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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「刑事のまなざし」 薬丸岳(講談社文庫)



【どんな理由があっても人を殺してはいけないんだ。人を傷つけてはいけないんだ】

七編の連作ミステリー。
事件と向き合う夏目は常に公平に、時に厳しく、そしてやさしく事件の当事者たちに対峙する。
七つの犯罪にはどれも複雑に絡み合う人々の心のあり様を暴き立てる。
どんなに誰かのためと思っても、罪を犯すことは悲しみしか生まないということを知らしめる。
随所で語られる彼の言葉は、どれもこれも胸に残った。
たとえどんな事情があっても、人を殺してはいけないと諭す夏目。
刑事であり、そして犯罪被害者の家族でもある彼の胸に、激しい憎しみの塊はない。
最後の物語で、彼は娘を植物状態にした犯人と対峙する。
犯人を前にして憎しみの連鎖を断ち切る言葉を叫んだ彼の気持ちの強さと一生ぬぐえない悲しみに胸を打たれた。


内容(「BOOK」データベースより)

ぼくにとっては捜査はいつも苦しいものです―通り魔によって幼い娘を植物状態にされた夏目が選んだのは刑事の道だった。虐待された子、ホームレス殺人、非行犯罪。社会の歪みで苦しむ人間たちを温かく、時に厳しく見つめながら真実を探り出す夏目。何度読んでも涙がこぼれる著者真骨頂の連作ミステリ。

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「21 twenty one」 小路幸也(幻冬舎文庫)



【何もかもうまく行くなんてありえないし、
 うまく行かない方があたりまえなんだと思っているけど、それでも。
 生きていくことが、幸せへと向かう唯一の手段だと思っている。】

仲間の死の知らせを受けてから、20人の同級生たちは彼の自殺の理由を問いかける。
何故?と。
そして、それぞれが小さな理由に思い至り、自分のせいで自殺したのでは?と、己を責める。
それは、彼の自殺を止めることのできなかった……言い換えれば、
彼の悩みを汲み取ることのできなかった自分自身への後悔。
彼を苦しめていたものは、共に過ごしていた中学自体から彼の中に棲みつづけていて、
結局彼は寂しさに勝てなかった。
たとえ、今がどんなにつらくても。
いつかはこの暗闇から抜け出せる。
そんなふうに思えるだけの小さな強さをいつだって纏っていたい。

「21 twenty one」
21という不思議な偶然で結ばれた彼らの絆がとてもすてきだと思う。


内容(「BOOK」データベースより)

二十一世紀に二十一歳になる二十一人。中学入学の日、クラス担任の先生が発見したその偶然が、僕たちに強烈な連帯感をもたらした。だが卒業して十年後、その仲間の一人が自殺した。僕たちに何も告げず。特別な絆で結ばれていると信じていた人を突然喪った時、胸に込み上げる思いをどうすればいいんだろう。“生きていく意味”を問いかける感動作。

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「海とヘビースモーカー」 榎田尤利×峰島なわこ(シトロンコミックス)



【海があるってことは すべてがあるってことなんだ】

海をテーマにした三編の物語。
どの物語にも登場人物たちの決して平坦ではない人生が描かれていて、
どの物語も切なくて優しい。
静かに感情を揺さぶられる。
この先もいろいろなことがあるかもしれないけれども。
想いを通わせあった二人で、互いを支えあいながら幸せな人生を歩んでいってほしい。
素直にそう思える、作品でした。



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「三匹のおっさん」 有川浩(文春文庫)



【願わくばこのまま、行きつ戻りつしながら何かがいい方向へ変わっていけばいい。】

面白かったぁ!!!
読後、単純にそう叫べる本。
そして誰かに勧めたくなる本。
自発的に自警団を結成したかつての悪がきトリオ。現在還暦の三匹のおっさん。
遠慮のないやりとりや、戦っても負けない強さや、人を許せる度量の広さが底抜けにカッコイイ。

生意気なイマドキの子供かと思っていた祐希が、実は両親よりもよっぽど大人で、
定年退職するまで距離を置いていた祖父の清一と、改めて交流を深めていく様子に気持ちがあったかくなる。

いくつなっても気持ちは現役。
お洒落して、できることを精いっぱいやって、楽しいことを見つけて、友だちと馬鹿話に花を咲かせたい。
そんなふうに年を重ねていけたらいいなーと思いました☆



内容(「BOOK」データベースより)

還暦ぐらいでジジイの箱に蹴り込まれてたまるか、とかつての悪ガキ三人組が自警団を結成。剣道の達人・キヨ、柔道の達人・シゲ、機械いじりの達人の頭脳派・ノリ。ご近所に潜む悪を三匹が斬る!その活躍はやがてキヨの孫・祐希やノリの愛娘・早苗にも影響を与え…。痛快活劇シリーズ始動。

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「闇の底」 薬丸岳(講談社文庫)



【たとえ犯人が捕まったとしても、けっして納得のいく答えは出ないだろう】

殺人を抑止するために、かつての犯罪者を殺す。
それは是なのか、或は非なのか?
司法や警察は何のために存在するのか?
その模範回答と、家族を殺された遺族の側の感情は、必ずしも一致するものではないだろう。
だから処刑人としてのサンソンが擁護される。
だが、それはとても怖くて悲しい世の中だと思う。
犯罪はなくならいない。それが現実。
それ故、刑事の仕事も潰えるいことはない。
妹を殺した犯人と対峙させるというやりかたで、長瀬の刑事としての成長を願った藤川。
身勝手だと思った。
誰しもが強く在れるわけではない。
そして、誰しもが赦せるわけではないのだ。


内容(「BOOK」データベースより)

子どもへの性犯罪が起きるたびに、かつて同様の罪を犯した前歴者が殺される。卑劣な犯行を、殺人で抑止しようとする処刑人・サンソン。犯人を追う埼玉県警の刑事・長瀬。そして、過去のある事件が二人を結びつけ、前代未聞の劇場型犯罪は新たなる局面を迎える。『天使のナイフ』著者が描く、欲望の闇の果て。

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「おれのおばさん」 佐川光晴(集英社文庫)



【人と人とはお互いの何もかもを知らなくてもつきあっていけるのだし、
 だからこそ、いつかすべてを知っても、それまでと変わりなくつきあいつづけられるのだ。】

それぞれの事情を抱え、児童養護施設で暮らしながらも、現実を見据え、懸命に生きていく中学生の子供たちと、
彼らの成長をあたたかく、時にきびしく見守るおばさんとの物語。
親の犯罪や虐待等の過酷な体験をしながらも、
自分のおかれた環境に腐ることなく、相手を思いやり、互いの自主性を尊重し、
人としてまっすぐに育っていく彼らの成長過程は、読んでいてとても心強い。
なんにだってなれると信じて全力で生きる。
忘れかけていた熱い想い。
なんだかパワーを注入してもらったような気持ちになれる一冊でした。


内容(「BOOK」データベースより)

ある日突然、父の逮捕を知らされた陽介。父が横領した金を返済するため、陽介は都内の名門中学を退学し、母の姉が運営する札幌の児童養護施設、魴〓(ぼう)舎に入ることになる。急激な暮しの変化に当惑しながらも、パワフルなおばさんと個性豊かな仲間に囲まれて、陽介は“生きる”ことの本質を学んでゆく。ときに繊細で、たくましい少年たちの成長を描いた青春小説。第26回坪田譲治文学賞受賞作。

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「ヒートアイランド」 垣根涼介(文春文庫)



【もし決心がついたら、一年後の今日のこの時刻に、ここに来い。
 俺たちが待っている】

熱気を孕んだ街、渋谷で繰り広げられる破天荒な攻防戦。
若さ故の熱さと傲慢、そして不安定さを孕んだストリートギャングのアキとカオル。
成熟し、安定した大人の魅力溢れるプロの強盗の柿沢と桃井。
そして、ヤクザの裏金を巡って二重三重……と思いきや、四重に絡み合うストーリー展開。
テンポよく読めます。そしてキャラがとっても魅力的。
何度読み返しても面白い。

主だった登場人物が活き活きしているのは、それぞれのバックボーンがしっかりと描かれているから。
だから彼らの息吹をリアルに感じられる。(柿沢は除く>笑)
個人的にはチューンナップについてマニアックに語られていてニンマリ。

この物語は終わりの物語でもあり、始まりの物語でもある。
「雅」というチームで共に過ごしたアキとカオルの青春時代は、この本で終わりを告げる。
その後の彼らの人生は………続編に期待を寄せることにしよう。


内容(「BOOK」データベースより)

渋谷でファイトパーティーを開き、トップにのし上がったストリートギャング雅。頭のアキとカオルは、仲間が持ち帰った大金を見て驚愕する。それはヤクザが経営する非合法カジノから、裏金強奪のプロフェッショナルの男たちが強奪した金だった。少年たちと強奪犯との息詰まる攻防を描いた傑作ミステリー。

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「囀る鳥は羽ばたかない 1」 ヨネダコウ(H&C Comics)



まるで、淀んだ空気の中で息苦しく呼吸をしているかのような閉塞感。
まさに「矛盾でできている人間」が、自分の感情をもてあましながら、
或は、どこかで何かを諦めながら、日々を過ごす人たち。
息苦しさと痞えるような胸の痛みがどこからくるのかわからないまま頁を捲る手が止まらない。
矢代と百目鬼。
彼らのこの先の物語が気になります!



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「キャッスルマンゴー 1・2」 小椋ムク/木原音瀬





子供のウソと大人の責任感からはじまった関係。
その関係が本物の恋愛に変わっていくまでの気持ちが綺麗に描かれた本だった。
想いを伝える言葉が足りなかったり、こうすることが相手の為と自己完結してしまったり。
好きっていう想いが大きくなればなるほどすれ違っていってしまった二人。
大人の分別って~~!!と思いつつ、とりあえず自分も大人カテゴリーなので、
その分別が理解できてしまうところがまたもどかしい。(苦笑)
時間と距離を置いても揺らぐことのなかった想い。
感情を爆発させた万を追いかけた十亀になんだか安堵してしまった。
灯りのついた部屋。
用意された食事。
たったひとりで生きてきた十亀に「おかえりなさい」という言葉をかける万。
思わず笑顔になってしまうラストでした。





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「オルゴール」 中園直樹(幻冬舎文庫)



【正しい、まちがってるは関係なく、
 「生きるためには自分を変えていかなくてはいけなかった」のです。】

いつ買ったのかわからないけれども、なぜか今朝積読本棚から足元に落ちてきた本。
読み時なのねー、と、鞄にしまって家を出てみた。

感情移入しすぎるとツライだろうなぁ、と思ったので、なるべく俯瞰的に読むようにしながらの読書。
感受性が強くて繊細な子供が生きることを耐えがたく思ってしまう世界。
不合理で理不尽だ。
剥き出しの悪意を、どうしてあんなにも執拗に醜悪に、他者に向けることができるのだろう?

何度も何度も押しつぶされそうになりながら這い上がってきたという、アンデルセンのようにはなれなかった彼。
幸せのかけらを分け与えたいと願い、幸せのかけらを受け取りながらも、それでも、命を絶つことを選んだ彼。
やるせなさすぎる……

作者のおっしゃる通り、いつか、このような小説が必要となくなる日が来ることを、切に願います。



内容(「BOOK」データベースより)

デパートのオルゴール売り場で出会った「ぼく」と克己。育った環境も性格も正反対なふたりに、友情が芽生えていく。ある日、克己は、誰にも言えない秘密を抱えたまま、「ぼく」の前からいなくなった。一通の手紙とオルゴールを残して。純粋であるがゆえに傷つけ合う若者の心とすれ違いの葛藤を瑞々しいタッチで描いたデビュー作、待望の文庫化。


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