きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「ジェントルマン」山田詠美(講談社文庫)
【理由なんて、ひとつしかないんだよ。
ぼくがぼくだからという、それしか。】
彼の行為。彼らの関係性。
それらを、どこかで軌道修正することはできたのだろうか?
いや、それは不可能だっただろう。
何故か?
それは、彼らが再三にわたって叫んでいる。
彼が、彼だから。ぼくが、ぼくだから。
他に理由はない。
倫理、理屈、善悪。
それらすべてを飛び越えたところに起因するものは、ただひとつ。
溢れる想い。
他人には理解されなくてもいい。
時に、染み出す水のように。時に込み上げる慟哭のように。
心の内側から溢れ出す想い。
美しい言葉で紡がれる、歪な世界。
そこに漂う、背徳めいた幸福感。
他者に対してそこまで残酷になれた男の末路。
納得の結末でした。
内容(「BOOK」データベースより)
眉目秀麗、文武両道にして完璧な優しさを持つ青年、漱太郎。しかしある嵐の日、同級生の夢生はその悪魔のような本性を垣間見る―。天性のエゴイストの善悪も弁えぬ振る舞いに魅入られた夢生は、漱太郎の罪を知るただ一人の存在として、彼を愛し守り抜くと誓う。切なくも残酷な究極のピカレスク恋愛小説。
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「ふたたびの、荒野」北方謙三(角川文庫)
【この街が、俺には強烈過ぎたんだ。
安穏な夢なんてものを、抱かせてくれはすない。】
長い間の抗争に終止符を打った最終話。
安穏な夢で良かったのに、と、叫ばずにはいられなかった秋山の死には涙が止まらなかった。
願った通り、仲間に囲まれて眠りについた下村。
ひとりで決着をつけに行ったキドニー。
いつだって身体を張って誰かを支えてきた川中。
何がそこまで彼らを駆り立てたのか。
問うことは無意味だ。
彼らにですら、説明することは不可能だっただろう。
「なにも、終わってはいなかった」
最後の川中の言葉が胸に刺さる。
川中がいるこの街に男たちは流れ着き、根を下した。
シリーズ10巻を通して描かれたのは、鮮烈に生ききった男たちの物語。
友情に篤く、権力と理不尽に屈しない男たちの物語。
一言で表すなら、北方浪漫。
しばらく引きずりそうな余韻を残したまま閉幕です。
内容紹介
ケンタッキー・バーボンで喉を灼く。だが、心のひりつきまでは消しはしない。張り裂かれるような想いを胸に、川中良一の最後の闘いが始まる。”ブラディ・ドールシリーズ”、ついに完結!
「聖域 ブラディ・ドール9」北方謙三(角川文庫)
【俺は、自分ではおかしな男だとは思っていない。
ただ、自分の変化にびっくりしているよ】
その男は、車の走らせ方が図抜けて上手いことを除けば、どこにでもいる普通の男だった。
退学をして家出をした教え子を探しにきた高校教師。
殴ることも殴られることもなかった男は、いつしかトラブルの中に巻き込まれ、
下村や坂井、そしてこの街に暮らす男たちと係わりを持つようになる中で、
性根の座った男へと変わっていく。
闘えなかった男が、闘う決意をし、命がけで教え子を守り通したのだ。
だが、その代償はあまりにも大きかった。
賭け事をするキドニーたち。金魚を飼う川中。つるんでいる坂井と下村。
流れた時間の分だけ、営まれてきた彼らの生活がある。
そんな瞬間が垣間見れるのは、なんだか嬉しい。
次はシリーズ最終巻。
覚悟して読みます。
内容紹介
高校教師の西尾は、突然退学した生徒を探しにその街にやって来た。教え子は暴力団に川中を殺すための鉄砲玉として雇われていた……激しく、熱い夏! ”ブラディ・ドール”シリーズ第九弾。
「鳥影 ブラッディ・ドール8」北方謙三(角川文庫)
【パパにいま、翼をあげたいよ】
これは父と子の物語。
太一と義理の父である中西、そして太一と実の父である立野。
中西の死をきっかけに、三年ぶりに息子と再会した立野が示した真摯さと漢気。
最初は距離をおき、探るように立野を見ていた太一だったけれども、
「立野さん」から「パパ」へ。
呼び方と一緒に変わっていく太一の立野に対する思い。
二人が親子の絆を取り戻していく様は胸に迫るものがあった。
抱えた秘密のために、子供ではなく、男であらねばならなかった太一。
そんな重責を太一に背負わせた中西と、その重さから解放しようとした立野。
必死の思いで悪意ある者たちの手から逃れ、それは、叶うはずだったのだ。
それなのに……
誰かのために奔走する。
ブラディ・ドールの男たちは健在でした。
内容(「BOOK」データベースより)
男は、3年前に別れた妻を救うために、その街へやって来た。「なにからはじめればいいのか、やっとわかったよ。殴られた。死ぬほど殴られた。殴られたってことから、俺ははじめるよ」妻の死。息子との再会。男はN市で起きた土地抗争に首を突っ込んでいき、喪失してしまったなにかを、取り戻そうとする。一方、謎の政治家大河内が、ついにその抗争に顔を出し始めた。大河内の陰謀に執拗に食い下がる川中、そしてキドニー。いま、静寂の底に眠る熱き魂が、再び鬨の声を挙げる。“ブラディ・ドール”シリーズ第8弾。
「残照 ブラディ・ドール7」北方謙三(角川文庫)
【過ぎた時間は、幻だったと思うことだ。でなけりゃ、やっていけんよ】
過ぎた時間は幻だと思え。でなければやっていけない。
下村にそう言った川中は、だが、すべての過去を抱えて生きている。
彼の眼に宿る暗さは、抱えたものの重さと喪失の悼みの現れなのかもしれない。
自らの死を覚悟した沖田を中心に、持ち上がる騒動。
沖田を守ろうとする川中たち。
死に向かう沖田に惹かれる女たち。
そんな沖田の姿から何かを感じ取ろうとする下村。
自らの生きる道を決めきれず、
ただひたすらに自らの在り方を模索する姿は若者らしくて好ましい。
友だちがいる限り、自分のやったことは無駄じゃない。
そう言って眠りについた叶。
彼の存在もまた、ブラディ・ドールの男たちの胸の中で生き続けるのだ。
内容紹介
消えた女を追って来たこの街で、青年は癌に冒された男と出会う……青年は生きるけじめを求めた。男は生きた証を刻もうとした。己の掟に固執する男の姿を彫りおこす、”ブラディ・ドール”シリーズ第7弾。
「黙約 ブラディ・ドール6」北方謙三(角川文庫)
【藤木、で死ねますか】
覚悟の訣別。刻まれた墓碑銘。貫かれた男の矜持。不器用な誠実さ。
最期の瞬間に、逢えてよかった……(号泣)
誰もが誰かの為に奔走した男たちの連携はいっそ小気味良く、
この時間がずっと続けば良いのに、と、途中で何度も思った。
川中に見守られる中「いい思いしました」という言葉を残して止まってしまった藤木の時間。
だが、残された男たちの時間は流れ続ける。
自らに課した最後の一線を越えてしまったキドニーの苦悩。
誰もに愛される川中の孤独。そして、
藤木のライターをその想いと共に継承した坂井。
これは喪失の物語。
だが、忘れまいとする人がいる限り、人は死なない。
ブラディ・ドールはただその場所に在り続ける。
内容(「BOOK」データベースより)
砂糖菓子のように崩れていく―。女はそう形容した。そんな男に魅かれるのだと…。手術に抜群の技量をもちながら、野心に背を向け、場末をさまよう流れの外科医。闇診療に手を染めたのも、港町の抗争に巻き込まれたのも、成り行きで意地を張ったのがきっかけだった。だが、酒場に集う男たちの固い絆が外科医の魂に火を点けた。死ぬために生きてきた男。死んでいった友との黙約。そして、女の激しい情熱につき動かされるようにして、外科医もまた闘いの渦に飛び込んでいく。“ブラディ・ドール”シリーズ、待望の第6弾。
「天国はまだ遠く」瀬尾まい子(新潮文庫)
人生という果てのない航路を進むにあたって、
すべての物事が自分の思い通りになることはまずあり得ない。
壁にぶつかり、人間関係に悩み、こんなはずでは、という思いに窒息しそうになりながらも、
自分なりの人生を歩み続けていかなければいけないのだ。
そして、人生はささいなきっかかけで、マイナスにもプラスにも転換する。
自殺を決行するほど思いつめていた千鶴が人生の終焉を迎える場所を彼の地に選んだことで、
彼女の人生は好転する。
田村との出会い。
何処までも美しく、雄大な自然。
ゆったりと流れる時間の中で活力を取り戻した彼女は、自分のいるべき場所へと戻っていく。
だが、それはこの土地や田村との永遠の別離ではない。
こんな人生のリセットの仕方も悪くない。
そんなふうに思わせてくれる本でした。
内容(「BOOK」データベースより)
仕事も人間関係もうまくいかず、毎日辛くて息が詰りそう。23歳の千鶴は、会社を辞めて死ぬつもりだった。辿り着いた山奥の民宿で、睡眠薬を飲むのだが、死に切れなかった。自殺を諦めた彼女は、民宿の田村さんの大雑把な優しさに癒されていく。大らかな村人や大自然に囲まれた充足した日々。だが、千鶴は気づいてしまう、自分の居場所がここにないことに。心にしみる清爽な旅立ちの物語。
「黒銹 ブラディ・ドール5」北方謙三(角川文庫)
【「じゃ、なぜ生きてるんだ?」「死なないからさ」】
他者の人生の幕引きを生業とする殺し屋。
惚れた女と共に堕ちることを選んだピアニスト。
闘う男たちの中に在って、堕ちていく女にただ寄り添うピアニストの存在は、
異質なものになってもおかしくはないはずなのに。
何故か彼の存在もまた、ブラディ・ドールの色にしっくりと染まっている。
それは、彼がただ流されて堕ちるのではなく、
自らの意志で堕ちることを選ぶ強さを秘めているからなのかもしれない。
彼もまた、闘っているのだ。
「坊や」から昇格したかと思った坂井を「小僧」扱いする殺し屋、叶。
ブラディ・ドールにまたひとり、魅力的な男が加わった。
内容(「BOOK」データベースより)
獲物を追って、この街へやってきた。そいつの人生に幕を引いてやる、それが仕事のはずだった。妙に気になるあの男と出会うまでは―。惚れた女がやりたいと思うことを、やらせてやりたい―たとえ、それが自分への裏切りだとしても―。あの男はそう言って銃口に立ちふさがった。それが優しさ?それが愛ってもんなのか?私を変えたあの日、裏切りを許せなかった遠い過去が心に疼く。殺し屋とピアニスト、危険な色を帯びて男の人生が交差する。ジャズの調べにのせて贈るブラディ・ドール、シリーズ第五弾。
「リミット」水壬楓子(リンクスロマンス)
シリーズ最終作品。
現役のボディガードである良太郎と、
ケガによって一線を退き、サポート部門にまわった由惟の物語。
良太郎を繋ぎとめるために由惟がつき続けた嘘。
由惟の傍にいるためにその嘘に気付かないふりをし続けた良太郎。
……欲しくて、せめて身体だけでも。
セックスをし、お互いの好意をなんとなく感じつつも、
なかなか言葉にのせて「好き」という気持ちを伝えることのできなかった二人が、
想いを確かめ合うシーンがすごく甘くて好き。
危険を伴う任務に赴く良太郎と、彼が万難を排して任務を遂行できるように場を整える由惟。
立場は違えど、彼らは間違いなく最高のパートナーだと思います!
内容(「BOOK」データベースより)
人材派遣会社『エスコート』のボディガード部門に付随する調査部所属の柏木由惟は、二年前まで優秀なガードだった。だが、ある任務で相棒の名瀬良太郎を銃弾からかばい、足の自由を失ってしまう。以来、良太郎は献身的に由惟に尽くし、いつしか世話の一環とばかりに由惟を抱くようになる。ずっと良太郎に想いを寄せていた由惟は悦びを感じるほどに後ろめたさが募り、良太郎を自分から解放してやろうと別れを決意しているが…。
「羆嵐」吉村昭(新潮文庫)
【この男は本物のクマ撃ちなのだ、と区長は思った】
荒れ地を耕し、貧困に喘ぎながらも、移り住んだ土地で生活を営んでいた村人たちを襲った悲劇。
北海道開拓の苦難を知ると共に、太刀打ちできない羆という猛威への無力感、
そして、羆撃ちを生業とする男の孤独と寂寞を突きつけられた話だった。
日本最大の獣害。
男女を選り好んで食らう羆の生態には、底の知れない恐怖しか感じられない。
2日間で6人もの人を殺めた羆を仕留めた銀四朗が、何故ここまで孤独であらねばならぬのか。
彼の為人によるところもあるのだろうが、
「きさまらはずるい」という彼の叫びはあまりにも悲しかった。
ただの烏合の衆でしかなかった警察官や、猟銃保持者たち。
集団であるが故に誰かがなんとかしてくれる、という心理が働いたであろうことは否めない。
たったひとり、羆に対峙した銀次郎。
だが、彼は最期の瞬間まで羆撃ちだった。
内容(「BOOK」データベースより)
北海道天塩山麓の開拓村を突然恐怖の渦に巻込んだ一頭の羆の出現!日本獣害史上最大の惨事は大正4年12月に起った。冬眠の時期を逸した羆が、わずか2日間に6人の男女を殺害したのである。鮮血に染まる雪、羆を潜める闇、人骨を齧る不気味な音…。自然の猛威の前で、なす術のない人間たちと、ただ一人沈着に羆と対決する老練な猟師の姿を浮彫りにする、ドキュメンタリー長編。