きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「ブルース」花村萬月(角川文庫)
【あまりに胸が、心が痛いので、気を失った】
あまりに純粋で狂おしい情愛と、苛烈なまでの暴力の連鎖。
法の外にはみ出した行為を是とする徳山の想いに同調するまい、と、
自分に言い聞かせるのだけれども。
報われることのない彼の想いに胸が軋む。
徳山の想いを認め、受け入れながらも、
対峙する道を選ばざるを得なかった村上の頑なで不器用な潔さ。
崔とサチオの犠牲の上に成り立つ安寧を良しとせず、
綾の元を去ることを選び、つかみかけた光に背を向けた。
誰も彼もが抱えていた大人になりきれない青臭さが、
自らも含む人々の運命を歪ませていったのだ。
描かれる物語は魂の慟哭。文字通りのブルース。
北方氏のあとがきが秀逸。
「たまらんぜ、萬月。なにが悲しくてこんな小説を書く」
私にはその言葉がもうたまりませんでした。
内容(「BOOK」データベースより)
南シナ海の烈風。眼下で砕ける三角波。激しい時化に呻く25万トンの巨大タンカーの中で、村上の友人、崔は死んだ。仕事中の事故とはいえ、崔を死に至らしめた原因は、日本刀を片手に彼らを監督する徳山の執拗ないたぶりにあった。徳山は同性愛者であった。そして村上を愛していた。村上と親しかった崔の死こそ徳山の嫉妬であり、彼独自の愛の形であった―。横浜・寿町を舞台に、錆び付いたギタリスト村上とエキセントリックな歌姫綾、そしてホモのヤクザ徳山が奏でる哀しい旋律。芥川賞作家が描く、濃密で過剰な物語。
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「愛煉の檻 柴乃太夫の初恋」犬飼のの(ホワイトハート)
相変わらずの設定の作り込みの上手さにため息。
職業軍人ミハイルと刀匠忍の五年越しの純愛。
天才刀匠と言われた忍の打った刀は鬼を生む。
それでも、刀を打ちたいと願う己の気持ちを封じ込めるために、
吉原に身を落とし、右腕を砕く忍。
そこに宿るのは、凄まじいまでの修羅。
明かされた秘密は鬼を生み出してしまったからくり。
それには底のない情念を突きつけられた。
愛していると。
変わらぬ想いを語るその胸の奥底で噛みしめられる、忍の悲壮な決意が哀しい。
ミハイルは彼の願いをかなえるために手を尽くすだろう。
秘められた思いに気付かぬまま。
続き、とっても気になります!
内容(「BOOK」データベースより)
愛欲と歓楽の都・奥吉原。この色街で身分を隠し、難攻不落の処女太夫として名を馳せる美貌の陰間・紫乃は、ある晩、銀髪の貴族軍人ミハイルと再会する。彼は五年前、紫乃が天才刀匠・太刀風忍と呼ばれていた頃に初めて恋に落ちた人だった。変わりはてた忍に、構わずミハイルは身請けを申し出るが、忍は誰にも言えない秘密を抱えていて…。再会が残酷な運命を呼び起こす、哀しくも妖しい、華麗なる遊郭綺譚!
「失恋ショコラティエ 9」水城せとな(フラワーコミックス)
自分の運命を左右する出逢い。
たとえそれがどれほど苦しいものだったとしても、
サエコと出逢えた爽太は幸せだったのだと思う。
彼女との出逢いが彼に天職を示し、多くの人との出逢いをもたらしたのだから。
旦那と対峙したサエコの立ち回りは見事。
流されずに爽太と戦ったえれなも見事。
割れたらごめんね、って果てしなく可愛い。
まつりちゃんのしたことは褒められることじゃないけど、幸せになってほしい。
オリヴィエは大変オトコマエでした。
爽太の涙にうるっとしたけど、きれいに着地した最終巻でした。
自分が「こうしたい!」って思ったことはとことんやりたい。
サエコの強さはそれを実行できちゃうことだと思う。
「○○だからできない」って言い訳を考える方が楽なこともあるからね。
みんな傷つきまくったお話だからこそ、このフィナーレで良かったわ。
「聖なる黒夜 下」柴田よしき(角川文庫)
【この男が堕ちたところまで自分も堕ちて、
闇の中で道を探す以外に、もうどうにもならない。】
時に殺してしまいたいほどの屈折した想いではあったかもしれない。
だが、確かに韮崎は練を愛していた。そして練もその想いに応えた。
冷たい線路の上に投げ出した練の命をひろいあげたのは、韮崎という闇だった。
その闇に練を追いやった原因の一端が自分で在ると悔やむのであれば、
共に闇に堕ちる覚悟がなければ、麻生に練の人生に口をはさむ資格はないだろう。
韮崎が殺されることがなければ、麻生は自らの犯した過ちに気付きもしなかったのだから。
綺麗事では誰も救えはしない。その言葉は響かない。
冤罪。
その言葉の投げかける意味は、とてつもなく重い。
練の問いかけに答える麻生。
それで何かが変わることはないだろう。
長い夜は明けることはない。多分この先もずっと。
けれども。
そこに差し込む一筋の光の存在を信じたい。
内容(「BOOK」データベースより)
聖なる日の夜、一体何が起こったのか。ひとつの事件を通して暴かれていく麻生龍太郎と山内練に秘められた壮絶な過去。さらに事件は新たな殺人事件を招き、人間の愛憎、傲慢、悲痛な魂の叫びを曝け出していく。二人はこの暗黒の絶望の淵で何を決断したのか。息をもつかせぬストーリー、幾重にも張られたミステリ、そして人間の罪と罰を描破した孤高の大長編!!下巻に本書サイド・ストーリー『ガラスの蝶々』を書籍初収録。
「聖なる黒夜 上」角川文庫(柴田よしき)
【俺はどっちだって構わないんだ。ただ、あんたの言葉を聞きたい。】
やり直す場所は、夜明けの線路の上。
穏やかに暮らしていたあのアパートではなく、
全てを終わりにすると決めた、冷たい暗闇の中。
自分をそこから引きずりあげた韮崎との出逢いは間違いだったのか。
静かな問いに震える声で答えた麻生は、己の傲慢を知る。
「感謝する」
絞り出すような言葉に嘘はない。
かつての麻生が練に放った、偽ったつもりのない言葉。
そこに練を気遣う心があったとしても、
その言葉が練の運命を残酷なまでに狂わせたことを、
知ってしまったからには彼は心に刻むべきだ。
幸せか?と問われれば、練はただうっすらと笑うだけだろう。
疲れ果てた魂が、愛おしくてたまらない。
初読は人待ちの名古屋空港で。
気付けば私、分厚いハードカバー抱えてラウンジで号泣していました。
殺人事件をきっかけに浮かび上がった練の人生が、やりきれなさすぎてたまらない。
内容(「BOOK」データベースより)
東日本連合会春日組大幹部の韮崎誠一が殺された。容疑をかけられたのは美しい男妾あがりの企業舎弟…それが十年ぶりに警視庁捜査一課・麻生龍太郎の前に現れた山内練の姿だった。あの気弱なインテリ青年はどこに消えたのか。殺人事件を追う麻生は、幾つもの過去に追いつめられ、暗い闇へと堕ちていく―ベストセラー「RIKO」シリーズから生まれた究極の魂の物語、ついに文庫化!上巻に本書サイド・ストーリー『歩道』を書籍初収録。
「機龍警察 未亡旅団」月村了衛(早川書房)
【殺した子供に倍する数の悪党を俺は殺した、
だから帳尻は合っている、悪いがそれで勘弁してくれ】
過去の積み重ねの上に現在がある。
語られる由紀谷の人生に心を動かされた者たちは、自らの過去に何を思ったのか。
慈愛に満ちた母が子を食らう鬼となった。
殺戮を止めるために、甘んじて受け入れた裏切り者の烙印。
救いたいと願った仲間から一生涯狙われ続ける命。
だが、彼女の決意は揺らがない。
由紀谷に綴った約束を果たしてほしいと、願ってやまない。
そして城木が背負うこととなった重い枷。
知らなければよかった真実。だが、直視しなければならない己の貌を映す鏡。
父の断罪が胸を抉る。
潰されないでほしい。救いようのない現実に。
感傷的なレビューになってしまいましたが……
事件を止めようと奔走する人たちを邪魔する「敵」に腹が立って
みんなの背負ったものが痛々しすぎて、やるせない読後感でした。
途中で止められなくて一気読み。
続き、気になる~~~><
内容(「BOOK」データベースより)
チェチェン紛争で家族を失った女だけのテロ組織『黒い未亡人』が日本に潜入した。公安部と合同で捜査に当たる特捜部は、未成年による自爆テロをも辞さぬ彼女達の戦法に翻弄される。一方、特捜部の城木理事官は実の兄・宗方亮太郎議員にある疑念を抱くが、それは政界と警察全体を揺るがす悪夢につながっていた―世界のエンタテインメントに新たな地平を拓く“至近未来”警察小説、衝撃と愛憎の第4弾。
「蚊トンボ白髭の冒険 下」藤原伊織(講談社文庫)
巻き込み、巻き込まれ、めまぐるしい騒乱のなかに投げ出された人々の人生が
劇的な変化を来した三日間の物語。
他の手段を講じる道も、もしかしたらあったかもしれない。
だが、達夫の選び得る選択肢は、これしかなかった。
結局、それを良しとしたことで、瀬川や黒木たちの人生も大きく変わっていく。
誰もが納得ずくで突き進んでいったところが、本当に心憎い。
白髭と達夫との会話が終始楽しかったのは、白髭の口調にもよるのかな?
ラスト、全力で地面を蹴ることができる高揚が見事に伝わってきた。
まさに、大冒険の物語。
冒険の終わりには、ただ平穏な眠りを。
内容(「BOOK」データベースより)
黒木は暴力団に巨額の損失を与え、追われる身だった。その行方を知るべく、彼らは卑劣な手段で達夫を脅迫した。そこに凶悪獰猛な赤目の男・カイバラが介入、達夫の恋人・真紀を誘拐する。そのとき皮肉にもシラヒゲの能力は尽きようとしていた。カイバラの挑発に単身敵地に乗り込む達夫。はたして真紀を無事救出できるのか。
「犬ほど素敵な商売はない」榎田尤利(シャイノベルズ)
【相手を縛るほどの強い愛。盲目的な独占欲】
溢れる愛は尽きることなく、飢えた空虚はその愛をどこまでも享受する。
さながら、磁石のSとNのように惹きあう二人の、あまりにも不器用な恋。
二人の抱えたどうしようもないほどの寂しさに胸が押しつぶされそうになり、
ユキオが雨に打たれるシーンでは何度読んでも泣いてしまう。
切なく痛ましい共依存。相手を想うが故の、擦れ違い。
ナナや高見。
二人の想いを繋いでくれる人たちがいてよかった。
裏切られたら自分が死ぬ、という轡田の底のない優しさに満ちた独占欲。
「飼い主と犬」として始まった関係が「恋人」という関係に変化していく様子に胸をなでおろす。
甘さたっぷりのカフェのシーンでの終わりに、幸せな気持ちになりました。
内容(「BOOK」データベースより)
悪い子だ。発情してしまったのか?自覚のあるろくでなし・三浦倖生は、うだるように暑い夏のある日、会員制のデートクラブ『Pet Lovers』から『犬』として、寡黙で美しい男・轡田の屋敷に派遣される。そこで倖生を待っていたのは厳格な主人・轡田の厳しい躾の日々だった。人でありながら犬扱いされることへの屈辱と羞恥。そして、身体の奥底に感じる正体不明の熱…。次第に深みにはまっていくふたりだったが!?究極のコンプレックス・ラブ。
ふし「蚊トンボ白髭の冒険 上」藤原伊織(講談社文庫)
奇妙な生き物との不思議な出逢い、そして、アパートの隣人を助けたことによって
達夫の日常が劇的な変化を遂げる。
大がかりなトラブルに巻き込まれ、僅か二日間の間に起きた、あまりにも濃密な出来事。
背負った過去の出来事から、生きていて楽しい必要なんかあるのかと呟いた達夫が貫いた、
痛々しいほど真摯な誠実さ。
黒木もどこか壊れているし、真紀の抱えた喪失も大きい。
仕事をする職人さんたちの描写がとても好き。
やくざ側の瀬川も、なんだか憎めない話の分かるおっさんかと思ったら……
不気味な敵は他にいました。
ドキドキしながら下巻へ。
内容(「BOOK」データベースより)
羽音と不思議な声がすべての始まりだった…。陸上競技への夢を断念し、水道職人となった若者・達夫の頭の中に、ある日奇妙な生物が侵入してくる。その名も蚊トンボ・シラヒゲ。超人的能力を得た達夫は、アパートの隣人・黒木を理不尽な暴力から救う。しかし、それは恐るべき闇社会との対決を意味していた。
「雪が降る」藤原伊織(講談社文庫)
六編の物語から成る短編集は、人生に傷を持った人々の物語。
個人的には過去と現在のやるせなさと理不尽さがオーバーラップする「台風」と
男女の会話がとてもスタイリッシュで男二人のやりとりが妙に艶っぽい「雪が降る」が好き。
「紅の樹」の堀江の生き様と赤に染まる樹の描写には息を呑んだ。
彼の紡ぎだす物語の読後感は本当にぶれない。
痛みを伴った心地よさにいつまでも浸っていたい。
運命を受け入れながらも、決して逃げてはいない人々の日々の物語。
少年や子供たちですら、毅然として生きている。
内容(「BOOK」データベースより)
母を殺したのは、志村さん、あなたですね。少年から届いた短いメールが男の封印された記憶をよみがえらせた。苦い青春の日々と灰色の現在が交錯するとき放たれた一瞬の光芒をとらえた表題作をはじめ、取りかえようのない過去を抱えて生きるほかない人生の真実をあざやかに浮かびあがらせた、珠玉の六篇。
