きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「キング」堂場瞬一(実業之日本社文庫)
多分、それは最後のチャンスだった。
彼らの希求したものは、ただひとつ。
誰よりも早くゴールを駆け抜けること。
だが、勝者たりえるのはたった一人。
ベテランの域に差し掛かった、同年代のマラソンランナーが三人。
勝利を勝ち取るために彼らの選んだ手段は、三者三様だった。
早さを追い求める彼らの姿勢が鬼気迫っていて、とても苦しい。
何故そこまで?と問う資格は、レースに参加していない私にはないだろう。
置かれた環境に差があるのは当たり前。
結局は、手段はどうであれ、自分がどこまで頑張り通せたか、
そして「勝ちたい」と渇望できたのか、ということ尽きるように思う。
付け加えると。
だからといって、私自身はすべての手段を容認するわけではない。
内容(「BOOK」データベースより)
五輪男子マラソン代表・最後の一枠の選考レースまで四か月。日本最高記録を持ちながら故障に泣き、復活を期する天才・須田が最有力とされる中、優勝経験がなく“万年三位”の青山に正体不明の男が接触、「絶対に検出されない」ドーピングを勧めてきた。青山は卑劣な手段を一旦は拒むが…。ランナーたちの人生を賭した勝負を活写する傑作長編!
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「花片雪」英田サキ(SHY NOVELS)
柊也の成長と、椹木の深い愛情が垣間見れる物語。
椹木の愛し方はどこまでも大人で、でも、時折垣間見られる嫉妬や執着がとても好ましい。
信じること。信じられること。
愛すること。愛されること。
不安に揺らぎながらも、それがどういうものなのか、
柊也が少しずつ理解し始めた矢先に起こった事件。
柊也が自棄にならずに椹木の元へ帰ってきてくれたことに胸をなで下した。
冷静に対応していた椹木が、柊也を行かせたくないと、
心配と不安を吐露するシーンが好き。
彼らが教えてくれた「生きる力」。
胸にしっかりと書き留めておこうと思います。
人は独りでは生きられないと、つくづく思い知らされる。
誰かに支えられた記憶でも強く在れるし、今現在手を差し伸べてくれる人の存在は心強い。
ご飯を食べて、幸せだと泣ける人生。
とても素敵だと思います。
『たかが恋だろ』→『愛想尽かし』→『花片雪』の順番で。
読み応えありました。
内容(「BOOK」データベースより)
男好きのきまぐれな母親の下、寂しく育った春日柊也は、大人になる頃には、誰も信じることができず、人を傷つけてばかりの毎日を送っていた。そして、罪を償っていたとき、元ヤクザの椹木恭介と知り合い、ふたりはいつしか恋人とした一緒に暮らすようになっていた。けれど、本物の愛情がどんなものか知らない柊也は、椹木の愛情や信頼を信じたくても信じきれずにいた。そんなとき、柊也はある事件に巻き込まれてしまい…。
「影の中の影」月村了衛(新潮社)
【人間とは裏切る生き物だ。
だが同時に、信義も誇りも、厳然として存在する】
影ではあっても孤独ではない男。
手を掴んだ人たちの命を守る為に身体を張って闘ったヤクザ。
目を背けることなく、真実を追い求めた彼女。
ウイグルからの亡命者たちを守る為に
限られた時間の中で繰り広げられた凄惨な死闘。
国も警察も、あてにならない状況下で、
寄る辺になるものは自らの技量と、これまで培ってきた人たちとの絆。
根底にあるのは信頼。
だから、闘える。
一気に読み切る面白さを備えた本書は、極上のエンターテイメント。
そこに理屈はいらない。
……とはいえ。
フィクションとノンフィクションの境界はさておき、
取り上げられている問題は深刻な問題だと思います。
他作品の感想の繰り返しになるけど、
著者は「人と人」「人の在り様」を描くのがとても上手い。
個人的には樋口の生き様がとても印象的でした。
一歩間違えたらシリアルキラーになってしまっていた彼に、居場所があってよかった。
そして、そんな彼を御した菊原組長がカッコイイ!
「リラックス」「深呼吸」
行き詰った時には必ず思い出したい言葉です。
内容(「BOOK」データベースより)
人民解放軍による悪魔の所業から逃れ、日本に潜伏中のウイグル人亡命団と、事件を追う女性ジャーナリストが襲われた。証拠隠滅をはかるべく送り込まれた中国の刺客。それを黙認する弱腰の日本政府と警察。絶体絶命の亡命団に、謎の男が救いの手をさしのべた。頭脳明晰、身体屈強。ロシア武術を極め、情報機関にも裏社会にも怖れられる存在―。こいつは一体何者なのか?その手がかりは、謎の言葉「カーガー」。
「いつか友よ 挑戦シリーズ5」北方謙三(集英社文庫)
カナダの山中で、獣と死者と向き合う生活を送っていた竜一。
あたかも、世捨て人であるかのように。
そんな彼を現実世界に引き戻した少年がいた。
「お礼を、なにもできないんだ、ぼくには」
「おまえが、ひとり前の男になることさ」
交し合った笑顔が、いまはとても苦しい。
守るために。
生き延びるために。
そして、誇りのために。
そのために闘い方を身に着けざるを得なかった男たちの生き様は、一様に哀しい。
ハンティングワールドのバッグを手放した竜一は、
日本との決別を心に決めたように思えて仕方がない。
またもや居場所を失くした男は、それでも、生ある限り闘いつづけるのだろう。
やるせない読後感で挑戦シリーズ終了。
自らのできることを力の限りやりつくした結果、
何かを失くしていく竜一の生き様がとてもやるせない。
彼のやすらぎはどこにあるのだろう?
「ロスト・コントロール -虚無仮説2- 」蒔舞(フロンティアワークス)
惹かれあっているのに。
距離が近づけば近づくほど傷つけあって疲弊していく二人が
たまらなくやるせなくて、途中から半泣きになりながら頁を捲りました。
胸をキリキリ絞られるような感覚は久々。
そして、そんなふうに感情を揺さぶられる物語が私は好き。
過去に囚われているのは藍だけではなく、
ハイエルもまた、過去の癒えない傷を抱えていた。
そんな二人が傷だらけになりながらも、
気持ちを確かめ合うシーンがとても好き。
藍のしなやかな強さに、未来の光を見た気がします。
そして、番外のハイエルの嫉妬深さは笑えるレベルを超えていて唖然(笑)。
お幸せに☆
さりげなく二人を気遣うダニーとアニタの存在が心強かった。
「俺に謝るな」
謝意を口にしたショーンに対して、それを拒絶するハイエルの台詞。
ものすごく厳しい言葉だと思うけど、それを言わせただけの理由がある。
人と人。
どう係っていくかって、本当に難しい。
でも、その関わり方の中で、素敵な出逢いもある。
全編通して楽しく読めました。
お友達に感謝☆ありがとうございます!
内容(「BOOK」データベースより)
FBI捜査官の藍沐恩は先の誘拐事件で深く傷つき、その心の傷を誤魔化すため上司で相棒のハイエルとのセックスに救いを求めてしまう。ハイエルが未だに亡き妻を愛していることを知りながら彼と夜を重ねる藍。だが、未来を描けない今の関係を、胸に秘めた恋情ゆえに思い悩み…。そんな時、捜査中の事件の犯人からハイエルの恋人として、事件の関係者でもあるジュリアと藍が狙われた。そして、ハイエルは藍に命じる。“ジュリアを守るため、恋人のフリをしろ”と―…。台湾で人気のBL小説、感動の完結!!
「ロスト・コントロール -虚無仮説1- 」蒔舞(フロンティアワークス)
FBI捜査官の藍は、少女の誘拐事件の捜査の過程で、自分の過去と向き合うことになる。
巻末の番外編で語られる彼の過去が、あまりにも痛々しくて胸に刺さる。
彼の母親も、そしてトビーの母親も。
何故、子供に対してそんな仕打ちができるのだろう?
掴めない少女の行方。
焦燥と、過去からの呪縛と、ハイエルへの想いとに揺れる藍。
「事件に感情移入しすぎるなよ」
どうしても感情が先に立ってしまう私には、
グサグサ突き刺さる言葉だった。
「嘘つき」
この言葉はいたたまれない。
精神的に追い詰められた藍が向かったハイエルの部屋。
そうしむけたハイエルの真意は?
ドキドキしながら次巻へ。
とりあえず。
カウンセラーと言えども、人の恋心を勝手に不幸だって決めつけるのはどうなの!?と。
イアンには文句言いたい。
そして貸してくれたお友達には感謝☆好みドンピシャでした!
内容(「BOOK」データベースより)
FBI捜査官の藍沐恩には2つの悩みがあった。ひとつは、FBIに提出する心理評価審査がパスしないこと。もうひとつは、秘かに想いを寄せる上司で相棒のハイエルのことだ。カウンセラーは言う。審査がパスしない原因は藍の幼少期にあり、「藍沐恩には自殺傾向がある」と。また別のカウンセラーが言う。ハイエルへの望みのないその想いは「藍を不幸にするだけだ」と。だが、ある少女の誘拐事件をきっかけに、過去の自分とハイエルへの想いに向き合うことになり―…。複雑に絡まり合う事件と犯罪心理に対峙する、台湾で人気の心理サスペンスBL!!
「ニューロマンサー」ウィリアム・ギブスン(ハヤカワ文庫)
めまぐるしく行き来する、電脳世界と現実。
いつしか、曖昧になる、二つの世界の境目。
濁流のように渦巻くのはイメージの洪水。
それはすべて、言葉から思い浮かべた私の想像の産物。
だが、それでいい。
想像は際限なく自由。
私も彼らと一緒に浮遊する。
イカれた電脳世界を。
読み解こうとするものは、誰にとっての真実か。
波打ち際でのシーンがとても印象的。
少年の明かした真の名。
それは、物語の総称。
その瞬間、何故か鳥肌がたった。
到底理解しきれてるとは言えないけれども、
「イカしてる」という言葉が最適だと思える物語。
再読必須です。
私が最も魅了されたのは、ハイテクと汚職の街、千葉シティ。
“さらりまん”の訳語が、とても微笑ましい。
電脳世界の彼女に「寒くなるから」とジャケットを渡したケイスが
とてもカッコよかった。
内容(「BOOK」データベースより)
ケイスは、コンピュータ・カウボーイ能力を奪われた飢えた狼。だが、その能力を再生させる代償に、ヤバイ仕事をやらないかという話が舞いこんできた。きな臭さをかぎとりながらも、仕事を引き受けたケイスは、テクノロジーとバイオレンスの支配する世界へと否応なく引きずりこまれてゆく。話題のサイバーパンクSF登場!
「翼をください」原田マハ(角川文庫)
それはまさしく偉業である。
そして、偉業の陰にはとてつもないドラマがあった。
決して世界に発信されることのないドラマが。
けれども、そのドラマは人知れず、語り継がれる。
熱い想いと、純然たる想いを込めて。
全世界を巻き込んだ大戦へと世情が向かう中、
多くの人々の夢を乗せて世界一周という偉業を成し遂げた「ニッポン号」。
それをあの時代に成し得たという事実に、ただ驚嘆する。
共に苦難を乗り越えた搭乗員たちを結ぶ絆が眩しい。
「どこかでつながっている世界で、僕らは生きている」
世界はひとつ。
彼らの飛行が、彼女の存在が、そのことを証明してくれた。
トラビスとの交信のシーン。切なくてたまらないけど、とても好き。
「もしも、許されるなら、私に翼を」
大きく羽ばたくことのできる両翼で、どこまでも高く、どこまでも遠くへ。
もしも、翼を得ることができたなら、私はどこに飛んでいくのだろう?
内容(「BOOK」データベースより)
カンザス州の田舎町に生まれ育ったエイミー・イーグルウィングは、女性として初めて大西洋横断飛行に成功するなど、数々の記録を打ち立てていた。大空を自由に駆けることに魅了されたエイミーは、空から見た地平には国境が存在しないことに気づく。世界平和のために、自分は飛ぶのだ、と。その強い信念はやがて彼女を、世界一周に挑む「ニッポン号」との邂逅へとみちびく。数奇な真実に彩られた、感動のヒューマンストーリー。
「風群の荒野 挑戦シリーズ4」北方謙三(集英社文庫)
それは、その男の宿命なのか?
ならば、彼はどんな業を背負っているというのだろうか?
何度もう言う。
彼はそこに在るだけだ。
だが、彼は、牙を持つ男たちにとってとてつもなく高い岩のようなものなのかもしれない。
越えなければ、先に進むことのできない障壁。
だから、獣と化した男たちは、一様に彼に戦いを挑む。
自らの生きる意味を賭けて。
周囲をも巻き込むその必死さに馬鹿じゃないの?と叫びたくもなる。
わかっている。その馬鹿を貫くのが北方流の男なのだろう。
命がけの戦いの果てにある生死は、命に縁があるかないかの違いでしかない。
戦いの果ての竜一の呟き。「俺はもう必要じゃない」
残るのは、寂寞。
戦いたいなら、独りで戦いを挑みに行けばいい。
単独でそこまでたどり着けないのも、
相手を同じ土俵に引きずり出せないのも、自らにその価値がないからだ。
何故関係のない他者を巻き込む?
と、憤りいっぱいになるので、自分で自分を和ませてみる。
今回の巻の副題。
「老いぼれ犬・世界を股に掛ける」
いかがなものかしら?
内容(「BOOK」データベースより)
「狼は哲学者だな。戦闘に熟達しただけのコマンドじゃない」傭兵がつぶやく。その「狼」に立ち向かうため、石本一幸がペルーにもどってきた。アフリカで血を吸ったナイフを携え、戦争のプロフェッショナルを伴って。憎悪と友情、硝煙と血を描いて、物語はクライマックスを迎える。
「翼をください 上」原田マハ(角川文庫)
先へ先へと逸る想いを必死で抑えながらの読了。
とにかく読みながら胸が震えた。
「世界はひとつである」と。
確固たる想いを胸に抱き、世界一周を成し遂げることを夢見たエイミーに。
「やるしかない」と。
世界一周を成し遂げようとする暁星新聞社の面々の志に。
全世界を巻き込んでの大戦へと世情が加速する時代。
その飛行には、軍部の思惑が見え隠れする。
明らかになった真実。
信じてきたものが足元から瓦解したエイミーの決意。
したためられることのなかった手紙が痛い。
そして、日本の海軍機での世界一周計画の始動。
ドキドキしながら下巻へ。
アインシュタイン、リンドバーグ、ルーズベルト、山本五十六、キャパetc/etc。
歴史上の人物がリアルに息づいている描写に、
物語を楽しむのとはまた違った意味合いを含んだ高揚がありました。
内容(「BOOK」データベースより)
暁星新聞の記者である青山翔子は、社内の資料室で一枚の写真を見つけた。それは、1939年に世界初の世界一周を成し遂げた「ニッポン号」の写真だった。翔子は当時、暁星新聞社が社運をかけて取り組んでいたプロジェクトにカメラマンとして参加していた男を追って、カンザス州アチソンへと飛ぶ。老人ホームで暮らす山田は、翔子から渡された古い写真を見て、重い口を開いた。そこには、ある米国人女性パイロットの姿が―。