きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「片翼で飛ぶ鳥 -神話の子供たち-」榎田尤利 (講談社X文庫―ホワイトハート)
「出来ることをする」ことと「出来ると思ったことをする」ことでは意味が違う。
死と隣り合わせの世界でサラが出来ると思ってしたことは無謀以外の何物でもないのだが、
結局そうやって行動することが彼女の自覚と成長を促していく。
心の準備があって旅に出たエリアスたちと同じような割り切りを、
退路を断たれるようにシティの外に出たサラに即座にしろというのは酷だろう。
とはいえ、彼女が置かれた状況を理解できるようにきちんと諭すエリアスたちの姿勢は立派。
死すら覚悟した旅。
だけど、生きて。
命を投げ打ってでも守るための戦いではなく。
共に生きるための戦いであることを信じてる。
タイトルがとてもいい。
片翼で飛ぶ鳥はいつ、金の狼に出会えるのか?
あとがきを読む限りでは次巻あたりで出会えそうなんだけど。
そして、彼らが出会った世界で何が起こるのか。
いや、現在の世界がどうひっくり返るのか?
うーん。
気になる。
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「土曜の夜と日曜の朝」アラン・シリトー (新潮文庫)
不思議な吸引力のある作品。
日々の日常を逞しく生き生きと過ごす人たちの物語。
生命力あふれる彼らの姿に引き寄せられるように読み進める。
だーけーどー!
アーサーが人妻との逢瀬を重ねる理由に、この男最低!と、毒づきたくなる。
痛い目をみるがいい、と思い続けていたので、
とりあえずそれ相当の報いを受けたことで溜飲が下がった。
まぁ、関係を許した女の側にも問題があると思うけどね。
でも何だか憎み切れないろくでなし。
それがアーサー。
彼の仕事に対する姿勢は認めてもいい。(←上目線・笑)
ラストの四行に生きる活力を分けてもらえた気持になる。
うん。
頑張って働こう。→
文字の細かさに読み始めるのに一瞬躊躇したけど、
一度読み始めたら全く問題なく読めたのは面白かったから。
ガーディアン選書でなかったら、手に取ることはなかったであろう本。
こういう出逢いがあるから月に一冊はガーディアン。
【ガーディアン必読 90/1000】
「隻腕のサスラ―神話の子供たち」榎田尤利 (講談社X文庫―ホワイトハート)
シリーズ二作目。
シティとDエリア。
二つの地区に分かれた世界の仕組みと謎が語られつつ、物語は展開する。
繰り返し見る夢の中ですれ違う彼。
あなたは誰?
夢が夢ではなくなることを、遠い世界から使者と共に訪れた双子が彼女に知らしめる。
目を見開いて現実を見据えろと、記憶を失くした彼女に使者たちが告げる。
使者は彼女に救われし者。
揺さぶられる感情は、生きている証。
憎しみを知りつつも優しさを忘れずにいられるからこそ、強く在れると、
彼らはその身で示してくれている気がする。
立ちはだかるのは、運命。
翻弄されるのではない。
切り開くのだ。未来を。
運命の歯車、というものがあるとするなら、
カチリ、とパーツが嵌って動き出したところで物語は次巻へ。
といったところだろうか。
つまり、ものすごく続きが気になる。
「愛を与える獣達 むすんだ絆と愛しき『番』 」茶柱一号
チカに対するゲイルとダグラスの溺愛っぷりと、
美味しそうにガツガツと食事する獣人たちの食べっぷりで
イロイロ満たされるお借り本。
出てくるご馳走が本当に美味しそう!
一人に対して二人の伴侶という構図で自然なバランスが保たれているとこがいいなー。
ゲイルとダグラスがお互いを認め合っているのがすごく伝わってくる。
出産祝いで二世帯住宅経てちゃうヘクトルが素敵。
っつか、お城に帰らなくて本当にダイジョブですか?前王様(笑)
チカがこの世界に来た経緯、この世界のしくみ等々がスルッと入ってきて、
テンポよく上手く語られてると思う。
説明くさくないところが凄い。
章ごとに視点を変えていく一人称の文体の中での
心の声や突っ込みがとても楽しくて好き。
「愛を与える獣達 無骨な熊と王者の獅子と異界の『番』」茶柱一号
異世界に転生したチカ(日本人)がハイスペックな獣人二人に溺愛される物語。
表紙の三人がメインキャストなわけだけど、
「静かなる賢者」と言われる規格外な前王・ヘクトル(表紙にはいない)に
なんかイロイロ持っていかれたお借り本。
立場を考えれば、周りにとっては迷惑でしかない行動力が愉快すぎる。
そして乗り越えてきた過去が切ない。
メイン三人に話を戻して……
死んだ方がまし!という境遇からゲイルとダグラスによって救い出されたチカ。
二人の好意に甘んじることなく、自分にできることを模索する当たりが
苦労性の日本人だなぁ、と。
頑張れ、チカ。
私人間だけど、動物マッサージされてみたい!と割と本気で思った。
気持ちよさそうだなぁ。
モフモフにもたれかかって眠る!というのも憧れるよね。
「苦しゅうない、近う寄れ」という風情で横たわるライオンや熊には萌えしかない。
続きが楽しみ。
「本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習いⅡ」」香月美夜
念願の手作り本の完成までの過程を主軸に展開していく第二部第二章。
楽しそうに一生懸命作業に勤しむ面々の姿以外にも、
貴族社会にはびこる差別意識や魔力に関する諸々が平行して語られていく。
なんとも生き辛そうな世界だわ。
転生した世界で裏表なく振る舞うマインのことをうかつだ、考えなしだっていうけど、
マインが異端であるならなおのこと、
神官長もマインの魔力がどのくらいなのか、事前に試すぐらいは
しておいてもよかったと思うよ。
静的に進行してきた物語が一気に動的に転じた終盤。
ぐっと引きこまれたままのラストシーン。
こっちも同調して泣けるわ。
騎士団から神殿へと移った神官長。
文武に長けたマジ万能!な神官長の過去が気になる。
イケオジな雰囲気ムンムンのカルステッド。
この先たくさん絡んでくれるといいなー!と思ってうっかり検索したら
余計な情報を拾ってしまった気がしてただちにブラウザをクローズ。
やばい。
読んでる途中で検索かけちゃいけないんだよ!←時々やらかす。
「神を喰らう狼」榎田尤利 (講談社文庫X文庫ホワイトハート)
フェンが好き。大好き。
だから、自分の持てるものは全部フェンにあげる。
そんなボーイの気持ちが一途で純粋であるが故に、
涙が溢れて仕方なかった。
ボーイと同じ運命を背負ったリトルもまた、
大好きなローズのために全てを投げ出す覚悟を胸に抱いている。
クローン体である彼らを「家畜」と同等にみなす人がいる一方で
「人間」としてみなして心を痛める人もいる。
あまりにも非人道的な権力なんて叩き潰してしまえと思うけれども、
それはままならない。
だから彼らは戦うのだろう。
命とは。自我とは。生きるとは。
抉られるような鋭さで突きつけられる。→
シリーズ一作目。
全く身構えることなく読み始めてしまったおかげで、
ちょっと呆然としてしまった読後の重厚さが半端ない。
フェン視点の描写がもう少し欲しかったところだけど、
辛すぎて更にダメージを喰らった気がする。
あたしはここにいる、と口にしたリトル。
それは紛れもなく「個」として生きている証。
自我を与えるのなら、奪わないで。
彼らの生きる権利を。
「世界の果て」中村文則 (文春文庫)
短編5編。
破綻や崩壊を匂わせておいて、彼の世界は決して崩れない。
とうとう壊れたか、と思って息を呑んでも、やはり壊れてはいない。
どんなに息苦しいと思っても歪んでいても、我々はこの世界で生きていく。
「生きる」ことをつづけていく。
それは執着というよりも、ま、仕方ない。生きてくか、というスタンス。
だけど、セックスに対しては異様な執着をみせる彼らには正直うんざり。
本を読むときは暗いとか明るいとか。ハピエンとかバッドエンドとか。
ぶっちゃけそこには興味がなくて、面白いか、面白くないか。響くか響かないか。
ただそれだけ。
彼の作品は響く。だから読み続ける。
読後のモヤッと感は犬!犬どうした!と叫びたいこと(笑)
まぁ、読み手の想像力に委ねられるんだろうけど。
夜の間に解決しなかったことで白日の下に晒される「僕の犬」。
前足を握る描写が妙に印象に残った。
「うなじまで、7秒」ナツ之えだまめ (フルール文庫 ブルーライン)
貴船の伊織に対する最初のアプローチの仕方は最悪。
訴えられるレベルですよー、と思うわけだけど、
身体から始まって絆されるのはある意味BLあるある。
ところが。
快楽に翻弄されながらも、伊織が簡単に流されなかったところが良い。
貴船の想い。
伊織の想い。
成就に至るまでのそれの想いが丁寧に描かれていて、
最初は独りよがりにしか感じられなかった貴船の溺愛が心地よく感じられる。
お兄ちゃん(伊織)大好きっ子の弟・隼人の態度が
私の想定外だったところがとても良い。
きっちり描かれているお仕事描写から伊織の仕事に対する姿勢が伺えて、
貴船はこういうところに惚れたのね、と噛みしめてみた。
作家買いだったり、読メでのレビュー買いだったり、
別の書籍でおススメされていたり。
その本を買った理由ってそれなりに判別できるんだけど、
これを積読棚で見つけた時は何で買ったのかさっぱりわからなかった本。
たまーにそういう謎本が出現します(笑)
でも、読んで買ったことを後悔することはないから、やっぱり欲しくて買ってるんだよね。