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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「炎の影」香納諒一 (ハルキ文庫)



「憎んでいた」
そんな言葉から始まる物語。
彼の人生を一変させたきっかけは父の死だった。
そのことで何を思ったとしても、死者と語ることはできない。
いまさらに過ぎるのだ。
だが、そのきっかけがなければ、公平は父の本当の気持ちを知ることも、母の元に戻ることも、
人生をやり直すこともできなかっただろう。
真実を手繰ろうと、濃密な時間を駆け抜けた公平に手を貸した人々にも、
歩んできた人生がある。
ハイスピードな展開の中でも
彼らの人生が交錯し、より密接に絡み合い、或は離れていく様が見事に描かれていて、
作品世界に没頭してしまった。

ラスト近くの母親とのシーンが好き。
いくら離れていても、親は親なんだな、と思える瞬間。
そこで笑う人はあんまりいない気がするけど、
流れが妙にリアルで微笑ましくて、私は笑ってしまった。
手を汚す人、命を落とす人が意外と都合よく(?)振り分けられた感じがするのは……
容赦なくガツガツやられる作品を読みすぎたせいだわね。

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「僕らがもう大人だとしても 毎日晴天!7」菅野彰 (キャラ文庫)



大人だって惑う生き物だ。
安易に吐き出せない分、子どもの惑いより深いかもしれない。
前巻では勇太が惑い、その惑いが秀の惑いを誘ってしまう。
発せられる言葉は、時に人を傷つける鋭利な刃となる。
相手を思いやって呑み込んだ言葉も、
発せられないことによって思いやったはずの相手を傷つけることもある。
言ってもらえないことが自分に足りないものがあるからだと、
思い悩む秀の苦悩がとても辛い。
だからこそ、勇太が秀にその胸の内をぶつけた瞬間の歓喜と安堵は計り知れない。
秀の子育ては間違っていなかったと。
自信に思っていいんだよ。
おかえり、秀。→

秀の抱えた孤独に胸が軋んで軋んで……辛かったわ。
必死に事実を隠そうとしてきた勇太が、すべてを大河に話した瞬間がとてつもなく嬉しかった。
なんかもう、色々感情揺さぶられて大変だった何度目かの再読。

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「月山・鳥海山」森敦 (文春文庫)



「あたしね、自殺をするなら月山で死ぬの」
この作品を読んだ知人の感想である。
その言葉に先入観があったことは否めない。
雪に閉ざされた極寒の世界。
真っ白な深い雪に抱かれ、音のない山中で永遠の眠りにつく……という話ではなく。
死の象徴と言われる月山で雪に埋もれて寒さを耐え忍び、
花の芽吹く春を待つ人々から私が感じたのは、環境に準じて逞しく生きる生命力。
色のない世界で生きる人々の姿が妙に生々しい。
月山、湯殿山、鳥海山。
自分の辿った情景を振り返りつつ読めることが嬉しい。
綴られる日常で発せられる土着の言葉が心地よく響く。

「繭の中で天の夢を見る」
蚕を例えた言葉だけど、この表現がとても好き。
蚕は夢見てる間に茹でられちゃうんだけどね。←おい。
今年は湯殿山と羽黒山を訪れ、来年は月山に行こう、と話していたタイミングだったこともあり、
登録1400冊は読みなれない芥川賞作品で攻めて(?)みました。





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「子供たちの長い夜 毎日晴天!6」菅野彰 (キャラ文庫)



自分自身ですら過去の想いだと思っていた初恋を、無自覚に引きずっていた達也。
隅田川に叩き込まれて本当の意味で初恋に終止符を打ち、笑顔の結末かと思いきや。
勇太と真弓が乗り越えなければならなかったものに抉られまくって、笑顔どころじゃなくなってしまう。
育った環境が違えば、考え方も価値観も違ってくる。
だけど、もっと根本的な部分で勇太が囚われてしまったものが辛い。
悪い方へ自分を追い込んで、悪い影響しか与えないと思い込んで。
思いつめた勇太が断ち切ろうとした絆を繋ぎとめた真弓。
彼の声が届いて本当によかった。

基本的には去る者は追わない人ですが。
一度だけ、そんな理由で離れていくなんてどうしても納得がいかなくて、
ガチンコでぶつかって繋ぎとめたことがあります。
根底に好きがあるのにどういうことなの?と。
で、原因を作ったのが自分だって自覚があるから余計にただ手を離すことはできなかった。
何もしなかったら絶対に後悔する。
やるだけやったら、ま、仕方ないって思える。
うん。
あの時の私、頑張ったなぁ。







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「逆説の日本史(11)戦国乱世編 朝鮮出兵と秀吉の謎 」井沢元彦(小学館文庫)



ほぼ秀吉の巻。
好き嫌いは別として、秀吉の業績はすごかったんだな、と認識する。
信長もそうだけど、色々なことが整っていない時代に何かを成し遂げようとする人の10年は、
ものすごく濃密でやりがいがあったと思う。
それだけ犠牲も大きかったけど。
歴史を解釈するにあたって、個々の専門分野に特化せず「流れ」で歴史を見る必要がある、
という論旨には納得。
信長→秀吉→家康と移行していったこの時代は、
三人をワンセットで捉えないと見えてこないものがある。
そして、日本史を語る上で大きな分岐であった時代であることを改めて実感する。→



高松城は水攻め!これ知ってる!と上がるテンション。←戦国鍋知識。
スポーツでよくお目にかかる「天王山」という言葉。
この言葉の語源は初めて知りました。すごーい。
「唐入り(朝鮮出兵)」までの前置きがものすごく長かったけど、
現代まで通じる遺恨について考えさせられる。
■行った場所:善光寺・浅草寺■行きたい場所:有馬温泉・高野山・石見銀山

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「華胥の幽夢  十二国記 7」小野不由美 (新潮文庫)



短編5編。
親しんだ彼らの過去だったり、その先の姿だったりを
垣間見られることが嬉しい。
幼いながらも自分の存在意義を模索し、
可愛らしい答えを見出した泰麒のいとけなさに癒されて、
弱みを見せずとも相手の立場を察した陽子と楽俊の交流に微笑ましい気持になる。
「芳」と「才」
この二つの国を描いた短編の濃密さは“凄い”の一言に尽きる。
国を治める事、正しく王で在る事、自らが起こした行為の責任を取る事、
それらの重さが突きつけられる。
そして、それぞれの国を巡って内情を目にしてきた利広と風漢の目線で語られる国の在り様を
しっかりと胸に抱いて新刊を待つ。

予習的な意味合いを含めた復習……という名目でのシリーズ再読完了。
面白かった!
そして新刊を手にする前に改めて読めてよかった。

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「HOME―A PLACE IN THE SUN」かわいゆみこ (キララノベルスセレクション)



過去の辛い恋愛体験から、
恋をすることに臆病になってしまっていた桂木。
だけど、八神に惹かれる気持ちは止められない。
恋を自覚した瞬間に感じるのが苦い痛みばっかりなのは辛いなぁ。
恋愛をすること=ボロボロになるまで傷つくこと。
そんな桂木をふわりと包み込むように愛していく八神の懐の広さとあたたかさが素敵。
だけど、彼なりの悩みや苦悩があるところがまた素敵。
鍵になるワードの使い方が効果的過ぎて、この二人の関係に運命を感じてしまった。
堅実に歩み寄っていく二人の距離感がいい。
しっとりと読ませる大人の恋愛。
その中で菅原の存在がとても健康的。



初期のころのかわいさんの醸し出す雰囲気がとても好き。
まぁ、初期に限らず好き作品は好きなんですけどね(笑)
桂木の兄貴分的な菅原が暑苦しくなく、押し付けがましくなく、
とてもいい人だった。
榛原もいい人だね。




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「ボートの三人男」ジェローム (中公文庫)



ボートに乗り込むまでがあまりにもモタモタしていたので、
ボートの旅自体が妄想で終わるのではないかと、一瞬危惧してしまった。
時間とお金に余裕のある男三人+犬一匹が
テムズ川をボートで漕ぎ出す旅へ。
ゆらゆらと移ろう川の流れのように、
彼らの物語も川辺の現風景や彼らの過去、イギリスの過去等々、
とりとめもなく移ろっていく。
それぞれに面白みがあっても、彼らの旅のリアルタイム中継が個人的には一番楽しかった。
彼らの楽しい旅の終わりは衝撃的。
いいの!それで!?
ゆとりのある人は違うわね。
そして鱒の始末はどうした!?気になる~!

爽やかな季節の屋外で。
出来れば水辺で読むのにふさわしい本。
かもしれない。(笑)
荷物を身軽にするには必要な物を持っていくのではなく、なくては困る物を持っていく。
その通り!
デジカメ購入を考えているの中ですが二択で50gの重さの違いに唸っています。
デジカメだけで個々に比べれば重さの違いがわかるけど、
バッグに放り込んだら絶対気にならない範疇のはず!
【ガーディアン必読 86/1000】

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「闇に哭く光 Undercover Cop 下」 (アクアコミックス)



噛み砕きながら読み進め、
自らに銃を向けあうシーンでは言葉が刺さって泣けてしまった。
唐橋の強さは自分の原動力が復習で在ることを知っていること。
だけど、その手段を法に委ねられる判断力があったこと。
マリヤはただ幸せになりたかっただけ。
今の幸せがどんな世界の上に築かれたものなのか。
考え始めた時点で彼の世界は変わる。
青砥の心の中にあったのは虚無なのかな?
マリヤと在り続けることが彼にとっての幸せだったのだろうか?
青砥、ミステリアス。
呪縛から解放された唐橋とマリヤ。
「生きて」
そして、愛を増やし続けて欲しい。

憂慮してること。
憤っていること。
心配していること。
色々あるんだろうなぁ、というのは私の忖度。
とりあえず、考えることは放棄しちゃいけない。
自分の国。
自分の未来。
自分の幸せ。

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「欺す衆生」月村了衛(新潮社)



実際に起きた詐欺事件をモチーフに展開されていく物語。
そして私が真実だと思っていたことがそうじゃない可能性があることを提起されてしまった。
踏み出す方向を誤ってしまったばかりに
深い闇に絡め取られていった隠岐。
巻き込まれたような言い方をしているけど、
わかっていて最初の一歩を踏み出した彼はどう言い繕ったって犯罪者だ。
同性だからということを割り引いても、聡美の存在は気持ち悪い。
隠岐と係わり、多くの人が身を持ち崩し、死んでいった。
「因果応報」
という言葉しか浮かばない読後。
だけど、罰せられることなく闊歩している者が間違いなくいるであろう現実を思うと
すごく嫌な感じの寒気がする。


煙草は吸わなければ味が分からない。
薬は手を出さなければ依存することはない。
詐欺だってそう。
濡れ手に粟の状態でお金が入ってくることに味を占めてしまったら?
いやいや。
世の中、欺す人ばっかりじゃないよ!と思いつつ、
メンタル弱ってる時に読んだら、どよーんとしたまましばらく浮上できなかった気がする。
ヤクザ者を魅力的に描くのは相変わらずうまいなー。
とりあえずほのぼのしい本を読んで癒されよう。

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