きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「黄泉への風穴 後編 炎の蜃気楼14」桑原水菜
開崎の中にチラつく直江の影。
その絡繰りは、男の最後の言葉で合点がいく。
精神をすり減らして疲弊しきっていた彼を思えば、
落ち着きと安定と達観が得られたような今の言動を見る限り、
距離を置いたことが彼にとっては良かったのだと思えてならない。
「この世には神も仏もおらぬ。
己を救うのは、仏ではなく己自身じゃ」
選択は間違えたと思うけど、三浦義意、良いこと言うなぁ。
織田に取り入るために里見たちが必死に成そうとしていたことが、
信長にとっては失敗したところで鼻で笑ってすむ程度だったことが物悲しい。
そして信長の現世での姿が明らかに。
派手だな~。
「敦盛」と言われると問答無用で「敦盛2011」が脳裏を巡ります。
こっちの信長も派手だけど、斯波のような威圧感はないわね。
そして次巻から舞台は熊本へ。
くまモーン!←出てこないです(笑)
「あなたのそばにいく。----待っていて」
待ちわびているのは私も一緒なのです。
内容(「BOOK」データベースより)
色部に連れられ、鎌倉に出向いた千秋は、意外な人物に出会った。それは荻城での事件以来、姿を消していた《軒猿頭》八海だった。八海は、謙信からの命令で秘密裏に行動していたことを告げる。一方、開崎に連れさられた高耶は、里見一族に拉致されていた。だが《力》を封じられ無力な高耶に「あなたのそばに行く。待っていて…」と開崎が語った言葉は、死んだはずの直江のものだった。
PR
「傷だらけのカミーユ」ピエール・ルメートル(文春文庫)
息をつく間もない程めまぐるしく、そして重苦しく展開する三日間。
「運命は容赦しない」という言葉で始まる冒頭。
だが、あまりにも過酷な三日間を過ごしたカミーユは、こうつぶやく。
「結局のところ、自分の運命を決めているのは自分だ」
運命を恨んでも誰しもが納得するであろう状況に陥りながらも、
そう言えてしまうカミーユの強さが眩しくもあり、苦しくもあった。
嘘を嘘で塗り重ねていく展開については、
組織に属する社会人として首を傾げざるを得なかったのが正直なところ。
とは言え、三日目はそんなことがどうでもよくなるくらい一気に読ませられました。
読後の余韻はただただ切ない……
最初から掛け違えていた釦を手にしての奔走。
だけど、どこかに真実だった瞬間もある。
そう、思えるだけの絆は確かにあったと思うの。
「サンタクロースとしまのゆうびんやさん」
サンタクロース島シリーズ第三弾。
今回の主役はサンタさんではなく、もぐらのモグタン。
ゆうびんやさんのモグタンはクリスマスのお手紙を届けることに大忙し。
時期的には同じく忙しいはずのサンタクロースが、
助手役に徹しているのがなんだか愉快。
モグタンの秘密の通路を通って、素敵なお手紙の配達に勤しむ二人。
配達完了かと思ったその瞬間、ヒラリと舞ってきたそのお手紙は、愛情溢れるお手紙で……
私、モグタンと一緒に涙ぐんでしまいました。
そしてクリスマス。
サンタクロースは、世界中の子供たちにやさしい手紙をしたためて、
プレゼントを配りにいくのです。
インパクトは二作目のトナカイダイエットの方が強烈だったけど、
やっぱりこのシリーズ好きだわ~、と、にこにこしながら思える絵本です。
「愛してると言う気はない」英田サキ(SHYノベルズ)
振り翳した正論は、時に人の心を深く抉る。
正しいと思ってしたことが、鋭利な刃となって他者を傷つけることを、
刃を繰り出した本人は自覚するといい。
陣内の正しさは、とても息苦しい。
例えば我那覇のような男の傍にいることは、天海にとっては楽だろう。
だけど、同じ側に立つ者の傍にいては、彼は多分堕ちていくだけだ。
そして安らぎは得られない。
だから天海には陣内が必要なのだ。
安らかな眠りにつくために。
付かず離れず歩んできた12年の歳月。
恋焦がれた想い人寄り添えることの至福を抱きしめて、生きていってほしい。
前作とは打って変わった天海のラストの想いに安堵しました。
陣内重い。いや、うざい(笑)
でも、そこまで真摯に向き合ってもらえたら、
それはとても幸せだよなーと、思ってみました。
途中大笑いしながら読んでいたんだけど、さすが英田さん。
思いっきりしんみりさせられてしまったわ。
内容(「BOOK」データベースより)
三年前に警察をやめ、現在、ひとり『陣内探偵事務所』を経営するしがない探偵、陣内拓朗には、とびきり特別な恋人がいる。それは新宿歌舞伎町一帯をシマに暗躍する、美形だが凶暴なヤクザ、天海泰雅だ。見てくれの繊細さとは裏腹に、東日本最大の暴力団組織、紅龍会の直系二次団体周藤組の幹部であり、『周藤の虎』と呼ばれ、恐れられている男だ。恋人になったとはいえ足蹴にされ、おまけに最近では、陣内の尻に執着を見せつつある。そんなある日、ひとりの青年がある人物の説得を依頼してくるのだが!?悲しくも愛しいヤクザと探偵のラプソディ。
「償いの椅子」沢木冬吾(角川文庫)
視点が次々に入れ替わっていく冒頭。
登場人物の多さも相まって、一瞬混乱しかけるも、
読み進めるうちに複雑に謎が交差する物語世界に一気に惹きこまれた。
これは男達の復讐の物語であり、家族の物語でもある。
人間はだれしもが二面性を持っている。
家族に、仕事に、敵に。向ける表情はそれぞれで、そして時々で違う。
相容れないはずの能見と南條が、梢の件で言葉を交わすシーンは何とも印象深かった。
下半身不随になりながらも、不屈の闘志を抱き続けた能見。
彼の生き様はあまりにも鮮烈だった。
自らの理想の追及のために子供を犠牲にした真希の
母親としての在り様にとても腹が立ったけれども。
先の展開が気になりすぎて
ドキドキが止まらずにぐいぐい引っ張られていく至福の読書時間でした。
「まあ、せっかくだから友達ぐらいにはなってやる。
あんたのこと、なんて呼べばいい?」
生まれてから一度も会ったことのない父親に対する男の言葉がとても粋。
沢木作品はあと一冊積んであるので、それも楽しみ。
読友さんからの感謝の贈り物なのです。
内容(「BOOK」データベースより)
五年前、脊髄に銃弾を受けて能見は足の自由を失い、そして同時に、親代わりと慕っていた秋葉をも失った。車椅子に頼る身になった能見は、復讐のため、かつての仲間達の前に姿を現した。刑事、公安、協力者たち。複雑に絡み合う組織の中で、能見たちを陥れたのは誰なのか?そしてその能見の五年間を調べる桜田もまた、公安不適格者として、いつしか陰の組織に組み込まれていた。彼らの壮絶な戦いの結末は…。
「女神」三島由紀夫(新潮文庫)
息を呑むほどの美しさと、思わず気持ちが落ち着かなくなる歪さが終始付きまとう表題作。
周伍の押し付けた価値観を借り物のように纏っていた依子と、
そこに自らの価値観も添加して己のものにした朝子。
「人形」で在り続けた依子と「女神」へと化身した朝子の違いはそこにあるのかな?
だけど、ラスト一文。
私は背筋がゾワリとしました。
そこには美しさだけではない、得体の知れない何かが身を隠しているような気がして。
表題+10篇。
めくるめく世界に誘われ、彼の描き出す濃密な雰囲気にどっぷりと浸かりました。
印象深すぎた『哲学』。え?何この人??と、余りにも独り善がりすぎる結末に唖然。
語れる程三島を読んでいるわけではないけれども、
ここに収められた中短編を読み進めるうちにふと思ったことがあったわけで。
それに対する答えは、彼の著作を読んでいけばわかるのかな?
とても印象的だった一文は以下。
「その場を立ち去ったのちも、香水の薫りのようにその女の雰囲気があとに漂う、
そういういいしれぬ雰囲気」
醸し出せるようなれたら、素敵だなーと思わずうっとりしてしまいました。(笑)
【憂国忌にて】
「さよならを言う気はない」英田サキ(SHYノベルズ)
突き抜けた凶暴っぷりを発揮するヤクザ・天海と、その理不尽を許容するしがない探偵・陣内。
知り合って12年。
互いに傷となって残る過去を共有する二人。
付かず離れずの距離感がイイ感じだったり、もどかしかったりしているうちに
見えてくる二人の本音にだんだん切なくなってきて。
かつての事件に対する向き合い方の違いが明らかになった時、
天海の傷の深さに胸が軋んだ。
天海の苛烈な生き様は余りにも潔くて悲しいけど、
逞しくて眩しくもある。
なんだかんだ陣内はそんな天海に寄り添って生きてきたんだと思う。
腹を括った告白はとても良かった
受側のオラオラ言葉攻めは小気味よかった。
個人的には陣内の腕の中で眠る天海のあどけなさがいい……んだけど。
「いつかお前がまた俺を許せなくなる日がくるまで」のモノローグが切なかった。
そういう杞憂を全部払拭して、なにもかもを陣内に委ねて甘えられる日がくるのかな?
くるといいな。
内容(「BOOK」データベースより)
三年前に警察をやめ、現在、ひとり『陣内探偵事務所』を経営するしがない探偵、陣内拓朗。彼にはもっとも苦手とする男がいる。それは新宿歌舞伎町一帯をシマに暗躍する、美形だが凶暴なヤクザ、天海泰雅だ。見てくれの繊細さとは裏腹に、東日本最大の暴力団組織、紅龍会の直系二次団体周藤組の幹部であり、『周藤の虎』と呼ばれ、恐れられている。天海が依頼してくる仕事にはろくなものがない。陣内にとっては厄病神のような存在だ。そんな天海が、今日も厄介な依頼を持ち込んできて!?せつなく、胸あたたまるヤクザと探偵のラプソディ登場。
「許可証をください 1」烏城あきら(シャレード文庫)
見どころは色々あるけれども。
工場の製造部と品証部の二人が、
お互いに日誌に書き込んだ文字を目で追いながら
二年前から交流していたことに気付いたシーンに年甲斐もなくドキドキしました。
こういう恋愛、素敵っ、素敵!
言葉より身体!な前原はガッツリ肉食系だけど、
阿久津も戦える草食系だからよし。
何より、身体と知恵を駆使して真摯に働いている彼らの姿からは、
自分も頑張ろう!という元気がもらえました。
男同士であることにとまどいながらも、阿久津がちゃんと向き合っていく感じがとてもよかった。
まぁ、逃げ道塞がれてましたけど(笑)
「迷わず自分から応えた瞬間に-----本当の夜が始まった」
このフレーズがとても素敵に響いて、何度も何度も反芻しました。
「泣いたり笑ったりしながら、懸命に働いてる」というのにはとっても同意。
組織に組み込まれた中で手掛ける仕事は、思い通りになんて絶対にならないわけで、
そういうのイロイロ煩悶しながらも「機嫌よく」働こう!と。
初読み作家さん。
シリーズ買い決定です。
内容(「BOOK」データベースより)
中小化学薬品製造業・喜美津化学の品証部に勤務する阿久津弘は初の四大理系卒のホープとして期待されている身。そんな弘が社命でフォークリフトの免許を取ることに。慣れない乗り物の操作に難儀する中、指導係として遣わされてきたのは製造部の若頭・前原健一郎。弘と同い年であるにもかかわらず同僚からの信頼も厚く、独特の迫力と風格を持ったこの男に、弘はとある出来事がきっかけで苦手意識を持っていたのだが、意外にも前原の方は―。それなりに平和な工場ライフを送っていた弘を襲う前代未聞の“男×男”関係、ガテン系濃密ラブ。
「黒涙」月村了衛(浅い新聞出版)
前作に比べて沢渡がなんだかアホっぽくなった気がして。
あれ?こんな軽い話だった?と首を傾げ、
作戦展開中の彼らの危機感のなさに、ダイジョブ?と思いながら読んでたいたわけですが。
後半の怒涛の展開にやられました。
やるせなさいっぱいの読了で、なんかもう、気持ちの整理がつきません。
う、ホント切ない。
引き際って大事なんだよ、というのは、後になってから言えること。
裏切り者の見極めも、渦中にいる間は気付けない。
だからって「仕方ない」では済まされない命。
一人、現状を過たず把握していた沈。
けじめをつけにいった彼の無事をひたすら願う。
これは続編ありかな?なしかな?
スピンで『水獺公司』の暗躍を描いた話とか読んでみたい。
ジワジワ哀しくなってくる読後。
なんでだろう?
別な日の精神状態で読んだらちょっと違ってくるのかな?
とりあえず漫画を読んで癒されようと思います。
「ジャッカルの日」フレデリック・フォーサイス(角川文庫)
「ジャッカル」
それは、カウントゼロになるまで止まらない時限爆弾のようなもの。
個人的にはそんなイメージで読み進めました。
殺し屋vs警察。
入念な下準備。
しらみつぶしの捜査。
どちらも完璧なプロフェッショナルな仕事ぶりにただただ舌を巻く。
歴史は覆らない。
ならば、この物語はどんな決着を迎えるのか。
完璧を期した準備も捜査も、どこかに小さな穴がある。
そして、人智を超えた力にはどう頑張っても抗えない。
どちらにも肩入れしすぎて、たまらない緊張感を抱いたまま、頁を捲り続けた。
静かに進行する物語にも拘らず、ものすごい力で惹きつけられました。圧巻。
この先どうなるのか気になりすぎて、こんなに緊張しながら読んだ本って久しぶり。
初・フォーサイスだったけど、面白かった!
読友さんにもお友達にも『オデッサ・ファイル』を薦められたので
そちらも読んでみようと思います。
そしてやっぱり『ツーリングEXP』読みかえしたい。
私の中で殺し屋と言えば、ディーン・リーガルなのです。
【ガーディアン必読 47/1000冊】