きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「エデンの東 新訳版 (4)」スタインベック (ハヤカワepi文庫)
ラスト一文を読み終えた瞬間、え!?ここで!
という思いが真っ先に過った。
もう少しだけ、彼らに寄り添いたかった。
彼らのこれからを見届けたかった。
そんな想いが自然と込み上げた読後。
一人の人間が生涯かけて描くことのできる物語は一つ。
自らの在り様は、己にしか決めることができない。
どの選択も、結局は己自身に跳ね返ってくる。
例え後悔に苛まれても、軌道修正することは可能だと、
あのヘブライ語が示している。
諦めるのも掴み取るのも自分自身。
三世代にわたる人々の人生が描かれた物語。
力強く、或は脆く、悲劇的で、或は美しい。
現実を生き抜く術は、どうやったら得ることができたのだろう?
御伽の国のアロン。
彼は最後まで現実世界を直視することができなかった。
ケイトにはもっと強かな女であってほしかったけれども。
彼女の揺らぎは老いのせい……というよりも、自らの行いの跳ね返りなのかもしれない。
父親の愛を求めたキャル。
空まわってしまった愛情の行方が哀しい。
現実を直視していたアブラ。
大人びた彼女の在り様は、迷いがなかった。
そしてリー。
彼の存在なくしては、この物語は語れない。
【ガーディアン必読 67-4/1000】
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「アカサギ」沙野風結子 (ラヴァーズ文庫)
上っ面だけではその人間の本質は測れない。
弁護士の恩田と結婚詐欺師の槇。
ふたりとも過去に負った傷のせいで纏った鎧のおかげで
その真意に辿りつくまでにずいぶんと時間がかかったけれども。
抱えた本音は寂しさと後悔……なのかな。
自らの行いのせいで息子を手放すことになった恩田と、父親を求め続けて裏切られた槇。
距離感を計りつつ、自らの気持ちに気付いてみれば
独占欲と執着を剥き出しにした恩田と、
自ら鉄枷に囚われることを選んだ槇。
出逢い方は最悪だったけど、収まるべくして収まったふたりでした。
彼らにとって一回りの歳の差はいいバランスなのかも。
それにしても恩田、いけ好かない!と何度思ったことか。
個人的に好きなタイプの攻のはずなのに!
何コイツ!?という思いを抱きつつ、でも嫌いじゃないのよね、と着地してなんだか敗北感(笑)
いつか恩田を手玉に取る槇を見てみたい。
「ブラッド・メリディアン」コーマック・マッカーシー(早川書房)
繰り返される殺戮と虐殺。
それが、文明が発展していく傍らで行われていた蛮行であることに身震いがする。
剥ぎ取られる頭皮。
打ち砕かれる四肢。
狩って狩って狩りつづける日常が淡々と繰り返される。
故に、時折差し挟まれるあまりにも人間らしい描写にはっとさせられるのだが……
忘れてはいけない。
血生臭い行為を繰り返す彼らこそ、人間であることを。
異臭と砂埃と血と贓物と。
ありとあらゆる穢れの中に在って、ただ一人、その穢れに塗れることなく
異彩を放ち続けた判事。
悪と弾劾されることのなかった彼の在り様が象徴するものは何なのか。
表題の意味が重い。
淡々と綴られる事象。
訴えかけてくる感情の起伏がないのに、いや、それ故になのか?
マッカーシーの紡ぐ物語に、ただひたすら圧倒される。
「こういう世界がほかにもあるんだろうか。それともここだけなのかねぇ」
どちらであれば、尋ねた男の慰めになったのだろう?
死にゆく男が歌う讃美歌が脳裏に響く。
血の色に塗り込められての読了。
【ガーディアン必読 68/1000】
「エデンの東 新訳版 (3)」スタインベック (ハヤカワepi文庫)
虚ろに生きる男が再生する様が見事に描かれている。
だが、彼に再び命を宿した男は、もう、いない。
そして、彼が会いたいと欲した男も、手の届かないところに行ってしまった。
対面しないと打ち砕くことのできない幻想もある。
意を決して会いに行った悪魔は、畏れるに値しないものだった。
この巻で語られるのは、アダムの再生。
そして、ハミルトン家の静かなる崩壊。
死は、人生において誰もが避けることのできないものだということを思い知らされる。
悲しみと諦めに覆い尽くされる様がやるせない。
次巻はいよいよ双子の物語。
リーの存在なくしてトラスク家は語れない。極論?
トラスク家もハミルトン家も
色々と想いを巡らせれば、ただただやるせなさが込み上げる。
だけど、それが人生。
そう思わせる圧倒的な何かがある。
さて。以下ネタバレです。
遅きに失した時。
アダムにはチャールズと再会を果たしてもらいたかった。
ものすごく期待しただけに私の落胆が半端なかった。
チャールズは、幸せだったのかな?
「あひるの空 49」日向武史(マガジンコミックス)
目指すのは、努力だけでは届かない場所。
おまえしかいない。
臨界を越えた戦いの中で
預けられた信頼に応えられる底力に震える。
限界なんてとっくに突破した状況で、
更なる限界を求められる息が詰まるような戦い。
一秒一秒が大きな意味を持つ試合展開で
チームを統率する監督の采配の重要さを思い知らされる。
あの瞬間での百春のまどかさん回想はガチで泣けるって。
空の微笑みに切なくて震えたのはなんでだろう?
ここで終わりじゃない。
自分にそう言い聞かせる。
長い試合の決着。そして……覚悟の必要な試合へと移行する。
楽しみだけど苦しい。たぶん、そんな試合。
百春の脚の状態ってどうなってるの?
気が気で仕方ない。
状況は全く違うけどイモトの「ダメだと思ったそこから が、本当のスタート!」 」
と言う言葉が過った。
「ドラマ」朝丘戻(ダリア文庫)
当人同士だけだったら悲恋に終わったかもしれない恋。
凍結していた時が6年越しで動き出したのは、間違いなく周囲の人たちの尽力。
みんなやさしいなぁ、と、しみじみ思った。
自分以外の誰かの気持ちを想像して結論を出してはいけない、の典型。
だけど、そうするしかなかった気持ちも理解できる。
原点に立ち返って自分たちを顧みる為には時間が必要だった。
前巻の感想で「リセットする必要があった」って書いたけど、
そのリセットの仕方がとても素敵だった。
褪せることのなかった想いが綺麗に花開く様に満足の吐息。
とてもキラキラした世界を垣間見れたお借り本。
「無駄な経験はない。全部を糧にしろ」
これ、私の人生訓に近い。
結局、降りかかった出来事をプラスととるか、マイナスととるか。
それは自分の受け止め方だと思うんだよね。
だったら全部プラスに転換したい。というか、してやりたい。
何度も言うけど、座右の銘は「行き当たりバッチリ!」なのです。(笑)
「エデンの東 新訳版 (2)」スタインベック (ハヤカワepi文庫)
大地と共に生きる人々のあたたかくて懐の広い思いに泣きそうになって読了。
キャシーに去られて抜け殻のようになったアダムに対する
サミュエルとリーの真摯な働きかけに、何故か私が感謝したくなった。
生まれたばかりの子どもたちが放置されるのは本当に忍びない。
名前のないまま一年以上も放っておかれた双子。
命名のために展開された聖書の解釈がとても興味深かった。
キャシーの悪女っぷりにはひたすら圧倒され、
とりあえず人としてお近づきにはなりたくないと思ってみた。
飛行機に乗ったライザのエピソードがとても好き。
そして、リーがとても好き。→
『エデンの東』を読むか読まないか。
迷っている方には是非お勧めしたい!
と、2巻目で言い切るのは早い?
だけど、一つクレーム。
続巻がある作品で先の巻の展開をあとがきでばらすのは私的には無しだと思うのよね。
知ってたら「あ、言っちゃう?それ」で済むけど、
知らなかったら「え~~!」って文句言いたくなっちゃう。
とはいえ、ネタバレされても次巻を読むのがとても楽しみなのです♪←クレームどこへ?(笑)
「ドラマ」朝丘戻 (ダリア文庫)
込み上げる想いは純粋で偽りのないもの。
貴方が好きだと。
君が愛おしいと。
その視線から、触れ合う指先から、伝わってくる。
だけど、背負うものがありすぎた二人が
想いを成就するためには犠牲にするものが多すぎた。
恋人同士の役を演じる役者として出逢い、
プライベートでも親密に係わるようになり、
ドラマの撮影が進行するほどに、深まっていく想いがあった。
だけど……
いや、だからこそ、かな。
すべてをリセットする必要があったんだろうなぁ、と。
好きという気持ちを抱えたまま、もう一度出逢いなおす必要があったのだと。
そう、思えた納得のラスト。
つづきを読むのがとても楽しみなお借り本。
作中で進行するドラマがあるわけですが……何故か
かつてリアルに観ていた「同窓会」というドラマを思い出しました。
わー、発掘したらどこかから出てくるかな?
「エデンの東 新訳版 (1)」スタインベック (ハヤカワepi文庫)
二家族の親子三代にわたる壮大な物語の幕開け。
愛情を与えられていながら、そんな父が嫌な人だったとつぶやく息子と、
求めた愛情が与えられなかったと傷つきながら、
父親が好きだったと泣く息子。
そんな彼らの元へ転がり込んだ悪女。
散りばめられた色々なファクターに心が掻き乱されるけれども、
除隊後の兄の帰りを待つ弟の姿が一番印象的だった。
本当に寂しくて、心待ちにしていたんだろうなぁ。
幼少期から想像した姿とは逆の大人に育った感じがする対比がおもしろい。
底冷えのするような悪意に絡みつかれた善意。
絆は壊れるのか?
ドキドキしながら次巻へ。
ものっすごく読みやすいのは新訳だから?
つづきが気になりすぎて、読後のドキドキが止まらない。
月に一冊ずつ読んでいこうと思っていたけど……
一気に読んでしまいたい衝動に駆られています。
【ガーディアン必読 67-1/1000】
「憎らしい彼 ~美しい彼2 ~」凪良ゆう(キャラ文庫)
噛み合わない二人は相変わらず噛み合っていなくて、
それなのに互いに対する愛情はより根が深くなっている感じがいい。
相手にだけ考え方のシフトチェンジを求めるんじゃなくて、
どちらからも歩み寄らないとダメなんだよねぇ、と
リアルに身につまされる。
より柔軟だったのは清居の方かな?
無自覚俺様な比良に振り回される様がなんだかとても可愛い。
ニュースタイルの関白宣言。
ダメ。
もう、これツボ過ぎて笑い倒しました。
お互いに纏った殻を一枚破った二人。
恋愛面でも仕事の面でも良い影響が得られそうで、
これからの成長が楽しみだわ。
バーチャルとリアルの距離感の喪失ってホント怖い。
匿名での無責任な他人バッシングも怖いよね。
悪意に晒されて精神的に殺されることがリアルにあるわけで、ぞっとする。
と、ちらっと思いつつも、とても楽しく読了したお借り本。