きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「土漠の花」月村了衛(幻冬舎)
【たとえ、どんなに辛くても、私は生きて戦わねばいけません】
戦わなければ殺される、という現状に否応なく巻き込まれた自衛官たち。
正義の為でもなく、大義の為でもなく、ただ、生き延びるための戦いが、
いつしか仲間たちの命を繋ぐための戦いへと変化していくにつれ、
彼らの在り方が、その行動が、いたたまれなくなってくる。
もしもこの戦いがなければ、友永と新開は分かり合えなかったかもしれない。
由利と梶谷も距離を置いたままだったかもしれない。
だけど、分かり合い、認め合えた彼らがそこにいる。
だからこそ、彼らの未来が見たかった。
共に肩を並べて歩む未来を。
この仲間たちと会えて良かった。
違った状況で、言ってほしかった。
この作者は人と人との在り方を描くのが、本当にうまいなぁ、と思います。
内容(「BOOK」データベースより)
ソマリアの国境付近で、墜落ヘリの捜索救助にあたっていた陸上自衛隊第一空挺団の精鋭たち。その野営地に、氏族間抗争で命を狙われている女性が駆け込んだとき、壮絶な撤退戦の幕があがった。圧倒的な数的不利。武器も、土地鑑もない。通信手段も皆無。自然の猛威も牙を剥く。最悪の状況のなか、仲間内での疑心暗鬼まで湧き起こる。なぜここまで激しく攻撃されるのか?なぜ救援が来ないのか?自衛官は人を殺せるのか?最注目の作家が、日本の眼前に迫りくる危機を活写しつつ謳いあげる壮大な人間讃歌。男たちの絆と献身を描く超弩級エンターテインメント!
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「off you go」一穂ミチ(ルチル文庫)
現在と過去を行き来しながら綴られる彼らの過ごした人生。
何気ない仕草から、秘められた彼らの心情が伝わってくる。
所々琴線に触れるとても綺麗な描写があって、はっとする。
だから一行一行を噛みしめるように追ってしまう。
良時、密、十和子で描いてきた一見綺麗なトライアングル。
それぞれが心に蓋をした隠し事があるが故の三角にはどうしても正せない歪があって、
十和子の決意を秘めた行為によってこれまでの関係が壊れていく。
だけどそれは崩壊を意味するのではなく、新たな始まりの兆し。
良時の元へ転がり込んだ密。
それを受け入れた良時。
その時点で未来は決まっていたような気がします。
幼いころから傍にいたが故に関係を変えられなかった十久子と密。
それでも一歩先を望んだ良時と密。
そしてどうにも変えようのない良時と十和子。
形の違ったトライアングルを彼らはずっと描き続けていくんだろうなぁ、と、
想わせてくれる顚末でした。
内容(「BOOK」データベースより)
その朝、就寝したばかりの良時を突然、妹の夫・密が訪れた。海外赴任から帰国すれば自宅はなく、妻・十和子に離婚を言い渡されたという。折しも独り身の良時は密のペースに呑まれ、快適な同居生活へ。幼い頃から共に身体が弱く療養の日々を同志のように過ごしてきた密と十和子、ふたりの絆を誰より知る良時。ふしぎな均衡で繁がり合う彼らは…。
「黄金の戦女神 デルフィニア戦記2」茅田砂胡(C・NOVELS)
戦女神の如き少女リィと共に奪還すべき己の国へ向かっていたウォルは、
彼に忠誠を誓う騎士団長と合流し、旧知の友と思わぬ状況下での再会を果たす。
着々と進められる戦準備。
事態は決して楽観できるようなものではないのだけれども。
リィの言葉には何故かとてつもない安心感と説得力がある。
そしてリィとウォルとイヴンの会話が半端なくおもしろい。
常識人の頭の固い将軍たちがお気の毒になってしまうくらい。
突然立場が変わってすべての友人を失ったと寂しく言ったウォルだけど、
彼は決して一人じゃない。
彼が変わらない限り、失わないものもある。
張り巡らされる陰謀の罠にどう立ち向かうのか。
ワクワクしながら次巻へ。
内容(「BOOK」データベースより)
卑劣な陰謀で偽王の濡れ衣を着せられ逃亡中の国王ウォルと異世界から落ちてきた少女リィ。盗まれた王座を奪回するため旅を続ける二人を慕って志を同じくする仲間が次々と結集する。ようやく国王軍の体を為し首都コーラルに向けて進軍する彼らを阻むべく待ちうける敵の大軍。そしてペールゼンの悪辣な罠が。
「放浪の戦士 デルフィニア戦記1」茅田砂胡(C・NOVELS)
異世界から迷い込んだ正体不明の少女リィと、
あらぬ疑いをかけられて国を追われた戦士であり国王であるウォル。
リィの聡明さと歪みのないまっすぐな気質がとてもまぶしい。
そしてウォルの実直さとおおらかさがとても好ましい。
10歳以上歳の離れた二人が遠慮なくポンポン言いあう様がとても楽しくて、
サクサク先に進んでしまいます。
リィにコテンパンにやられた壮年剣士のガレンスは潔いいのになんだか微笑ましいです。
この巻は、二人の運命的な出逢いに端を欲する冒険譚の始まりの章。
この先にどんな出来事が待ち受けているのか、読み進めるのがとても楽しみな物語。
久しぶりに手にした長編ファンタジー。
すんなり物語世界に入り込めて、ワクワク感倍増し☆
内容(「BOOK」データベースより)
刺客に追われる漂泊の戦士ウォルと異世界からの迷子リィ。剣戟のさなか孤独な二人の戦士の偶然の出逢いが、デルフィニア王国の未来を、アベルドルン大陸の運命を大きくかえていく。やがて『獅子王』と『姫将軍』と呼ばれることになる二人の冒険譚はここからはじまる。
「迷宮」中村文則(新潮文庫)
「誰か一人いなくなればいいのに」
祈るように願う以外、現実を変える術を知らなかった幼い命。
そう願わざるを得なかった、優しくない現実。
歪みが歪みを呼び、狂気が狂気を呼ぶ。
文字通りの負の連鎖。
家族の歪みは外側からはわかり辛いからこそ、起こる悲劇がある。
あちら側にいってしまうかと終始ハラハラしながら頁を捲った「僕」の選択。
誰かを殴ること、刺すこと、殺すこと。
想像することだけは、どこまでも自由だ。
人生を終わらせることではなく、固執することを選んだ僕。
彼女の世界が外に向かって開かれることを切に願います。
人生は捨てたもんじゃない。
全ての人に「この本イイよ!」と勧められる話では決してないんだけど。
中村さんの話、私は好きです。
この話の終幕はとてもやさしかった。
内容(「BOOK」データベースより)
胎児のように手足を丸め横たわる全裸の女。周囲には赤、白、黄、色鮮やかな無数の折鶴が螺旋を描く―。都内で発生した一家惨殺事件。現場は密室。唯一生き残った少女は、睡眠薬で昏睡状態だった。事件は迷宮入りし「折鶴事件」と呼ばれるようになる。時を経て成長した遺児が深層を口にするとき、深く沈められていたはずの狂気が人を闇に引き摺り込む。善悪が混濁する衝撃の長編。
「is in you」一穂ミチ(ルチル文庫)
ツキン、と、胸を刺されるような痛みを随所で感じながら、
読み切った後に残る印象は透明な穏やかさ。
10代の感性はまっすぐで瑞々しくて、歪みがないだけに、
噛み合わずに受けた傷はひどく痛々しい。
紆余曲折を経て13年ぶりの再会。
互いだけを一途に想いつづけたわけではなかった二人だけれども。
奥底に封じた想いは透明なままで、探り合って、誤解して、また傷ついて。
それでも、気持ちを寄せ合わせていく二人の距離感がとても良かったです。
圭輔の性格、すごく好き。
心理描写も情景描写も本当に綺麗で、
一穂さんの作品好きだなぁ、と改めて思いました。
後日談の圭輔視点の話は、やっぱり所々胸が痛かったけど、
合間合間に挟まれる圭輔の独白がかわいくておもしろかった(笑)
そして最初から最後まで美蘭がとても可愛かった☆
内容(「BOOK」データベースより)
香港からの転校生・一束は、日本にも教室にもなじめずに立入禁止の旧校舎でまどろんでばかりいる。そんな一束だけの世界を破ったのが、二つ先輩の圭輔だった。まっすぐな圭輔にやがて心を許し、どうしようもなく惹かれていったのに、向けられる想いを拒んでしまった一束―十三年後、新聞社香港支局長になった圭輔と仕事相手として再会し…。
「恋する組長」笹本稜平(光文社文庫)
やくざ御用達の探偵業を生業とする私立探偵の、
やくざや悪徳刑事からの依頼を消極的積極的に解決していく6編の短編集。
一癖も二癖緒ありすぎる面々と絡みつつ、
人情話あり、笑いあり、で問答無用でおもしろい!
そして最終話6話目の幕引きがメッチャ洒落てて良い。
主人公の周りのやくざや悪徳刑事の個性が本当に強烈過ぎて、
日々退屈しないだろうなぁ。
なんてったて悪徳刑事の話のタイトルは「ゴリラの春」。
解説の「ユーモアハードボイルド」という言葉は言い得て妙な表現。
読後にスッキリしたいときにはうってつけかも☆
正直笹本さんの話だからもう少し硬派な話かと思っていたのですが、
良い意味で期待を裏切られました☆
積んでる他の話を読むのが俄然楽しみになってきました。
内容(「BOOK」データベースより)
“おれ”は、東西の指定広域暴力団と地場の組織が鎬を削る街に事務所を開く私立探偵。やくざと警察の間で綱渡りしつつ、泡銭を掠め取る日々だ。泣く子も黙る組長からは愛犬探しを、強面の悪徳刑事からは妻の浮気調査を押しつけられて…。しょぼい仕事かと思えば、その先には、思いがけない事件が待ち受けていた!ユーモラスで洒脱な、ネオ探偵小説の快作。
「meet,again」一穂ミチ(ディアプラス文庫)
想いが深くなるほどに増す苦しさは、確かに存在する。
離れた方が楽になれるかもしれない。
現に嵐は栫との距離が縮まったことによって、屈託なく笑えなくなってしまった。
でも、離れられない。
関係を絶ったつもりでも、「行こうか」の一言でリセットされてしまう。
理由づけができなくても、理不尽だとわかっていても。
それが、「好き」だということ。
栫は何かが欠落していて、この先もそれが埋められるかどうかはわからない。
だけど、「あなたが存在する世界」で「起きる」ことを選んだ栫。
それは間違いなく、嵐がいてこその覚醒。
「こんにちは」
繰り返されるその言葉が、愛の言葉になる日が来ると良いと思う。
読後は決してすっきりした感じではないけれども。
この余韻を含んだやるせない感覚が好き。
何度も噛みしめて反芻したくなる感じ。
内容(「BOOK」データベースより)
大学構内の生協で働く嵐は、飲み会の席で栫という学生と知り合いになる。どこか冷たい静けさを纒い、独特な言動をする栫と嵐はまったくタイプが違ったが、つかず離れずの友人関係は意外なほど長く続いている。そんなある日、嵐は心の内に抱え続けていた、母の死にまつわる秘密を栫に暴かれて―?ゆっくりと落ちてゆく心を計る砂漏の恋。その後の二人を描いた「hello,again.」も収録。
「三匹のおっさんふたたび」有川浩(新潮文庫)
それぞれの家族との係わり方が印象に残ったシリーズ第二弾。
パート先で苦労をしていることを察しながらも敢えて口にせず、
さりげない気遣いをしながら、貴子の初めてのお給料で買ったケーキで、
家族で食卓を囲むシーンは、素敵だなぁ、と思った。
清一からまだいろんなことを学びたいと思い、健一のことを見直す祐希。
重雄のことをカッコいいと思う康生。
まだ則夫のそばにいたいと子供のようにダダをこねた早苗。
言葉にしてもしなくても、家族がきちんと向き合って、
生活をしているその姿には、地に足がついた安心感がある。
起きる事件は身近なもので、それ故に怖さややりきれない思いを抱かされた。
そんな中、書店主の井脇が万引きをした中学生たちに真摯に向き合ったその姿勢は
ちょっと感動しました。
向き合った相手がきちんと反省できる子でよかった。
内容(「BOOK」データベースより)
剣道の達人キヨ、武闘派の柔道家シゲ、危ない頭脳派ノリ。あの三人が帰ってきた!書店での万引き、ゴミの不法投棄、連続する不審火…。ご町内の悪を正すため、ふたたび“三匹”が立ち上がる。清田家の嫁は金銭トラブルに巻き込まれ、シゲの息子はお祭り復活に奔走。ノリにはお見合い話が舞い込み、おまけに“偽三匹”まで登場して大騒動!ますます快調、大人気シリーズ第二弾。
「雪よ林檎の香のごとく」一穂ミチ(ディアプラス文庫)
一人で壊せない殻なら、誰かに叩いてもらえばいい。
ままならない現実が辛かったら、誰かに想いを吐き出せばいい。
自分自身で己に課した戒めに雁字搦めになって、
前に進むことができずにいた不器用な二人。
距離を縮めていくエピソードの数々が、怖いもの知らずの高校生らしくて。
それなりの挫折を経験してきた教師らしくて。
ストン、と、胸に落ちました。
まとまってみると、大人げのなさ全開の桂がなんだかかわいい。
桂の幸せを見届けることができた喜びと安堵が伝わってくる、葉子の涙は良かった。
将来に対する心もとなさって、志緒の年代なら誰もが経験するもの。
だからこその青春。
栫のしたことはとりあえず説教部屋行きだけど。
みんな泣き寝入りしなかったのが良かった。
桂の啖呵は大人げのなさ全開だったけど(笑)
りかちゃん、良い子で可愛かったよ。
内容(「BOOK」データベースより)
中学受験も高校受験も失敗し、父の母校に進学する約束を果たせなかった志緒。今は、来年編入試験を受けるため、じりじりする気持ちを抱えながら勉強漬けの毎日を過ごしている。五月雨の降るある日、志緒は早朝の図書室で、いつも飄々としている担任・桂の涙を見てしまった。あまりにも透明な涙は、志緒の心にさざなみを立て―。静かに降り積もるスノーホワイト・ロマンス。期待の新鋭・一穂ミチのデビュー文庫。