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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「つきのふね」森絵都(角川文庫)



【人より壊れやすい心に生まれついた人間は、
 それでも生きていくだけの強さも同時に生まれもっているものなんだよ】

淋しさや後悔は大なり小なりみんな抱えていて、先の見えない未来に不安になったりもする。
たったひとりでも自分の心に寄り添ってくれる誰かが傍にいてくれれば、
それほど心強いこともない。
逆に、よりどころを見失ってしまった時の落胆と淋しさと恐怖は計り知れない。

壊れかけたみんなを繋ぐために頑張った勝田。
宇宙船を捨てて地に足をつけた智さん。
ひきこもった殻の中から出てきた梨利。
そして、皆を繋ぎ、足掻くことをあきらめなかったさくら。
それぞれの心のあり方がやさしく切なく胸に染みる、素敵な話でした。

辛い時期を乗り越えた露木からの手紙には胸を打たれる言葉がいくつもあって、
何度も繰り返しなぞってしまいました。

内容(「BOOK」データベースより)

あの日、あんなことをしなければ…。心ならずも親友を裏切ってしまった中学生さくら。進路や万引きグループとの確執に悩む孤独な日々で、唯一の心の拠り所だった智さんも、静かに精神を病んでいき―。近所を騒がせる放火事件と級友の売春疑惑。先の見えない青春の闇の中を、一筋の光を求めて疾走する少女を描く、奇跡のような傑作長編。

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「天空の蜂」東野圭吾(講談社文庫)



3.11以前に読んだのなら、純粋に楽しめたんだろうなぁ、と思う。
けれども、東日本大震災を経験してしまったからこそ、
色々な思いを噛みしめながら項を捲った。
震災当時誰かが言っていた「安全神話などではなく、安全願望だ」という言葉が
鮮烈に耳に残っている。
良いとか悪いとか言う以前に、原発のことをきちんと知ることが大事なんだろうなぁ。
そういう意味では著者はどの視点にも偏ることなく、公平な目線で物語を展開していると思う。
説明はとても分かりやすかったし、色々なことがストンと胸に落ちてきた。

エンタメ的には……
救助シーンが、というよりも、航空救難隊の皆々様がとてもかっこよかった!デス。


内容(「BOOK」データベースより)

奪取された超大型特殊ヘリコプターには爆薬が満載されていた。無人操縦でホバリングしているのは、稼働中の原子力発電所の真上。日本国民すべてを人質にしたテロリストの脅迫に対し、政府が下した非情の決断とは。そしてヘリの燃料が尽きるとき…。驚愕のクライシス、圧倒的な緊迫感で魅了する傑作サスペンス。

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「ドント・ルックバック」ジョシュ・ラニヨン(モノクローム・ロマンス文庫)



不毛だとわかっていていも断ち切れない想いがあり、
それじゃだめだとわかっていても、どうしても抗えない柵がある。
ピーターの経験したことはとても辛いことだったけれども、
後に、そんな呪縛から逃れるために、一時的な記憶障害になったんだと、
グリフィンと語り合える未来であることを願います。

自分のことを忘れてしまったピーターと対面した時のグリフィンの棘のある態度が、
時間の経過と共にほどけていく感じが好き。
ふてくされたり拗ねたりしながらも、結局はピーターを放っておけないグリフィンと、
記憶の欠片が戻ってくるたびに、自分の本当の気持ちに気付いていくピーター。

開いた扉の向こう側を覗いてみたい気持ちに駆られつつ、最後の頁を閉じました。
うん。
素敵なラブストーリーでした☆

内容(「BOOK」データベースより)

甘い夢からさめると病院のベッドの中だった。美術館に勤務するピーターは頭を殴られ意識を失い、そのショックで記憶障害を起こしていた。警察の取り調べが始まり、ピーターは自分に容疑がかかっていることに気付く。自分は犯罪者なのか―そして夢に出てくるあの魅力的な男の正体は―。記憶とともに甦る、甘く切ない思い出。極上のミステリ・ロマンス。

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「退出ゲーム」初野晴(角川文庫)



【きみたちがこれから経験する世界は美しい。
 しかし同時にさまざまな問題に直面するし、不条理にも満ちている】

青春真っ只中の高校生たちの元気いっぱいな物語。
4編の短編からなる本書では、思春期の悩みや問題ごとだけではなく、
家族の在り方や、一人の人間の生死観まで、実に深い部分まで緻密に描かれている。
例えば「エレファンツ・ブレス」
奇天烈な導入からはじまるこの物語は、
一人の女子中学生の悩みからベトナム戦争にまで話が及ぶ。
いろいろと考えさせられた。
それでも物語の主軸は彼らの所属する吹奏楽部にある。
弱小だった吹奏楽部で部員を増やしながら
吹奏楽の甲子園に出場することを目指す彼らの今後の物語を読むのが楽しみだ。
そしてハルタとチカの恋の行方も気になるところ。


内容(「BOOK」データベースより)

「わたしはこんな三角関係をぜったいに認めない」―穂村チカ、廃部寸前の弱小吹奏楽部のフルート奏者。上条ハルタ、チカの幼なじみのホルン奏者。音楽教師・草壁先生の指導のもと、吹奏楽の“甲子園”普門館を夢見る2人に、難題がふりかかる。化学部から盗まれた劇薬の行方、六面全部が白いルービックキューブの謎、演劇部との即興劇対決…。2人の推理が冴える、青春ミステリの決定版、“ハルチカ”シリーズ第1弾。

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「永遠の仔 五」天童荒太(幻冬舎文庫)



【生きていたことが間違ってなかったって。
 そう信じさせてくれた人と出会えたことで、充分なのよ】

「打ち明けてしまう弱さ」
志穂はそう記したけれども、確かに、彼女がすべてを抱えて胸の内に秘めていたなら、
せめて聡志は救えたのかもしれない。
彼女によって明かされた真実は、誰にとっても残酷なものであったけれども、
同時に優希の心を救うものでもあった。

笙一郎が越えてしまった分岐点。
誰か一人でも彼を傍で支えてくれる人が、或は、彼を必要としてくれる人がいてくれれば、
こちら側に踏みとどまることができたのかもしれない。
三人が離れ離れだった十七年間、優希には家族や患者がいて、
梁平には叔父や叔母、奈緒子や伊島がいた。
けれども、笙一郎の人生に寄り添う者はおらず、結果的に彼は道を踏み外してしまった。
改めて思う。
人は、一人では生きられない。
負の連鎖を断ち切ることができるのも、闇に呑まれるまいと戦えるのも、
人生を踏ん張れるのも、たぶん、誰かの存在があってこそなのだと思う。
愛しいと思う気持ちも決して一人では生まれてこない。
一番身近にいる他人は家族。
お互いの生を喜び、抱きしめあえる家族であることを願ってやまない。

内容(「BOOK」データベースより)

母に続き弟まで喪ってしまった優希、母と優希への愛情にもがき苦しみ続けた笙一郎、そして恋人を殺害されてしまった梁平。三つの無垢なる魂に最後の審判の時が訪れる―。十七年前の「聖なる事件」、その霧に包まれた霊峰に潜んでいた真実とは?“救いなき現在”の生の復活を描き、日本中に感動の渦を巻き起こした永遠の名作、衝撃の最終章。

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「永遠の仔 四」幻冬舎文庫(天童荒太)



【ただつらくて、虚しいだけで終わるわけじゃない……
 きっと、生きてることが楽しくなる道もあるんだって、伝えたかったの】

過去ごと抱きしめあい、あるがままの自分を受け入れあえる伴侶に出会えた岸川夫妻。
彼らのように幸せになる権利は誰にでもあるはずだ。
けれども、優希たちの指の間からは、幸せがすり抜けて行ってしまっている。
そんな思いが最後までぬぐえなかった。
「あなたたちのように生きたかった」
育ての親である叔父夫婦に想いを吐き出した梁平。
彼らの愛情を改めて感じ、ようやく奈緒子との未来を考え始めた直後に彼を襲う悲劇。
すべての悲劇は、彼らが再会することさえなかったら防げたものだったのか、
それとも、いずれはどこかで破綻するものだったのか。
答えを見つけられないまま、最終巻へ。



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「永遠の仔 三」天童荒太(幻冬舎文庫)



【おれたちは、別の世界で始めるんだ。
 この世界の人間は誰もいない、新しい世界で、
 どんな痕も残っていないきれいなからだで、初めから生き直していくんだ……】

実の親から受けるには、あまりにも凄惨な過去の出来事の告白。
優希が呑みこんできた想いを吐き出すことができたのは、
笙一郎と梁平もまた、同じような修羅をくぐってきたからだ。
子どもが受け止めるにはあまりにも辛い仕打ちを何故血の繋がった親ができてしまうのか。
子どもは親の憤りや苛立ちの捌け口ではない。
「新しい世界で初めから生き直したい」
10代になって間もない子供の台詞が痛々しくてたまらない。
依然として知れない聡志の行方。
大人になって再会した三人の想いも少しずつ歪さを増していく。
息苦しさを払拭できないまま、次巻へ。


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「永遠の仔 二」天童荒太(幻冬舎文庫)



当事者たちにとっては、決して掘り返されたくはない過去。
秘密にされることで苦しんできた者にとっては、明確にさせたい過去。
そうでなければ、知ることのできない己の存在意義。
けれども、彼が知りたいと希求するものは、誰にとっても知るのが辛い過去なのだ。
「過去」を探ろうとする最中の「現実」で起こる殺人事件。
絡んだ糸は何処までも複雑にまとわりついて、彼らを苦しめる。
幸せな家族が一組も出てこないことが、読んでいてとてもつらい。
親が子供にあたえる影響は計り知れないということを、改めて胸に刻んだ。
燃え盛る炎にさらなる息苦しさを感じながら次巻へ。

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「恋をするならこの街で」阿部あかね(ディアプラスコミックス)



もうね。
単純に面白かった!
アットホームなほのぼのしい商店街。
行ってみたい……ものすごく行ってみたい。
徹の天然っぷりが予測の斜め上を行き過ぎて、可愛いのとおもしろいのとで、笑えるったら。
そんな徹と青筋たてながら向き合っていく宗松はオトコマエのイケメンでした!
相手の言動にイラっとしたり呆れたり喜んだり甘やかしたり。
日々の営みで発生する感情がストンと伝わってきました。
妙にすっきりする読後感はどこからくるんだろう?
兎にも角にも楽しく読めました☆

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「永遠の仔 一」幻冬舎文庫(天童荒太)



「変われたなら、どれだけ楽だったろうな……」

同じ過去を、罪の意識を共有する三人の男女の十七年ぶりの再会。
それは偶然ではなく、文字通り、運命だった。
それぞれが抱えていた過去の傷は十七年の時がたっても風化などしておらず、
三人が出会った瞬間、胸の内に抱えていた想いが一気に溢れ出す。
それは、再会の喜びではなく、過去に縛られた者の慟哭に近しい。
現実が過去に呑みこまれる。そんな息苦しさを感じて仕方なかった。
親の愛情と庇護を必要とする子供に対する、実の親からの虐待。
心を殺された子供たちの声なき悲鳴が胸を抉る。
過去に縛られたまま大人になった彼らの行く末は……?

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