きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「SF作家は担当編集者の夢を見るか 毎日晴天!17」菅野彰(キャラ文庫)
閉じこもっていたとても小さな世界の中から、
ようやく周囲に広がる「世間」の存在に気付いた秀。
一人で生きてきた彼が、大河と出会い、勇太と出会い、
今は決して一人ではないのだと気付けたことが尊い。
1巻から17巻までを一気に読んで、
まさかここで一番最初に投げかけられたことに対する答えを見出す秀に出会えるとは思っていなくて感無量。
大河と秀にとってはここのタイミングで公私を分けることがプラスに作用したんだね。
めでたく成人式を迎えた子どもたちには、頼もしさしかない。
この先何があろうとも、ここで培った絆はきっと壊れない。
1巻を手にしてから20年。
再読の醍醐味を味わった気がする。
この巻の表紙がとても好き。
当然ながら中の挿絵もとても良かったんだけど、一番最後の挿絵に泣きそうになった。
私が挿絵に言及することってとても珍しいんだよ。
そのくらいぐっときた。
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「次男のはじめての痴話喧嘩 毎日晴天!16」菅野彰(キャラ文庫)
長い物語を読んできたからこそ、味わえる感慨深さがある。
紆余曲折を経て4年の時間を共に過ごした6人。
ここにきてまさか、ボクサーという長くは続けることのできない仕事を選んだ
丈の心の内面を聞かされて泣くことになるとは思わなかった。
悩める兄・明信に対して真弓が与えた言葉の数々。
龍に対して投げかけた勇太の言葉。
たくさん泣いて傷ついて、それでも前を向いて生きてきた
一番下の二人の成長に胸が熱くなる。
そして、失いたくない人にその想いを伝えることができた明信。
その変化に気付いた龍。
諦めることに慣れなくていい。
ウチの甥っ子ちゃん's。
一個しかないリンゴジュースを巡ってジャンケンでも揉め、いつもの如く
あわや喧嘩が勃発するかとおもいきや。
小4男子の「半分こ!」の一言で鎮火。
よくぞその言葉がでてきたと、褒めまくってしまった。
これも成長の証。
「スノーグース」ポール・ギャリコ (新潮文庫)
三篇収録。
「スノーグース」で描かれた美しさと悲哀が個人的には一番響いた。
惜しみなく与えられるラヤダーのあたたかな愛は、
彼を戦禍の中に取り残された兵たちの救済へと向かわせる。
いや、愛だけではなかったのかな。
彼が彼で在るために己に課した責務。
彼の傍を離れようとしなかったスノーグースが美しくもいじらしい。
「小さな奇蹟」と「ルドミーラ」で描かれた奇蹟は、
奇蹟ではあるけども、人(or牛)の想いが繋いだ奇蹟。
切なる願いがあってはじめて動く事象。
託された花束が人々の手を介して彼の人の元へ届いたのが感動的。
冬に甥っ子ちゃんたちをつれて白鳥を見に行けたらいいなーと思っているのですが。
その時は白雁も忘れずに探して来ようと思います。
【ガーディアン必読 88/1000】
「白銀の墟 玄の月 第四巻 十二国記」小野不由美 (新潮文庫)
手が届くかと思った光。
一度抱いた希望が叩き折られた瞬間の絶望は、
苦難に耐えていた時以上に堪えることを知っている。
次々に失われていく命。
それでも。
それでも彼らは、諦めなかった。
覚悟の決意を口にする彼らの想いが刺さる。
たとえ血路であろうとも、それがどれほどの負荷になろうとも、
主につながる道を自らの手で切り開いた泰麒。
決して他者を頼ろうとしなかった彼の気持ちに感服。
阿選。
覚悟を持って事を成すってそういうことなんだよ。
誰も責めることのなかった驍宗。
満身創痍の王と麒麟の築く未来に想いを馳せての読了。→
頁を閉じても、まだその先を読みたい想いに囚われたまま、気持ちは戴を漂っている。
全四巻。これだけ読んでもまだ読みたい。
早く先が知りたいと思って読み進めたけど、
終わりが近づくにつれてまだ足りない、もっと、と。
空白の6年を丁寧に描写してくれたからこそ、李斎らと共に旅をしている気持になり、この先も国を建てなおすであろう彼らと共に歩みたいと思ってしまう。
至福の読書時間でした。
「白銀の墟 玄の月 第三巻 十二国記」小野不由美 (新潮文庫)
繋がり、そして実を結んでいく点と点。
「いつか来るべき時」を諦めなかった人たちが、確かにいた。
理不尽な暴力に晒された人々を見過ごせない人たちがいた。
「やるべきこと」を為しつづけた人々が集まれば、
国を動かす力になる。
方々に散った人たちを結びつけることになった李斎の旅。
一方で独りよがりの逆恨みを抱き、或は興味本位で人々の運命を弄んだ輩に感じる憤り。
何より腹立たしいのは、その後すべてを放棄したことだ。
泰麒も目的のためにはその手で暴力をふるうことを厭わない。
そして、彼こそが諦めてはいなかった。
白雉が落ちていないこと。
それこそが天意。
軍が軍として機能するためには何が必要なのか。
北方の梁山泊で学んだことを思い出す。
感謝の意を後世まで伝え続けるその姿勢に、エルトゥールル号(『海の翼』参照)のことを思い出す。
最大の振り返りは『魔性の子』のエピソード。
あの時の出来事がここで繋がる壮大さ。
心躍らせながら最終巻へ。
「竜頭町三丁目まだ四年目の夏祭り: 毎日晴天!外伝」菅野彰 (文芸書)
言葉を放った側は忘れてしまっても、
ぶつけられた側は刺さった言葉が忘れられないことがある。
これは忘れちゃいけないことだなぁ。
そして、誰かの気持ちを推測することはできても、
正しく理解することは絶対にできない。
だから、大切なことは言葉を尽くして話し合うことが必要で、
分かろうと思う気持ちが大事。
悩み惑うことは、成長することに必要なステップ。
そう思わせてくれる彼らの苦悩。
埋められないものを抱えた彼らが寂しくもあるけれども、
寄り添ってくれる人がいることがただ嬉しい。
理解しようとすることを諦めない彼らがとても好き。
20周年記念本。
外伝と言いつつ、15巻のつづき的なポジション。
途中に8年のブランクがあっても、書き続けてくれてありがとうございます!
と、菅野さんには伝えたい。
待ち続けると続きが読めるのだということを、ここ最近何人もの作家さんが教えてくれて感無量。
麻生と練の物語も是非。
「白銀の墟 玄の月 第二巻 十二国記」小野不由美 (新潮文庫)
何故討ったのか。
何を成したいのか。
まったく見えてこないその行為に、募る焦燥と苛立ち。
荒廃した国の中でも己の役割を果たしながら生きる人々がいる一方で、
苦しみに耐えるしか術のない民が痛々しい。
信じたいものと現実が同義であるとは限らない。
だけど、信じたいものが潰えるということは、希望も潰えるということ。
そんな現実とどう折り合いをつけて生きていくのか?
自分のことだけを考えていればいいわけではない立場の
李斎の問いかけが重い。
王宮でも、少しずつ事が動き始める。
泰麒が膝を突いた理由が気になる。とても気になる。
余計な情報を拾わないように、帯を外した表紙を並べて悶々とする。
そんな暇あったら続き読みなよ!って感じだけど(笑)
待ち続けたからこそ、飛ばし読まずに大事に読みたい。
「担当編集者は嘘をつく 毎日晴天!15」菅野彰(キャラ文庫)
ひたすら大河がめんどくさい方向に迷走していた15巻。
おかげで秀の混沌も人的被害を生み出す方向へ拡散されてしまった感が否めない。
仕事とプライベートを完全に分離出来たら多分楽だったんだろうけど、
そもそもの二人の関係の再出発は編集と作家としての関係性から。
そうやって歩んできた延長上に在る今だからこそ、分離は難しいんだろうなぁ。
だから言葉が必要なんだよ、大河。
秀の混沌は、何も望まなかった秀に欲が出てきた現れ。
まわりにとっては迷惑でも秀自身にとっては良い変化。
だから大河も惑う。
堂々巡りだな。
久賀の存在がいい意味でのカンフル剤。
個人的にはまどろっこしいのが嫌いなので
めんどくさいわー!と、切って捨てたいところだけど。
恋情の他に仕事が係ってくると、なんか色々汲んでしまって出口が見えなくなってしまう。
大河はもうちょっとブレない人かと思ってたんだけどね。
思えは、恋愛方面はホント疎い朴念仁だったわ(笑)
バース(犬)が長生きしてくれることをひたすら願う。
この作品の最終巻はバースが臨終を迎えて終わるのでは!?と本気で危惧したことのある過去の私。
それより一人二人巣立っていくと考えた方が現実的。かな?
「白銀の墟 玄の月 第一巻 十二国記」小野不由美 (新潮文庫)
王の不在から6年。
荒れ果てた国でその日の命を明日に繋ぐために生きる人々がいる。
困窮に喘ぎながらも、絶望に呑み込まれなかった人々がいる。
点と点が少しずつ繋がりあっていくのは、
泰麒が行動を起こしたからこそ。
たとえ麒麟としての力を失くしたとしても。
彼でなくては成し得ないことがある。
泰麒が紡いだ虚言。
これは、彼が胎果だからこそ口にすることができた嘘。
彼の国人々は思いつきもしないだろう。
方々で口ずさまれる歌は潜伏の証。
……だと思いたい。
かつて何が起こったのか。
少しずつ語られながら進行する物語。
だけど、いまだ真相は闇の中。
彼の人は何処へ。
読み辛い漢字多くなってない!? と、
既刊再読直後なのに思ってしまった私(笑)。
気のせい?
途中でマッカーシーの『ザ・ロード』を想起させられてしまった。
だけど、これはディストピアではないはず。
そう信じて、次巻へ。
「さあ、今から担当替えです 毎日晴天!14」菅野彰 (キャラ文庫)
会社という組織に属して働く大河には理解でき、諾としたことも
家の中で大河と原稿とだけ向き合ってきた秀には理解も納得もできない担当替え。
帯刀家で暮らす6人の中で一番世界が閉ざされているのが秀だと、
改めて突きつけられる。
自分の担当から大河が外れたことが納得できない愁。
何で?どうして?
言われた仕事をこなせば大河が戻ってくると思える心理がとても不憫。
仕事を離れたってつながっている。
そのことが呑み込めない秀がやっぱり哀しい。
大河は言葉が足りなさすぎとも思うけど、
秀のすべてを受け止める彼の懐はひろくてあたたかい。
秀はこの先、一人で歩けるようになるのかな?
「思考の一人遊び」わかるわー。
昔はよくそうやってふわふわしてたけど、
最近そうやって思考の波間を漂うことってなくなったなぁ。
インプットの期間と思って吸収し続けてるけど、
アウトプットっていつするの?と最近思ってみた。(笑)