きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「青い眼が欲しい」トニ・モリスン(ハヤカワepi文庫)
無いものねだりという次元ではとても括れない切実な祈り。
「青い眼が欲しいの」
黒人の少女の悲痛なまでの願いは、偽りの牧師にですら、こう、言わしめる。
「かなえてやるのに一番ふさわしい願い」だと。
彼女をそこまで追い詰めた、目を覆うような出来事。
そんな少女のために、姉妹が願った奇跡。
奇跡は起きなかったけれども。
それはあなた達のせいではない。
偏見や差別が、同じ黒人の間にも蔓延る悲劇。
他者と己を比べ、その優劣を見つけては他者を見下し、己を卑下する彼ら。
だけど、そこが、彼らの生きる世界。
物語の進行は分かりづらいけれども、これしかないと思えるものだった。
彼女が語るように「なぜ」の答えを得ることはとても難しい。
だからこそ、知らなければならない。
彼らの悲劇を。
根本的な問題は眼の色ではないのだ。
それでも、願わずにいられなかった少女。
Coccoの歌声が相応しいと、何故か思ってしまった物語。
重かった。
【ガーディアン必読 53/1000冊】
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「夜に咲き誇る」英田サキ(プラチナ文庫)
すべてを預けることと守ってもらうことは同義ではない。
男として譲れない矜持がある。
久我と共に人生を駆けたいという秋津の想い。
血生臭い世界で秋津に傷ついて欲しくないという久我の想い。
燻る跡目争いがさらに事態をややこしくする。
傷つけるのを覚悟でぶつかって、想いを言葉にして。
妥協せずにやりあい、理解しあっていく様は、ちょっと羨ましいなーと思ってみた。
主張一直線で狭窄した視野の中に在るときに、第三者の言葉からは、
時に光明を得ることもある。
人と人。
言葉で思いを伝え合えうこと、誰かの言葉に耳をかすことって本当に大事。
彼らの野望は道半ば。
極道の世界でのてっぺんを極めてほしいと願いながら読了。
俺の本気を甘く見るな。
秋津を受け入れることも辞さないと言い切った
久我はどこまでもオトコマエ。
最初から最後までカッコイイ人たちでした。
「オズの魔法使い」
突然のたつ巻でオズの国へ飛ばされたドロシー。
その国で出会った旅の仲間は、かかし、ブリキのきこり、ライオン。
ドロシーは自分の国に戻るために。
仲間たちはそれぞれが抱えた悩みを解消してもらうために。
偉大なるオズの魔法使いに逢うために、エメラルドの都を目指すわけだけど、
その旅の途中でぶつかった困難の中で、
彼等はそれぞれが望むものを知らず、手にしてしまっているんだよね。
全く気付いていないところが微笑ましい。
そんな彼らに対するオズの采配はお見事。
さて。
ドロシーがどうやって自分の国に帰ったのかは読んでのお楽しみ。
ライオンが荷車で運ばれていく絵に私、大笑いでした。
小学校1年生の姪っ子ちゃんにプレゼントするのにはおあつらえ向きの『オズの魔法使い』だと思いました。。
「ポプラ世界名作童話」として刊行されているうちの一冊。
先日は「徳間アニメ絵本」として刊行されている『魔女の宅急便』をプレゼントしたら、
そのラインで出ている他の作品を図書館から色々借りてきて読んでくれてたみたいなので、
『オズの魔法使い』も気に入ってくれたら、他の作品にも興味を持ってもらえるかな?と。
『赤毛のアン』『秘密の花園』『トムソーヤの冒険』『長くつしたのぴっぴ』『十五少年漂流記』
等々……タイトルを並べるだけで、私、楽しくなってしまいます。
「クヌルプ」ヘルマン・ヘッセ(新潮文庫)
静かに、とても静かにこみ上げる涙。
ヘッセの物語には濁りがない。
清らかな水のように心に沁みる。
さすらい続けたクヌルプの人生。
彼の魂は孤独を訴えかけるけれども。
彼の周囲は愛にあふれていて、誰もが彼に手をさしのべる。
心からの善意と親しみで。
「死」はいずれ誰しもが直面する事象。
その前に故郷に帰りたいという彼の願い。
辿りつけたことに安堵する。
神さまとの対話で顧みる彼の半生。
あるがままに、思う通りに生ききったのだと、
微笑むことのできるおだやかさが、とてもやさしい。
そして、最後の一文を噛みしめる。
ある意味、理想。
繰り返し読みたい作品。
心の中が清らかになった気がする不思議。(笑)
そして、ここまで読んでくると、時々「ん??」ってなる高橋訳も楽しいスパイス。
「夜に赦される」英田サキ(プラチナ文庫)
久我が胸の奥底に抱えていた過去。
秋津との間にひと波乱あるんだろうな、という展開ではあったけど、
予想を突き抜けたドラマティックな展開がグサグサ刺ささって涙目。
許せないとは思う。
でも、憎いとも思えない。
悩みに悩み抜いた秋津が対峙しなければならなかったのは、
結局は自分自身の想い。
羽生の生き様も壮絶過ぎたけど、
思うように生ききって、望む様に死ねた彼自身は納得してたんだろうなぁ。
羽生の残したあまりにも重い置き土産に翻弄され続けた秋津たちだけど、
今回の件でようやく、新しい一歩を踏み出すことができたんだと思う。
次巻は秋津の覚悟の程が試されるのかな?
だったら、久我がハラハラしそうな展開になりそう。
久我、カッコいいなぁ……
たとえ、カラオケの選曲がおっさんくさくても!
私も「昴」大好きよ。歌詞見なくても歌える自信ある(笑)
今回もタイトルが秀逸でした。
「猛き箱舟 下巻」船戸与一(集英社文庫)
裏切りと復讐の連鎖。そして、殺戮。
修羅の只中に突き落とされた一人の男が
冷酷な戦士に成り変っていく様にゾクゾクする。
一度狂いだした歯車は、どこまでも噛み合わないまま軋んだ悲鳴をあげつづける。
男を変貌させたのは周囲の男たち自身。
己に刃を向ける獣を育てたのは自分達だという自覚はどこまであったのか?
優位な立場から追われる立場へと変貌を遂げた男の転落は、
家族のことに関しては、狭量になりすぎたせい。
くつろぎややすらぎを求める資格のない男が、それに甘んじようとしたせい。
血と硝煙の匂いのたち込める戦場こそが、彼の生きるべき場所だった。
雪山で男は、何を思っていたのだろう?
そしてやっぱり言いたい。
おじいちゃーーん!と。
ラストがあそこで終わりって言うのがものすごく納得がいかない。
これは、誰の物語だ?
誰が夢で見た箱舟だ?
面白かっただけに、そこだけが残念。
とはいえ、さすがの船戸与一。面白かった。
「猛き箱舟 上巻」船戸与一(集英社文庫)
望んで飛び込んだ、血と暴力の世界。
その男には思想も矜持も守るべき者もなく、
男をその場所に駆り立てたものは、享楽的な野心だった。
革命のために命がけで戦った人たちには意味不明すぎただろうね。
灼熱の砂漠での作戦行動。
そこで受けた手酷い裏切り。
彼が裏切った相手をただ恨み、逆恨み的な復讐心に燃え滾ったのなら、
ちょっと興ざめだったかもしれない。
頼まれもしないのに危険に足を踏み入れたのは彼自身の意思だから。
だが、自らの行動の結果と、辿るべき運命を受け入れた上での
「血の匂いのぷんぷんする大きな貸し」
この台詞はぐっとくる。
次巻で男がどう化けるのか。気になる!
「何年かして僕が死んだら、おじさんを僕が天国から見守っててやるよ」
逃れられない運命を受け入れた子供の言葉に泣きたくなった。
だからこそ、シャリフの叫びが重く刺さる。
「どんなことがあったって生きなきゃなんねぇ!」
その通りだよね。
「夜が蘇る」英田サキ(プラチナ文庫)
心の中に喪失と虚無を抱えた秋津。
そんな秋津が久我という存在によって少しずつ垣間見せていく変化。
さながら、萎れた花が息を吹き返すかのように。
秋津に対する久我の言葉、「おまえの夜を全部俺にくれ」。
そしてタイトル。
全てが絶妙に融合していく様が素晴らしい。
言われて真珠を抜いた久我に、秋津に対する本気を見ました!←そこ!?
アホかもしれないけど、半端なくカッコいい。
秋津の過去ごと抱いてやる、と言った久我の度量の広さがとても好き。
蘇った夜は、色を取り戻した夜、と同義。
スタートラインに立った二人の今後に期待して、次巻へ。
理性ではよくないとわかっていても、感情が自分の行動を止められない。
ズルズルと続いた羽生との秋津との関係は、最悪の形で破綻する。
「おまえの腕の中で死なせてくれ」
死にゆくものは、それでいいかもしれないけれども。
腕の中で血に染まり、冷たくなっていく骸を抱く側の気持ちを思えば、
どうしたっていたたまれない。
その時の想いは傷となって残る。永遠に。
その傷を抱えたまま久我と向き合う秋津と、傷ごと秋津を抱きしめる久我。
先の展開にドキドキします。
「去年の冬、きみと別れ」中村文則(幻冬舎文庫)
「去年の冬、きみと別れ」
タイトルの言葉が作中で出てきた瞬間、走った鳥肌。
あくまでも主観ですが、私の中に巡った単語は「逆転」。
深沼にはまり込む様に一気に読み切って、
誰ひとりの狂気にも寄り添えなかった自分に安堵する。
彼らの愛情や執着はあまりにも一方的で、あまりにも押しつけがましく、
あまりにも自分本位なんだけど、どこか一途。
そして彼らの憎悪はある意味正しくて、だけど激しく間違っている。
どこに進むかを選択できる側はいいだろうけれども、
巻き込まれる側に選択肢がないことに感じる引っ掛かり。
ラストの男の言葉に「気取ってんじゃないわよ」と、
小さく胸の内で呟いてみたところで、その引っ掛かりは飲み下せそうにもない。
個人的な事情により、本読んでる場合じゃないのに!
最初の一ページ目をチラッと見たら、そのままつかまってしまった。
わーー、明日後悔……しないな。これも私の選択(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
ライターの「僕」は、ある猟奇殺人事件の被告に面会に行く。彼は二人の女性を殺した罪で死刑判決を受けていた。だが、動機は不可解。事件の関係者も全員どこか歪んでいる。この異様さは何なのか?それは本当に殺人だったのか?「僕」が真相に辿り着けないのは必然だった。なぜなら、この事件は実は―。話題騒然のベストセラー、遂に文庫化!
「HARD LUCK 1」菅野彰 (ウィングス文庫)
過去に抱えた傷に囚われ、
息苦しい世界の中で懸命に生き方を模索する大人になりきれない大人、タクヤ。
そんな彼に振り回されながらも、
彼の寂しい嘘と孤独を理解し、いつしか寄り添うようになっていくエド。
テンポのいい会話に笑いながらも、
時々零される呟きに抉られる。
自らの命を投げ出すような勢いで、犯罪に立ち向かっていくタクヤ。
彼のその危うさの根底にあるものは序章で示されているから、
笑いながら口にする彼の台詞の裏に、どんな想いが隠されているのかが
透ける瞬間がいたたまれない。
1巻自体が壮大なプロローグ。
再読なので慌てず焦らず次巻へ。
『HARD LUCK』
同人誌1993年→新書版1997年→文庫版2011年。
菅野さんが好きすぎて、出るたびに買ってました(笑)
イラストを描かれる方が都度変わっていますが、
一番印象深いのは新書版の松崎さんかな?
保管場所の都合で新書版は手放しちゃったけど、ちょっと後悔。
個人的にこのシリーズはサイバーフォーミュラと直結するわけで、
当時は遥か未来だった2015年がとっくに通り過ぎたことが感慨深いです(笑)
そして、2011年の『HARD LUCK 5巻』で止まってるのは気のせいですか?
気のせいじゃないですよね??
慌てず再読が終わるころに6巻が出てくれたらミラクルだわ。
内容(「BOOK」データベースより)
ロス市警のエドワード・ラング警部補のもとにやって来た新しい相棒は、タクヤ・コウガミと名乗ってその手を差し出した―。日系人で、子リスのような風貌とは裏腹に、タクヤは、無鉄砲で後先顧みずトラブルを巻き起こし、瞬く間に始末書の山を作る。だが、やがてエドワードは気づく。彼が心の中にそっとかかえるいくつもの深い傷。彼が警察官となったのは、復讐のためなのか、それとも―。エドとタクヤのバディ・ストーリー、装いも新たに復活。