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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「土の中の子供」中村文則(新潮文庫)



空を自由に飛ぶ想像なら何度もした。
でも、こんなにも苦しい跳躍を想像したことはなかった。
取り返しがつかない瞬間の後悔がとてもリアルに流れ込んできて、押しつぶされそうになる。
世界はキミに、こんなにもやさしくない。
息苦しい世界の中で、耐えて、耐えて、耐え抜いての転換。
踵を返したのはキミの意思。
たぶん、それは間違ってはいない。
ようやく土の中から一歩を踏み出すことができたキミ。
背負わされていたものをすべて地中に埋め、
いま、初めて世界の中へと踏み出していける。
だけど、忘れないで。
キミは決して一人ではなかったということを。

再読。
そして、私が読んだ唯一の芥川賞受賞作。
(大江健三郎の『飼育』は既読みたいだけど、内容覚えていないのでノーカン)
積読中の芥川賞受賞作が森敦の『月山』と平野啓一郎の『日蝕』。
『日蝕』に至っては、10年以上積んでる気がする(笑)。
そして今回調べて私的に意外だったのが花村萬月。
芥川賞受賞しているんですね~。
……と、イロイロあげてみたけど、まずは中村文則のコンプリかな。
残り6作品。
ちなみに、既読の中での中村作品トップ3は『遮光』『あなたが消えた夜に』『掏摸』なのです。

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「ラブコレ 6th anniversary」 (ラヴァーズ文庫)




沙野さんの『狂犬と野獣』目当て。
狂犬・靫の後輩、宮木の受難に笑う。お気の毒様。
作中で峯上がやくざらしい組織力を駆使していたことが、ここであきらかに。
ちょっと感心しました。
雨の中、大型の獣同志がぶつかりあうような濡れ場は艶っぽいことこのうえない上に、
迫力があってカッコいい。
別れ際の二人の台詞がイカしてました。素敵!
小山田さんのラフ画も漫画も堪能。
そしてダメ人間は夜光さんのシリーズを未読ラブ・コレ含めて大人買いしてしまった……
見事につられたよね。(笑)
バーバラさんの話も気になったけど、こっちは自重。

積読山盛りなのに、更に増やしてどうする……←11冊。
他のラブ・コレの感想をまったくあげていなかったことに気付いてみました。
これこそ、何を持っているのかわからなくなりそうなんだけど、
私、ちゃんと表紙で持ってる本と持っていない本の識別ができました!←自慢できる?


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「恋のしっぽをつかまえて」L.Bグレッグ(モノクロームロマンス文庫)



ザ・コメディ。
事件に巻き込まれたシーザーが右往左往している間の
どさくさに紛れて、セックスの相性が最高で大人で包容力のある彼氏と出逢っちゃいました!
という羨ましい(?)話。←概ね間違ってない(笑)。
まさに恋の狂騒曲。
楽しかった。
社会人として家族に頼らず奮闘しているシーザーに対する家族愛が微笑ましくて好き。
手助けしたくてたまらない!って感じがありありと伝わってくる。
自分はタチ側だと思っていたシーザーを
ちょっと強引に落としたダンがメッチャカッコよかった。
大人の余裕と経験値って素敵。
歳の差カップルバンザイ!


あとがきの「攻受固定ではないからのおもしろみ」ってところ、
この作品に限らず、ものすごく納得。
かつてシーザーを傷つけた元カレが写っているテレビ画面に向けて
ポップコーンを投げつけるっていうシーザーのおばあ様の発想がお茶目で可愛い。

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「アルモニカ・ディアボリカ」皆川博子(ハヤカワ文庫JA)



ああ、どうしてこんなことに?
声にならない悲鳴を呑み込んで、いったん本を閉じてしまった。
だけど、見届けなければならない。
その真相を。
彼の願った通り、彼はその場所を目指した。
見えない糸に手繰り寄せられるように。
あまりにも見事な誘導。
誰も彼もがその場所を目指した。
唯一の誤算は、彼自身がそこにいなかったこと。
それが、どうしようもなく哀しい。
綴られる彼自身の過去。
たくさんの愛情を注がれて育った彼には、決定的なものが欠けていた。
多分それが、悲劇の要因。
だけどそれは、彼自身の咎ではない。
だからこそ、余計にやるせない。
ストイック過ぎた彼が、せめて微笑む日が来ればいいと。
願わずにはいられない読後。

forget-me-not。
この言葉は、今でも私の胸に刺さる。
若くして亡くなった彼の歌声と重なるから。
あまりにもお気楽な未来を想像(妄想?)していただけに
衝撃が大きすぎて大変でした。
でも、読めて良かったと、心から思える作品です。



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「タンデム~狂犬と野獣~」沙野風結子 (ラヴァーズ文庫)



やくざに公安に新興宗教にテロ。
素材を見事に組み上げた軸のしっかりした作品。
加えて、漢前な受は大好物。
とても面白かった。
「なんのための公安だっ」と叫ぶ靫と一緒に警察になにやってんの!?と憤りを感じ、
最低最悪な肉親の仕打に、教団主である櫟の主張が完全に悪だと言いきれなくなってしまう。
DVも虐待もいけない。
負の連鎖は何も生まない。
「求めていない人には求めさせられない」
そう。
心の弱い部分に漬け込み、命まで奪ってしまう宗教は野放しにされてはいけない。
アクションとエロスが程よく噛み合っての展開は大満足でした。
とはいえ、真の解決は次巻以降へ持ち越し。
まだまだ楽しませていただけるということで……張りきって読ませていただきます。

読後に速攻でラブ・コレをポチッたのはお約束。
この二人の物語が読めるなら、迷いません!←こうして増える蔵書。










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「死にゆく者への祈り」ジャック・ヒギンズ(ハヤカワ文庫NV)



もしも彼らと違った出逢い方をしていたら?
愚問なのはよくわかっている。
そんなことは私の感傷。
だけど、あんなことでもなければ出逢わなかったであろう人々と
接点を持つことによって、
彼の魂は少しは安らぐことができたのだと。
そう思うことは許されるだろう。
自らを「歩く死骸にすぎない」と言い切った男が、
他人のために燃やした命。
だが、そもそもの発端を考えれば、それは美談にはならない。
彼は自らの行為の決着を、自らの手で付けたに過ぎないのだから。
だが、彼の生き様は、最後に彼に係った者たちの心に永遠に生きるだろう。
彼の示したやさしさと贖罪の想いと共に。

「あなたは誰?誰なの?」このアンナの問いに対するファロンの返答。
「どんな男でも、そんなふうに訊かれては答えようがない」
これがものっすごくかっこいい。
この表紙は飾っておきたいくらいお気に入り。
勿論、作品自体もとても面白かった。



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「色悪作家と校正者の不貞」菅野彰(ディアプラス文庫)



祖父の死によって心に深い傷を負った大吾と正祐。
どれだけ悼んでも、死者は決して還らない。
その死を乗り越えた大吾と、4年経った今でも通夜のなかにいる正祐。
作家と校正者、作者と読者、そして想いを向けあう者同士として。
様々な向き合い方をしながら展開されていく二人の会話がとても楽しい
……と思って読んでいても、菅野さんの言葉はグサリと刺さり、切なくて泣いてしまう。
語られる東北の情景は何処も大好きな場所で、やさしく目に浮かぶ。
日本酒も馴染みのあるものが多くて嬉しくなる。
これは嬉しいシリーズ化。
アラサー男子の幼い恋がどう羽化していくのか。
楽しみー!

菅野さんが描く何かが欠けた人たちの想いに共鳴しちゃうから、毎回毎回抉られる。
でも、そこがいい。
20年以上読み続けちゃうくらい、彼女の感性が好き。

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「開かせていただき光栄です」皆川博子 (ハヤカワ文庫 JA)



ねぇ、キミは誰?
どうしてそんな姿に?
遺体は何も語らない。
だから生者が事実を検証し、隠された真実を推測する。
18世紀のロンドン。
ヒラヒラと揺らめく彼らの幻惑的な姿に翻弄されながら、
盲目の判事と共に混迷のなかに迷い混んでいく。
めくるめく浮遊感。
示される事実と、少しばかりの沈黙。
そして、嘘。
けれどもすべては真実へと導くため。
折り重なり、絡みあい、縺れあった糸がほどけていく様は圧巻。
人が人を裁くとはどういうことなのか。
真摯に受け止めなければならない。
そして心に残された喪失感。彼らはどこへ?
何故か、エドガーとアランの姿が重なった。


チャーリー(犬)の存在がひたすら可愛かった。
続編は手元にあるけど、彼らのその後に思いを巡らせる時間が少しだけ欲しいかな?
という気持ちにさせられたのよね。
皆川女史の描き出すとても素敵な世界。どっぷり浸らせていただき、光栄です(笑)。

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「フェア・プレイ」ジョシュ・ラニヨン(モノクローム・ロマンス文庫)



手放しで絶賛。
前作で再び恋人としてのスタートを切ったふたり。
時折ぶつかり合いながらも、絆を深めていくタッカーとエリオットの関係が
とてもとても良かった。
考え方の違い、感じ方の違い。
自らの信じる正義。生じる齟齬。苛立ち。
すべてをさらけ出してぶつけ合い、尚溢れんばかりに込み上げてくる愛情。
それを自覚するシーンが震えるくらい感動的。
巻き込まれた事件の中で明らかになっていくエリオットの父・ローランドのルーツ。
そこから透ける60年代のアメリカがリアルに伝わってきた。この構成はうまいと思う。
そしてラスト。
この親子の対話も感動的。
大満足の一冊。

『フェア・ゲーム』続刊。
タッカーがホントにカッコよくってカッコよくって。くらくらしました。
前巻から引きずっている謎に加えて新たな脅威(変態?)がチラリと。
これは続きが気になります!

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「フェア・ゲーム」ジョシュ・ラニヨン(モノクローム・ロマンス文庫)



次巻を読む前に再読。
事件と恋愛のバランスが素晴らしく、最後まで一気に読ませるおもしろさ。
やっぱり好きだわ。
一度は破綻したタッカーとエリオットの関係。
とある事件をきっかけに再会を果たし、その関係を修復していく様子は是非読んで!
と言いたくなるリアルさで胸に迫ってくる。
30代男子の苦悩と色気とカッコ良さが半端ないのです。
「くそっ、お前を、どれだけ、待ってたか」
この台詞の「どれだけ、待ってたか」の部分で私がきゅんきゅんしていたら、
解説でしをんさんは「くそっ」の部分でにやにやしてました。(笑)ニアミス?

モノクローム・ロマンス文庫は今のところどれを読んでも外れなし。
ほとんど買いそろえているので(積んでるけど・笑)、ここはコンプリ目指します♪

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