きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「僕のねむりを醒ます人―Sanctuary―」沙野風結子 (Splush文庫)
二人が共有する過去は甘やかで優しい色あいのものが大半だったけれども。
力ずくで捻じ伏せ、凌辱した最後の一日が、幸せな過去を覆いつくす。
そんな幼馴染の11年ぶりの再会。
感情の起伏が停止してしまった雪弥と自身を壊しかねなかった耀。
二人を繋いだのは、耀の別人格の晧。
彼失くしては、二人のどんな未来も立ち直りも語れない。
二人の幸せを願い、懸命に立ち回った晧の在り様が、切ない。
ああ、だけど、彼が存在するに至った経緯を思えば、
それ以外の選択肢はなかったんだろうなぁ。
穏やかに眠りについた彼を思って涙。
私にとっては彼が主役の物語だった。
だって耀はやりたい放題だっただけじゃん。(極論だけど間違ってない)
とはいえ、主人格は彼だからね。
そもそも雪弥が恋をしたのは彼だからね。
ハッピーエンドのはずなのに、なんだかとても切ない。
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「妖奇庵夜話 ラスト・シーン」榎田ユウリ (角川ホラー文庫)
長い物語の着地点に、深いため息。
凛として切なく、胸が軋むような優しさに満ち溢れている。
だけどやっぱりやるせない。
正直「鵺」の介入は私にとってはやっぱり邪魔で。
だけど、その介入がない限り、彼らはずっと苦しんだのかな?とも思えるわけで。
だから彼らは鵺主導の結末にはならないように、精一杯抗った。
彼が得たものは、至上のものだっただろうけれども、
これが最良の着地とは、とても言えない。
一方の彼が失くしたものがあまりにも大きいから。
「ほら、笑ったらどうだい」
彼に関わる全ての人に向けられた言葉。
哀しいわけではない。だけど、反芻して泣きたくなる。
ショートコミックペーパーの内容が刺さる。
ここからはネタバレになると思うので、目を通される方はお気をつけください。
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青目にとっては伊織にこれ以上ない言葉をもらったと思うんだ。
その言葉を抱えて生涯生きていけるくらいの至上の言葉。
或いは、その言葉を抱えて死んでもいいくらいの言葉。
咀嚼したもの以上に大きなものをもらったんだと思う。
だけど、妖奇庵の人たちにとっては胸が痛い現実を突き付けられることになる。
それでも、彼らは伊織の家族だ。
これまで以上の強い絆で共に生きていくのだろう。
伊織はそこに戻ってきたのだから。
「花屋に三人目の店員がきた夏 毎日晴天! 18」菅野彰 (キャラ文庫)
16歳だった子どもたちは20歳を過ぎ、大人たちも同じだけ歳を重ねていく。
作中で流れた時間の分だけ彼らは思い悩み、ぶつかって、気持ちを寄り添わせ、
そして一人の人間として成長してきた。
それがしみじみと感じ取れる18巻。
想う相手を理解しようと懸命に心を尽くす彼らの姿がいとおしい。
時々ね。そんなにめんどくさく考えなくてもいいんだよ?と思う時もあるけど、
投げかけられる言葉や思考に抉られる。
そのたびに、疎かにしてはいけないことがあるのだと知らされる。
龍がこの町で踏ん張り続けたことが嬉しいし、
勇太がこの町に馴染んでくれていることが嬉しい。
そしてどうしようもなく気になる真弓の就活。
まだまだ目が離せません!
『機龍警察』『シグマフォース』『毎日晴天!』その他諸々。
ジャンルも国も問わず、楽しく読み続けることのできる長編がいろいろあることが
とても嬉しい。
最後まで並走する気満々なので、皆様くれぐれもご自愛ください。
「色悪作家と校正者の別れ話」菅野彰 (ディアプラス文庫)
愛しすぎたが故の別れ話。
蔵書多い問題からの同棲トライアル。
そんな彼らと一緒になって
公私を分けられない状況に慄き、
互いの頑固さにもどかしくり、
話の噛み合わなさに笑って、
愛情の深さにウルっとなって切なくなって。
で、え、結論そこ!?って驚いて、
だけど、この二人ならそうだよね、と、
しみじみ納得しての読了。
大吾からの正祐を慮る言葉も良かったし、
自分の想いを懸命に大吾に伝えようとする正祐も良かった。
時間をかけてゆっくりと育んでいく愛情の尊さを垣間見た気がして、感慨深い。
続きもスピンも楽しみに待ちます。
無限の書庫。いいなー、私も欲しい。
私が同一の作品で複数冊所有している本は単行本と文庫と、形態が異なる場合においてのみ。
あとは新装版で描き下ろしが入っている時。
他は全て一作品につき一冊ずつ。
例外が太宰の『人間失格』。
これは文庫本の装丁をいろいろと変えてきた新潮文庫の戦略(?)にやられました。(笑)
「シグマフォース シリーズⓍ Σ FILES〈シグマフォース〉機密ファイル」 (竹書房文庫)
シリーズ初の短編集+徹底分析録。
それぞれの短編がシリーズの間を埋める構成になっているのが面白い。
野生のマンドリルと向き合うコワルスキもボクサーパンツ一丁の裸族。
そうなった理由がアホすぎる。
でも、彼がシグマに入るきっかけが知れたのは良かった。
セイチャンらしからぬ失態から始まった物語は、彼女らしい幕引きに。
目には目を。やっぱりハンムラビは偉大だ。
そして「仲良しは誰だ?」のタッカー&ケインが大好きです。
可愛いなぁ。
後半の分析録は既刊の内容の復讐。
というわけで、このシリーズは発刊順に読んでいくのがおススメです。
私はシリーズ途中から新刊を買って積み、買って積み、で読まずに放置していた結果、
この『機密ファイル』は買ったつもりで実はスルッと抜けていたことに
読友さんたちのレビューで気づいたのでありました。
共読ありがたい♡
「機龍警察 白骨街道」月村了衛 (ハヤカワ・ミステリワールド)
<敵>が蠢くその場所は、黒よりも深い闇色で、
醜悪極まりないものだった。
巧妙に仕組まれた罠により
海外の劣悪な環境下での戦いに身を投じぜざるを得なかった姿たち。
警察を、ひいては日本を蝕む悪を暴こうと奔走する刑事たち。
彼らと共に六道を巡りながら、
過去の日本の過ちと、現代社会が内在している問題を突き付けられる。
外に目を向け、情報を拾い、考えることを放棄してはいけない。
空しい。でも無駄ではなかった。
悔しいけど、そう思うしかない幕引き。
嫌いにならないで。
この国を。
そしてここにきてまさかの第四の男の登場。
この物語から、どうしたって目が離せない。
今回のヒーローは間違いなく關だと思う。
半端なくカッコイイ。
だけど私は姿推し。
「お、きっと狂喜乱舞の8月となるよ♡」
相思相愛な読友さんの言葉は間違ってなかった(笑)
読み終わってすぐに読み返したい。
そんな衝動に駆られる作品。
好きすぎてやばい。
「風と共に去りぬ (2)」マーガレット・ミッチェル (新潮文庫)
可愛そうなのは私。
愛されるべきは私。
自分のために自由気ままに生きてきたスカーレット。
けれども。
頼れる存在はもはやおらず、
その双肩に他者の人生もがかかっていることを自覚した時、
彼女の娘時代は終焉を告げる。
そこまでの過程が丁寧に描かれていた二巻。
メラニーや子どもたちを抱え、戦いで混乱を極めた道中をひた走り、
タラへと帰り着くまでの描写が圧巻。
とはいえ、メラニーを最後まで見捨てなかったのも、
純粋にメラニーの為と言うよりも
アシュレとの約束を違えることを恐れる自分の為だったところが彼女らしいと思う。
南北戦争に関する描写が思っていた以上に克明に描かれている。
戦力外としか思えない老人や少年たちまでもが戦場に向かっていく姿が印象深かった。
【ガーディアン必読111-2/1000冊】
「緑土なす きみ抱きて大地に還る」みやしろちうこ(リブレ出版)
山野で独り生活してきた足弱にとって、
多くの者に傅かれ、王族として生きていく覚悟を決めるためには
一度原点に立ち返る必要があったんだろうなぁ。
戻った故郷で知った忌まわしい過去の真実。
彼を山で育てた老人の王族に対する悪意が気持ち悪い。
愛情をもって育てたなら、きちんと名前をつけたはず。
一方で、敵地にじっと身を潜めて「その時」に備えていた灰色狼の王族への献身は
ただただ素晴らしい。
報われて良かった。
九死に一生を得たレシェは……うん。やっぱりケダモノだった(笑)
まぁ、足弱が愛を自覚して受け止めてるから良いのかな。
二段組で400頁近いと、
感想も何処から切り取っていいか迷う。
世界観が緻密に作りこまれているから、
矛盾なく展開して、ぐっと引き込まれていくんだろうなぁ。
「風と共に去りぬ (1)」マーガレット・ミッチェル (新潮文庫)
スカーレット・オハラ。
彼女の燃えるような生命力の源は、不平不満と怒り。
意に添わぬ境遇に陥った理由は、想像力の欠如と短絡的な思考。
だけど、世の中を逞しく生き抜いていく力強さを感じ取れる。
近くにいたらめんどくさいだろうなーと思うけど、
そんな彼女の生き生きした姿に惹かれるレッド・バトラー。
映画を観たのはもうずいぶん前だけど、
登場人物たちの姿がリアルに脳裏に浮かび上がって、とても楽しい。
作中では時代背景の描写も丁寧に描かれているので、
南北に分断された当時のアメリカ社会の事も知れて興味深い。
次巻も楽しみ。
【ガーディアン必読111-1/1000冊】
「土地こそは、この世の中で存在するただ一つのものだぞ」
一巻冒頭のこの言葉から、映画のラストシーンを思い浮かべる。
そしてレッド・バトラーがとても好きだった私は、
今から胸が痛い。ってか、泣きそう。
レビュー打ちながら「タラのテーマ」を聴いてなんだか感無量。
いや、まだ5巻あるうちの1巻を読み終わっただけですけどー!