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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「愚か者死すべし」原尞 (ハヤカワ文庫 JA)



事の発端は一つの事件……というよりも、成立しなかった仕事の依頼だった。
依頼主を警察署に送り届けて、沢崎のできることは終わるはずだった。
だが、そこで起こった新たな事件が、彼を渦中に巻き込んでいく。
新シリーズになっても、沢崎の在り様は変わらない。
彼はただ、自らの信念に基づいて行動している。
誰にも日和らず、何にも眩まない彼の平静さがとても好ましい。
そして、プロットの緻密さと登場人物の魅力で
最後まで読ませる作者の作風も変わらない。
糸の絡まり具合とその解き方が絶妙。そして読後に残るやるせなさ。
とても充実した読書時間だった。

今作が現状では彼の最後の作品である事実が残念でならない。
ラストの啓子の台詞が今後の彼の著作との決別を暗示していたと思えてしまったことが寂しい。
まだ読みたい。
そんな想いが沸々と滾る。
あとがきに代えての「帰ってきた男」
これがまた、最高だった。
彼が彼の依頼人になったら?想像して大笑いしちゃいました。
シリーズを譲ってくださった読友さんに感謝。
本当にありがとうございます!

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「夜が明けるなら ヘル・オア・ハイウォーター3 」ジェイクス (モノクローム・ロマンス文庫)



過去と真っ向から向き合い、目を背けることなくいずれ訪れる未来を語る。
ようやく聞けた愛を囁く言葉に、私も彼と一緒に固まってしまった。
そして、あまりにも切ない誓いの言葉。
だけど、大丈夫だと。
彼等にとってはお互いが終着点なのだと思わせてくれる絆の深さが培われていることに安堵する。
ガチンコのハードボイルド展開。
任務の最中にも、セックスの最中にも
「くそったれ」を連呼する彼らが、半端なくカッコいい。
命懸けで過去を清算しようとする男たち。
散るためではなく、過去を断ち切り、未来を切り開くために。
過去はすぐそこまで迫ってきている。
願わくは、誰一人、欠けることのない決着を。

アクションはかっこいいわ、セックスはかっこいいわ、
挿絵が何度眺めてもドキドキするほどかっこいいわ、
当然トムもプロフィットも仲間の男たちもかっこいいわ。
ヤバいくらいのかっこいいがテンコ盛り。
次巻で決着……なんだよね?
期待して待ちます!




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「「がん」では死なない「がん患者」 栄養障害が寿命を縮める」東口高志 (光文社新書)



インパクトのあるタイトルだけど、
著者の言いたいことは、がんに限らず
「いきいきと生きるためには、食べることが大切」
この言葉に尽きる。
日々の口から摂取する食事がいかに大切かということがとてもよくわかる。
そして、病院での栄養管理は確かに充実しているとは言えないなぁ、と、
自分が抗がん剤を投与されていた時のことを振り返って思ってみる。
あの時は若くて体力もあったから、ひたすら食べずに吐き気を乗り切る方法を選択したけど、
それじゃダメ。
とにかく口からちゃんと食事をとること。
それができない場合は、どうすれば食べられるようになるかを指導してもらうこと。
かなり参考になる本でした。


乳がんの手術を受けて退院した後に色々調べてみたら、
乳がんには「こういう食事はよくない」「こういう食事の方がいい」というのが
皆様主張していることも、統計データが示していることも概ね一緒で。
でも、それって病院ではまったく触れられることもなく(学術的に根拠がないから?)
なんで教えてくれないのかな?と思ったことがありました。
とりあえず、日々美味しくお食事をできることの幸せを噛みしめつつ。
最後まで美味しく食べ続けたいと思いつつ。
症例であげられた「奇跡のヒンズースクワット」のおじいちゃんにあやかりたいわ。
そうそう。バランスの良い食事の他に、刺激を受けることも大事だそうです。
読書をしていると色々な刺激がありますよねー。





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「さらば長き眠り」原尞 (ハヤカワ文庫JA)



シリーズ第一期完結に相応しい集大成。
前巻から経過した400日の時間の分だけ、
沢崎の、そして周囲の人たちの歩んだ人生の軌跡がある。
それが垣間見れたことが、彼をより身近に感じられて嬉しい。
再び事務所に戻った戻った沢崎に持ち込まれた依頼。
彼はただ、真実を追求しようとしただけ。
本当のことを知ろうとした彼は、たとえ、それを暴くことによって
傷ついた人がいても、重荷に感じる必要はない。
それは、彼の咎ではないのだから。
だけど、どうしても振り払えない寂寞。
最後まで気を抜くことを許さない面白さ。
そして、添えられた僅か十数頁の短編が相変わらず絶妙だった。


警察、そこちゃんと確認するよね?
と、突っ込みたい部分がひとつだけあったけど、
それが些細な事と思えるくらい、読み応えのある作品でした。
淡々と己の仕事に取り組む沢崎が渋くてかっこいい。
ヤクザの橋爪たちとの関係は、相変わらずどこか愉快。
まぁ、そんなこと言ったらどちらからも嫌な顔されるんだろうけど(笑)
時間は淀みなく流れている。
短編までを読み、改めて、そう思わせてくれた終幕。
たゆたう流れの先で、また会おう。
そんな期待を込めて、頁を閉じる。








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「黒衣の税理士」海野幸



会社の経理に留まらず、経営そのものがずさんなヤクザのフロント企業で働く
やる気のまったくない社長以下従業員4名。
そんな彼らに経理のイロハを教えようとする税理士・玲司。
人間、本気でやる気になったらなんでもできるんだな、とは思うけど、
そのやる気の引き出し方が素晴らしかった。
心の籠っていない言葉に人は動かない。
「わかってるんですか?貴方ヤクザなんですよ?」
だからのし上がれ、と。
その身を浪費するように生きてきたヤクザ・加賀美に対する
税理士・玲司からの、まさかの方向からの発破掛け。
そこから見事に再生した加賀美はカッコよかった。

ラブ要素よりお仕事要素の方に重きを置かれた作品。
メッチャ利益を生み出せる会社になるといいなぁ。
人材はそろってると思うの。
今後の彼らの成長に乞うご期待☆
そして、やっと始まった二人のラブの進展にもやっぱり期待しちゃうよね。

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「悪と仮面のルール」中村文則(講談社文庫)



爽やかな恋愛小説。
と、言い切ったら語弊があるかな?
一つの愛の終わりと、新たな愛の始まり。
自己の内面と対峙し、運命と真っ向から向き合い、
逃げることなく生ききった、とある男の人生。
悪だ邪だと御託を並べた男たちは、結局は人生に倦み、無聊に呑まれ、身を滅ぼしていく。
自らを弄ぼうとする運命に巻き込まれるまいと、必死で抗った彼の生き様は、
結局は心から守りたかったものを守り通したとも言える。
かつての己の言葉通りに。
他人の顔が自らの顔として定着していく様は、多分、生命の証。
彼を見送った後、医師や探偵の歩んできた人生が妙に気になった。

悪党(であろう人)たちがペラペラしゃべる言葉がなんだか薄っぺらく感じられる。
内省する彼の言葉の方がよっぽど重くて悲痛だ。
とはいえ、とても読みやすい中村文則作品だと思います。


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「遠い岸辺」英田サキ (SHYノベルス)



人生に疵をもつ、30代・射場と40代・日夏のしっとりとした、でも熱くて甘い恋愛。
成就するまでが、オーダーメイドの服が出来上がってくるまでの期間ってのがいいね。
忘れたころに出来上がってきた服を脱がせる醍醐味。
裏切るより、素直に頭を下げた方が俺得だと思うのに、
見栄やプライドに拘った男には馬鹿だなぁという言葉しかない。
だからこそ、六戸部の懐の大きさが光る。オジサマ、素敵。
裏社会で生きてきた日夏の語る、射場と二人で生きる将来の夢。
これ、ホントに実現してほしいわと、心から思う。
「生きて何かを味わえる者はそれだけで幸せだ」
そう、生きてこその人生。

カッコイイ大人の雰囲気で読ませてくれたお借り本。
でも、ラストは大分デレたね。
楽しかった☆



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「荒野のおおかみ」ヘルマン・ヘッセ (新潮文庫)



疎外感を感じながらも「市民的なわく」の片隅に留まりつづけたハリー。
孤高にはなりきれず、厭世的な方向にも振りきれず、
自殺願望を抱える50近いハリーが出会った少女、ヘルミーネ。
彼女と係わりはじめたことによって、
「市民的なわく」の内側にひっぱられていたことに、
彼は気付いていたのかな?
二面性なんて誰にでもあるし
良いことと悪いことをいったりきたりなんて当たり前。
人間はいつか必ず死ぬの。
終始彼に言いたかった言葉を
最後にモーツァルトがバッサリ言い放ってくれて、
デスヨネー、と大きく頷いて……ヘッセが導きたかったのもこっちだったんだよね?と、
自分なりに納得してみました。

ほぼ書かれた順番にヘッセの作品を読んできての11冊目。
『荒野のおおかみ』というタイトルから今までのヘッセの作風を連想して読み始めると、
その違いにちょっとびっくり。
この作者はこう書かないといけないっていうきまりなんてないからね。
いい意味での衝撃でした。【ガーディアン必読 59/1000冊】





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「nez[ネ] Your Lovely Smell」榎田尤利 (SHYノベルス)



シリーズ最終巻。
原点回帰。すべての謎が眠るモズの森へ。
≪鳥≫によって千里の原点に誘われるわけだけど、予想外のサバイバル展開。
思いがけない戦闘能力を発揮した千代子ママ、素敵。
非合理的な事や勝算のない行動を嫌う鷹目が
感情のままに千里の名を叫んで森の中を彷徨うシーンに胸が震える。
そんな鷹目を求めて、再び自らの武器を手にした千里。
感動的な再会シーンからあっさり大団円にはならずに、焦らされること三ヶ月。
バカバカ言い合いながらの告白は、すっっっごい良かった。
そして、取り戻した日常。
阿莉ちゃん同様、残念なハンサムが私も大好きです。


「インケン眼鏡レス」に笑う。
そこ、ただのインケンでよくない?
まぁ、鷹目はもともと眼鏡のイメージ強いからね。
眼鏡、かけられなくなっちゃったからね。
だから、「インケン眼鏡レス」
それにしたって……と、反芻して笑うエンドレスループ。

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「グノーシスの薔薇」デヴィッド・マドセン(角川書店)



「なんじゃこりゃ!?」と度肝を抜かれたところから始まって、
まさかやるせなさに泣くとは思わなかった。
というか、泣いたら負ける気がしたから頑張って堪えたよね。←何と戦ってた?
人の欲望、身勝手さ、傲慢、猥雑、悲哀、献身、情愛。
人間らしい感情が良くも悪くも渦巻く物語。
よって引き起こされる悲劇や喜劇。
何に重きを置くかによって、己の行動指針は変わる。
彼が最後に選び取ったものは、私には必要のないもの。
だから「何やってんの~~!」と叫びを押し殺しての読了。
ルネッサンス期の歴史と虚構の見事な共演。
すごい作品を読みました。いろんな意味で。

この帯で先入観を植え付けたことによって、
作品の評価を下げる役割を果たしていると思うんだよね。
でも「インディペンデント」紙の評価には同感。なので、引用。
「出だしの俗っぽさに惑わされてはならない。
本書はその奥にぞっとするほど、深く暗い厳格さを秘めている」
厳格さがどこにあるかはそれはそれで謎なんだけど(笑)
おなかいっぱい感満載な感じで頁を閉じてみました。
やっぱ「すごかった」。この一言に尽きるわ。
【ガーディアン必読 58/1000冊】

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