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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「怒り 下巻」吉田修一(中公文庫)



不透明な過去。
明かされない真実。
そこからに生れる疑心暗鬼。
人を信じつづけることがいかに苦しいことなのか。
突きつけられる。
信じきれずに疑ってしまったからこそ、明かされた真実がとても哀しい。
やりきれないのは、犯人の身勝手さの被害を被った人たちが、
事件後にも数多くいるということだ。
知らなければ防げたかもしれない。
けれども「彼」は知ってしまった。故に起こってしまった惨劇。
一つの殺人事件が、事件に関係のない人たちの生活をも揺さぶった。
得たものもあれば、失くしたものもある。
負った傷も後悔もすべてを抱えて、人は、生きていく。

【以下ネタバレ有です】
Amazonのレビューでこの作品の評価が真っ二つに分かれているのは納得。
明確に明かされることのなかった「怒」の理由。
でも、断片的に綴られた事象から、推測することはできる。
読み手に委ねられる部分が過分にあって、
はっきりとした謎解きを求めると、消化不良になっちゃうかな?
信じたいからこそ、
信じきれない自分を責めて揺らぎ続けた彼らの幸せをひたすらに願う読了後でした。

内容(「BOOK」データベースより)

山神一也は整形手術を受け逃亡している、と警察は発表した。洋平は一緒に働く田代が偽名だと知り、優馬は同居を始めた直人が女といるところを目撃し、泉は気に掛けていた田中が住む無人島であるものを見てしまう。日常をともに過ごす相手に対し芽生える疑い。三人のなかに、山神はいるのか?犯人を追う刑事が見た衝撃の結末とは!

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「怒り 上巻」吉田修一(中公文庫)



二人が殺害された現場に残された「怒」という血文字。
凄惨な殺人事件の現場から始まる物語。
だが、上巻を読み終えた時点で、その動機は皆目見当もつかないし、
犯人の姿も浮かんではこない。
綴られるのは、千葉、東京、そして沖縄で生活をする者たちの、
日々の営み。
当たり前の日常の中で、彼らは出逢い、生活を共にしていく。
その姿があまりにも自然で、そのまま時が続くことを願いたくなるけれども。
読み進める程に暗い影を投げかけてくるのは、三人の男たちの見えない過去。
彼らに係る男も女も、皆、一様に傷ついている。
彼らはその過去を受け入れるのか、打ちのめされるのか。

優馬の母との決別が哀しかった。
後から悔いるから後悔。
伝えたい言葉は伝えたいうちに。
手が届かないところに逝ってしまった人には、何も伝えられない。



内容(「BOOK」データベースより)

若い夫婦が自宅で惨殺され、現場には「怒」という血文字が残されていた。犯人は山神一也、二十七歳と判明するが、その行方は杳として知れず捜査は難航していた。そして事件から一年後の夏―。房総の港町で働く槇洋平・愛子親子、大手企業に勤めるゲイの藤田優馬、沖縄の離島で母と暮らす小宮山泉の前に、身元不詳の三人の男が現れた。

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「雷の季節の終わりに」恒川光太郎(角川ホラー文庫)




そこに在る己の存在は確かに感じられるのに。
自らの立つその場所の、なんと寄る辺のないことか。
その里に在りながら、常に感じていた疎外感。
その理由がやるせない。
大切な人たちの消失。
死者の語らう真実。
その者の犯した罪に気付いた瞬間、彼は追われる身となり果てる。
どこまでが偶発的な出来事で、
どこまでが決められていた事だったのか。
此方と彼方。
交錯する過去と現在。
移り変わる視点は次第に近づいてゆき、彼らは再び巡り逢う。
そしてあまりにもあっけなくすれ違っていく。
雷の季節の終わりを迎えた少年は、この先、どんな四季を生きるのだろうか?

ホラー的要素は私的にはあまり感じられなくて、
むしろ幻想的と言った方がしっくりきます。
因習にとらわれてきた里の中に在っては、
すべてが運命(さだめ)であり、理(ことわり)である、と、
感覚的に納得しているあたり、独創的な著者の描く世界に引き込まれているのだと思いました。
異界をゆらゆらと漂う感覚が癖になりそうな物語。


内容(「BOOK」データベースより)

雷の季節に起こることは、誰にもわかりはしない―。地図にも載っていない隠れ里「穏」で暮らす少年・賢也には、ある秘密があった―。異界の渡り鳥、外界との境界を守る闇番、不死身の怪物・トバムネキなどが跋扈する壮大で叙情的な世界観と、静謐で透明感のある筆致で、読者を“ここではないどこか”へ連れ去る鬼才・恒川光太郎、入魂の長編ホラーファンタジー。文庫化にあたり新たに1章を加筆した完全版。

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「進撃の巨人 19」諫山創(マガジンコミックス)



共存不可。
殺るか、殺られるか。
数多の犠牲を払って開発された兵器。
考え抜かれた戦法。
そして、明かされた過去。
全てを納得したうえで手を汚したのなら、同じことが跳ね返ってきたところでそれは業だ。
誰もが正しくて、誰もが間違っている。
視点によって見方は変わるのだから。
「仕方なかった」
覚悟を決めたベルトルト。
全てを受け入れることで、人は強くなる。
己の内面と向き合うエルヴィンに虚無を感じるのは何故だろう?
彼は何処までも孤高で、その願いは独善的だ。
だけど、彼がいたからこそ、ここまでこれたのも事実。
残酷な世界の真相はいかに?

総力戦。
巨人側にまだ余裕がありそうな感じがするけど、最終決着はどうなるのか。
気になる~~!!

内容紹介

巨人に対する真の勝利を獲得すべく、調査兵団はウォール・マリア奪還最終作戦を決行する。作戦の内容はウォール・マリアのシガンシナ区に空いた穴を、エレンの硬質化能力によって塞ぐというもの。そして、ウォール・マリア内にあるエレンの生家の地下室に眠る「真実」を目指す。だが、そこには「獣の巨人」たちが待ち構えていた! 巨人と調査兵団。最終決戦が、いま始まる。

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「ダブル・バインド 4」英田サキ(キャラ文庫)



語られる事件の顛末。
やるせなさしか残らない。
被害者と加害者。
間違っていることはわかっていても、ハンムラビの法則が時に正しいと叫びたくなる。
祥の抱えた過去があまりにも痛ましかった。
6歳の子供が抱えるにはあまりにも辛すぎた過去。
それでも彼は、周りの人たちに支えられて、
生きていくことの素晴らしさを感じられると思う。
人は、いろんなことを抱えながら生きていくんだなぁ、と、
この物語に係った人たちをみていて、改めて思いました。
葉鳥が落ち着くところに落ち着いてくれて良かった!
そして、武骨な上條の存在はなんだかんだ頼もしかった。

発信機問題は私の中で無事解決。
新藤の愛の深さには私、感動すら覚えました。
上條と瀬名の掛け合いは最後まで楽しかった。
ハラハラしながらも、楽しく読み切った物語。


内容(「BOOK」データベースより)

連続殺人犯を追っていた葉鳥の消息が突然途絶えた!?心配する新藤は極道の若頭の顔を振り捨て、葉鳥の救出に向かう。時同じくして行方不明になった多重人格の少年・祥を案じる瀬名、そして事件の核心に迫った刑事の上條は、ついに真犯人へと辿り着く―!遺体発見現場で祥だけが目撃していた意外なその人物の正体とは!?散らばった謎のピースが合わさる時、浮かび上がる衝撃の罪と愛。

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「ガラスの鍵」ダシール・ハメット(光文社古典新訳文庫)



金と権力と人脈。
掌握したものを駆使すれば、事件の真相すら自在に操れる時代が
確かに存在した。
禁酒法が施行されていた時代のアメリカ。
市政に打って出ようとしたマドヴィッグと、彼の友人ボーモントの物語。
会話と情景描写に徹した文体。
それでも、ボーモントのマドヴィッグに対する友情が確かに伝わってくる。
彼はただ、友人の窮地を救いたかっただけ。
殴られても、その友と喧嘩をしても、見事に謎解きを果たしたボーモント。
だけど、読後に漂う寂寞感がやるせない。
開かれた扉を見つめるボーモントは何を思ったのだろうか?
75年前に書かれた本書。
名作は、時代を経ても名作。

読みやすさという点では文句の付け所がないけれども。
ハードボイルド好きとしては、
もう少し硬派を気取った訳文で読んでみたかったかも。
なーんて。
贅沢かな?

内容(「BOOK」データベースより)

賭博師のボーモンは、建設会社を経営する友人のマドヴィッグから大胆な計画を打ち明けられた。地元の上院議員の後ろ盾となって、市政の実権を握ろうというのだ。が、その矢先、議員の息子が殺され、関係者のもとにマドヴィッグを犯人とほのめかす匿名の手紙が届けられた。窮地に立たされた友のため、ボーモンは自ら事件の渦中に飛び込んでいく。非情な世界に生きる男たちを鮮烈に描くハードボイルドの雄篇。新訳決定版。

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「ダブル・バインド 3」英田サキ(キャラ文庫)



囚われ続けた過去の思いに決着をつけることのできた瀬名。
気持ちの整理にはまだ時間がかかりそうだけど、
これで次の恋に進むことができそう。
典型的男子脳の上條は考えた挙句に「結論が出た。ホモになろう」
無敵すぎて笑えるけど、頼もしいね。
胸の内を葉鳥に晒した新藤。
彼の愛とようやく前向きに向き合おうと決めた葉鳥。
それぞれの恋愛模様は好ましい方へと動き始めたけれども。
事件はより逼迫した状況へ。
そして、祥とヒカル、ケイの関係も只ならぬ方向へ。
この子たちにはもうこれ以上傷ついて欲しくないんですけど。
ダイヤのピアスが発信機であったらいいと、本気で思いながら、次巻へ。

途中からずっと引きずっていたもやもやは、
瀬名が渡米中にしたヒカルとの会話を、上條が瀬名にちゃんと説明したかどうかってこと。
したの?してないよね?
でも、そこ、すごく大事なんじゃないの!?と、もやもやもや……
次巻で決着!
大人カプは納まるところに納まると信じてますが。
祥とヒカルとケイの関係がどうなるのか。すごく気になる……



内容(「BOOK」データベースより)

「連続餓死殺人の捜査からお前を外す」。突然、現場を追われた警視庁刑事の上條。命令に納得できない上條は、強引に有休を取り単独捜査を続ける。しかも期限つきで恋人になったばかりの臨床心理士・瀬名が急遽渡米し、早々に二人は離れることに!?一方、激化する跡目抗争で新藤が負傷!!案じる葉鳥を「俺の前に姿を見せるな」となぜか遠ざけ…!?複雑化する事件で男達の真実の愛が交錯する。

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「無伴奏」小池真理子(新潮文庫)



美しい言葉で綴られる、とても残酷でとても哀しい恋の話。
私の小池真理子の原点。
何にでもなれる、どこにでもいける。
そんな、可能性を無限に秘めた多感な時期を共に過ごした四人の男女。
彼らの織り成す、大人びて見せるものの、幼さの拭えない、歪で、背徳的な四角形。
けれども、手を触れて壊してしまうことが躊躇われる何かが感じられるのはどうしてだろう?
それぞれに向けられた想いは、真摯で、ずるくて、だけどあまりにも必死で。
何処かで破綻することがわかっているからこそ、泣きたくなるほどに狂おしい。
「きみは人生が好きかい?」
自らの問いかけに対する渉の答えが哀しい。


「何故大学に行くのか?」
いくつかあった理由のひとつが、自分が生きている意味を教えてもらえると思っていたから。
「行ったところで何かが何かが変わるわけでもない」
あたりまえだ。
生きている意味は教えてもらえるわけじゃなくて、自分でみつけるもの。
変えてもらうんじゃなくて自ら変わるもの。
入学したところで何も変わらないことにものすごく落胆した後、
そんなふうに思えてものすごく楽になった学生時代。
と、あまりにも馴染んだ地名や店名に揺さぶられて、青臭い時代を思い出してみました(笑)

内容(「BOOK」データベースより)

その果てに待つものを知らず、私はあなたを求めた―。多感な響子は偶然に出会った渉に強く惹かれるが、相手の不可解な態度に翻弄される。渉に影のように寄り添う友人の祐之介と、その恋人エマ。彼らの共有する秘密の匂いが響子を苛み、不安を孕んで漂う四角形のような関係は、遂に悲劇へと疾走しはじめる。濃密な性の気配、甘美なまでの死の予感。『恋』『欲望』へと連なる傑作ロマン。

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「ダブル・バインド 2」英田サキ(キャラ文庫)



葉鳥の愛が切なくて、胸が痛かった。
頑なに愛を信じようとしない葉鳥は、でも、誰よりも愛を必要としている。
新藤もちゃんと葉鳥を愛してる。
安心してその胸に身を預ける……前に、
事件の核心に迫ってなんかひどいことになりそうな気がするんですけどー!
杞憂だといいな。
一線を越えた上條と瀬名。
大人の駆け引きめいた会話と、ものすごく艶っぽい行為にドキドキしました。
「後戻りはしない」と宣言した上條はカッコよかったけど、
納豆男と山芋男って……(笑)
やっぱりこの二人のやりとり、好きだわ。
祥とヒカルとケイの関係性にも穏やかならざる緊張が走り、
爆弾が投げかけられたところで次巻へ!

ちょっと!気になる!!!!

内容(「BOOK」データベースより)

餓死死体遺棄事件で、二人目の犠牲者が発見された!緊迫を増す現場で犯人を追う警視庁刑事の上條。そんな上條が捜査の合間を縫って通うのは、臨床心理士の瀬名―高校時代の後輩だ。皮肉と色香を纏う男に変貌した瀬名に惹かれつつ、地道な捜査を続ける上條だが、ついに犯人に迫る物証を手に入れる!一方、極道の若頭・新藤とその愛人・葉鳥も、独自のルートで同じく犯人を追うが…。

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「冬の狼 挑戦シリーズ2」北方謙三(集英社文庫)



あれから三年。
男たちはそれぞれの場所で戦っていた。
彼らが再びひとつの場所に集った時、膠着していた事態が動く。
三年の間過ごした環境は、彼ら自身を変えた。
だが、彼らの魂は変わらない。
その心に抱いた誇りも。
始めてしまったからには、最後まで闘い抜くしかない。
困難に立ち向かい、意志を貫き通そうとする彼らの傍らで、
待つだけだった高樹も動いた。
ペルーで本物の戦士となった竜一は、
日本での戦いが窮屈そうに感じる程、大きな男になって帰ってきた。
彼の立ち回り方が本当にかっこいい。
そして竜一は再び、己の身の丈に相応しい戦場へ。

「馬鹿がひとり、かえってきたわ」
諦めと愛しさとが感じられる朝子の台詞がすごく好き。
竜一の誇りの旗で、涙を一滴拭った栄の行為も好き。
そしてアサキータ。
男は命がけで戦っていた。
そして、女もまた、それぞれの持ち場で戦っているのだ。


内容(「BOOK」データベースより)

「あたしの誇りは竜よ。あたしの狼、冬に向かって走る狼」女は唇を重ねる。水野竜一が戻ってきた。2年間、ペルーでゲリラとなり、殺人術と大いなる誇りを身につけて。だが、かつて生命を賭けて共に闘った深江は行方不明だった。深江を探す竜一の前に、銃弾の暴力が立ちふさがる。仲間が死ぬ。老警部「おいぼれ犬」の姿がチラつく。巨大な、姿を見せぬ敵に、ゲリラ戦士竜一がついに牙をむいた。

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