きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「愛する」菅野彰(キャラ文庫)
【今日より少しでも、先生が幸せな明日に】
濁りを知らない、純粋で透明な水彩のような感情は、
ほんの少しの黒を混ぜることで、より強くなる。
悪意に晒されても、妬みをぶつけられても、濁らず、壊れない強さ。
それは、やさしく慈しまれて、支えられ、
自由で伸びやかな未来を与えてもらったからこそ、持ちえた強さ。
人は多分、綺麗なままでは生きていけない。
大なり小なり後悔と罪の意識は抱えていると思う。
苦しい時には手を差し伸べ、
お互いがお互いの光となり得る関係は、尊いと思います。
「今日よりは少しでも幸せな明日に」
とても素敵な言葉を拾いました。
反芻するだけで、今は涙が出そう。
やっぱり私、菅野さんの書く文章と感性が大好きです。
内容(「BOOK」データベースより)
「卒業しても、先生に絵を習いたい」苛めで不登校になりかけた由多を、幼い頃から支えてくれたのは、絵画教室の講師・桐生凌。美大進学を機に、募る想いをついに告白!!必死な由多に絆されてか、二人は恋人になることに。けれど入学早々、才能に注目され始めた由多に、凌はなぜか冷たい。嫉妬や中傷も、先生がいれば怖くないのに―由多は初めて、凌が自分を見ていないことに気づき…!?
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「怒りの葡萄 上」スタインベック(新潮文庫)
【大丈夫かどうかって問題じゃないよ。
やるつもりがあるかどうかの問題だよ】
いつの間にか呑まれてしまった理不尽という名の河の流れに押し流されるかのように、
西へ向かう人々。
その河の水は流される人々の汗と血と涙と、
そして彼らの失った大地の土とで混濁している。
運命に抗う術を持たぬ彼らは、土地を奪われ、家を壊され、
その理不尽に憤りながらも、流されるしかない。
向かったその先に幸いがあると、己自身に言い聞かせて。
「残された者は家族だけ」
母親の言葉が胸に刺さる。
その家族ですら、過酷な現実に奪われていく。
1930年代アメリカ。
彼らの抱いた縋るのような思いを踏みにじらないでほしい願いながらも、
最後の一文に息を呑む。
そして、次巻へ。
気力と体力がそれなりに充実していないと、
文章に圧倒されて読み進めることがキツイな、と思いました。
初版が1939年。
90年近くの時を経ても尚、これだけのエネルギーを感じさせる物語。
一呼吸おいて、次巻に備えます。
「わすれられないおくりもの」スーザン・バーレイ(評論社)
大人になった私が自分のために買った絵本。
そういえば、ちびっこたちに見せてないなー、と思いながら今回改めて読みましたが、
多分私、泣いて読み聞かせになりません。
自分に、家族に、近しい人に、いずれ訪れる「死」。
語りあえるたくさんの思い出を友だちに遺して逝ったアナグマ。
喪失はとても哀しいけれども、思い出はその先を生きる力になる。
たとえ、夢の中でも、自由に駆けることができてよかったね、と、
アナグマに言ってあげたい。
おやすみなさい。
そして、ありがとう。
今まで見送った大好きな人たちに心から伝えたいと思いました。
何度読んでも心に沁みる良い話です。
内容(「BOOK」データベースより)
アナグマは、もの知りでかしこく、みんなからとてもたよりにされていた。冬のはじめ、アナグマは死んだ。かけがえのない友を失った悲しみで、みんなはどうしていいかわからない…。友だちの素晴しさ、生きるためのちえやくふうを伝えあっていくことの大切さを語り、心にしみる感動をのこす絵本です。
「悲しみよこんにちは」フランソワーズ・サガン(新潮文庫)
【酔っていると、人はほんとうのことを言うが、誰もそれを信じない。】
無邪気で罪深い人たちの物語。
読後、時間が経つほどに、引き攣るような想いがジワジワとこみあげてきて、
共感と反発を覚えた彼らの想いが、流れ込んでくる。
若さ故の傲慢な思い上がり。
思い込みの正しさ。
各々が抱いた自己愛と独占欲。
そんな感情に起因する行動からは、思いやりと想像力が欠落していて、
互いを傷つけずにはいられない。
起こるべくして起こった悲劇。
それでも彼らの時間は前へと進みつづける。
17歳のセシルにとってこのひと夏の出来事が、
あたかも、美しい蝶への化身を遂げるための
甘くて苦い蜜であったかのようで、ゾクリとしました。
悲しみよ、こんにちは。
少女時代の終幕。
流れるような美しい文書がとても素敵。
何度も噛みしめたくなるような言葉と情景が、そこには広がっていました。
哀しいわけじゃないけど、何故か涙が零れそうです。
内容(「BOOK」データベースより)
セシルはもうすぐ18歳。プレイボーイ肌の父レイモン、その恋人エルザと、南仏の海辺の別荘でヴァカンスを過ごすことになる。そこで大学生のシリルとの恋も芽生えるが、父のもうひとりのガールフレンドであるアンヌが合流。父が彼女との再婚に走りはじめたことを察知したセシルは、葛藤の末にある計画を思い立つ…。20世紀仏文学界が生んだ少女小説の聖典、半世紀を経て新訳成る。
「最果ての空」英田サキ(SHY NOVELS)
凛とした強さと厳しさ、そして果てのない孤独を宿した男の物語。
近しい者たちが恋人を得、家族を得、それぞれの安らぎを手にしていくなかで、
ひとり、孤高で在りつづける彼が、とても哀しい。
だけど、それは彼自身が選んだ人生。
篠塚は孤独であっても、独りではない。
迷いなく歩き続けるその姿に痛ましさはない。
それでも、ラストの挿絵を見た瞬間、なんだか涙が溢れました。
椎葉と宗近の安定したその後が見れたのが個人的には嬉しかった。
宗近と篠塚の距離感もとても好き。
シリーズの締め括りに、とても素敵な話を読ませていただきました。
貸してくれたお友達に感謝です。
「誰の言葉だ?」
「宗近圭吾って男の言葉だ」
このやりとりはお気に入り(笑)
英田さん、うっかり集めてしまいそうな自分がいます。ヤバイ……
「武王の門 下」北方謙三(新潮文庫)
【夢をあわせ持つことができる。
同じ夢をみることができる。
そういう相手に火とは障害で出会うことがあるのでしょうか】
失った片翼。
それでも、立ち止まる暇はない。
それが、夢を掲げた者の宿命。
長い年月をかけて思い描いてきた九州の統一。
京ではなく、異国に目を向け、争いのない国を目指して続けてきた戦い。
届きかけた夢。
だけど、届かなかった。
結局、見果てぬ夢で終わってしまったけど、
全力でやりきった感が強くて、寂寞ではなく、
労いの想いの方が強い読後でした。
闘うために必要なものは、人であり、兵糧であり、銭である。
裏方から支える人たちをも魅力的に描くのが、さすが北方!と思います。
「夢は潰えても、夢は残る。心の中に」
北方歴史浪漫にどっぷり浸らせていただきました!
もう一度、九州に行きたくなりました。
行って、彼らの戦いに想いを馳せてみたい。
そして、北方は何を書いても北方だと再認識しました。
水滸伝読みかえしたい!
内容(「BOOK」データベースより)
懐良は肥後の名将・菊池武光と結び、悲願の九州統一を果たした。そして大宰府を征西府の拠点とし、朝鮮半島の高麗や中国大陸の明と接触することで、全く新しい独立国家の建設を夢見る。しかし、足利幕府から九州探題に任ぜられた今川了俊は、懐良の野望を打ち崩すべく、執拗に軍を進めた―。二十数年にわたる男の夢と友情のドラマを、ダイナミックに描いた一大叙事詩の完結。
「デコイ 迷鳥」英田サキ(SHY NOVELS)
【人間、笑えるうちは踏ん張っていられる。崩れたりしない】
複雑に絡み合い、揺れ動く心情が胸に刺さる。
絶対的な信頼と情愛で結ばれた加賀谷と那岐。
憎悪と愛情の狭間で揺らぎながらも、離れることのできない火野と安見。
心理描写が圧巻で、私自身も迷鳥になってしまったかのような
心許なさと胸苦しさを終始感じながら読了しました。
地に足がついたような安定を得た二人と、
緊張感と危うさを孕んだ未来を歩む二人。
加賀谷と火野の愛し方は対極。
火野の安見に対する歪んだ執着と恋情にはゾクゾクした。
そして、火野と那岐の絆がいい。
二人の別れのシーンはぐっときました。
見届けた感満載の読後感です。
貸してくれたお友達に感謝。
おもしろかったー!
内容(「BOOK」データベースより)
「俺はお前を信じてる。お前は俺を裏切ったりしねぇよな?」関東侠和会の那岐には誰にも言っていない過去があった。高仁会前会長の殺人犯を探す最中、過去の亡霊ともいえる男と再び顔を合わせることに…一方、記憶を失っていた安見は、自分の上司と名乗る男と会い、思いがけない事実に戸惑っていた。自分には火野が必要だ。火野がいなくてはならない。しかし、その関係は偽りのものだった!?裏切りと真実。希望と絶望。縺れ合う憎悪と愛情。そして絆。男たちの想いの行方は…。
「デコイ 囮鳥」英田サキ(SHY NOVELS)
一緒にいるのに独り。
誰も彼もからそんな孤独が伝わってきて、なんだかヒリヒリと痛い。
記憶を失った安見。
過去を押し隠した那岐。
想いを殺しきれずにいる加賀谷。
そして、どこか超然とした位置に立つ火野。
底のない沼のような闇を抱えた火野から、何故か目を逸らすことができない。
取り戻したい自分。
希求する真実。
応えたい想い。
殺人事件と爆破事件。
二つの事件の真相が明確になった時、
彼らの惑いは、そして揺らぐ想いはどこにいきつくのか。
先が全く読めなくて、気持ちが逸ります。
気になるので、とにかく次巻へ!
これ、続いていると思わずに読み始めたので、
ものすごいところで切られてうっそーー!となりました。
心の準備って大事……(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
「あんたにとって、俺はなんなんだ?」銃を手に意識を取り戻したとき、安見亨はそれまでの記憶をすべて失っていた。俺は誰だ?この銃は…?自分に怯える安見に名前を教え、優しいけれど得体の知れない闇を感じさせる男、火野。安見は何かから逃れるように火野に溺れていく。一方で、高仁会前会長の殺人事件をめぐり、ある男たちが呼び出されていた。関東侠和会に属する那岐と加賀谷だ。那岐は加賀谷を誰よりも必要としていたが、男としての愛情は受け入れることができずにいた。交錯する過去と現在。そして、因縁。男たちの闘いが始まる。
「武王の門 上」北方謙三(新潮文庫)
【ここを生きよ、ということでございますか。いまこの時だけ、生きよと】
描いた夢がある。
そして、託した夢がある。
時は南北朝。
共に夢を見、その夢を現実のものとするために、奔走する男たち。
そこに私欲はない。
目指すは新しい日本。
それを成しうるだけのものを備えた男、
即ち、後醍醐天皇の皇子・懐良に、全力でついていく。
自らの命を投げ打ってでも、守りたいものは、彼の命であり、彼らの夢である。
どの物語でも、北方の生死観に触れると、心が震える。
生きるために生きる。
そのことを痛切に感じさせられるから。
夢を語ることのできる友と、懐良はどこまで駆けつづけることができるのか。
ドキドキしながら次巻へ。
北方浪漫健在!
この時代を駆けた男たちの在り方が鮮烈すぎて、動悸が収まりません。
そして北方の語り口調、馴染みすぎてものすごくしっくりきます(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
鎌倉幕府を倒し、後醍醐天皇が敷いた建武の新政も、北朝を戴く足利尊氏に追われ、わずか三年で潰えた。しかし、吉野に逃れて南朝を開いた天皇は、京の奪回を試み、各地で反撃を開始する。天皇の皇子・懐良は、全権を持つ征西大将軍として、忽那島の戦を皮切りに、九州征討と統一をめざす。懐良の胸中にある統一後の壮大な『夢』とは―。新しい視点と文体で描く、著者初の歴史長編。
「エス-残光-」英田サキ(SHY NOVELS)
【お前を、愛させてほしい。
そしてどうか、俺を愛してほしい……】
シリーズ完結編。
五堂の抱えた闇に引き込まれる気持ち。わからなくもない。
結局、人間は独りでは生きていけないんだよなぁ、と、つくづく思う。
自分を支えてくれる人、理解してくれる人、ちょっと生存を気に掛けてくれる人でもいい。
存在を感じられる誰かがいて、はじめて、人生って色が添えられるような気がする。
その誰かが愛を誓える人だったら最高だよね。
椎葉の告白がすごく良かった。
ようやく想いを伝え合った二人が共に在りつづけるための宗近の選択。
男として。
大人として。
とってもカッコいい二人だったと思います。
後書きのミスターマグナムに爆笑。
余韻ぶっとびました(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
警視庁組織犯罪対策第五課、通称「組対五課」の刑事である椎葉は、拳銃の密売情報を得る、言わば拳銃押収のスペシャリストだ。その捜査方法はエス(スパイ)と呼ばれる協力者を使った情報収集活動に重点がおかれている。ある日、大物ヤクザであり椎葉のエスでもある宗近が何者かの銃によって倒れた。宗近を守るため、ある決意のもと宗近から離れた椎葉は、五堂によって深い闇を知る。複雑に絡まり合う過去と因縁。錯綜する憎しみと愛。奪われた者は何で憎しみを忘れ、奪った者は何で赦しを得るのか。この闘いに意味はあるのか?闇の中でもがき続けた男たちの鎮魂曲。