きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「ハルビン・カフェ」 打海文三(角川文庫)
【愛する者を殺された者には報復する権利があるはずだ。 その権利をきみは認めないのか。
認めるもんですか。誰にも人を殺す権利なんかない。】
めまぐるしく移り変わる視点。時代。人間模様。
全体像の見えないジグソーパズルのピースを必死でかき集め、つなぎ合わせていくような感覚は圧巻。
バラバラだったピースがどんどん組み合わされていくにつれ、この物語に深くのめりこんでいく。
だが、懸命に作り上げていくパズルの全体像はどこまでも曖昧なままで、それ故に頁を捲る手が止まらない。
自分が息を詰めて物語の世界にどっぷりとはまり込んでいたことに気づくのは、
読了後に吐き出した吐息の重さで……だ。
海市という架空の都市を主軸にさまざまな思いを巡らせながら生きる人々の物語は
まさに秋の夜長にふさわしい、濃密な物語だ。
情報量が膨大な物語。
もう一回読んだら、より楽しめるに違いない。
内容(「BOOK」データベースより)
福井県西端の新興港湾都市・海市。大陸の動乱を逃れて大量の難民が押し寄せ、海市は中・韓・露のマフィアが覇を競う無法地帯と化した。相次ぐ現場警官の殉職に業を煮やした市警の一部が地下組織を作り、警官殺しに報復するテロ組織が誕生した。警官の警官による警官のための自警団。彼らは「P」と呼ばれた―。第5回大薮春彦賞を受賞した、著者渾身の最高傑作。
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「スロウハイツの神様 上・下」 辻村深月(講談社文庫)
スロウハイツの住人は、皆がどこか不完全で、未成熟で、不健全。
だからこそ、やさしい。
最終章では文中から伝わってくるあたたかさに、泣けて仕方がなかった。
天使を見つけた彼に「良かったね」と泣ける感性が自分の中にあって、よかった。
あたしはやっぱり彼女の感性が大好きです。
痛みと優しさとが混在する、なんとも言いがたい感じが好き。
「それは、青春のある一部分にだけ響く物語で、皆、自分のその時代が終わるとそこから卒業する」
作中に出てくるチヨダ・コーキという作家の作品を評した言葉だけれども。
辻村作品が胸に響くのは、その時代から抜けきることのできないまま、
或いは、その時代を何処かに引き摺ったまま大人になってしまった所以なのかもしれない……
なーんて。
青いこと言ってますねー。(笑)
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「マリアビートル」 伊坂幸太郎(角川文庫)
【ようするに、『ぜんぜん正しくないこと』を『正しい』と思わせることは簡単だって話だよ。
大事なのは『信じさせる側』に自分が回ることなんだ。】
物語の舞台となるのは新幹線の車内。
中盤を過ぎたあたりから、物語は一気に加速する。
奪うものは奪われる世界で生きる彼らの死は、因果応報、或は、自業自得、だ。
現役ではないとはいえ、そんな世界で何十年も生き延びてきたご夫妻は、文字通りの伝説の業者であり、
そんな猛者を相手にして、たかだか十数年生きただけの子供がうまく立ち回れるわけがない。
自身の力に驕り、多くの人の心を弄んだ報いは、必ず受けることになる。
二度目があるのなら、彼はもっとうまく立ち回れたのだろうけれども、さすがに人生は一度きり。
リセットはあり得ない。
パーシーのシールを貼った檸檬の想いと、それをちゃんと汲み取った蜜柑。
無関心なようでお互いのことを理解しようとしていた彼らが好きだわ~
内容(「BOOK」データベースより)
元殺し屋の「木村」は、幼い息子に重傷を負わせた相手に復讐するため、東京発盛岡行きの東北新幹線“はやて”に乗り込む。狡猾な中学生「王子」。腕利きの二人組「蜜柑」&「檸檬」。ツキのない殺し屋「七尾」。彼らもそれぞれの思惑のもとに同じ新幹線に乗り込み―物騒な奴らが再びやって来た。『グラスホッパー』に続く、殺し屋たちの狂想曲。3年ぶりの書き下ろし長編。
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「クロネコ彼氏の甘え方」 左京亜也(ディアプラスコミックス)
【なんにも持ってなかった奴だから
急に近づかれるとビビって動けなくなるんすよ】
にゃんこ慎吾が可愛すぎる……(≧▽≦)
前作で付き合うことになった賀神と慎吾だけど……お互い好きすぎてタイヘンなことに。
好きだからこそ、失うことが怖くて、不安で仕方がない慎吾と。
好きなのに、その想いを信じてもらえないことが悲しい賀神と。
気持ちがすれ違って、傷つけて、傷ついて。
あんまりにも切なくなって途中、なんだか泣きそうになったけど、
ちゃんと通じ合えて、ホントによかったわ~~。
慎吾をつかまえて「あきらめない」って言った賀神がかっこよかった。
余裕ありそうで全然余裕のない賀神が、揺るぎない包容力のある男に成長してくれることに期待☆
シリーズはさらに続くようなので楽しみ~~♪
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「ロマの血脈 上・下」 ジェームズ・ロリンズ(竹書房文庫)
【いったい何をしようとしているんだ?
俺たちを救おうとしているのさ。】
心無い大人たちの手によって過酷な運命を背負うことになってしまった子供たち。
破滅へとむかうこの世界を救うために何をなすべきか。自分たちに何ができるのか。
知っていたことが悲しい。
そんな子供たちと、彼らを見守るチンパンジーのマータとの交流には胸が熱くなった。
今回はイラストもとても重要な意味をもつわけだけど……
ラスト一枚。
小説という文字を読む媒介において、イラストの視覚的効果がここまである本はなかなかないと思う。
コワルスキの存在は本当に和むというかなんというか……
好きだなー。
少女の謎めいた言葉は新たなる物語への布石。
次巻が待ち遠しいわ。
上巻内容(「BOOK」データベースより)
シグマフォースのグレイ・ピアース隊長の目の前で一人の男性が射殺された。著名な神経学者であるその男性、アーチボルド・ポークは、致死量の放射線を浴びていた。デルポイの神殿が描かれた硬貨と、不思議な能力を持つ少女の手による絵を手がかりに、グレイたちシグマの隊員は、ポークの娘エリザベス、ロマの男性ルカとともに、インドへと向かう。一方、ロシアのウラル山脈で記憶を失った一人の男性が目を覚ました。彼は不思議な能力を持つ三人の子供から、「僕たちを救い出して」との依頼を受ける。その頃、ロシアではニコライ・ソロコフ上院議員とサヴィーナ・マートフ少将を中心に、チェルノブイリ原発を利用したロシア再興計画が進んでいた。その計画に参加させられていたのが、不思議な能力を持つ子供たちだったのだ。子供たちの能力を増幅させる人体実験には、シグマの存在を疎ましく思うアメリカのグループも関与していた…。
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「チェーザレ 破壊の創造者 1~10」 惣領冬実 (KCデラックス)
作品に圧倒されて呑まれる感じは本当に久しぶり。
2006年。1巻が出た時から買い続けて積んでいた本。
第一部が完結し、ミケランジェロ展を鑑賞してきたこのタイミングで読み始めて大正解。
約10年。
自分もそれなりにいろいろなものを見て、考えて。
ちょっとでも知識の蓄積ができているからこその面白さ。
惣領さんの絵も素晴らしくキレイで、うっとりと見入ってしまう。
それにしても……歴史って本当に壮大で奥が深い。
すべての事象が現代につながっていると思うと、なんだか感慨深いわ。
歴史的な大転換期を迎えた中、学生時代を終えようとしている青年たち。
多感な時期を共に過ごし、確実に絆を深め、確実に成長を遂げている姿が何とも心強い。
と同時に、この先の彼らの困難を思うと何とも言えない気持ちになる。
今日と同じ明日を当たり前のように迎えられる生活って、実はすごいんだなーと。
「今日まで生き延びてきたことに乾杯」とても重い言葉だけど、
静かに笑って酒を酌み交わす友がいることは、ものすごく心強いと思う。
物語に圧倒され、そして呑まれるような感覚を味わうのは本当に久しぶり。
描写の素晴らしさは、あたかも芸術を見ているかのよう。
良い読書でした。
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「がっこうのせんせい 1~8」 松本花(ディアプラス)
10年来の物語の完結。
つらい過去を乗り越え、山の中の学び舎で生活を共にしながら成長していく
人間未満の動物たちと、半人前のせんせいの姿は、何回読み返しても可愛いし、微笑ましい。
友のいじらしさに泣いて始まった一巻だったけど、最後もやっぱり友の健気さに涙……
目に見えない何かに導かれるようにして集った「がっこう」での賑やかな生活を得るまでの
彼らの過去には毎回泣かされたけど、だからこそ、今の彼らの笑顔に癒される。
先生。生徒。友だち。恋人。家族。
一言では言い表せない絆でつながっている彼らの未来に乾杯☆
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「ユダの覚醒 上・下」 ジェームズ・ロリンズ(竹書房文庫)
【今だけは、嘘でもいいから大丈夫だと答えてほしかった】
シズマフォースシリーズ3作目。
アメリカ映画を見ているような感覚に始終付きまとわれながら、一気に読了。
そのスケールの大きさは、期待を裏切ることはない。
繊細な感情の機微や情景を読み取りながら余韻に浸るのではなく、
大胆なアクションと人類の歴史を単純に楽しみながら、先へ先へと夢中になって読み進めていった。
この物語は、次作への謎と期待を残しながら幕を閉じる。
手に取るのが楽しみだ。
内容(「BOOK」データベースより)
ギルドに捕えられたリサは、巨大クルーズ船の船内に作られた研究施設で、『東方見聞録』の失われた章に記述されていた病原菌「ユダの菌株」の解明を迫られていた。そして、発症した患者のうち、ただひとり生き残った女性スーザンに解明のヒントがあると確信する。一方、グレイは両親を人質に取られたまま、セイチャンとヴァチカンの考古学者ヴィゴーの協力のもと、「天使の文字」を解読しつつ、『東方見聞録』の失われた章に記された場所にたどり着きつつあった。そして、モンクはリサを救出し、クルーズ船から脱出する算段を立てていた…歴史と科学の道筋が、ある世界遺産の一点を示す中、世界各地でも新たな患者が発生し始める…。果たして「ユダの菌株」とは一体何なのか?グレイの両親の運命は?そして、組織を裏切ったセイチャンは本当に信用できるのか…。
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「あひるの空・38」 日向武史(講談社コミックス)
【俺はトキワにはかなわん。 でも、仲間はこっちの方が上だ】
クズ高vs丸高。
試合終了間近。
熱気と、歓声と。
個々の思いの深さと、仲間との絆の強さと。
心が揺さぶられるほど切実に、伝わってくる。
勝者は一校。
込められた思いの深さと切なさに泣きそうになりながら頁を捲った。
相手を認め、敬意を払い、それでも、自高の勝利を信じて戦い抜いた彼ら。
一生の間にあれほどまで濃密な時間を共有できる瞬間は、とても希少だ。
だからこそ、生涯胸に残るに違いない。
切なく甘く疼く傷のように。
そして、そんな瞬間を共に戦い抜いた仲間は、生涯の友となるに違いない。
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「最後の命」 中村文則(講談社文庫)
【だから、ずっと覚えていなければならないんだよ。
人間の命が、厄介だっていうことを】
半端ない嫌悪感と不快感で読むのをやめようかと何度か思ったけれども。
結末を見届けないと、このイヤな感じを引きずったままだと言い聞かせながら読み進めていくうちに、
胸の中に淀んでいたそのイヤな思いは、別の感情に変わる。
理解も納得も容認もできない佐伯の所業だけれども。
だけど、そうやって「犯罪者」になっていく人もいるのか……と思うと、
なんだかやりきれないものを感じるのも事実。
幼少時の心の傷もまた、とても厄介で、その後の人生を左右しかねないほどの根深い痕となる。
願わくば、一人でも多くの子供たちが健やかに笑っていられる世界でありますように。
内容(「BOOK」データベースより)
最後に会ってから七年。ある事件がきっかけで疎遠になっていた幼馴染みの冴木。彼から「お前に会っておきたい」と唐突に連絡が入った。しかしその直後、私の部屋で一人の女が死んでいるのが発見される。疑われる私。部屋から検出される指紋。それは「指名手配中の容疑者」である。冴木のものだと告げられ―。
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