きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
ふし「蚊トンボ白髭の冒険 上」藤原伊織(講談社文庫)
奇妙な生き物との不思議な出逢い、そして、アパートの隣人を助けたことによって
達夫の日常が劇的な変化を遂げる。
大がかりなトラブルに巻き込まれ、僅か二日間の間に起きた、あまりにも濃密な出来事。
背負った過去の出来事から、生きていて楽しい必要なんかあるのかと呟いた達夫が貫いた、
痛々しいほど真摯な誠実さ。
黒木もどこか壊れているし、真紀の抱えた喪失も大きい。
仕事をする職人さんたちの描写がとても好き。
やくざ側の瀬川も、なんだか憎めない話の分かるおっさんかと思ったら……
不気味な敵は他にいました。
ドキドキしながら下巻へ。
内容(「BOOK」データベースより)
羽音と不思議な声がすべての始まりだった…。陸上競技への夢を断念し、水道職人となった若者・達夫の頭の中に、ある日奇妙な生物が侵入してくる。その名も蚊トンボ・シラヒゲ。超人的能力を得た達夫は、アパートの隣人・黒木を理不尽な暴力から救う。しかし、それは恐るべき闇社会との対決を意味していた。
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「雪が降る」藤原伊織(講談社文庫)
六編の物語から成る短編集は、人生に傷を持った人々の物語。
個人的には過去と現在のやるせなさと理不尽さがオーバーラップする「台風」と
男女の会話がとてもスタイリッシュで男二人のやりとりが妙に艶っぽい「雪が降る」が好き。
「紅の樹」の堀江の生き様と赤に染まる樹の描写には息を呑んだ。
彼の紡ぎだす物語の読後感は本当にぶれない。
痛みを伴った心地よさにいつまでも浸っていたい。
運命を受け入れながらも、決して逃げてはいない人々の日々の物語。
少年や子供たちですら、毅然として生きている。
内容(「BOOK」データベースより)
母を殺したのは、志村さん、あなたですね。少年から届いた短いメールが男の封印された記憶をよみがえらせた。苦い青春の日々と灰色の現在が交錯するとき放たれた一瞬の光芒をとらえた表題作をはじめ、取りかえようのない過去を抱えて生きるほかない人生の真実をあざやかに浮かびあがらせた、珠玉の六篇。
「機龍警察 暗黒市場」月村了衛(早川書房)
【すべてが裏切りと不実に満ちている。
信じられるものは何もなかった。己自身の魂さえも。】
身震いするような思いに急き立てられるように頁をめくった。
仲間に裏切られ、矜持を踏み潰され、腐って堕ちたと自らさえも思ったユーリだったけれども。
それでも、彼は、警官としての魂を失わなかった。
彼を取り巻いていた人々の真意に触れた瞬間の心の震えは言葉にならない。
絶望の中で見つけた真実の光。
けれども、それはすべてを失った後の儚い残光。
手を伸ばしても決して届かない。
死者は何も語らず、生者はその想いを伝える術がない。
だけど。
彼の手を握ってくれる仲間はいまこここいる。
姿の煎れた珈琲の香りが漂った気がした。
南仙台で、おぉ!と、拳を握り、閖上、石巻、金華山と
馴染んだ地名がでてきてテンションがあがりました。
内容(「BOOK」データベースより)
警視庁との契約を解除されたユーリ・オズノフ元警部は、旧知のロシアン・マフィアと組んで武器密売に手を染めた。一方、市場に流出した新型機甲兵装が“龍機兵(ドラグーン)”の同型機ではないかとの疑念を抱く沖津特捜部長は、ブラックマーケット壊滅作戦に着手した―日本とロシア、二つの国をつなぐ警察官の秘められた絆。リアルにしてスペクタクルな“至近未来”警察小説、世界水準を宣言する白熱と興奮の第3弾。
「花がふってくる」崎谷はるひ(ダリア文庫)
流麗な文章で静かに綴られる物語。
特に、涼嗣と夏葉の夏のシーンの美しさが印象に残りました。
崎谷さんらしくて崎谷さんらしくない文章だなぁと思った理由はあとがきで納得。
秋祐が傍にいることがあたりまえで、でも彼の気持ちにも自分の気持ちにも無頓着で。
「結婚」ということの意味も重さをないがしろにしすぎた涼嗣だけれども。
恋人との関係にきちんとけじめをつけ、秋祐と結ばれた後の彼の覚悟と想いの深さには
胸にジンとくるものがありました。
そして、ともすれば揺らぎそうな秋祐を包んで離さないその執着がいい。
二人の気持ちがとても丁寧に綴られていて、静かに進行した物語の余韻は
ちょっと切なくて心地よいものでした。
内容(「BOOK」データベースより)
大学助手の蓮実秋祐は、いとこの袴田涼嗣と同居している。同い年のくせに、際限なく甘やかしてくる涼嗣に、秋祐は密かに恋をしていた。近すぎる距離があたり前になっていた二人だったが、涼嗣が恋人・理名との結婚を決めたことから事態は大きく動き始める。秋祐は涼嗣への想いにピリオドを打ち、離れる決心をするが―。
「ダナエ」藤原伊織(文春文庫)
三篇からなる短編集から香るのは、ほろ苦さに包まれた甘いやさしさ。
描かれるのは、誰かのために行動する人間の諦観と、凛とした決意。
それは「犠牲」ではない。彼らの他者に対する「想い」の現れだ。
藤原さんの描く世界観が本当に好き。
感想は読む時期、年齢、心理状況によって変わってくる。
逆に作者が紡ぐ物語も、その時に生きるからこそ描き得るものだとするならば。
小池真理子女史のあとがきを読んでから「まぼろしの虹」を読みかえしたら、涙が滲んだ。
彼の死を静かに突きつけられたあとがきには、じわじわと胸にくるものがありました。
内容(「BOOK」データベースより)
世界的な評価を得た画家・宇佐美の個展で、財界の大物である義父を描いた肖像画が、切り裂かれ硫酸をかけられるという事件が起きた。犯人はどうやら少女で、「これは予行演習だ」と告げる。宇佐美の妻は、娘を前夫のもとに残していた。彼女が犯人なのか―。著者の代表作といえる傑作中篇など全3篇収録。
「ダックスフントのワープ」藤原伊織(文春文庫)
【人はギリギリのところまでいったら、
いつだって独りぽっちでなにかを決めなきゃいけないときがくるんだ】
四篇からなる短編集。
根底に漂う雰囲気は、どれもクールで知的でどこか悲劇的。
そして主人公たちは、それぞれ世の中を斜めに見るような孤独を抱えている。
どの話も読み終わったところで立ち止まり、胸の中に残ったチクリとした痛みを顧みて、
物語を反芻する。
それはひどく心地良い瞬間だ。
余韻に浸っていたいと思う読後感は、短編でも健在。
一番印象的だったのは「ダックスフントのワープ」
物語世界と現実世界が崩壊する瞬間は、心に冷水を浴びせられたような感覚を味わうことになる。
それでも、藤原伊織の描く物語だよなぁ、と、納得してしまうのだ。
内容(「BOOK」データベースより)
大学の心理学科に通う「僕」は、ひょんなことから自閉的な少女・下路マリの家庭教師を引き受けることになる。「僕」は彼女の心の病を治すため、異空間にワープしたダックスフントの物語を話し始める。彼女は徐々にそのストーリーに興味を持ち、日々の対話を経て症状は快方に向かっていったが…。表題作ほか三篇。
「この光と闇」服部まゆみ(角川文庫)
【闇の中に在って、世界は何と美しく輝いていたことだろう!】
美しい言葉で綴られる、かくも美しく幻想的な物語。
構築された緻密で華麗な世界に魅せられ、甘く悩ましい香気にうっとりと目を細める。
これは、光に満ち溢れた世界で父王の愛情を一身に浴び、
花の香りと芸術と物語世界に生きる王女の物語。
何が虚構で何が真実なのかを決めるのは彼ら。
彼ら自身が想い、見て感じたことがすべて。
「言葉」による色相の描写。
「視覚」による世界の描写。
脳裏に浮かぶイメージの華麗さと鮮烈さにただひたすら陶酔し、読後は溜息が零れました。
文字通り闇と光の世界の物語。
誘われて本当によかった。
内容紹介
森の奥深く囚われた盲目の王女・レイア。父王からの優しく甘やかな愛と光に満ちた鳥籠の世界は、レイアが成長したある日終わりを迎える。そこで目にした驚愕の真実とは……。耽美と幻想に彩られた美しき謎解き!
「ひまわりの祝祭」藤原伊織(講談社文庫)
寂寞や感嘆の入り混じった何とも形容のしがたいこの読後感に、いつまでも浸っていたい。
そんな余韻を残してくれるハードボイルド。
登場人物たち会話がとても軽妙で酒脱。
そしてタイトルの妙。
昨日と同じ今日。今日と同じ明日。
変わらない時間のループの中に身を置いていた秋山の周囲がある夜をきっかけに騒がしくなる。
一枚の絵画を巡って多くの人間が水面下で画策し、
係わりを持つつもりのなかった秋山を巻き込んでの騒動となっていく。
その過程で詳らかになる人間模様。
英子の件に関してはやりきれない想いしかない。
秋山や原田の頭のキレ具合はかなり小気味よかった。
内容(「BOOK」データベースより)
自殺した妻は妊娠を隠していた。何年か経ち彼女にそっくりな女と出会った秋山だが、突然まわりが騒々しくなる。ヤクザ、闇の大物、昔の会社のスポンサー筋などの影がちらつく中、キーワードはゴッホの「ひまわり」だと気づくが…。名作『テロリストのパラソル』をしのぐ、ハードボイルド・ミステリーの傑作長編。