に!?と驚いた表題。
でも、同時収録のその後の話を読むと、ああ、そうだったのね、と深く納得。
そして、誠実でピュアな二人の遠恋に切なくなったり愛おしくなったり。
一冊まとめて読んで完成形なお借り本。
女子禁制のはずの男子寮に放り込まれて講師をやっていたことがあるので、
男子寮の賑やかしい雰囲気が微笑ましいやら懐かしいやら。
塾講していた時の生徒は、家出して連絡をしてきたこともあったわ。
人と係わるということは、思い出が増えるということ。
かけがえのない宝物。
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「天国に手が届く」夕映月子 (ディアプラス文庫)
かつて、一度だけ交わった点と点。
そんな彼らの数年後の邂逅。
小田切に出逢えた喜びを隠せない佐和と、
頑なに佐和を拒んだ小田切。
彼が心の奥底に抱えていた孤独がやるせない。
いまはもう、この世界のどこにもいない叶。
二人を繋いだ叶の存在が大きくてやさしくて、あたたかい。
叶を介してお互いの存在を意識していた二人が実際に出逢い、
動き出した心。
次第に小田切に惹かれていく佐和の心理描写がストンと胸に落ちてくるだけに、
小田切サイドの視点でも読んでみたかったという思いが募った。
山の描写が雄弁で美しいお借り本。
チャンスがあれば、また登りたい。
ほぼ山未経験だった自分が槍ヶ岳に登れたことがいかに奇跡的な出来事だったのか。
こういうのを読むとつくづく思う。
あの時見た景色は一生忘れない。
滑り落ちたら怪我だけじゃ済まないような場所を必死で越え、たどり着いた山頂。
眼前に広がるのは、筆舌に尽くしがたいほど美しい非日常な風景。
これが見れるなら、また登りたい。
そう思わせてくれる世界がそこにありました。
「死刑にいたる病」櫛木理宇 (ハヤカワ文庫JA)
依存している自覚があるならまだいい。
影響されているとわかっていれば、自分が見えている。
自分の意志で行動しているつもりが、実は相手の意のままだったとしたら?
迫られた選択の回答ですら、決められたものだったら?
無意識のコントロールが一番怖い。
植え付けられた選民意識の件がぞっとした。
シリアルキラーと対話を重ね、目に見える変化を遂げた彼。
明らかになる真実。塗り込められた嘘。そして、悪意。
絡みつく鎖を断ち切ったことは、今後彼の人生において大きく作用するだろう。
「おれは、おれの話をしてるんです」
キミは大丈夫。
雅也と母親との関係が好転することを願って読了のお借り本。
天性の「人タラシ」な人っているけど、
そこに「悪意」が加わったら手に負えない。
「あなただけが特別」と囁く言葉は自尊心をくすぐり、
囁いた相手には好意を向けるようになる。
騙されたくないわ~、と思うけど、何が嘘で何が本当か。
瞬時に見抜くことは難しい。
「スーツとストロベリー」高遠琉加 (ガッシュ文庫)
『紳士と野蛮』続編。
屋敷を出た義巳が一人で暮らすことの大変さを知って、
誠吾に投げかけた言葉を反省するシーンが、とても好き。
相手の立場に立って、はじめてわかることがある。
それを認めることができるのは人としての器の大きさ。
そして、義巳が多分、ずっと誰かに言ってもらいたかったであろう言葉を断言してくれた誠吾。
うん。私もそう思うよ。
今の自分を誇っていい。
表題はその後の二人。
恋愛慣れしていない義巳の痛みに対する自己分析が大変微笑ましい。
馬鹿なの?と突っ込むか、愛しさに胸がいっぱいになるか。
当然誠吾は後者だわね。
二人で庭の樹木の成長を眺めながら過ごしてほしいと、
ほっこり思ったお借り本。
Cielさんのイラスト、とても素敵でした。
「紳士と野蛮」高遠琉加 (ガッシュ文庫)
おじい様も義己も誠吾も。
道に迷った人の為に、胸に響く言葉をあっちこっちで呟いてくれている。
背筋を伸ばして「きちんと」生きてきた義己。
その生き方に秘められた彼の想いが痛々しい。
そして、彼の孤独感がやるせない。
自分の才能と努力を拠り所に生きてきた誠吾。
挫折を知っていても損なわれない彼のまっすぐさがあたたかい。
育った環境も性格も全く違う二人が、
相手を知ることによって少しずつ変わっていく。
その相乗効果がどんなものなのかが知れるのはこれから。
ラストは義巳が雁字搦めに縛られたものからの解放への布石だと思いたい。
生まれとか育ちとか。
「自分」で勝負するんだからそんなの関係ないわーと言いたいけど、
それは私が「家柄」を背負っていないからかな?
そして、何度も何度も言ってきたけど、やっぱり言いたい。
続き物はちゃんと巻数表記をしてほしい。
完結!と思って読み進めて、以下、次巻!となったときの放り出され感半端ないわ。
でも大丈夫。
続もちゃんとそろえてくれていたお借り本。
張り切って次巻へ☆
「カラマーゾフの兄弟〈下〉」ドストエフスキー (新潮文庫)
感情と想像と印象とで展開された感じの否めない裁判。
圧倒されるよりも、え?それでいいの?という戸惑いが先に立ってしまった。
もう少しメンタルが強いかと思っていたイワンが
スメルジャコフとの対話の後に壊れてしまい、
アリョーシャはドミートリィは無実だと言いつつ、
裁判の結果を受け入れる。
そして、口は災いの元、と教えてあげたいドミートリィ。
もうちょっと上手く立ち回れればよかったのに、と思うけど、
だったらこんなことになってないわね。
俺俺インパクトの強すぎる人たちがテンコ盛りな作品。
描き分けた著者が凄すぎる。
「カラマーゾフ万歳」で終幕したことに対しては
「ちょっと待ったぁ!」と異議申し立てをしたい私。
え?色々気になることあるんですけどー!
上中下。1750項を読んできても、続編が気になる!と思わせる超大作。
でもとりあえずはおなかいっぱい。
【ガーディアン必読 72-3/1000】
「はるか彼方の心臓」千地イチ(ラヴァーズ文庫)
経験や誰かとの出逢いは、時にその人の人生を変えてしまうほどの大きな影響を与え得る。
事故で友人に大怪我を負わせて今まで通りの自分ではいられなかった英雄と、
恋心を封じて自分の心を空っぽにした晴人。
10年ぶりの再会を果たした、10年前とは変わってしまった二人。
その再会を起点にして、英雄は穏やかに好ましく変化をしたと思うし、
晴人が本当の意味で変わっていくのは、おそらくこれから。
晴人が過去の接点を明確にしなかったのは私的に好印象。
病院でってどうよ!?と思いつつ、
「待たせて悪かったな」の台詞には泣きそうになってしまった。
お幸せに☆→
読み始めは晴人×英雄かな?とチラッと思ったわけだど、
読み終わってみれば英雄×晴人でしっくりくるお借り本。
「あなたのせいじゃないよ」といくら他人に言われたところで、
当人が納得しない限り背負った荷物は下せない。
彼女が会いに来てくれてよかった。
「少年は神の国に棲まう」夜光花 (SHYノベルス)
綺麗に着地した完結巻。
叶う恋があれば、叶わない恋もある。
ランスロットの恋心には切なさが残るけど、
思わせぶりな態度を取らなかった樹里は間違っていない。
総力をあげてのモルガンとの決戦。
それぞれの関係性やこれからに気を取られすぎて、
そもそも彼らは何のために戦っているのかということを
途中からすっかり忘れていたことを最後の最後に思い出し、
あ、そうだった!と思った自分にびっくり。
それだけ彼らが魅力的。
表紙がすべてを物語っているアーサーと樹里には祝福を。
二人の子ども、ルーサーとの賑やかな日常を垣間見てみたかった。
終始、ゲームをしているような、不思議な感覚に囚われながらの読書でした。
テンポの良さと展開の速さと意外性故かな?
シリーズ物の醍醐味は一気読み。
まとめて貸してくれたお友だちに感謝。
楽しかった!
そしてモフモフしたクロがとても可愛かった。
「カラマーゾフの兄弟〈中〉」ドストエフスキー (新潮文庫)
敬愛する長老の死に直面し、心を乱すアリョーシャ。
惑いの果てに、彼がある種の天啓を得る場面はとても印象的。
ドミートリィや周囲の人々は、絶好調な俺俺節。
日々、このテンションで生きるのは、
底なしの体力とタフなメンタルが必要だとつくづく思う。
全力で過ごす日々はさぞかし刺激的なんだろうなぁ、とも。
どうしてそこまで自分に都合の良い解釈ができるのかと、
ドミートリィの頭に見えるお花畑。
必死さが裏目に出るというよりも、独りよがりすぎて空回り。
そんな中で起こる事件。
彼の無罪を知っているのは我々のみ。
さぁ、どう展開する?
「酔っぱらっているわけでもないのに、なんてばかげたことばかりわめいているんだ」
ドミートリィを表すのにはこの一文に尽きると、頷くことしきり。
計算や駆け引きが全くできない人なんだなぁ、とも。
意味ありげな記述もあったから、アリョーシャのその後がとても気になるんだけど、下巻の目次にはそれらしい記述がなくてがっかり。
まずはドミートリィの物語を見届けます!【ガーディアン必読 72-2/1000】
「進撃の巨人 26」諫山創
「戦わなければ、勝てない」
だから、戦い続ける。
尽きない暴力。
失われる命。
憎しみの連鎖。
やられたからやり返す。
間違っていないけど、間違っている。
自分たちの国を守る為に正しい選択があるのだとすれば、
教えてほしい。
武器を取り続ける彼らが痛々しいと思うのは、私の感傷。
時間を稼ぐために選んだ作戦。
動き始めてしまった事象。
止められないのならば、突き進むしかない。
物言わぬアニに対峙するアルミンの言葉が刺さる。
何をもってして「勝利」とみなすのか。
彼らの選んだ未来には危うさしか感じられない。
事態は既に泥沼化してしまっている。
だが、これが戦争。
リヴァイがどこまでもリヴァイで、
ハンジがやっぱりどこまでもハンジだったことに安堵する。
「戦え 戦え」
この台詞からは『仮面ライダー龍騎』しか出てこない。
そう言えばキャッチフレーズは「戦わなければ生き残れない」だった。