きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「アンティミテ」一穂ミチ (ディアプラス文庫)
ギャラリスト自らが見出したまだ画家ですらない画家を、
現代社会の実情に即した形で育てていく物語。
自力で道を切り開いていくことのできる芸術家も世の中にはいるだろうけど。
群のように生活に追われて描くことがままならない人もいるだろう。
それでも、郡は描きつづけた。
少ない時間の合間を縫って、100均の画材で。
絵を描くことが本当に好きなのだという気持ちが伝わってくる。
最初は絵に。
そして群自身に。
惹かれていく和楽の迷いと揺らぎ。
異国の地へと飛び出した群との再会はドラマティックで運命的。
増え続ける習作の存在を思って、微笑ましく読了。
美術展に絵画を見に行くたびに、知識不足を痛感……
するんだけど。
無理に知識を詰め込む必要もないかな?とも思ってる。
どうしても気になったことはその場で調べつつ、
あとは好きか嫌いか。惹かれるか惹かれないか。
主観上等。
……と打ち込んでいたら、私、大学の講義の一つに
「西洋美術史」を選択していたことを思い出しました。
何やったかちっとも覚えてない!←ダメじゃんww
あ、フレッシュ症候群だ!
PR
「ひつじの鍵」一穂ミチ (ディアプラス文庫)
家族に見せる顔。恋人に見せる顔。友だちに見せる顔。仕事で見せる顔。
程度の差はあっても、皆、それぞれに違う。
一色のオンとオフの切り分けのギャップは相当で、それがかなりの魅力だったけど、
更にに凄いのは仕事に対するプロ意識。
そんな一色のオフの顔を偶然目にした羊は
急激に彼に惹かれていく。
羊は気持ちを「分ける」というよりは「押し隠して」過ごしている未成年。
身近にいる人には見せることのできなかった本音を一色に晒すことによって
深まる関係性。
年の差があったからこそ成就した恋愛だと思う。
軽妙な会話のテンポと着眼点が面白くてぐいぐい引っ張られた。
本来は「洋」であった筈の名前が「羊」になってしまったように。
友だちも自分がそうだとずっと思って名乗ってきた名前が、
実は出生届と違っていることがン十年生きてきて発覚。
「(そうだと思って使ってきた名前に)改名してきたわ!」と憤慨していたことを思い出しました(笑)
「暴虎の牙」柚月裕子(角川書房)
まさかの面子に再び出逢えた喜び。
そして孤狼の血が確実に受け継がれていたことを目の当たりにすることができた喜び。
昭和から平成への場面転換には相当痺れる。
堅気には手を出さない。
相手にするのは薄汚い極道のみ。
イケイケな虎が牙を持っていたのは「あの時」まで。
狂った虎の末路は知れていた。
掴み取れた光はあったはずなのに。
愚連隊の成れの果ては愚か者。
大神のパナマ帽。
日岡の手にあるジッポ。
一作目から馴染んだひとたちがそこに或は記憶の中に息づいている。
感じ取れる時間の流れは三作品を読み切ったからこそ感慨。
次のお楽しみは映画続編!
パナマ帽と言えば中森明菜の『サザンウィンド』。
何故か違和感なく脳内再生。
リリースされたのは1984年。
あ、時代が一緒!
仇討に飛び出そうとした沖に研いだ出刃を渡す素人のおばあちゃんが
今回の私のびっくり大賞。
そして個人的に大好きな一之瀬の元気な姿が見れたのが嬉しかった。
バードドッグ (講談社文庫)
元ヤクザ。現探偵。
座っているだけでヤクザよりヤクザらしい風防の探偵矢能は、
気に入らない仕事は受けないし、電話は即座に叩き斬る。
そんな男が小学生の養女・栞の視線に抗えず、仕事を引き受けてしまう羽目に。
動き出せば有能な探偵ぶりを発揮するから驚きだ。
物騒な事件を追いつつも、
テンポよく繰り返されるやくざ者たちとの会話と絶妙な突っ込みに思わず笑ってしまう。
だが。
紐解かれた事件の真相は、やりきれないものだった。
そんな想いを吹き飛ばした矢能の見事な幕引き。
そして栞ちゃんの想いにホロリとさせられるラスト。
文句なしで面白かった。
塞いだ気分を吹き飛ばすのに相応しい作品だったわ。
次作『ドッグレース』の文庫化を待つ!
とっても待つ!←日本語……
「頭文字D・1」しげの秀一 (ヤングマガジンコミックス)
どハマリしたのは20年くらい前。
イニD関連でサイト作って、いろんなイベントに参加して、
今でも各地から集まって一緒に飲んでいる友だちができて。
色々やり尽くして落ち着いて読めるかと思ったんだけど。
改めて読んでみたら心臓跳ね上がりました。
涼兄ィと啓ちゃんの並び立つ姿に。
半端なくカッコいい!
ロータリーサウンドのエンジン音が耳に、というよりも、胸に響いて蘇るわ。
深夜のタイムアタック。
噂でしかなかったハチロクが、待ち受ける彼らの前に姿を現す。
ドライバーの動機は車の一日レンタルとガソリン満タン。
役者がそろったところで次巻へ。
懐かしいなー。
読友さんの感想に触発されて
大好きだったなーと思って手に取ったけど、今でも大好きでした(笑)
さすが「私を構成する5つのマンガ」の一角。
続きはまたの機会に。
「朧小路の恋の花」かわい有美子 (Holly NOVELS)
京都の花街を舞台にした恋の物語。
しっとりと読ませる作品。とても良かった。
昔堅気な職人気質の板前・吉澤と、人あしらいに長けたカフェバー店長の光希。
偶然の再会から互いの日常に根付いた仕事の部分を介して近づいていく距離感。
思惑のある光希と意図不明な吉澤の逢瀬の積み重ねを追っていくことがとても楽しかった。
関係が拗れかけた時に吉澤の見せた強引さがカッコよくて、
安心して甘えることのできる彼の男前っぷりにときめいていたわけですが。
ラスト、気まぐれな猫のようだった光希のデレた可愛らしさに射抜かれて、
その後の吉澤の行為にさらに悶絶して読了。
もう少し読みつづけていたかった。
甘くてくすぐったい感じの読後感を反芻してなんだか幸せ気分。
宮城さんのイラスト、特に表紙と口絵のカラーが秀逸。
そして、ホット・バタード・ラムを呑む前に冬が終わってしまったことに気付いてみました。
来年こそ!←そもそも、どこに行ったら呑めるのかがわかっていない(笑)
「あどけない熱」久我有加(ディアプラス文庫)
聖の想いは純粋でまっすぐで歪みがない。
けれども。
14歳という年齢では、どうしたらいいのかがわかってはいても、
それを実行に移すだけの手段がないのが歯がゆい。
諦観を抱えて逃げ続けたカイネが初めて示した抵抗。
結果、呪縛からは逃れられたけど、その後彼らの歩んだ道はやさしいものではなかった。
それでも。
果たされた約束に安堵する。
細やかに描かれる心理描写で、互いが互いを想い続けた10年の時が知れる。
再会してからも本当の意味で寄り添うために必要だった時間が切ないながらも尊い。
どんな話?と聞かれたら、綺麗な話!と答えたくなるような作品。
親の意向で良い大学を目指して、それを子どもが苦痛に思っている場合。
良い大学に入ることだけが子どもの幸せじゃないんだよー、
と、真に子どもの幸せを願っている親になら伝えたいけれども、
彼らのように自分のことや体裁しか考えていない親には
何を言っても無駄なのかな?という気持になる。
聖の両親はどうよ?って言いたくなる人たちだったけど、
祖父が味方になってくれてよかった。
「ベルリン飛行指令」佐々木譲 (新潮文庫)
目指すは一路、ベルリンへ。
この美しい機体を届けるために。
彼らは何故、その極秘の任務を諾としたのか。
その理由に胸が震える。
付随する数多くの困難が示されるからこそ、
任務を全うすべく選ばれた軍人らしからぬ男たちの存在に期待値が高まる。
と同時に、それが困難であるからこその不安に苛まれる。
地上で根回しをした人たちの尽力にも胸が熱くなる。
と同時に、理不尽に憤りが募る。
彼らが飛び立った時の高揚感は、読後に寂寞感に塗り替えられ、胸が疼く。
読了後に第一部に立ち返り、
硬い表情の男の心情を思って涙。
余韻に浸った後、『エトロフ急発進』へ。
「軍人である前に飛行機乗りなのです」
彼はそう言ったけれども。
戦時下において、軍人であったからこそ、乗ることができた飛行機。
飛ぶことに対する純粋な想いが伝わってくるだけに、
時代がやるせない。
「GIANTKILLING 54」ツジトモ(モーニング KC)
卓越した技術を持った孤高の存在であった花森が、
代表チームの頂きたるに相応しい牽引力を見せる。
ハーフタイムで花森の口から出たまさかの言葉。
ブランのチームに召集された彼の成長に胸が熱くなる。
共に戦う仲間たちに響かないわけないよね。
試合は膠着したまま後半へ。
オーストラリアもチーム内に抱えた問題を
この試合で修正していくことになるんだろうね。
それにしても、今回も決着つかないのか。
そろそろ国内リーグの試合が見たいよ~、と、気落ちしかけたところで
ラスト、爆笑して読了。(多分笑う所ではない)
何この愉快な期待感。
レビューをあげ始めたのは29巻から。
そっか。
国内試合が見たければ、最初から読み返せばいいんだ!
ということに、今更ながらに気付いてみた。
「水の中の犬」木内一裕 (講談社文庫)
ヤバイ。渋くて熱くてカッコイイ。
そして、どこか哀しい。
その街には、泥の中を這いずり回っているような探偵がいた。
持ち込まれた依頼の調査で鼻が潰れ、アバラを折っても、
真相を探ることを、或は、途中で巻き込まれた事案を
どうにかすることを諦めない。
依頼人の抱えた困難に潜む果てのない闇。
理不尽に襲いかかる暴力。
そして一人、また一人。
彼の手によって命を失った者がいる。
けれども。
その手によって救われた者もいる。
探偵矢能の誕生秘話と情報屋の借金にムネアツ。
だから彼らは忘れない。
名もなき探偵を。
木内一裕。
他の作品も追いかけてみようと思います。
少しずつ揃えていくのも楽しみですね~☆
『ドッグレース』はそろそろ文庫化にならないかな?
読書の楽しみが増えました♪