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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「丕緒の鳥 十二国記 5」小野不由美 (新潮文庫)



人々の暮らしぶりを描いた短編4編。
『丕緒の鳥』
その美しさに息を呑む。
繊細で、だけど脆弱さなど欠片もなく、硬質で澄み切った音を奏でる鳥の音の描写の美しさに。
『落照の獄』
感情で物事をとらえる自分には、弁護士も裁判官も向かないとつくづく思う。
『青条の蘭』
荒廃しきった土地で、民のためではなく、私欲のために躍起になる官吏たち。
その中にあって標仲が民のため、国のために命がけで運んだ筺。
彼が倒れた後は、人の手から手へ。
それが何なのか分からわぬ人々の、ただ善意によって繋がれていくリレー。
その想いに涙が出る。
他一編。

生活をしていくということがどういうことなのか。
色々と突きつけられる。
理不尽に晒されて命を落とすのはやるせない。
戦う力を身につけたいと思うけれども……どうやって?
せめて頼まれたバトンを次の誰かに渡せるようでありたい。

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「初恋をやりなおすにあたって」尾上与一 (キャラ文庫)



そこは、雪が自らの意志で選んだ場所であり、
一切の退路を断った唯一の場所でもある。
その道を進みつづけることのできる才能と努力を持ち合わせたことが、
彼の命を繋いだ、と言っても過言ではないだろう。
一方で自らの在り方に疑問を持ち、職を変えた敦也。
「逃げた」という表現を使っていたけど、葛藤の質から行けば、私はそれを「模索」だと思う。
だから戻ることを許された。かつて背を向けたその道に。
二人の出逢いは小学生の時。
それから十三年後の今に至るまでの彼らの想いが、丁寧に綴られている。
己の選んだ道を邁進し、共に在り続ける10年後の彼らの姿を思い描きつつの読了。



久々の尾上さん。
骨組みがしっかりとしている作品で読みごたえあり。
個人的にはなんでも屋さんが大好きなので、敦也はそのまま今の職に留まってくれても良かったんだけど、彼の選んだ道はそこじゃない。
小学生のころからお夕飯づくりの手伝いをしていたから、料理は自然と覚えたなぁ。
おかげで料理で苦労をすることがなかったから、感謝。
そして、今の方が料理を作る頻度が落ちてるという大問題が(笑)

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「図南の翼 十二国記 6」小野不由美 (新潮文庫)



何度読んでも好きなシーン・好きな台詞は同じで、
同じところを反芻してしまう。
僅か十二歳の少女が憂いた国の行く末。
困難を承知で昇山することを国民の義務だと言い切った珠晶。
現状を打破しようと思うのなら、
まずは行動を起こすこと。
でなければ何も変えられない。
正論なんだけどね。
なかなかに難しい。
それを身をもって示した彼女だからこそ、王たる器がある。
最後に本心を爆発させた珠晶。
彼女の想いはここに至るまで誰もわからなかった。
だからこそ、彼女の言葉が胸に刺さる。
何度読んでも色々考えさせられて、気づかされることがたくさん。

ここで明らかになる奏の国政の在り方がちょっと意外。
でも、そういうのはありだなーと、とっても納得。
「国民」という言葉がものすごい重い意味を持ってのしかかってきたのは、
最近の世情の影響があるのかな?と思わなくもない。
かつて妖魔に名前をもらった彼が、今度は騎獣に名前をあげる。
とても嬉しい巡り合わせ。

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「秘書と野獣」水壬楓子 (ガッシュ文庫)



その根拠も証明できるものも何もないことを思い悩んで
推測で振り回されるのは正直、時間の無駄。
だけど、吉鹿はそれが「事実」だと思い込んでしまったから仕方がない。
そして吉鹿が思い違いをしていることを知っていて黙っていた蒼衣は
正直、気に入らない。
遊びだと割り切っての駆け引きや言葉遊びは大歓迎だけど、
一方的に振り回されるのはヤだわ~。
とは言え、その後蒼衣が振り回されてたから無問題。(笑)
欲しいモノは欲しい。
好きなら好き。
言葉にしないと伝わらないことは往々にしてある。
相手の立場を慮ることも大事だけど、それ以上に大事なこともあるんだよー。

『晴れ男の憂鬱 雨男の悦楽』→『ストレイ・リング』→『秘書と野獣』
個人的には『ストレイ・リング』の右城と藤近の関係がとても好き。
今作で藤近が吉鹿に右城のことをのろけてるシーンがとても好き。
彼らの立場では恋人のことを誰かに話すことってなかなかできないだろうからね。
それにしてもこの人たち。
職場に恋愛事情引きずりすぎ(笑)。

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「東の海神 西の滄海 十二国記 3」小野不由美 (新潮文庫)



中味の伴わない上っ面だけの言葉の気持ち悪いこと。
ましてや、意に沿わない者を弑する者に、正義などない。
ということが、当の本人にはわからない。
いるよね。
自分のことを正当化することに長けてる人って。
一方で、自分の成すべきことをじっくりと見据え、機を伺っていた尚隆。
全ての責を背負い、雁を豊かな国へと導くと口にする彼の言葉は、
実を伴っているから重く響く。
荒れ果てた国の復興を担う王と六太、そして家臣たちのやりとりが好きすぎる。
遠慮なく物が言い合える間柄は理想的。
500年かけて雁がどんな国になっていくのか、既に知っていることの幸せ。

自分の生死を運命に委ねる。
北方的思考だわ~、と、ここでも北方脳な私(笑)



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「逆説の日本史10 戦国覇王編」井沢元彦(小学館文庫)



電光石火。もしくは疾風怒濤。
50年に満たない生涯を、これほど鮮烈に駆け抜けた人物は、そうはいないだろう。
丸ごと織田信長の巻。
と同時に、歴史上に名を連ねる人々は、(良くも悪くも)それに値する功績(もしくは罪過)をしっかりと残している、ということを、改めて実感する巻でもある。
それにしても織田信長である。
実行力・決断力・そして発想力。
どれもに突出していたことは自明だが、それにしたって
あの時代によくもあれだけの見聞を広め、あれだけのことを成し遂げたと、ただ感嘆するしかない。
自分、なまぬるく生きてるなーと、何故か反省(笑)



井沢氏の溢れんばかりの信長愛に微笑ましい気持になる。
自分の好きな人物を調べつくし、こうして執筆できることの悦び(?)が伝わってくる気がする。
そしてあっちこっちで脳内を駆け巡る「戦国鍋」と『炎のミラージュ』から得た知識の数々(笑)。
これは私の日本史の礎。
人力で火を消すことがどれほど大変かは『羽州ぼろ鳶組』シリーズで学んだ。
焼き討ち、怖い……
いや、だからこその焼き討ちなのか。
■行った場所:日光東照宮
■行きたい場所:熱田神宮・岐阜城・大阪城(城ホールはたくさん通ったのにお城には行ってない)安土城址・安土城天主信長の館





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「風の万里 黎明の空 (下) 十二国記 4」小野不由美 (新潮文庫)



嘆き、妬み、惑うことを止め、彼女たちは一歩を踏み出す。
出会うべくして出会った三人の少女たち。
彼女たちの行く先に、この酷い現状をどうにかしようとする人々がいたこともまた、運命。
「生まれてきてよかった」
そう言えるようになるにはまず、国の在り様を変えるところから始めなければならないとは。
大変だ……。
麒麟がいて、王がいて。
だけど、それだけでは国は安泰しない。
そういうところをリアルに突きつけてくるから色々考えさせられるし、引き込まれる。
信頼できる者たちに出逢えた陽子が、この先、慶をどんな国に作り上げていくのか。
とても楽しみ。

「善い国ってのはなんだろう?」
普遍的な答えってありそうでなさそう。
それは多分、時代によって移ろいゆくもの。
それでいい。
大事なのは、考えること。


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「風の万里 黎明の空 (上) 十二国記 4」小野不由美 (新潮文庫)



三人の少女たちの自己探求の物語。
自分を憐れむばかりの鈴。
他人を妬むばかりの祥瓊。
二人が自分を顧みて現実を認識し、己の考えを改めていくまでに
様々な人たちからかけられる言葉に、一緒になって抉られて、私も己を顧みて反省。
自分を可哀そうだと思ったことはないけど、
大変なのは自分だけじゃない、ということは忘れないようにしよう。
文句を言う資格があるのはやるべきことをやった者だ。
責任の重さを自覚するものの、なすべきことが定まらず、民の暮らしを知るべく市井の中に入っていく陽子。彼女の肝の座り方がとても好き。
泣きながら読了の上巻。
下巻は再読でもわくわくする。

「雁のまわりに落ちついている国がない」という言葉が
気になって仕方がない何度目かの再読。
本筋とは全く関係ないんだけど、「滅びの王」のワードもあることだし、
私が延王大好きだから気になっちゃうのね。
言ってることがまったくぶれていない珠晶も好き。
そう思えるのは『図南の翼』を読んでいるから。
世界観の作り込み方が半端ないことに改めて感嘆。
何度読んでも面白いモノは面白い。

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「月の影 影の海 (下) 十二国記 1」小野不由美 (新潮文庫)



度重なる裏切りと、悪意ある囁き。
もう、誰も信じない。
誰にも心を許さない。
と、頑なだった陽子の心が、楽俊との交流でほどけていく様があたたかくて好き。
楽俊の優しさに泣きそうになる。
決して恵まれた環境で育ったわけではないけれども、
その中に幸いと自分の生きる道を見つけていた楽俊。
彼の考え方は見習いたい。
己を顧みて反省する潔さを持ち、決して心折れることなく
「強くなりたい」と口にできる陽子はとてもカッコイイ。
慶王としての責任を背負った陽子は、
本当に何も知らない・持たない所からのゼロスタートだったのだと改めて思う。
前途多難な、だけどとてもわくわくする物語の始まり。

ふかふかの楽俊が目の前にいたら、たとえ慎みがないと言われようとも、私も抱きつきたい。
延王と延麒は好きすぎて、そこにいてくれるだけで嬉しい。
今回は慶国を追いかけて再読。
というわけで、次は『風の万里 黎明の空』。


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「月の影 影の海 (上) 十二国記 1」小野不由美 (新潮文庫)



『風の海 迷宮の岸』を先に読んでいたせいもあって、
景麒の説明不足と無愛想さに失笑。
泰麒との逢瀬から何を学んだ?
とはいえ、慶という国の現状を考えれば、
景麒にも余裕がないのはわかる。
そして、彼は泰麒の次に若い麒麟。
そう考えれば、彼もまだ、成長途中なのかも。
現代社会で高校生として生きてきた陽子。
そんな彼女が突然連れてこられた世界。
ああ、ここから彼女の物語は始まったのだと。
なんだか感慨深い。
異世界でたった一人、闇と妖魔と対峙しながら生きねばならぬ彼女の孤独と恐怖、
故の荒みきった心が酷く痛々しい。
諦めないで。光は必ずあるから。

困った人に手を差し伸べるのが人なら、
その困った人を更に窮地に陥れるのも人。
騙したり裏切ったり。やだなー。
騙した人は騙される。
手を差し伸べた人には救いの手が伸べられる。
せめて、そんな因果を期待したい。



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