きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「狼を狩る法則」J.Lラングレー(モノクロームロマンス文庫)
再読。
人狼もの。
独特の世界観を構成する設定ありきなんだけど、
うまいなぁ、というストーリー展開。
献上したい副題は「万年発情期」(笑)
だけど、ギラギラしていなくて、とても紳士的。
もともとはヘテロだったチェイが、
己の伴侶である同性のキートンと出逢ってからの情愛の示し方が
一途でおおらかでとても魅力的。
そして、無鉄砲で頑固なキートンを包み込む懐の広さが素晴らしい。
受け入れてるんだけど、包み込むような愛に溢れたリバは良かったなぁ。
犯人が誰だかきれいさっぱり忘れていたというおめでたい脳みそだったため、
最後までドキドキできるちょっとお得な気持になりました。←ダメじゃんww
面白かった!
キートンに対して理不尽に接したレミに対するみんなの態度は好感が持てる。
レミもちゃんと反省できる子で良かった。
次巻はそのレミの話ですね~。楽しみ。
次巻からは未読分野に突入なんだけど、私絶対レミが好きな気がする(笑)
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「楽園の鎖~狂犬と野獣~」沙野風結子 (ラヴァーズ文庫)
逆立てた全身の毛にあらゆる感覚を集中して相手の動向を探ろうとしているのに。
甘さのないふたりの距離感がとても好き。
潜入捜査の任務の中で、峯上への想いに歯止めをかけようとする気持ちが
逆に靫の精神を削っていく描写は本当にうまい。
バターは与えても飴は与えない峯上。
かけひきめいたこの辺りの件はムフフ、となります。
「持ち前のもんでどうにかなるなら御の字か」という靫の潔い思考に、
「殺す」という言葉でストップをかけた峯上。
峯上が垣間見せる執着がたまらない。
作中で取り上げられている問題は相変わらず深刻で
ハードな展開に惹きこまれる。
面白かった。
サラッと説明はしてあるし、読んでなくてわかるようにはなっているけど、
『ラブ・コレ 6th』収録の『黒い傘』を読んでからだと
より楽しめる仕様になっていると思います。
このシリーズの他には『アカサギ』と『処女執事』が手元にある沙野さん。
ヤバイな。
他の作品にも手を出してしまうこと確実(笑)。
今年の私のBL読書目標は手元にある榎田さんの本の感想を全部UPすること。
うん。
それを踏襲しつつ、がんばろう。←何を!?
「ウインター・ホリデー」坂木司(文春文庫)
父親がいて、母親がいて、子どもがいる。
それが家族。
だけど、そのどれかが欠けている家庭だってある。
「ホストだから」と謗られることがあると雪夜は言っていたけれども、
「父親がいないから」という色眼鏡だってある。
でも、進はそれを言わせない子どもなんだろうな、と、思った。
大和と進。進と由希子。
進を真ん中にして、三人で手を繋いで出掛けることのできる日が来るといいね。
親子の物語。
と同時に、拗らせた大人の何人かが
前向きに頑張って人生の一歩を踏み出そうとしている姿にもエールを送りたくなる。
悩みながらも一生懸命な人たちは、輝いている。
雪夜の話が読みたいな、と、切実に思った。
個人的に、激烈に雪夜押し(笑)。
読後は迷わず『ホリデー・イン』をポチッと。
楽しみ!
「土の中の子供」中村文則(新潮文庫)
空を自由に飛ぶ想像なら何度もした。
でも、こんなにも苦しい跳躍を想像したことはなかった。
取り返しがつかない瞬間の後悔がとてもリアルに流れ込んできて、押しつぶされそうになる。
世界はキミに、こんなにもやさしくない。
息苦しい世界の中で、耐えて、耐えて、耐え抜いての転換。
踵を返したのはキミの意思。
たぶん、それは間違ってはいない。
ようやく土の中から一歩を踏み出すことができたキミ。
背負わされていたものをすべて地中に埋め、
いま、初めて世界の中へと踏み出していける。
だけど、忘れないで。
キミは決して一人ではなかったということを。
再読。
そして、私が読んだ唯一の芥川賞受賞作。
(大江健三郎の『飼育』は既読みたいだけど、内容覚えていないのでノーカン)
積読中の芥川賞受賞作が森敦の『月山』と平野啓一郎の『日蝕』。
『日蝕』に至っては、10年以上積んでる気がする(笑)。
そして今回調べて私的に意外だったのが花村萬月。
芥川賞受賞しているんですね~。
……と、イロイロあげてみたけど、まずは中村文則のコンプリかな。
残り6作品。
ちなみに、既読の中での中村作品トップ3は『遮光』『あなたが消えた夜に』『掏摸』なのです。
「ラブコレ 6th anniversary」 (ラヴァーズ文庫)
沙野さんの『狂犬と野獣』目当て。
狂犬・靫の後輩、宮木の受難に笑う。お気の毒様。
作中で峯上がやくざらしい組織力を駆使していたことが、ここであきらかに。
ちょっと感心しました。
雨の中、大型の獣同志がぶつかりあうような濡れ場は艶っぽいことこのうえない上に、
迫力があってカッコいい。
別れ際の二人の台詞がイカしてました。素敵!
小山田さんのラフ画も漫画も堪能。
そしてダメ人間は夜光さんのシリーズを未読ラブ・コレ含めて大人買いしてしまった……
見事につられたよね。(笑)
バーバラさんの話も気になったけど、こっちは自重。
積読山盛りなのに、更に増やしてどうする……←11冊。
他のラブ・コレの感想をまったくあげていなかったことに気付いてみました。
これこそ、何を持っているのかわからなくなりそうなんだけど、
私、ちゃんと表紙で持ってる本と持っていない本の識別ができました!←自慢できる?
「恋のしっぽをつかまえて」L.Bグレッグ(モノクロームロマンス文庫)
ザ・コメディ。
事件に巻き込まれたシーザーが右往左往している間の
どさくさに紛れて、セックスの相性が最高で大人で包容力のある彼氏と出逢っちゃいました!
という羨ましい(?)話。←概ね間違ってない(笑)。
まさに恋の狂騒曲。
楽しかった。
社会人として家族に頼らず奮闘しているシーザーに対する家族愛が微笑ましくて好き。
手助けしたくてたまらない!って感じがありありと伝わってくる。
自分はタチ側だと思っていたシーザーを
ちょっと強引に落としたダンがメッチャカッコよかった。
大人の余裕と経験値って素敵。
歳の差カップルバンザイ!
あとがきの「攻受固定ではないからのおもしろみ」ってところ、
この作品に限らず、ものすごく納得。
かつてシーザーを傷つけた元カレが写っているテレビ画面に向けて
ポップコーンを投げつけるっていうシーザーのおばあ様の発想がお茶目で可愛い。
「アルモニカ・ディアボリカ」皆川博子(ハヤカワ文庫JA)
ああ、どうしてこんなことに?
声にならない悲鳴を呑み込んで、いったん本を閉じてしまった。
だけど、見届けなければならない。
その真相を。
彼の願った通り、彼はその場所を目指した。
見えない糸に手繰り寄せられるように。
あまりにも見事な誘導。
誰も彼もがその場所を目指した。
唯一の誤算は、彼自身がそこにいなかったこと。
それが、どうしようもなく哀しい。
綴られる彼自身の過去。
たくさんの愛情を注がれて育った彼には、決定的なものが欠けていた。
多分それが、悲劇の要因。
だけどそれは、彼自身の咎ではない。
だからこそ、余計にやるせない。
ストイック過ぎた彼が、せめて微笑む日が来ればいいと。
願わずにはいられない読後。
forget-me-not。
この言葉は、今でも私の胸に刺さる。
若くして亡くなった彼の歌声と重なるから。
あまりにもお気楽な未来を想像(妄想?)していただけに
衝撃が大きすぎて大変でした。
でも、読めて良かったと、心から思える作品です。
「タンデム~狂犬と野獣~」沙野風結子 (ラヴァーズ文庫)
やくざに公安に新興宗教にテロ。
素材を見事に組み上げた軸のしっかりした作品。
加えて、漢前な受は大好物。
とても面白かった。
「なんのための公安だっ」と叫ぶ靫と一緒に警察になにやってんの!?と憤りを感じ、
最低最悪な肉親の仕打に、教団主である櫟の主張が完全に悪だと言いきれなくなってしまう。
DVも虐待もいけない。
負の連鎖は何も生まない。
「求めていない人には求めさせられない」
そう。
心の弱い部分に漬け込み、命まで奪ってしまう宗教は野放しにされてはいけない。
アクションとエロスが程よく噛み合っての展開は大満足でした。
とはいえ、真の解決は次巻以降へ持ち越し。
まだまだ楽しませていただけるということで……張りきって読ませていただきます。
読後に速攻でラブ・コレをポチッたのはお約束。
この二人の物語が読めるなら、迷いません!←こうして増える蔵書。
「死にゆく者への祈り」ジャック・ヒギンズ(ハヤカワ文庫NV)
もしも彼らと違った出逢い方をしていたら?
愚問なのはよくわかっている。
そんなことは私の感傷。
だけど、あんなことでもなければ出逢わなかったであろう人々と
接点を持つことによって、
彼の魂は少しは安らぐことができたのだと。
そう思うことは許されるだろう。
自らを「歩く死骸にすぎない」と言い切った男が、
他人のために燃やした命。
だが、そもそもの発端を考えれば、それは美談にはならない。
彼は自らの行為の決着を、自らの手で付けたに過ぎないのだから。
だが、彼の生き様は、最後に彼に係った者たちの心に永遠に生きるだろう。
彼の示したやさしさと贖罪の想いと共に。
「あなたは誰?誰なの?」このアンナの問いに対するファロンの返答。
「どんな男でも、そんなふうに訊かれては答えようがない」
これがものっすごくかっこいい。
この表紙は飾っておきたいくらいお気に入り。
勿論、作品自体もとても面白かった。
「色悪作家と校正者の不貞」菅野彰(ディアプラス文庫)
祖父の死によって心に深い傷を負った大吾と正祐。
どれだけ悼んでも、死者は決して還らない。
その死を乗り越えた大吾と、4年経った今でも通夜のなかにいる正祐。
作家と校正者、作者と読者、そして想いを向けあう者同士として。
様々な向き合い方をしながら展開されていく二人の会話がとても楽しい
……と思って読んでいても、菅野さんの言葉はグサリと刺さり、切なくて泣いてしまう。
語られる東北の情景は何処も大好きな場所で、やさしく目に浮かぶ。
日本酒も馴染みのあるものが多くて嬉しくなる。
これは嬉しいシリーズ化。
アラサー男子の幼い恋がどう羽化していくのか。
楽しみー!
菅野さんが描く何かが欠けた人たちの想いに共鳴しちゃうから、毎回毎回抉られる。
でも、そこがいい。
20年以上読み続けちゃうくらい、彼女の感性が好き。