きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「おやすみなさい、また明日」凪良ゆう (キャラ文庫)
時間が解決してくれること。
時間をかけてもどうにもならないこと。
自分で乗り越えられること。
どう頑張っても無理なこと。
人生における困難や苦難がどのくらいのものなのかは、当人にしかわからない。
だけど、一人では果てのない不安の中に置き去りにされたような心許なさも、
在るがままの自分を受け入れ、その道程を一緒に歩んでくれる人の存在が在れば
和らぐことができる。
生きることと前向きに向き合うことができる。
彼らの選択。彼らの想い。
ゆっくりと育まれていく愛情がとても尊いと思った。
やるせなくてやさしい気持ちが詰まった良作。
この本をおススメしてくれた読友さんと、
その会話を覚えていてこの本を貸してくれた読友さんに
最大級の感謝を!
出逢えて良かった作品です。
病気を患いながらも「じいさんを見送るまで私は頑張る」と
ずっと言い続けてきたご婦人のことを思い出しました。
彼女は一度呼吸が止まってもちゃんとこの世に踏みとどまりました。
そして、寝たきりになりながらも「じいさんとツーショットで写真を撮ったのよ」と
笑った数日後に旦那様を見送り、
それから一ヶ月もしないうちに、彼女自身も眠るように旦那様を追いかけて行かれました。
奇跡のようなリアル。
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「なぜ君は絶望と闘えたのか―本村洋の3300日」門田隆将(新潮文庫)
私には何も言う権利はないなぁ、と。
本書を読みながら思うところは色々色々色々あったけれども。
公の場で語れるような言葉は何一つ持ち得なかった。
ただ、彼らが絶望の中で闘い抜いた九年という長い歳月を知ること、そして考えること。
この本を手にした者の責務として、それは心に刻まないといけないと思った。
支えあって、人は強くなれる。
立ち上がることができる。
一人では太刀打ちできない理不尽に、立ち向かうことができる。
その手で人を殺めることは絶対に許されないこと。
そして、その人間を裁く側の人間が、真実を捻じ曲げようとしてはいけない。
読後にジワジワ込み上げてくる想いを吐き出したくてたまらない。
でも、毒にしかならないから飲み下す。
かわりに溢れる涙。
泣きたくなんてないのに。
「マイ・ディア・マスター」 (モノクローム・ロマンス文庫)
19世紀のロンドン。
同性との交わりが禁忌とされたその国で、アランが最後の一夜と決めたその夜に出逢った二人。
明日に光を見いだせず、自らの手で人生を終わらせることを決意したアランの再生。
そして、社会の底辺にありながらも、快活に笑うことを忘れていなかったジェムの再出発。
傷が癒えていく様、そして二人が惹かれあっていく様、が丁寧に描かれ、
危機を乗り越えた彼らの行き着いた愛の形がとても素敵。
特に、自死まで決意したアランが再生していく様が本当によかった。
それはジェムの存在があってこそ。
「お前をどうしてくれようか」に対するジェムの答えに満面の笑みで読了。
ラスト、事件の後のアランのけじめのつけ方がカッコよくて惚れ惚れ。
散りばめられた言葉遊びの部分は、
原書で読めたらもっと楽しかったんだろうなぁ。
たどたどく書かれたジェムの言葉の訳し方(?)がうまいなぁ、と思った。
時代的には交わらないけど、『モーリス』鑑賞後のイギリスが舞台のMM小説。
良いタイミングで楽しめました!
「三国志 4 列肆の星」北方謙三 (ハルキ文庫―時代小説文庫)
時代が動きつつある。
だが、まだ大きな流れには至らない。
誰にでも手が届き得るものであり、蜃気楼に等しいものでもある。
それが天下。
それぞれの戦。
それぞれの駆け引き。
その在り様が魅力的な男たち。
戦の采配や情勢の読み方、そして自らの在り方。
それらをみていれば、戦場で勝つべきものは勝ち、
負けるべきものは負けることに合点がいく。
そして、将来がとても楽しみだった輝ける星が、
戦場に立つ前に夭逝してしまったことが残念でならない。
三国志でも「志」が語られていたことはすっかり記憶から抜け落ちていて、
おぉ!となりました。
「しっかりしろ。あとわずかでいい。しっかりしていろ」
あの状況でのこの言い回し、北方だなぁ、と思う。
わかっていても、胸に響く。
「会いたかった」の言葉に、何故かロイエンタールの死の場面が頭を過ったわ。
「遅いじゃないか、ミッターマイヤー」うっっ、泣ける……
「ラブ・ストーリー ある愛の詩」エリック・シーガル (角川文庫)
将来有望な男女が恋に落ち、歳若くして結婚をし、
金銭に苦労しながらも、仲睦まじく日々を過ごし、
漸く色々なことが軌道に乗り始めた時に直面した出来事。
彼らが向き合わねばならなかったのは自らの、或は最愛の者の死。
誰しもが平等に迎える終焉の時。
違うのは、それが「いつなのか」ということ。
病院に何を持っていきたいか?と尋ねられたジェニファーの答えに
オリバーへの想いが詰まっている気がして、胸に刺さった。
ジェニファーの父とオリバーの父。
接し方はそれぞれだけど、そこにも確かに愛がある。
透明なイメージの読後。
泣きつくした彼に笑顔が戻ることを信じて。
絶対に泣かないように。
声が震えてしまわないように。
それだけはどうにか頑張ってトイレに駆け込んで号泣した父の病室での出来事。
でも、お葬式では泣けなかったんだよね。多分それは私の意地。
蟠りがあるなら生きている間に解消してもらいたい。
今になって切実に思う。
【ガーディアン必読 70/1000】
「凶犬の眼」柚月裕子(角川書店)
読了後、嘘でしょ?と叫び、
ぶわっと胸を侵食したやるせなさ。
暴力に美談はない、
ということを、思い知らされた瞬間。
だから、警察がいる。法律がある。
決められたルールを逸脱することは許されない。
だけど。
だーけーどー!
と、ジタバタしながら叫ぶほど、肩入れしてしまった魅力的な男たちだった。
「正義ではなく仁義」
この言葉には納得。
前作からの日岡の成長ぶりが頼もしい。
そして、ちょっとだけ痛々しい。
でも、彼自身、その在り方に後悔はないんだろうな。
同じく国光も。
プロローグの位置づけが相変わらず秀逸。
おもしろかった!
続編『暴虎の牙』。タイトルで既にそそられる。
手に取る日が楽しみ。
映画を観た後だったので、脳内映像は役柄の彼らでした。
「天国でまた会おう 下」ピエール・ルメートル (ハヤカワ・ミステリ文庫)
嘘に重ねた嘘。
事を始めたのち、その重大さに怯えるアルベールと、
現状を豪胆にとらえるエドゥアール。
その先の未来を意識しているか否かの違いだったのかな。
と、両者の想いが垣間見れる瞬間瞬間がなんだか切ない。
そして重ねた嘘……というか悪事に首が回らなくなっていくプラデル。
自らの仕事を愚直なまでにきっちりと果たしたメルランと、
そして悲嘆に暮れていても判断を誤らなかったペリクール氏にも敬意を。
歪んでしまった彼らの人生の根底にあるのは戦争ではあるんだけど。
直接的な原因を作ったプラデルはクズだわ。
駅でのアルベールの涙に何故か安堵しての読了。
一体どうなるのかドキドキしながら読み進めた結果、
すべての事象が収まるべきところに収まったと言える結末。
「永遠の昨日」榎田尤利(白泉社)
愛の物語。
そして、生と死の物語。
コミカルからのシリアス。
ファンタジーなのにリアル。
避けられない現実は、どうしたってそこにある。
生きとし生けるものすべてが、いつかは直面する死。
彼らはまさにその瞬間に立っていた。
刻々と近づく別れの時。
浩一が終始身にまとっていたあたたかさと穏やかなやさしさが、
終わりの時が近づくにつれ、とても切なくなってくる。
「俺は大丈夫だから」
そんな満の言葉を、浩一は確かに聞き届けたのだと思う。
この状況を生み出したのは二人の想い。
人の想いは、こんなにも強くて、純粋で、やさしくい。
「あたしにはもう時間がないから」
決して人生を悲観しているわけではなく。
現実を直視して今できることにエネルギッシュに取り組んでいらっしゃる方と
電話をした直後にこの作品。
初読の時以上に胸に刺さった。
「天国でまた会おう 上」ピエール・ルメートル (ハヤカワ・ミステリ文庫)
第一次世界大戦終戦直前。
戦場で敵との戦闘ではなく、味方による悪辣な行為によって
その後の人生を大きく狂わされた若者が二人。
アルベールの命を救ったことで、エドゥアールが被った代償。
そんなエドゥアールの為のアルベールの献身。
困窮する生活の中、不器用なりに懸命に日々を生きようとする
アルベールの姿に頑張れ!と言いたくなる。
生きることに倦んでしまったエドゥアールが、
アルベールとルイーズの存在によって少しずつ取り戻した気力。
よかった……と思ったのは束の間、
え?そっち!?と、驚いたところで下巻へ。
とりあえず“奴”には天罰が下ることを願いつつ。
その人を失ってしまってから愛情を伝えることはできない。
喪失に泣くなら、どうしようもない状態に陥った時に
「家に帰りたい」と思ってもらえるような関係を
ちゃんと築いておけばよかったのに……
あんな状態になっても尚、
家族の元に帰りたくないと泣くエドゥアールが痛々しかった。