きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「かがみの孤城」辻村深月(ポプラ社)
とても良かったけど、とても残念。
10代の頃に読めたらなーと。
そうしたら、もっと身近に彼らの存在を感じられた気がする。
もっと彼らの傷に寄り添えた気がする。
それでも。
一学期より二学期、二学期より三学期と、
読み進めるほどに作品世界にのめり込んでの読了。
息をすることすら苦しくなるような現実世界で戦い続けることが難しければ。
あんなふうに逃げ込める場所に縋ったっていい。
その場所で約一年を過ごした彼らの成長に胸が熱くなる。
期限と条件付きの居場所だったからこその気づきと成長だったんだろうなぁ。
各々の約束と願いに切なくて嬉しい涙。
単行本を積んでる間に文庫が出て、映画化にもなって。
どんだけあっためたんだよ?と思いつつ読み始めたけど。
甥っ子ちゃんや弟・義妹たちと不登校について語り合った日に読めたのは
本に呼ばれたのかな?と。(どんな内容かは知らなかった)
そしてこの作品を読みながらせとなさんの『放課後保健室』が無性に読みたくなってみました。
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「君が夏を走らせる」瀬尾まい子 (新潮文庫)
ある日突然三歳児を私一人で預からなければならなかった時のことを思い出す。
子どもは私に慣れていたし、意志の疎通もできる年齢だったけど、
それでも子育て経験のない私はドキドキしっぱなしの一日だった。
大田くんが預かったのは面識のない二歳に満たない子ども。
私の困惑の比ではなかっただろうけど。
全力で鈴香と向き合った彼の奮闘ぶりと、
彼になついていった鈴香の様子を追いながら
暖かな気持ちがこみ上げる。
手作りの食事を食べさせようとするとか、ホントやさしい。
例えこの先会えなくても。
夏の思い出と小さな応援団の声を糧に、キラキラした未来を手にできるはず。
少し認知症気味だった祖母が、女学校時代の同窓会に出席するために
電車に乗って目的地へ。
仕事があって祖母を現地まで送り届けることができなかった母は、
電車まで送って行って、近くの席に座っていた金髪ロン毛の男の子に祖母を託したそうな。
「目的地で下ろしてあげてください」って。
(彼の目的地は祖母が降りる駅より先だった)
話を聞いた時、嘘でしょ!?とびっくりしたけど、
何と彼、祖母を最寄り駅で下ろすだけではなく、迎えの人が来てくれるまで
祖母と一緒にいてくれたそうな。
母に見る目があったのかな。
大田くんみたいな子、身近にいました(笑)
「本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身Ⅹ」」香月美夜
戦いの決着がつくと同時に、副題についても大納得。
なるほど~。
闇雲に前に突っ込んでいくだけでは、戦いには勝てない。
甘いことを言っていれば、足元を掬われる。
つくづくフェルディナンドは敵に回したくないけど、
現状の把握分析に加えて
戦後のことまでを考えて動ける人もそうそういないメンツの中で、
そこにいてくれる心強さ半端ない。
ここで洗濯機を持ってくるあたり、初回からの設定が全くぶれてなくて流石です。
毎回のことだけど、書き下ろしによる本編補完が痒いところに手が届く親切設定。
残り二冊。
戦後処理を彼らがどう展開していくのか。
とても楽しみ。
おまけまんがのぐるぐる巻きにされてピチピチしているハルトムートに爆笑。
知るべきことを知らない。
果たすべき責務を果たさない。
国を左右する立場にいる者がそれでは国は成り立たない。
そりゃあ、現場で戦ってる身としては怒り心頭に達するよね。
というわけで。
フェルディナンドには戦後処理で自分の望む未来を掴み取ってもらいたい。
「エゴイスト」高山真 (小学館文庫)
え?と、途中で呆然としたのは久々。
最後まで読み切って、いろいろ刺さりまくって、
こみ上げる感情の意味するところを反芻して涙。
愛の形に正解なんてない。
自分が幸せで、関わった人たちも幸せで。
そう感じられたのなら、そこには愛がある。
だから貴方は間違っていない。
人生は不平等で不公平。
「しょうがない」と呑み込むこともたくさんある。
それでも。
幸せを共有できる誰かに出会えたこと、
誰かに幸せを届けることができたことは誇っていい。
本編後のあとがきはサプライズでもあり、
とても素晴らしい内容でもありで、背筋が伸びました。
予備知識ゼロで読んで正解。
何かを想像していたわけではないけど、
手に取った時の自分が思っていた以上に良い作品だった。
映画を観に行く前に読んでよかったとは思ってる。
だけど、未読で映画を観た時の衝撃も味わってみたかった。(笑)
「イエスかノーか半分か読本 Color Bar」一穂ミチ
遊び心満載の、可愛いと面白いがギュギュっと詰まった一冊。
ひっさしぶりにイエスノーの世界に浸ったけど、問答無用で楽しかった!
計の自己紹介が裏表バージョンがあるのからして面白い。
思わず他の人も……と思ったけど、あるわけないよね(笑)
書き下ろし「レーザービーム」
クイズ番組で本気モードになる理由が二人ともカッコいいなー。
内心は大人げなさ全開でも、傍目的にはさらっと主導権を握ってるところもカッコいい。
「満ちる巣箱」
潮に隠し事のできない計がとても可愛い。
そして書下ろしのSSで大満足な読後。
仲良しがエンドレス。最高だね。
年賀状作成の合間に一息、と思ったら、
途中で止められるわけもなく、一気に読んでしまった(笑)
読み始めたら一気なんだから、いい加減、
せっかく新刊で買ってる本を積むのはやめよう、自分。
きっちり二年、寝かせてしまったわww
「たとえ業火に灼かれても」水壬楓子 (キャラ文庫)
14年ぶりの幼馴染との再会は、心に封じた過去を呼び起こす。
呼応するかのように痛ましい事件が起き、不穏な気配が忍び寄る。
彼等の心の傷の深さや、14年間背負ってきたものの重さに息苦しさを感じ、
それでもなお潰えることのなかった想いと抱えた諦念にやるせなさを感じ、
迫りくる脅威にハラハラし……と、終始ドキドキしながらの一気読み。
16歳の少年が抱えて生きるにはとてつもない大きな「秘密」。
お互いの「秘密」を察しつつも、決して口にすることのない二人の関係が尊い。
悪意が介在した再会だったとしても。
それを打ち消す絆の深さが二人にはあったのだと、生きていてくれてよかったと。
切に思った。
うわー、これ、途中で止められないよね。無理だよね。
だって続きがめっちゃ気になるもん!
……というわけで、読み始めたの休みの日で良かった~~!と、心底思いました。
「光のとこにいてね」一穂ミチ(文藝春秋)
偶然と必然を繰り返し、今に至るまで彼女たちは三度出会った。
共に過ごした時間はほんの僅かでも、この三度の出会いの間に
彼女たちは猛烈に惹かれ合い、とてつもなく大きなものを共有する。
それぞれが人生において大きな決断をするに至った三度目の出会い。
複雑な環境で多くの歪みを抱えても、どうにかここまで生きて来ることができたのは、
それぞれを支えてくれる人たちが傍にいたから。
互いの存在だけが生きる糧だったわけではない。
だから……このまま二人の人生が交わることなく過ぎるのが、個人的理想エンド。
これ以上密になったら二人だけで世界が完結してしまいそうだから。
チサさん、好きだなー。
傷だらけになっても、ちゃんと子供と向き合えている。
自分を大事にして幸せになってもらいたい。
素直に自分を見つめることのできた直くんにも幸せになってもらいたい。
水人にも瀬々にも藤野にも。
幸せになってもらいたい。
「あと少し、もう少し」瀬尾まいこ (新潮文庫)
同じ年代の仲間たちと一つのことに打ち込んで、
ひたむきに勝利をめざす。
長い人生の中で、そう何度も経験できることではないだろう。
六人で襷を繋ぐ駅伝大会に挑むことになった彼ら。
一筋縄ではいかなかった大会出場への道程。
一人一人の姿を丁寧に描くことによって、
彼らが心の内面に抱えた葛藤が浮かび上がってくる。
支えになったのは互いを思いやる気持ち。
限界を突破してもなお湧き上がる力の源は、仲間たちへの想い。
彼らを見守り続けた教師や家族の姿も心強く、
彼らと一緒に笑ったり涙ぐんだりしながら、ドキドキのラストスパート。
楽しかった。
あと少し、もう少し。
彼らの姿を見ていたかった。
そんな思いを引きずる読後。
ひたすら子どもたちが眩しかった。
「僕はここにいる」飯田雪子 (講談社X文庫ホワイトハート)
【再読】
姪っ子ちゃんのクリスマスプレゼントに笑える話と、胸に響く話と。
二つ選ぼうと思っての、じわっと響く系候補。
……と思ったら絶版。
え~~。素敵な作品なんですけどー。
哀しみは誰の元にも訪れるもの。
と同時に、誰もが乗り越えていかなければいけないもの。
哀しくて、苦しくて、どうしようもない時に、そっと手をさしのべてくれた彼。
寄り添ってくれた彼のやさしさとあたたかさに身をゆだねてしまいたくなるけれども。
その手を放すことを迷わず選んだ涼香に、切なさと安堵で泣き笑い。
うん。
大丈夫。
貴女の笑顔は周囲も笑顔にする。きっと。
ちなみに。
じゃ、こっちは!?と思って調べた本も絶版だった。
う~~、なんかいろいろ残念だなぁ。