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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「蛇とワルツ」榎田尤利(シャイノベルズ)



孤独を抱えた人たちを描いてきた、シリーズ最終巻。
手ひどい裏切りを受けた志摩が負った深い心の傷。
もう、誰も愛すまいと誓った頑なな心にスルリと入り込んできた一匹の蛇。
その腕に抱かれて得られる安らかな眠り。
「愛してくれれば、温かくなれる」
とはいえ、殴られて当然のことをしでかしたので、洋司は一発殴られて正解。
不遜で強引で気まぐれで、でも気配りができて甘やかし上手な洋司。
人馴れすると蛇は犬属性になるのかしら?と思わせる豹変っぷりが可愛い。
仕事に没頭することで孤独を紛らわせていた志摩の見つけた愛。
お幸せに☆




内容(「BOOK」データベースより)

「俺はあんたを甘やかす、優しいペットだ。まるで恋人のような」『Pet Lovers』のオーナーである仁摩遙英は、仕事が恋人というワーカホリックだ。そんな仁摩は、問題児のペットを躾け直すため自宅マンションで預かることに!カテゴリー爬虫類の蛇、竜巳杏二だ。命令しても動かず、呼んでも振り向かない扱いづらい蛇に、仁摩はうんざりする。だが、不遜なばかりではない杏二を知るうちに、まるで恋人のように惹かれ始めていくのだが、ある裏切りを知り…Pet Lovers至上の恋、登場。

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「時のアラベスク」服部まゆみ(角川文庫)



そしてすべての真実が闇の中に葬られるのだとするならば。
殺された人たちはあまりにも救われない。
殺人事件が起きたというのに、危機感のなさすぎる人々の対応。
探られたくない腹を抱えていたからこそ、警察の介入を忌避した慶。
だが、彼の主張を通した人たちもまた、同罪だ。
推測の域を出ない無責任な言葉が、新たな悲劇を生む。
春美の無神経に過ぎる言動も相乗効果になって、
途中までひどくイライラしながら読み進めていたのだけれども。
亮が気づいた真実。千秋の語った真実。そして当事者たちからの手紙。
真実が解き明かされていく最後の展開にはぐっと引きつけられてしまった。

ロンドン、ブリュージュ、そしてパリ。
憂鬱そうな空の下の異国の地に、降り立ってみたい。
そんな想いに駆られる読後でした。


内容(「BOOK」データベースより)

東京、冬。出版記念会の席上に届けられた一本の真紅の薔薇から、惨劇の幕が開く。舞台は、ロンドン、ブリュージュ、パリを経て、再び東京の冬へ。相次いで奇怪な事件が続発し、事態は混迷の度を深めていく。精緻な文体と巧妙なトリックを駆使して、人生の虚飾と愛憎を描く、本格長編推理。第七回、横溝正史賞受賞作。

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「秘書とシュレディンガーの猫」榎田尤利(シャイノベルズ)



【信じても、信じなくても、裏切られるときは裏切られるのだ。
 ならば信じた方がいいと、今になって思う】

舘が自分の想いに気付いてからの展開が良かった。
「きみにとって九億を上回る価値の男なら、そこにいる」
告げられた愛を信じきることができない雨宮に対して、
自分に心を預けることを求めず、ただ自分が信じるから一緒にいようと、告げた舘。
人を信じることの大切さにいつしか毬岡爺が気づいたように、
好きなのに信じられないと訴えた雨宮もまた、
舘の元で大切に甘やかされながら、気づいていくのだろう。
臆病で人慣れしていなくて人間不信で、それなのに、
人を「赦す」ことを知っていた雨宮。
彼を傍に置いた毬岡爺の愛情がそこに垣間見れるような気がした。

内容(「BOOK」データベースより)

シュレディンガーを正しく指摘したひとりに全財産を相続させる―亡き祖父の遺言を聞くため古い屋敷を訪ねた舘を待っていたのは、風変わりな猫探しの遺言と初めて会う従兄弟、それに祖父の美しい個人秘書、雨宮だった。金と権力を信じる舘は、遺言の内容にうんざりしながらも屋敷に滞在することを決める。一方、雨宮は初めて会ったときから、舘のことが嫌いだった。それなのに、舘の挑発に乗ってしまい…!?甘くてほろ苦い大人の恋。

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「月神の浅き夢」柴田よしき(角川文庫)



【長い、長い夜の果て。途方もなく遠い夜明け。だが、開けない夜はない】

緑子の言動を見ていて、つくづく、女は感情で動く生き物だと思ったけれども。
それは何も女に限ったことではない。
男だって感情で動き、時に流される。
弱音を吐くのもいい。泣き叫んだってそれは無様じゃない。
だけど「逃げたい」というセリフは裏切りだと思う。
結局、麻生の翼は闇色には染まらない。
昏い夜の中の練は、いまも孤独だ。
読後に噛みしめる想いは、ひどく苦い。
緑子の強さは現実から目を背けないこと。
男社会にあって女であることを否定しないこと。逃げないこと。
初読の時は受け入れられなかった彼女の在り方を、理解はできないまでも
認められる分だけの年数が経ったのだなぁ、としみじみ思いました。

田村と練がじゃれあっている描写がなんだか可愛かった。
切ないままお預けくらって……もう10年以上かぁ。続き、待っています!

内容(「BOOK」データベースより)

若い男性刑事だけを狙った連続猟奇殺人事件が発生。手足、性器を切り取られ木にぶらさげられた男の肉体。誰が殺したのか?次のターゲットは誰なのか?刑事・緑子は一児の母として、やっと見付けた幸せの中にいた。彼女は最後の仕事のつもりでこの事件を引き受ける。事件に仕組まれたドラマは錯綜を極め、緑子は人間の業そのものを全身で受けとめながら捜査を続ける。刑事として、母親として、そして女として、自分が何を求めているのかを知るために…。興奮と溢れるような情感が絶妙に絡まりあう、「RIKO」シリーズ最高傑作。

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「聖母の深き淵」柴田よしき(角川文庫)



【愛してるんだ】

一連の事件の顛末を見事に描き切っている中で、
キリキリと胸が軋むような練と麻生の関係もきっちり読ませてくれました。
緑子に対しては思うところが色々で、振りかざしてくるような言い分に腹が立つけど、
その指摘の鋭さにハッとさせられたりもする。
結局彼女の女の部分に自分の感情も振り回されているような気がする。
安藤と連れ添う決意をしたシーンは好き。
愛。
とても崇高で、とても複雑なもの。
抱いて堕ちた泥沼の中から這い上がった時の麻生の翼の色は?
「愛している」という言葉に嘘がないことはわかっているけれども。
練の幸せを願ってやまない私には、泣きたくなるような問いかけです。

初読の時より再読した時の方がジワジワと胸に迫る切なさが半端ない。


内容(「BOOK」データベースより)

一児の母となった村上緑子は下町の所轄署に異動になり、穏やかに刑事生活を続けていた。その彼女の前に、男の体と女の心を持つ美人が現れる。彼女は失踪した親友の捜索を緑子に頼むのだった。そんな時、緑子は四年前に起きた未解決の乳児誘拐事件の話をきく。そして、所轄の廃工場からは主婦の惨殺死体が…。保母失踪、乳児誘拐、主婦惨殺。互いに関連が見えない事件たち、だが、そこには恐るべき一つの真実が隠されていた…。ジェンダーと母性の神話に鋭く切り込む新警察小説、第二弾。

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「RIKO~女神の永遠~」柴田よしき(角川文庫)



【あたしの中で、女は永遠だ】

どこまでも泥臭い警察組織の中にあって、彼女はどこまでも女だった。
対等であることと平等であることは意味が違う。
女が女であるという、ただそれだけの理由で貶められる謂れはない。
男にしかできない戦い方があるのなら、女にしかできない戦い方で挑んでいけばいい。
平等で在ろうとすることは難しいだろう。
だが、対等であろうと望むその先には果てがない。どこまでも上り詰めていける。
好悪で問われれば、緑子のことは多分好きにはなれない。
でも、彼女の奔放さと強さ、そしてしたたかさは実は嫌いではない。
高須に対してやり返した緑子のやり口はお見事でした。

練の物語に行きつくために、この巻は避けて通ることのできないハードルです(笑)


内容(「BOOK」データベースより)

男性優位主義の色濃く残る巨大な警察組織。その中で、女であることを主張し放埓に生きる女性刑事・村上緑子。彼女のチームは新宿のビデオ店から一本の裏ビデオを押収した。そこに映されていたのは残虐な輪姦シーン。それも、男が男の肉体をむさぼり、犯す。やがて、殺されていくビデオの被害者たち。緑子は事件を追い、戦いつづける、たった一つの真実、女の永遠を求めて―。性愛小説や恋愛小説としても絶賛を浴びた衝撃の新警察小説。第十五回横溝正史賞受賞作。

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「獅子は獲物に手懐けられる」榎田尤利(シャイノベルズ)



耐えるしかなかった理不尽な仕打ち。
家族を守るつもりで耐え続け、その結果が母の死だったのだとしたら、
それはあまりにも残酷で悲しい。
何故泥沼から抜け出そうとしない?と問いかけることは簡単だけれども。
当事者にしかわからない柵と鬱屈がある。
差し伸べた手を拒絶されても、千秋のことを諦めなかった真。
どん底まで落とされかけ、爆発した千昭を繋ぎとめた真の叫び。
長い間の孤独と絶望が痛いほど伝わってきた千昭だからこそ、
自由で鷹揚な真と出逢えてよかったと、心から思う。
リスタートの人生はここから。幸せになってほしい。

志水さんの描くシンが半端なくかっこよかったです!
ゴロゴロ喉を鳴らして甘えるライオン……素敵☆



内容(「BOOK」データベースより)

「他の男を気にしてる場合か?俺だけ見て…俺だけ感じていろ」呼吸器内科の医師である鶉井千昭は、ある夜、自宅で突然見知らぬ男に襲われた。それが会員制デートクラブ『Pet Lovers』のライオン、蔵王寺真との出会いだった。足首に見えない鎖を繋がれている千昭と、金で愛を売る不遜なライオン、真。千昭の義兄の企みの下、不本意な出会いを果たしたふたりだが、いつしか強く惹かれあうようになる。しかし、ある過去が千昭を苦しめ…究極のビースト・ラブ。

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「ブルース」花村萬月(角川文庫)



【あまりに胸が、心が痛いので、気を失った】

あまりに純粋で狂おしい情愛と、苛烈なまでの暴力の連鎖。
法の外にはみ出した行為を是とする徳山の想いに同調するまい、と、
自分に言い聞かせるのだけれども。
報われることのない彼の想いに胸が軋む。
徳山の想いを認め、受け入れながらも、
対峙する道を選ばざるを得なかった村上の頑なで不器用な潔さ。
崔とサチオの犠牲の上に成り立つ安寧を良しとせず、
綾の元を去ることを選び、つかみかけた光に背を向けた。
誰も彼もが抱えていた大人になりきれない青臭さが、
自らも含む人々の運命を歪ませていったのだ。
描かれる物語は魂の慟哭。文字通りのブルース。

北方氏のあとがきが秀逸。
「たまらんぜ、萬月。なにが悲しくてこんな小説を書く」
私にはその言葉がもうたまりませんでした。



内容(「BOOK」データベースより)

南シナ海の烈風。眼下で砕ける三角波。激しい時化に呻く25万トンの巨大タンカーの中で、村上の友人、崔は死んだ。仕事中の事故とはいえ、崔を死に至らしめた原因は、日本刀を片手に彼らを監督する徳山の執拗ないたぶりにあった。徳山は同性愛者であった。そして村上を愛していた。村上と親しかった崔の死こそ徳山の嫉妬であり、彼独自の愛の形であった―。横浜・寿町を舞台に、錆び付いたギタリスト村上とエキセントリックな歌姫綾、そしてホモのヤクザ徳山が奏でる哀しい旋律。芥川賞作家が描く、濃密で過剰な物語。

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「愛煉の檻 柴乃太夫の初恋」犬飼のの(ホワイトハート)



相変わらずの設定の作り込みの上手さにため息。
職業軍人ミハイルと刀匠忍の五年越しの純愛。
天才刀匠と言われた忍の打った刀は鬼を生む。
それでも、刀を打ちたいと願う己の気持ちを封じ込めるために、
吉原に身を落とし、右腕を砕く忍。
そこに宿るのは、凄まじいまでの修羅。
明かされた秘密は鬼を生み出してしまったからくり。
それには底のない情念を突きつけられた。
愛していると。
変わらぬ想いを語るその胸の奥底で噛みしめられる、忍の悲壮な決意が哀しい。
ミハイルは彼の願いをかなえるために手を尽くすだろう。
秘められた思いに気付かぬまま。
続き、とっても気になります!

内容(「BOOK」データベースより)

愛欲と歓楽の都・奥吉原。この色街で身分を隠し、難攻不落の処女太夫として名を馳せる美貌の陰間・紫乃は、ある晩、銀髪の貴族軍人ミハイルと再会する。彼は五年前、紫乃が天才刀匠・太刀風忍と呼ばれていた頃に初めて恋に落ちた人だった。変わりはてた忍に、構わずミハイルは身請けを申し出るが、忍は誰にも言えない秘密を抱えていて…。再会が残酷な運命を呼び起こす、哀しくも妖しい、華麗なる遊郭綺譚!

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「失恋ショコラティエ 9」水城せとな(フラワーコミックス)



自分の運命を左右する出逢い。
たとえそれがどれほど苦しいものだったとしても、
サエコと出逢えた爽太は幸せだったのだと思う。
彼女との出逢いが彼に天職を示し、多くの人との出逢いをもたらしたのだから。
旦那と対峙したサエコの立ち回りは見事。
流されずに爽太と戦ったえれなも見事。
割れたらごめんね、って果てしなく可愛い。
まつりちゃんのしたことは褒められることじゃないけど、幸せになってほしい。
オリヴィエは大変オトコマエでした。
爽太の涙にうるっとしたけど、きれいに着地した最終巻でした。

自分が「こうしたい!」って思ったことはとことんやりたい。
サエコの強さはそれを実行できちゃうことだと思う。
「○○だからできない」って言い訳を考える方が楽なこともあるからね。
みんな傷つきまくったお話だからこそ、このフィナーレで良かったわ。





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