きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「約束の森」沢木冬吾(角川文庫)
監視付の塔の中で出会った三人。
たとえそれが仕組まれた出会いだったとしても。
各々の役割を演じながら次第に芽生えていく想いは、
間違いなく彼ら自身によって育まれたものだった。
最初は牽制しあっていた三人が次第に気持ちを寄せていく様子がとてもいい。
だが、天涯孤独の身だった彼らが得た安穏は、悪意と陰謀により瓦解する。
九死に一生を得るような戦いの中で光ったマクナイトの活躍。
彼もまた、孤独の中に在って侑也に救われたのだ。
マクナイトと三人の交流もとても良かった。
読後の余韻がとてもあたたかい作品。
マクナイトのモノローグには泣かされてしまった。
所々(主にスカベンヤーについて)突っ込みを入れつつ、大筋には関係ないか、と納得。(笑)
ここでくるの!?という場面での隼人の「特別な力」の披露は
突っ込むんじゃなくて感心しました。
襲撃に備えた万全の布陣を敷いても、上には上がいる怖さ。
「ほんとはいやだなぁ」「救って死のう」「これも因果と諦めな」
誰かを守るために戦おうとした彼らの想いがグサグサ伝わってきた。
魯智深は自分腕の丸焼き黙々と食べたよねぇ、と、まだちょっぴり水滸伝脳。
侑也の渋みもカッコイイけど、個人的に丹野がお気に入りなあたり、気持ちはまだ25歳(笑)。
殊勲賞はマクナイトとおまけでタイガーに。
楽しく一気読みでした。
内容(「BOOK」データベースより)
警視庁公安部の刑事だった奥野侑也は、殺人事件で妻を亡くし退職を決めた。孤独に暮らしていた侑也に、かつての上司を通じて潜入捜査の依頼が入る。北の果てに建うモウテルの管理人を務め、見知らぬ人物と暮らしながら疑似家族を演じろという。侑也が現地に赴くと、そこにいたのは若い男女と傷ついた1匹の番犬だった。やがて闇に隠れた謎の組織の存在と警察当局の狙いが明らかになり、侑也は眠っていた牙を再び甦らせる―。
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「わだつみの楊貴妃・後編 炎の蜃気楼12」桑原水菜(コバルト文庫)
それを弱さと詰ることはできないけれども。
共に歩んできた400年をなかったことにされるのはとても辛い。
彼は現実を直視しきれず、夢の中に逃避した。
現実の中に置き去りにされた私は、彼の名で呼ばれて振り返る男に、
「アナタじゃない」と、とても言いたい。
そして、亡者たちは見果てぬ夢を見る。
誰かの犠牲の上に成り立つ夢の成就なんて、絶対に認めない。
友姫と漁姫の悲痛な決意。
そして、偉大なる父、北条氏康と上杉謙信の力をかりて、
どうにかこの戦いには終止符を打つ。
逃げ込んだ夢の中から彼が目覚めることを願いながら、第二部へ。
あなただけは目を背けてはいけないと思うの。
悪夢のクリスマス。
何らかの救済があるはずと信じて買ってすぐに読み始め、
絶望のどん底に叩きつけられたあの日の記憶。
同じく読了して呆然としていた友達と泣きながら電話してた気がする(苦笑)。
おかげで、内容が色々吹っ飛んじゃってて、
あとから読みかえして、え?ここで?ええ??ってなってた。
友人たちと最後まであんなに大騒ぎしながら読みつづけた本って、
後にも先にもこのシリーズだけな気がする。
実際に弥山に登った時の感動は、ちょっと忘れられない。
内容(「BOOK」データベースより)
輝元が放った銃弾は、直江の心臓を撃ち抜いていた。駆け寄った高耶とたった一瞬、視線が結ばれ、それが直江の最期だった。「直江、早くオレを助けてくれ。早く、おまえがいる世界に帰りたい…。」その瞬間、毛利の本拠・萩城一帯を激しい地震が襲い、巨大な火炎の渦が夜空に燃え昇った。高耶の魂の絶叫が、地上に大崩壊を招こうとしていたのだ。衝撃の第一部完結編。
「少年は残酷な弓を射る 上 」ライオネル・シュライヴァー(イースト・プレス)
刻々と近づく運命の『木曜日』。
母親であるエヴァ視点で語られていることを差し引いても、
父フランクリンのケヴィンに対する接し方には首を傾げざるを得なかった。
ありのままの息子ではなく、理想の息子を見続けたフランクリン。
だったら、ここにいる「自分」は誰?
父の愛情が誰に向けられたものなのか、わからなくなって当然だろう。
エヴァは本当のケヴィンを知っていた。
そして、ケヴィンはエヴァの本質を見抜いていた。
多分、理解しあえた二人に足りなかったものは何だったのだろう?
「愛情」という言葉だけでは片付けられないものがそのこはある。
絶望からの再スタート。
疲れ切った彼らの旅は終わらない。
シーリアと同じ年の姪がいるだけに、彼女の身に降りかかった出来事は本当に辛かった。
後半、泣きながら読んじゃったよね。
タイトルの意味が分かった時には、絶望的な気持になってみました。
重くのしかかるものが半端なくて、だけど読み進める手も「何故?」と問いかけ続ける思考も止まらなくて。
かなりヘヴィ―な読書だったけど、出逢えて良かった一冊がまた増えました。
内容(「BOOK」データベースより)
16歳の誕生日の3日前、“事件”は起こった。異常なまでに母に執着する息子と、息子を愛せない母。二人が迎える衝撃の結末とは―?100万人が戦慄した傑作エモーショナル・サスペンス。2005年英オレンジ賞受賞作。
「わだつみの楊貴妃・中編 炎の蜃気楼11」桑原水菜 (コバルト文庫)
いっそ手放してしまえと、叫びたくなる。
それができないことがわかっているから、彼らと一緒にもがき苦しむ。
「腹心」としての直江は引く手数多。
こんなにも有能な男が、絶対君主の前ではただの雄に成り下がる。
だけど、そうじゃない。
そう、決めつけているだけ。直江自身も、そして高耶も。
「目が見えないのか?」ではなく「オレが見えないのか?」と叫んだ高耶。
その言葉に色々な想いが凝縮されているのに。
力を封じられても尚、戦う気概を抱き続けた景虎の起死回生の一撃。
燃え盛る炎の中で告げられた直江からの訣別。
迸った叫びこそが、景虎の本心。
『最上』の在り方……この言葉には涙しかない。
「元春様。小早川隆景様から電話が入っております」
戦国武将のもしもし電話。なんだろう?この気の抜けるようなやりとり(笑)
唯一和んだ瞬間だった。
ミラージュは読んで泣く。わかってても泣く、の繰り返し。
一緒にこの物語を読んできた友人達とは
「うちら、10代20代、ホントダメな男(=直江)に振り回されたよね」と
笑いながら言い合っていますが。
いまだって振り回されてます。←自慢できない。
吉川元春が好印象なのは、この巻があるから。
萩城址はとても素敵なところでした。
内容(「BOOK」データベースより)
大破した船から投げ出された高耶、直江、風魔小太郎は、瀬戸内海の小島に漂着していた。身を呈して高耶を守った直江だったが、その目は光を失ってしまっていた。信長を討つため、毛利、一向宗と手を組もうとする小太郎に、高耶は激しく抵抗するが、直江を人質に取られ、毛利の本拠地へと連れ去られてしまう。一方、大和の謎を追っていた綾子たちは〈楊貴妃〉に会うため、秋芳洞へ向かうが。
「少年は残酷な弓を射る 上 」ライオネル・シュライヴァー(イースト・プレス)
事件は既に起こってしまった。
その事件に至るまでを、母親であるエヴァ視点の語りで終始進行する物語。
たとえば、この時の夫側の見方は?息子であるケヴィンの主張は?
それは彼女の被害妄想なのかもしれないし、
夫の理解不足なのかもしれない。
だが、そのどれもが推測にすぎず、正解はどこにも見当たらない。
息苦しい「家」の中で誰からも理解を得らぬまま過ごした彼女の孤独と不安。
それを払拭するために彼女が選んだ手段。
最悪だ、と思わず呟いたのは私だけだろうか?
ケヴィンを誰よりもわかっていて、そして、誰よりもわかっていなかったエヴァ。
いや、わかっていないのは私なのか?
救いのある展開になるとは微塵も思えないまま、下巻へ。
以下ネタバレ……になるかな?どうだろう?
興味深く読んでいたのです。
ラスト近くまでは。
この三人だけの関係であったなら、ここまで気持ちが落ちなかった。
読むの嫌だなー、下巻。
ものすごーく嫌だなー、下巻。
無垢で生まれてきた赤ちゃんが辛い思いをしませんように。
ただそれだけを切に願うわ。
ああ、でもなんかもう、辛いフラグが立っているようにしか思えない。←私の主観です。
でも読まないと嫌な気分のままだから、読みます、下巻。
内容(「BOOK」データベースより)
キャリアウーマンのエヴァは37歳で息子ケヴィンを授かった。手放しで喜ぶ夫に対し、なぜかわが子に愛情を感じられないエヴァ。その複雑な胸中を見透かすかのように、ケヴィンは執拗な反抗を操り返す。父親には子供らしい無邪気さを振りまく一方、母親にだけ見せる狡猾な微笑、多発する謎の事件…そんな息子に“邪悪”の萌芽を見てとるが、エヴァの必死の警告に誰も耳を貸さない。やがて美しい少年に成長したケヴィンは、16歳を迎える3日前、全米を震撼させる事件を起こす―。100万人が戦慄した傑作エモーショナル・サスペンス。女性作家の最高峰・英オレンジ賞受賞作。
「犬、拾うオレ、噛まれる」野原滋 (ラルーナ文庫)
紺の抱えてきたものがとても重くて。
あまりにも淡々とした生活の在り様に胸が軋む。
だけど、そのどれもこれにも理由があって。
決して投げやりになっているわけではない様がいじらしい。
幾重にも纏った殻の中に閉じこもって、だけど、気持ちは決して内側に向いていたわけではない。
若干間違った外界への対峙の仕方でも、彼は彼なりに懸命に生きていた。
そんな時に出会ったテツロー。
出逢い方はどうであれ、彼の明るさと人の良さは、紺が視点を変える良い転機になった。
大切なものを得たが故に臆病になってしまった紺。
「死んでもいいか?」
「いいよ、死んでいい」
物騒な言葉なのに甘く切なく響く愛の言葉。面白かった!
殻ごとカレーに突き刺さるサザエの壺焼き……
見た目想像して大笑いしたけど、サザエって殻の中に閉じこもってた自己投影?
それを引っ張り出すテツロー?と私の思考が飛躍して、いや、そこまで考えてないか、
と、思い直してみました(笑)
修二の話、読んでみたいなーと、こっそりで主張しておきます(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
別れた恋人である予備校教師、貴史へのストーカー行為が止まらない紺。そんな紺のもとに宅配業者を装った怪しい男が現れる。飄々としたその男テツローは紺のストーキングを阻止するために貴史が雇った便利屋だった。鳳凰の刺青を背負った、どこか憎めない男―テツローとの三日間に及ぶゆるゆる監禁&お仕置き生活の中、今まで誰とも深く関わらず、投げやりに生きてきた紺の秘密が次第に明らかになっていき…。
「おれにはアメリカの歌声が聴こえる」ホイットマン (光文社古典新訳文庫)
溌剌とした自己肯定。
人生を謳歌する著者の叫びは、暑苦しいが故に心地よく響く。
肉体を賛美し、己の幸運を喜び、大らかに人々を抱きしめる。
光溢れる生の中に在った著者はやがて死者と対峙し、
別離の哀しみと敬愛する者との別離を綴るも、彼の歌声は曇らない。
アメリカの歌は、即ち、彼自身の歌。
人生への讃歌。
外の世界に向けられていた意識が自己の内面と対峙するに至る晩年。
力強さが少しも損なわれないまま詠まれた辞世の句。
最後まで力強さに溢れている。
豪胆に生きた知人にお別れをしてきた本日ほど
読了するに相応しい日はないと思えてしまった。
基本的に読書は室内や移動中に限るのですが。
この詩集に関しては、光に満ち溢れた屋外で読むのが相応しい気がする。
眩しいかな?(笑)
「南北戦争」繋がりで『風と共に去りぬ』が観たくなりました。
「わだつみの楊貴妃・前編 炎の蜃気楼10」桑原水菜(コバルト文庫)
失いかけた≪力≫。疲弊しきった精神。
限界に達しかけている直江の想いをねじ伏せるように否定しながら、
離れることを許さない矛盾。
傷つけながら、傷ついている。
それを認めたくない景虎と、諦めてしまった直江。
笑うことすらできなくなってしまった彼らがとても哀しい。
それでも戦いつづけなければならない彼らの業が胸に刺さる。
「限界がきているんだよ」
400年抱き続けた愛憎を越えた想いは、あまりにも重い。
戦国武将に戦艦大和を違和感なく絡めてくる著者の筆力は、改めてすごいなーと。
信長のぶっ飛んだ破壊力にガツン、とやられて次巻へ。
ガッツリ入り込んで読んでしまったら自分が消耗することがわかっているので、
なるべく俯瞰して、感情を切り離して切り離して、が再読の心得。
そこまでして読むの?と、自分を嗤いつつ、読むのです(笑)
宮島、弥山、広島、呉、因島。
自分の脚で歩いた場所はリアルに脳裏に浮かんでくる。
そう言えば私、毛利の墓所・東光寺にも行ったんだわ。
吉川元春、山中鹿之助、村上水軍はこの巻で覚えたかつての私。
戦艦大和のシーンのBGMは長淵剛。
ん?どこまでも心が安らぐ要素がない。
癒し本一冊挟んでから次巻へいこう。←つまり、感情を切り離すことに失敗している(笑)
「秋の牢獄」恒川光太郎(角川ホラー文庫)
今私が知覚するすべては幻。
本物の私は夢を見ている。目覚める日を待ちながら、夢の中を生きている。
そんなふうに夢想していた少女時代を思い出しました。
ここではないどこかへ。
一度は思い描いたことがあるはず。
だけど、踏み出してしまった「どこか」は、儚くて、恐ろしくて、淋しい世界。
多分幸せは「ここ」にある。今、自分自身が在るこの世界に。
短編三篇。
様相の全く違う幻想世界を、眩暈がするような感覚を抱きながら浮遊しました。
著者の描く独特の世界観が好き。
「幻は夜に成長する」
この後に展開される狂気めいた世界を垣間見たいと、惜しみながらの読了。
11月7日に読むつもりで楽しみに温存していたけど、
その日接待で夜中まで拘束されること確定な気がするのでフライング。
私の半年越しの計画台無し!キーーッ!!←落ち着こう。
それはさておき。
「秋の牢獄」途中、泣きたくなるほど切なくなって、最後、なんとなく安堵した。
その安堵は「やっと終わり」なのか「これで次へ」なのか。
読んだ時の自分の状況で変わってきそう。
内容(「BOOK」データベースより)
十一月七日水曜日。女子大生の藍は秋のその一日を何度も繰り返している。何をしても、どこに行っても、朝になれば全てがリセットされ、再び十一月七日が始まる。悪夢のような日々の中、藍は自分と同じ「リプレイヤー」の隆一に出会うが…。世界は確実に変質した。この繰り返しに終わりは来るのか。表題作他二編を収録。名作『夜市』の著者が新たに紡ぐ、圧倒的に美しく切なく恐ろしい物語。
「私が殺した少女」原尞(ハヤカワ文庫JA)
硬質な文体からは地に足の着いたカッコよさが滲んでいる。
生き様のブレない登場人物達。
探偵・刑事・ヤクザ。
どうあっても相容れない者達が、互いに認め合っている。
だが、彼らは決して馴れ合わない。
そんな関係が魅力的。
本筋から外れるけど、沢崎に橋爪が仕事を依頼する場面がとても好き。
誘拐事件を軸に展開する物語。
グイグイと引きこまれ、一気に読み進めるのだけれども。
クライマックスで自分が物語から弾かれてしまったかのような
疎外感を味わって途方に暮れる。
その理由は真相解明の手法。
とはいえ、登場人物が魅力的なことには変わりないので、
続刊も楽しみに読もうと思います。
以下ネタバレ含みます。
個人的にべらべら喋って一方的な真相解明をするのが好きじゃないので、
読後のすっきりしない感は個人的な好みによるものだと思います。
『そして夜は甦る』を読了した時の高揚感が半端なかったので、
本作に対する期待感が高すぎたのも余計な先入観。
とりあえず真っ正直に感想を綴ってみました(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
まるで拾った宝くじが当たったように不運な一日は、一本の電話ではじまった。私立探偵沢崎の事務所に電話をしてきた依頼人は、面会場所に目白の自宅を指定していた。沢崎はブルーバードを走らせ、依頼人の邸宅へ向かう。だが、そこで彼は、自分が思いもかけぬ誘拐事件に巻き込まれていることを知る…緻密なストーリー展開と強烈なサスペンスで独自のハードボイルド世界を確立し、日本の読書界を瞠目させた直木賞・ファルコン賞受賞作。