きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「レ・ミゼラブル 上」ヴィクトル・ユゴー(角川文庫)
意思の力だけではどうにもならないことがある。
置かれた現状の中で、人は足掻きながらも生きていかなければならない。
見ず知らずの他人に子供を預けたのはフォンティエーヌの無知。
だけど、彼女にはそれ以外の手段はなかった。
テナルディエのように子供に辛くあたる大人は、現代社会にもいる。
司教に出会えたジャン・ヴァルジャンは幸運だったけれども、
前科があるが故の偏見に苦しむ人生は変わらない。
係った人が、環境が、人を幸福に導き、或は、不幸に陥れる。
苦難に陥っても綺麗な心を失わない人もいれば、心の底から腐った悪党もいる。
本書はそんな人々の人生を描いた物語だ。
「この世に無知と無慈悲がある限り」
無知は教育で補える。
だけど、無慈悲は外的な力でどうにかなるものなのだろうか?
と、懐疑的な想いを抱いてしまう自分が、ちょっと寂しい。
数奇な男の人生の終着点を見届けるために、次巻へ。
【ガーディアン必読 49-1/1000冊】
内容(「BOOK」データベースより)
貧しいジャン・ヴァルジャンはパンを盗んだ罪で監獄に送りこまれて十数年ものあいだ苦しみ、さらに出所後も差別に悩まされる。しかし、ある司教に出会ったことで生まれ変わった彼は、まったくちがう人生を歩きはじめる。そして、不幸な美女ファンテーヌと出会い、彼女を救おうとするが、執拗に追いまわすジャヴェール警部が行く手に立ちふさがる。フランス文学の金字塔にして娯楽小説の真髄が、コンパクトな新訳で登場。
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「ヘブンノウズ 足跡」英田サキ(SHYノベルズ)
温泉旅行にクリスマス。
居心地の良い空間で、人情味溢れる人たちと共に過ごすあたたかさ。
それなのに、それぞれが抱えた想いに泣かされて切ない気持ちで読了。
6歳のミツルの、兄に対する健気でいたいけない想い。
サンタへの願い事に涙が滲んだ。
旭の渋澤に対する報われない恋情。
セフレでもいい、と言いながらも、旭は関係が進展することを切望している。
心の壁に穴を開けたいと言ったのがその証。
だけど、それは渋澤の心の在り様の問題であって、旭にはどうしようもないのだ。
そして、渋澤の想い。
罪を断罪する彼の厳しさは、自らも贖罪を抱えていることを示している。
この先どうなるのかな?ドキドキだわ。
作中での「足跡」の定義がいい。
「生きていくってことは、足跡を残していくってこと。
その足跡でどんな人生を歩んできたかわかる」
揺らいでも、迷っても、遠回りでも。
自分が進んだ方向が進むべき道だったのだと。
思える足跡を刻みたい。
内容(「BOOK」データベースより)
ベストセラー作家の渋澤征武にイラストの才能を見いだされた千野旭は、幼い弟のミツルと一緒に渋澤邸で暮らすようになった。渋澤は恋人をつくらない主義だと自ら宣言していたが、旭は渋澤のキスが忘れられずにいた。あのキスはなんだったのか、何か意味はあったのか?本当は自分の気持ちに気づいているのではないだろうか?旭は渋澤が気になってしかたがなかった。そんなある日、旭は渋澤たちと温泉に行くことになって!?―。
「二人の眠り姫~暁の天使たち4」茅田砂胡(C・NOVELS)
「ルゥ」という一人の存在があるだけで、
物語がこれほど自由に矛盾なく展開する。
これは本当に作者の力量だと思う。
敵として遭遇したリィとキングは即座に戦闘モードに。
腕前はやはり互角。
生粋の戦士同士の命がけのぶつかりあいは、ヒリヒリとした緊張感を孕んでいて
期待以上でした。
そして待ちかねていた女王のお目覚め。
「瞼をかっと見開き、腹筋を使って」跳ね上がるように起き上がる眠り姫には、
私、彼女以外金輪際出会えない気がする。
目覚めた早々、自分のために船を降りたケリィに対して怒り狂う彼女の気質が好き。
キングとクィーンの並び立つ姿は次巻で拝めるのかしら?
みんながダンがお気の毒だってことに気付いてくれて良かった。
リィとキングの真剣勝負をもうちょっと見ていたかったけど、
大怪我だけじゃすまなさそうなのであのくらいで。
出会い頭に違った意味での戦いが展開されそうな
ケンカップル夫婦のご対面がとても楽しみ。
それにしても……ケリィはやっぱりカッコいいと思うの。
内容(「BOOK」データベースより)
キングは蘇ったとたんルウの死体に遭遇する。何が起きたのかさっぱり訳が判らなかった。リィとシェラは数百光年を一気に飛んだ。しかし事態を何も把握していなかった。混乱の中、一同は“ダイダロス・ワン”―連邦情報局本部に集ったのだ。だが、彼らは互いの存在を知らぬがゆえに相手を容易ならざる敵として認識、必殺の攻撃を繰り出した。
「HHhH~プラハ、1942年」ローラン・ビネ(海外文学セレクション)
作中で物語を進行するのは著者自身。
俯瞰しているのと同時に、渦中に在る視点。
故に、臨場感を伴って、より視覚的に事象が伝わってくる。
「歴史」ありきの物語。
語られるのは「人の」ではなく「時代の」狂気。
虐殺された人々の姿を、その数を思い描くことを、頭が拒絶する。
だけど、穴の中に折り重なる死体から目を背けてはならない。
これは、その死体の山を築いた男と、その男を暗殺した男たちの物語。
そして、彼らに係ったが為に、皆殺しの憂き目にあった人たちの物語。
ここまで詳細に調べ上げ、物語として完成させた著者に、敬意を。
圧巻でした。
「どうして自分の仲間を裏切ることができたのか?」
「百万マルクも貰えるとしたら、あなただって同じことをしたと思いますよ」
一緒にしないでよ!と、心の底から叫びたい。
懸命に暗殺者を支え続けたのは、「同じことをしない」人たちだ。
密告がなくても、もしかしたら彼らは発見されたかもしれない。
だけど、万死に値するのは裏切り者のチュルダだと思えてならない。
気になる方のために「HHhH」の意味。
「ヒムラーの頭脳はハイドリヒ(ユダヤ人大量虐殺の首謀者)と呼ばれる」
内容(「BOOK」データベースより)
ユダヤ人大量虐殺の首謀者、金髪の野獣ハイドリヒ。彼を暗殺すべく、二人の青年はプラハに潜入した。ゴンクール賞最優秀新人賞受賞作、リーヴル・ド・ポッシュ読者大賞受賞作。
「ヘブンノウズ」英田サキ(SHYノベルズ)
母を亡くし、幼い弟と二人、頑張って生きていかねばと、
大学も辞め、一人で必死で頑張って、頑張って。
懸命になんとかやってきたところに差し出された、大人の手。
いとも簡単に自分たちを支えらるその存在の大きさに、
悔しさや嫉妬を感じる気持ちはよくわかる。
だけど、頑張りどころを間違えてしまったら、それこそこの先、後悔する。
そんな渋澤の好意を旭がきちんと受け入れられる子で安心した。
癖のありすぎる多彩な人物たちの紹介的な巻。
それでも、物語にガッツリと惹きこまれる。
事件と幽霊はこの先もセットで展開していくのかしら?
人物もそれぞれ複雑な過去を抱えていそうで、この先の展開がとても楽しみ。
「深い深い眠りは、小さな死に似ている」
多感な時期に、眠っているときの意識は全くないわけでしょ?
死んじゃうってことはこの状態が永遠に続くってことだよね?
と思い、眠るのが怖くなって身体が震えたことがあったけど……とりあえず私は
震えながらもそのままぐーすか眠ってしまえる子供でした(笑)
シリーズ通してお友達からのお借り本。ありがとうございます!
内容(「BOOK」データベースより)
「私はね、君の絵に恋をしたんだ」ベストセラー作家の渋澤征武と知り合ったその日、旭はそう告げられた。半年前にある事件で母を亡くし、ショックから言葉を失った幼い弟と暮らしている旭は、もしあの日、もしあの時…そんな後悔に囚われて毎日を送っていた。けれど、渋澤に会った日から、すべてが変わり始めた!恋人はつくらない主義と宣言する渋澤、男女問わず恋をする薫、執事の宇喜田を始め、個性豊かな渋澤邸の住人たちに、最初は反感を覚えた旭だったけれども―。
「検事の死命」柚木裕子(宝島社文庫)
故人と距離が近しいが故に、違えることのできない約束。
隠された真実を公にした第三者の決断は、多分正しい。
心に傷を抱えながら生きてきた人たちの枷が外れたことに安堵すると同時に、
彼らの過ごした年数が重くて悲しい。
佐方の検事としての在り方は、父の姿があってこそだということが、
ヒシヒシと伝わってくる。
語らずとも伝わるものは必ずある。
だけど、叶うなら、美味い酒を酌み交わし、語り合う時間を過ごしてほしかった。
彼らの世界で正しく在り続けることは、こんなにも大変なことなのだろうか?
現実的にはそうであってほしくないと思うわけだけど……どうなんだろう?
己の利益を先んじて、国民の生活の安定を蔑ろにしてはいけない、
という会話を今日していたわけですが。
権力を笠に着て真実を捻じ曲げようとする輩が蔓延ってもいけないと思います。
真実をありのままに伝える事。
当たり前のことだと思うのに。なんでみんなあんなに苦労しなくちゃいけないんだろう?
内容(「BOOK」データベースより)
郵便物紛失事件の謎に迫る佐方が、手紙に託された老夫婦の心を救う「心を掬う」。獄死した佐方父の謎の核心が明かされる、感涙必至の帰郷小説「業をおろす」。大物国会議員、地検トップまで敵に回して検事の矜持を貫く「死命を賭ける」。検察側と弁護側双方の、絶対に負けられない裁判の火蓋が切られる「死命を決する」。全4話を収録した、佐方貞人シリーズ最新刊。圧巻の人間ドラマが、胸を打つ!
「検事の本懐」柚木裕子(宝島社文庫)
検事の仕事が天職であるかのような男の在り方が、
第三者の目線で語られる連作短編集。
人として人と向き合い、検事という職務に真摯に取り組む佐方。
真実を追求することが、誰かを救う。
それが、犯罪者であっても、なくても。
誰に対しても公平で打算のないその姿勢に、背筋が伸びる思いだった。
5作目の短編「本懐を知る」は様々な想いを呑みこみ、秘密を胸に抱えて生ききった人々の物語。
秘匿し続けることは生半可な事じゃなかったと思う。
彼らの根底にあった想いは「恩義」。
そこまでの関係を結ぶことができる誰かと出逢えることは、幸せな気がする。
2016年の読み納めの本。
「本懐を知る」には『検事の死命』で続編があるんですね~。
購入済みなのでもやもやせずにすみます。
世の中には色々なタイプの人がいて、必ずしも付きあいたいと思える人ばかりではない。
仕事で係わっていくのは仕方ないけど、貰い事故みたいに絡まれるのはヤダな~、
というか、怖いな~、と3作目の短編「恩を返す」を読んで思ってみました。
内容(「BOOK」データベースより)
骨太の人間ドラマと巧緻なミステリー的興趣が見事に融合した連作短編集。県警上層部に渦巻く男の嫉妬が、連続放火事件に隠された真相を歪める「樹を見る」。東京地検特捜部を舞台に“検察の正義”と“己の信義”の狭間でもがく「拳を握る」。横領弁護士の汚名を着てまで、恩義を守り抜いて死んだ男の真情を描く「本懐を知る」など、全五話。第25回山本周五郎賞ノミネート作品。
「海賊王の帰還~暁の天使たち3」茅田砂胡(C・NOVELS)
タイトルと表紙からものっすごくわくわくしながら読み始めましたが。
待ち望んだ海賊王はギリギリラストの滑り込み登場で、
しかも本編は不穏な雰囲気と多大なる期待を孕んだまま次巻へ続く……きゃーーー!!!
本当にこのシリーズ、読んだら即次巻!のエンドレスな旅に誘われます。
一応は一般人のはずのダンが超常現象にことごとく巻き込まれていて、
一般人故の振り回されっぷりがある意味お気の毒様。
一方的に責められるのはちょっと可哀想かな。
秘密基地へと乗り込んで行ったリィとシェラ。
彼らの暴れっぷりと海賊王とのご対面の瞬間に期待をしつつ、次巻へ。
復活のシーンは別に真っ裸でも良かったのよ?と、笑いながら思ってみました。
私の恥じらい、どこいった!?(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
「きみのお母さんが生きている」突然アレクサンダーから告げられてダンは呆然とした。しかも「お母さんの復活に伴ってお父さんも蘇ってくる」とは何事だ!?ところがこの“彼”の再生体が連邦情報局によって強奪された!己の中に本物の彼を宿しているルウは困惑し―そして奪われた“彼”を追って連邦に乗り込むが。
「死んでしまう系のぼくらに」最果タヒ(リトルモア)
愛が欲しいと叫ぶあなたは、だったら、どれだけ人を愛していますか?
ちょっと意地悪な問いかけかしら?と思いつつ、それが意地悪だと思う私は、
それなりに歳を重ねてきたのね、と、著者の詩を読みながら思いました。
同じ年頃だったかつての私だったら、
彼女の言葉に共感できたのかしら?と思えることがちょっと悔しい。
傷つきやすくてどこか思い上がった瑞々しい若い感性でしか紡げない言葉。
マイナスの感情を全面的に訴えている彼女の詩が、幸福に満ち溢れた文字を綴る瞬間を垣間見たい。
とても綺麗な言葉の音楽を奏でそうな気がする。
若いな~、と、思った時点で、相容れてないですね。
でも、それでいい。
重ねた人生の経験値が加味されて、感じ方は変わる。
だけど、かつての自分の感性を否定することはない。
あの時苦しかったこと、あの時悩んだこと。
あの時逃げ出したかったこと。
すべてを呑みこんで、今の私がある。
とりあえず、幸せ。(笑)
「ただいま定修中~許可証をください!4」烏城あきら(シャレード文庫)
なんとか同居に持ち込もうと策を練る前原の思惑通りに弘が転がったら
ちょっと面白くないなぁ、と思っていたら。
弘はちゃっかり、そんな前原のちょっと上をいっていました。
そうでなくちゃ。
職場恋愛を秘密裏に続けていく上での、仕事と色恋の線引き。
そこまで明確にきっちりとしたものが必要かな?と思っていたら、
彼らなりに悩んでちゃんと結論出してました。
必要なのはけじめとルール。
これは、日常生活を営む上で、いろんな所で当てはまると思う。
辻本の立ち回り方が玄人過ぎてヒヤヒヤしたけど、
弘は無敵の天然っぷりを発揮して危機回避。
次の波がどんな物語なのか楽しみ。
「働くことは生きることにかなり近い」
カッコイイ言葉だなーと思います。
私の場合は働くことは「手段」だなぁ、と思っているので。
辻本がみつけた弘のイイトコ。
「相当すごいこと」って……キャーー。気になります!