きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「蝶狩り」五條瑛 (角川文庫)
楽しく読む心得は「終りが少々中途半端」と最初から心に留めて読むこと。
中途半端でもとっても楽しく読めるのは、
オムニバス式で連鎖していくストーリーが面白いうえに、
キャラが魅力的だから。
好みじゃないのでその魅力を感じ取れなかった桜庭に、みんな快く手を貸しすぎ。
イケイケな強面ヤクザは「もう遅いよ……」の言葉に絆される。
10代の少年は身体を張って情報を守り抜く。
そんな桜庭姫は銀のスプーンをくわえて生まれてきた容姿端麗な性悪王子様に
いっそディープなキスをしてもらえばいいと思うわ。
気づけば混乱の渦の中心にいたキリエ。
10年後の彼女に会ってみたい。
諸々余韻を含ませてあとは想像して楽しむ……では消化しきれなかったのが、
覚せい剤と言う美味しい餌を遠くにチラ見させられてただ働きした松村興業の面々、
納得したのーー!?という、個人的な雄たけび。
若頭の立場が心配。
最初からここで終わらせるつもりだったのか、続編の構想があるのか。
あるなら読みたいなー。
とても読みたい。
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「冬に来た依頼人」五條瑛(祥伝社文庫)
長すぎず短すぎずの物語の中に、凝縮された面白み。
失踪者の調査を専門とする桜庭、逃避を希望する人の連れ出しが専門の檜林、
名前と風貌が乖離した二代目ヤクザ松村、
作中最年少でありながらクールで冷静なキャバ嬢キリエ。
読了後にまた会いたい、と思えるような魅力的な面々が織りなす物語。
たとえ周囲が何と言っても、突然行方の分からなくなった夫をみつけたい。
そう思う成美の心情はわかる気がする。
安否の心配はもちろんだし、
真実を知ることができなければ、一生モヤモヤするよね。
「幸福」か「不幸」かを決めるのは自分自身。
まったくもって、その通りだわ。
個人的にはちょっとデンジャラスな本物志向の王子さまに興味深々。
「王子さまのキスが必要か?」
「俺にキスをしたいなら膝をついて頼め」
「一生目覚めるな」
なんだかんだ仲良しな二人のこのやりとりが好き。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身I」 香月美夜
第五部突入。
プロローグ自体が不穏で、え~、重い展開やだ!と思った時点で、
疲れてるなー、私、と思ってみました。
チラチラ見え隠れする悪意と腹黒さがヤな感じ。
馬鹿笑いできていた頃が懐かしい……。
ローゼマインに色々な知識を叩き込んだフェルディナンドの先見の明が素晴らしいと
つくづく思う。
それは彼女自身を守る楯になっている。
祈りと加護の因果関係には納得。
エピローグもまた、めんどくさい展開になりそうな気配ムンムンで
わ~~、貴族院やだー!ってなりました。
わくわくしながら読んだペーパーも腹黒さ全開で慄く。
とはいえ、先がとっても気になるで次巻へ。
第五部になり、馴染んだ面子いなくなって物足りなーい!
と、節目節目で言ってるな、私(笑)
ストーリーは好きで楽しく読んでいるけど、
ローゼマインに思い入れがないので、こういう事態になります。
膨大な数の本を読んできたけど、主人公に肩入れできないのは私的にデフォ。
にもかかわらず、主人公にしか肩入れできない友だちと、本の貸し借りを学生時代からし続けている不思議(笑)
この作品良かったね!では盛り上がれるけど、誰が好き!では全く一致しないの。
「スカラムーシュ」サバチニ(創元推理文庫)
500項を越える長編。
字は細かいわ、改行少ないわ、読むのに時間かかるわ……なんだけど。
読み進めるほどに面白さが増していって、ラストは
「ちょっと、この先~~!気になるじゃん!」と鼻息荒く読了。
うわー、何この展開!面白い!
意図的ではないながらも、人生の選択を迫られる岐路に何度も立たされ、
流れに身を任せた結果、そのたびに窮地を乗り越えてきたアンドレ・ルイ。
しかも、その都度自分のHPを上げていくというオプション付き。
革命に向かって不穏な雰囲気を醸し出していくフランスを舞台にした
復讐劇であり、愛情物語であり、冒険譚でもある。
「スカラムーシュ」と聞いて思い浮かぶのはピアノ曲。
私のピアノ教室の発表会は二年に一度、ソロ・デュオ・ソロ・デュオの繰り返しで、
デュオの年に先生が生徒さんと組んで弾いていたんだよね。
当時の私は中学生?よく覚えていたわ(笑)
「コメディ・フランセーズ」と言えば思い浮かぶのは『マリー・ベル』。
それも道理で、同時代の物語。
いつかチャレンジしたい賢一氏の『小説フランス革命』。
【ガーディアン必読107/1000冊】
「スモールワールズ刊行記念〈特別ショートストーリー〉「回転晩餐会」 」一穂ミチ
客観的な立場から眺めているだけでは、
その人たちの本当の関係を伺い知ることはできない。
第三者から見れば「奇跡の生還」でも、
その当事者にしてみれば、胸が軋むような現実の延長であったりする。
年に一度、彼らがそこに連れ添っていた理由が知れた瞬間、愕然とする。
そんな関係もあるのだと。
世界界中でたったふたりだけが共有していた想いがそこにはある。
そして、二人を外側から見ていた彼にも45年間抱えてきた思いがある。
人と人。
不思議な人生の交差を、
切なさとやさしさのスパイスを織り交ぜて描いた作品。
尾を引く余韻が良い。
『スモールワールズ』刊行記念企画で、
本編未収録の特別ショートストーリー。
来週の単行本の発売日が俄然待ち遠しくなりました♪
楽しみ~!
「ところで死神は何処から来たのでしょう?」 (新潮文庫nex)
シリーズ三作目。
前二作と同じように展開するかと思いきや。
後半に入ってからの怒涛の展開に前のめりになってしまう。
張り巡らされた伏線が半端ない。
おもしろかった!
とはいえ、これまで死んでいることを宣告され、
受け入れてきた人たちと同じ摂理の中にとどまって欲しかったと思う点もあり、
ちょっとだけ釈然としない感じも抱えた読後感。
その存在は次元が違うと思うから受け入れられるものであって、
次元が同じイレギュラーケースだと思うと、納得しかねる思いも過る。
「彼」の再登場は私的にはご褒美で、テンションが上がっての読了。
人間って現金だわ。
さて。
一作目、二作目の殻を破った感のある三作目を経て、
四作目がどう展開するのか。
期待感を膨らませて新刊待機。
「死神もたまには間違えるものです。」榎田ユウリ (新潮文庫nex)
「死んでもいい」ではなく、「死にたくない」方向に誘導していくのは酷だなー。
だけど、それも彼が死神だから、と納得するしかないのかな。
それが彼の役割。
でもそうせざるを得ない状況になったのは、そっちのミスじゃん。
だけど、彼らがそれを「仕事」として行う限り、ミスも生じるのか?と納得できてしまう。
怖いのは「自分が消えてしまうこと」っていう気持ちはよくわかる。
だけど、それが抗えないことなら怖いことを考えるのをやめよう、となる。
人生は楽しんだもの勝ち。
だけど、自分だけが楽しいんじゃだめなんだよね、と、
彼らの人生の振り返りを追いながらつくづく思った。
独りよがりになってないかな?
周りをちゃんと思いやれてる?
そんなふうに自問してみる深夜帯。
夜に考え事するのは沼にはまるのでやめよう(笑)
「ここで死神から残念なお知らせです。」榎田ユウリ (新潮文庫nex)
直前に読んだ『死んでいる』が肉体的な滅びについて書かれているなら、
こちらは精神的な死の認識について書かれていて、とても対照的。
どうしたって感傷的になってしまう。
どの瞬間に死んだとしても、やり残したことってあると思うんだよね。
だから「楽しかった!」という想いの比率が高かったら良いんじゃないかと自分なりに思ってる。
家族間の蟠りはできれば生きている間に解いてもらいたいと思うけど、
それもままならなかったりするのが世の中。
やるせない。
もしも死んだ後に意識が残っているなら、自分のお葬式を見てみたい。
と、何故か最近思うようになった(笑)
おしゃべりな死神。
なんか既視感、と思ったら、北方の「おしゃべりな殺し屋」でした。
叶さん、好きだわー。
本なら読み返せば亡くなった人物に会えるけど、
現実世界でそれは絶対にかなわない。
だから、悔いのないように。
「死んでいる」ジム・クレイス (白水uブックス)
一方的な暴力によって、理不尽に奪われた命。
唯一の救いは二人が共に逝けたことで、
襲い来る恐怖に一人で震えなくて済んだことだろうか?
そう思う私は自称ロマンチスト。
彼らの身に降りかかった事象がただ淡々と綴られるリアルな描写には感傷の入り込む余地はない。
生きているからこその有機体。
命が消えてしまえば、無機物になる。
それが、死ぬということ。
だけど、その人が歩んできた人生は、関わった人々の胸に思い出として刻まれる。
過去と現在を行き来する彼らの物語から、そう、感じられる。
彼らは死んでいる。だけど、間違いなく生きていた。
20年前に読んでいたら、感想は全く違ったと思える作品。
読み時ってあるんだなぁ、と。
あと20年後に読みたいか?と問われると、多分読みたくない。
今がベストだったんだと思う。
【ガーディアン必読106/1000冊】