きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「1985年のクラッシュギャルズ」柳沢健(文春文庫)
【誰も気づかないうちに
女子プロレスの時は止まっていたのだ】
何とも言い難い息苦しさを感じる本だった。
それはたぶん、当時の彼女たちを覚えているから。
その姿が脳裏に浮かべば、書かれている内容がよりリアルに迫ってくる。
特別プロレスに興味がなかった小学生の私でさえ、しっかりとその勇姿を覚えている言彼女たち。
筆舌に尽くしがたい苦悩と葛藤を抱えながらも、リング上では自分を最大限に魅せ、
観客を沸かせるプロレスラーを演じてきた彼女たちの必死さと懸命さが、
日本中の人たちの心を揺さぶったのだということが丁寧に書かれている本だった。
女子プロの栄枯盛衰は彼女たちと共にある。
時代を駆け抜けた彼女たちの生き様は、あまりにも壮絶で、あまりにもドラマティックだ。
内容(「BOOK」データベースより)
1985年8月28日、巨大な大阪城ホールを満員にしたのは、十代の少女たちだった。彼女たちの祈るような瞳がリング上の二人に注がれる。あの「クラッシュ・ギャルズ」の二人のように、もっと強く、もっと自由になりたい!長与千種とライオネス飛鳥、そして二人に熱狂した少女たちが紡いだ真実の物語。
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「ケルトの封印 上・下」ジェームズ・ロリンズ
【危険にさらされているのは、人類の未来。
手に入れなければならないのは、その運命を制御する力。】
近い将来必ず起こりうると予測される地球規模の人口増加による食糧危機。
だったら自分たち以外の人間を減らしてしまえばいい、という
傲慢な視点に則った実験から端を発する物語。
人間は創意工夫によって困難を乗り越える力を持っていると思うんだけどなぁ。
数日間の間に凝縮されたあまりにも濃密な出来事。
次々と展開される事象にひっぱられるように読み進めました。
一つの事件が収束するたびに、増えていく心の傷。
彼らがシグマという組織に身を置く限り、
その傷を抱えて生きていかないといけないんだろうなぁ…
同情はできないけれども、セイチャンの生き方が痛々しい。
彼女もまた、自らの犯した罪を背負って生きていかなければならない人間の一人。
それでも、レイチェルに謝ることができてよかったと思う。
真剣なんだけど緊迫感のないコワルスキの存在が本当に癒しだわ(笑)
新たなる戦いを示唆しながら次巻へ。
個人的には「存在するものの公表されないように圧力がかけつづけられている」
という、ミツバチ大量消失の謎が気になる……
内容(「BOOK」データベースより)
ヴァチカンのサンピエトロ大聖堂での神父、アフリカ・マリ共和国の難民キャンプでのアメリカ人大学生、アメリカのプリンストン大学での大学教授―三つの大陸で起きた三つの殺人事件には、ある共通点があった。シグマフォースのグレイ・ピアースは、ヴァチカンでの事件でおじが巻き添えになった元恋人レイチェルの依頼でイタリアに飛び、渦巻模様と円環の謎を追う。一方、マリで犠牲になった大学生の父親である上院議員の要請で調査を進めるペインター・クロウは、遺伝子組み換え作物を手がけるノルウェーの企業が事件の裏に存在することを突き止めた。だが、調査を進めるグレイとペインターに、炎と氷の脅威と裏切りの罠が迫る。「ドゥームズデイ・ブックの鍵」を巡り、シグマとギルドとの争奪戦の火ぶたが切って落とされた。
「ジャイアントキリング 31」ツジトモ(モーニングコミックス)
新生ETUの緒戦。
達海の指揮のもと、山の頂を目指すという決意と覚悟が伺われる試合は、
ドキドキ……と言うよりもワクワクする試合展開。
ジーノのシュートが個人的にはもうテンションマックスでした(笑)
シュート後のリアクションもさすが王子。
大好きです!
名古屋の不破監督のスタンスや考え方が描かれていたのがよかった。
監督に就任しているからにはそれ相応の理由と資質がある。
この物語は選手の物語であると同時に監督の物語であることを、改めて思い知らされた。
キャプテンと言う任を降りながらも、己の役割をきちんとみきわめて全うする村越。
それを痛々しいと感じることは、彼にとって失礼なんだろうな。
それに加えて川瀬の回想と現在の思い。
プロ意識とは……プロとはなんたるや?
次巻が待ち遠しいわ。
「ハーモニー」伊藤計劃(ハヤカワ文庫JA)
【世界中で暴動や集団自殺が続いている今も、
わたしは別に世界にことなんか気に掛けちゃいなかった】
他者と同じであること。
決められた規則と法則に従って行動すること。
自分を取り巻くあらゆることに疑問を抱かないこと。
完璧なまでに管理された社会の中で何も考えることなく、
流されて生きることはとてもとても楽だろう。
そこに苦しみはない。恐れも、苛立ちも。
我々を脅かすものは何も存在しないのだ。
だが、それはただ息をしているだけ。
システムとしての個体を維持しているだけ。
独立した一人の人間として「生きて」はいない。
そして、知ることはない。
喜びも、幸せも、生き甲斐も。自分がこの世に存在する意味も。
この物語を読み終えた今、
エピローグに記載されている「いま人類は、とても幸福だ」という一文が
とても薄ら寒く、気味悪く思える。
そこにある幸福は、個々人が選択した幸福ではなく、
ごく一部の人間によって強制された幸福。
許されるなら、眠れる意識に問いかけたい。
あなたはいま、幸せですか?と。
内容(「BOOK」データベースより)
21世紀後半、「大災禍」と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。医療分子の発達で病気がほぼ放逐され、見せかけの優しさや倫理が横溢する“ユートピア”。そんな社会に倦んだ3人の少女は餓死することを選択した―それから13年。死ねなかった少女・霧慧トァンは、世界を襲う大混乱の陰にただひとり死んだはずの少女の影を見る―『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。第30回日本SF大賞受賞、「ベストSF2009」第1位、第40回星雲賞日本長編部門受賞作。
「公安捜査 傾国」浜田文人(ハルキ文庫)
【人それぞれに環境が異なり、様々な感情を抱いて生きている】
久しぶりに新刊キター!と思ったら、キャー!!と叫んで次巻に続く…
夏予告、しっかり守ってください!
鹿取と蛍橋の、そりゃないでしょ!という
捜査における相変わらずの傍若無人っぷりはおいておくとして。
(この話好きなんだけど、この点だけはどうしても気になってしまう…)
警察組織の複雑さと面倒くささともどかしさが歯がゆくてやりきれない。
何故同じ組織の人間に潰されそうにならないといけないんだろうなぁと思うと
本当にいたたまれない。
三好さんの漢気とやさしさと懐の広さ。
もっと自分のことだけ考えてもいいのに……とやるせなくなるけど、
だからこその人望であり、だからこその結束力なんだろうなぁ。
とはいえ、三好組も相当な危機的状況下にあるので、そこは何とか危機回避してほしい。
でも最後の最後で「追え!」って……
わかるけど。そうする以外ないのは分かるけど。
もしここでもう一悶着起こしたら、嫌な予感しかしないよね。
今回は要が大人しかったので、次巻ではもうちょっとヤンチャ(笑)に活躍してくれることを
希望します。
内容(「BOOK」データベースより)
神奈川県警公安の螢橋政嗣は、警察庁警備局長の田中一朗の指示で、特捜班の一人として動いていた。公安事案の闇を暴いてきた螢橋は、巨大な警察利権と警察の正義の狭間で、田中の指示を完遂することだけを決意した。そのさなか、殺人の捜査で動いていた捜査一課の鹿取信介と一年半ぶりの再会を果たす。二人は、公安事案、殺人事案、それぞれの立場から真の敵に立ち向かっていく。書き下ろしで贈る、ファン待望の「公安捜査」シリーズ、ここに復活!
「図書館の神様」瀬尾まいこ(ちくま文庫)
【うまい下手にかかわらず、
知っている人の書く文章はちゃんと心に響く】
なんとなく国語教師になり、意に沿わないながらも、文芸部の顧問となった清。
新任の講師としての彼女の一年は、投げやりな感じで始まったけれども、
その一年を実のあるものとして過ごした後の彼女の成長は、
受け取った三通の手紙に集約されていると思う。
不実との決別。教師であることへの激励。そして新しい未来。
不倫相手。文芸部の部員。弟。
彼らと過ごす時間を主軸に語られる物語。
苦痛でしかなかった学校での仕事が、
教師でいたいと自発的に思えるようになっていく清の心理が
とても自然に伝わってくる。
全く興味がなかった文学に対して面白みを感じていく様子も好ましい。
きっかけって大事。
どちらが生徒でどちらが教師なのかわからなくなってしまいそうな会話もいいし、
マイペースながらも姉を気にかけてくれる弟の存在もいい。
良くも悪くも人を変える力を持っているのは人。
世界は一人では変わらない。変えられない。
人と係わりあうことで、プラスに成長していけることはある意味理想的なことだと思う。
内容(「BOOK」データベースより)
思い描いていた未来をあきらめて赴任した高校で、驚いたことに“私”は文芸部の顧問になった。…「垣内君って、どうして文芸部なの?」「文学が好きだからです」「まさか」!…清く正しくまっすぐな青春を送ってきた“私”には、思いがけないことばかり。不思議な出会いから、傷ついた心を回復していく再生の物語。ほかに、単行本未収録の短篇「雲行き」を収録。
「虐殺器官」伊藤計劃(ハヤカワ文庫JA)
【死と隣り合わせの戦場で、ぼくは強く意識する。
----自分がまだ生きているということを】
綴られている言葉に、要所要所ではっとさせられる。
そして深く考えさせられてしまう。その意味を。
解釈を読み手にゆだねられる部分が多々あって、だけど、物語の軸は決してぶれない。
殺戮と虐殺が意図的に引き起こされる世界を転々としながら進行する物語。
一人称で語られる主人公との対話を胸の内で繰り返しながら辿り着く結末は、
一番納得できるものの、一番納得したくない結末だった。
大国のエゴイズム。そして因果応報。
もやもやとした想いを抱えながらも、一呼吸おいて再読したくなってしまう。
久しぶりに圧倒される文章に出会いました。
内容(「BOOK」データベースより)
9・11以降の、“テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう…彼の目的とはいったいなにか?大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは?ゼロ年代最高のフィクション、ついに文庫化。