きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「兄弟の定理」沙野風結子 (ディアプラス文庫)
血が繋がってないなら、迷わず飛び込んじゃって良くない?
と思った私が浅はかでした。
血が繋がっていないからこそ、兄弟であることに固執した二人。
だからこそ苦しくて、思い悩み、結局どちらも追い詰められて、
それでも、あるべき答えを見つけ出した二人。
心の中に抱いていた思いをずっと自覚し続けてきた要斗と、
ある意味、無理やり向き合わざるを得ない状況に追いやられた總一郎。
だけど。
あの日、總一郎が要斗に手を伸ばした時点で道は決まっていたのだと思う。
いろんな枠をとっぱらって、二人なりの関係を築いていってほしい。
リビングのどまんなかにダブルベッド。
良いの?(笑)
壁面全部を本棚にしたくて部屋の中央に机を配置しようとした私は全力で家族に止められました。
やだなぁ。本気なわけないじゃん!←(笑)
メフィストフェレス的な立ち回りかな?と思った式見だったけど、
意外とそうでもなくて。
で、スピンのタイトルが『天使の定理』。
あれ?悪魔と真逆……でもないか。表裏一体(笑)
楽しみ!
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「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ (ハヤカワepi文庫)
その先に待ち受けているものから逃れる術を求めるのではなく。
自分自身の在り様を、その先の未来を、淡々と受け止めている彼らの姿が、
ただひたすらに悲しくて、そして苦しい。
自らの利になるものは生み出したい。
だけど、脅威になるものは排除したい。
身勝手だけど、それが人間。
そんなふうに納得できてしまうのが、やっぱり悲しい。
幼い頃から施設で共に生活し、喜怒哀楽を共にした仲間たち。
理不尽な運命を強いられていても、
彼らの心が濁りなくきれいなままだったのは、施設での日々があったからなのか?
ならば私は残酷な施設の在り様を肯定する。
何を彼らに伝えるかは別にして。
「やりたいことはいずれできると思っていたけど、それは間違いで、
すぐにも行動を起こさないと、機会は永遠に失われるかもしれない」
震災直後に友だちと全く同じことを語り合った思い出。
今日と同じ明日がくるとは限らないから。
途中から榎田さんの『神話シリーズ』が頭をよぎって仕方がなかった。
そして、神話シリーズの彼らと作中の彼らの在り様に、色々考えさせられる。
【ガーディアン必読106/1000冊】
「匿名希望で立候補させて」海野幸 (キャラ文庫)
三人兄弟の間の拗れた関係の再構築と、彼らの隣人が抱き続けた想いの行方。
個人的には拗れに拗れた兄弟間の仲が解けていく様が読み応えあった。
困ったときに誰よりも親身になってくれるのが家族である一方で、
家族だからこそ見せたくない弱音って確かにある。
そんな時に寄りかかれるのは、弱った心をさりげなくフォローしてくれる他人。
何もかもに秀でたパーフェクトな人だと思われていた長男の
弱さと家族に対する想いにぐっときてしまったお借り本。
そしてあまりにも遅かった恋心に、このニブチンが!と金八先生風に。←世代が……(笑)
甘えるスキルをマスターした彼は最強だと思うわ。
「交換日記」と言うアイテムがとてもとても懐かしい。
手元に一冊も残っていないけど、誰かが持ってるのかな?
全部処分したりされちゃったりなのかな?
私が手元に残してある自筆のノートは
16歳の誕生日になぜか思い立ち、5~6年くらいつけ続けた読書ノート。
これは後生大事にとっておこうと思います。
「ナインデイズ 岩手県災害対策本部の闘い」河原れん
ノンフィクションノベル。
東日本大震災。
想像することなどできなかった未曽有の災害。
だけど、私たちはその災害に見舞われた。
ならば、伝えなければいけない。
次に同じような災害が起きたとき、命を守るためにどうすればよいのかを。
そして、考えなければいけない。
同じような悔しさや無力感に苛まれないために、或いは、
一人でも多くの人の命を救うために、どうすればよいのかを。
本書には災害時の対策を行っていくうえで、
今のうちの考えておかなければならない問題点が多々描かれている。
災害が起こってから考えたのでは遅すぎる。
そのことを重く受け止めるべき。
ライフラインがすべて途絶えた状況下で
どうやってリアルタイムな情報を収集し、伝達するのか。
まずはこれに尽きる。
でなければ、必要な場所に適切な救助の手を差し伸べる事ができなくなる。
そして縦割りの弊害をどう取り除くのか。
素早く効率的に対応するためには事前プランニングとシュミレーションは必須。
同じことが起こった時に同じようにもたつこことだけは避けて欲しい。
そして他人を思いやる気持ちを絶対に忘れてはいけない。
「スパイは楽園に戯れる」五條瑛 (双葉文庫)
嘘でしょ……と、呆然。
彼の純真さとまっすぐさと潔癖さ。
何もかもがやるせない。
志高く歩み続けてきた道だったけれども、
蜘蛛の糸に絡めとられていたことを認識したが故の選択。
そんな答えなんて見つけなければよかったのに。
だけど彼は、どんな状況にあっても、知りたいと思ったのだろう。
自分らしく生きるために。
誰も彼もが自らの仕事をしただけ。
と、言い切れないしこりが残ってやっぱりやるせない。
とはいえ、一つ一つの情報を積み上げて真実を探っていく彼らの手法は相変わらずの読み応え。
相変わらずの愉快な関係に笑いつつ、ラストで涙。うっ……
この先もまだ読める。
続きが手元にある。
長らくお預けを食らってきた身としては、そのことがただただ嬉しい。
このシリーズは本編と番外を総括して是非出版順に。
そして今年手をつけるつもりのなかった『革命シリーズ』。
本編にサーシャの名前が出てきたら、読まなきゃいけない気になってきてしまうわ。
「末期ガンでも元気です 38歳エロ漫画家、大腸ガンになる」ひるなま (ポラリスCOMICS)
例えば2年生存率80%と言われても、当人にとっては0か100かでしかない。
そもそも私は腫瘍があと1mm大きかったら生存率は60%に下がるという
ギリギリラインにいたので、自分が生きている限り余命あり。
そう思っていたら気づけば2年をクリアしていた。
作中に描かれていることはすべて、なるほどと頷くことばかりで、
病気の発見から手術・抗がん剤に至るまで参考になると思う。
そして計り知れない勇気をもらえると思う。
著者にとっての有効な治療が継続できるようになったこと、本当によかった。
そしてラストの旦那さんの姿に泣きそうになったわ。
癌の発見は早ければ早いほど良いので、
一件目で納得できない場合や体調が思わしくない場合は著者のように二件目に行くべき。
私は一件目は「暫く空きがない」と言われ、
アポなしで二件目に突撃したら、びっくりするスピードで検査の段取りをしてもらえました。
退院して周りの人たちに言いまくったのは、とにかくがん保険に入っておくこと。
作中にあるように、手術にしろ抗がん剤にしろお金がかかります。
(私は保険適応外の手術も抱えたから尚更だった)
使わないに越したことはないし、過剰な保険はいらない。
だけど、必要最低限の保険は必要。
一度罹患したら入れないと思って。
「はな咲く家路」一穂ミチ (ディアプラス文庫)
葵とかずさの義兄弟、
そこに慎一と弓子を加えた家族の物語。
過去と現在が交差しながらそれぞれが抱えた想いが描かれる前半。
彼らの心の機微が染み入るように伝わってくる。
就活や卒業という節目を前に将来のことに思い悩みながらも、
自身の歩む道を見つけていく姿が描かれた後半がダントツで良かった。
迷いに迷ったかずさは、行きついてみればそれしかないという答えにたどり着き、
葵に関しては想像しきれない事態に直面したけど、彼の本質は全く損なわれずに安堵。
慎一と弓子の親としての彼らに対する接し方もしみじみ良かった。
マクドナルドの「マクド」呼びに、何となく懐かしさを感じてみる。
大学の頃「マック」呼びが多かった中で、
関西の友人が四年間「マクド」と言い続けてたわ。
ビスコが関係する本を読んだばっかりだったので、
アイテムでビスコが出てきたときは、あ、このタイミングで読む運命だったんだなーと(笑)
「動物園で逢いましょう」五條瑛 (双葉社)
番外編5冊目は本編の主要キャラ総出演。
というか、本編主役の葉山がメイン。
頑固で意地っ張りで実は負けず嫌い。
彼のそんな本質が伺える。
結果的に期待に応えてしまうから、
上司のエディも無茶ぶりし甲斐があるんだろうなぁ。
だから坂下も葉山に仕事を押し付ける。
無能だと判断した人間に仕事を任せることを良しとしない男だと思うから。
情報漏洩のマイナス影響は、気づかないうちにジワジワ効いてきて、
気づいたときには手遅れという事態になっていそうで怖い。
無自覚の情報提供者にはなりたくないなぁ。
最後のエピソード。
洪とパクが相変わらずで嬉しい。
白か黒か。
きっぱりどちらかに寄ってしまう私は、
巧みに色を変えて人を翻弄するスパイには向かない。←自己分析(笑)
「朝から朝まで」一穂ミチ (幻冬舎ルチル文庫)
今そこに在る人には、生きてきた年数だけの過去があって。
その過去がその為人を形成し、
それぞれが大なり小なり何かを抱えている。
過去の小さな接点がそれぞれにプラスの効果を催し、
更に現在の接点が恋に発展していく。
ちょっとそれどうなの!?ともどかしいところはあれども、
真っ正直に気持ちを貫いた二人が清々しかった。
自分の知らないところで相手に良い効果を与えている関係って素敵。
仕事と向き合う彼らの姿勢も仕事の内容そのものも興味深かったので、
京平が今後、どんな仕事をしていくのか気になるところ。
彼らのクーデター計画の実現を祈る。
どこで初エッチをするかの会話に爆笑。
「おそろしいこと」確かにその通りだわ。
田島アナのように陰で努力して表では涼しい顔をしている女子、私は好き。
纏った服は戦闘服なのです。
「赤い羊は肉を喰う」五條瑛 (幻冬舎文庫)
「我々はナチスとは違う」
どこが?
滲む選民意識。
差別的な思考。
大衆心理の操作を楽しんでいる姿勢。
自らの思惑通りに人々が動くという点で悦に入っている。
正直腹立たしいけど、では自分が無意識のうちに誘導されないと言える?
と問われると、残念なことに言いきれない。
例え誘導されても、せめて理性と正しい善悪の判断は持ち得ていたい。
そして偲にはいつか真逆の方向でエスターを越えてもらいたい。
数字・データ・情報ありきで動いている彼らの世界。
こんな仕事の仕方があるんだ、と毎回唸る。
彼らの横のつながりが描かれるのが嬉しいね。
こうなると、長らく積んでいるオルテガの『大衆の反逆』が気になるけど、
まだ手が伸びない。←「読もう!」って流れじゃないんだって、自分で笑ってしまった(笑)