きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「ifの世界で恋がはじまる」海野幸 (キャラ文庫)
意に沿わない部署への異動。
精一杯仕事をこなしながらも、周囲とうまく溶け込めない彰人。
とある気づきがあって部署内での良好な人間関係を築いていくことができるようになる。
後輩指導、周囲との軋轢の避け方、仕事に対する姿勢は学ぶところも多々あり。
だからこそ。
並行世界を介さず、現実世界の日常の営みの中でその気づきがあったとしたら、
海野さんはその過程をどう書いたのかな?と思ってしまう。
それは私のif。
狼上と彰人の互いの仕事に対する姿勢を認め合ったからこそ芽生えた想い。
どこに惹かれたのか、どんなふうに感じたのか。
丁寧に描かれていて楽しく読了のお借り本。
私も「え?何でここに?」と言う部署異動を経験し、とまどいながら悪戦苦闘した思い出。
わからないことは即効聞く!とにかく聞く!と当時の上司の本部長に猪突猛進していたら、
「考えてもわからないから聞きに来たのか、考えるのがめんどくさいから聞きに来たのか」
がバレるようになってしまいました。わははは。
PR
「ハートの問題」一穂ミチ (ディアプラス文庫)
自分一人では変わることが出来なくても。
寄り添ってくれる誰かがいることで、変わることが出来る。
その「誰か」も誰でもいいわけじゃなくて、
それこそハートに響いた誰か。
裏表も駆け引きもなく、感情のままに行動しているようなサンだったからこそ、
臆病で傷を負った要の心を解して癒すことができたんだろうなぁ。
しょう子さんの過去が壮絶すぎて、ちょっと鳥肌。
彼女がいつか黒以外の服が着れるようになるといいな、と思うのは余計なお世話かな?
その瞬間、過去から解き放たれたのは要であり、姉のつぐみでもある。
それぞれの幸せの形に収まった彼らの物語。
家族でもいいままでと同じ家族ではない。
いつでも会えるけど、帰らない旅に出た。
その淋しさ、わかるなー。
家から出ていった妹弟を見送った時ってそんな気持ちだった。
子どもの旅立ちを見送るときもそんな気持ちになるんだろうね。
「Blue Paradise in YOKOSUKA」五條瑛
葉山視点で描かれる物語が静なら、
坂下が主体で描かれる本作は動。
在日米軍による薬物の密輸事件の真相を追う坂下&葉山コンビ。
なんだかんだ仲良いよね、この二人。
その二人に割り込むように突っ込まれたエディの射撃指導がエロ過ぎました。
聞き取りに加えてアクションも交えながら明らかになっていく真実。
その狭間で沖縄の米軍基地事情がいろいろと伺えて、考えさせられた。
坂下メインのスピン的な位置付けかと思ったら、
完全に本編に食い込んだ内容で、
このシリーズは自らの出自に捕らわれた葉山の物語だということを改めて突き付けられる。
シリーズ完結まで見届けられることを切に願います。
沖縄に飛んで、浮かれてライブ会場に向かう途中でデモのための渋滞に巻き込まれたことあったなーと、振り返り。
本作を読みながら当時の光景を思い、そんな背景があったりするのか、と唸りました。
とはいえ、何度行っても観光では楽しい思い出しかない沖縄。
また行きたいなー。
再読・初読織り交ぜて改めて一気に読み切った『鉱物シリーズ』。
読んだ巻数を重ねるほど、深みに嵌っていくこと必須。
諦めずにいれば続きが読めるということを信じて待っています。
「パーフェクト・クオーツ 碧き鮫」五條瑛 (小学館文庫)
ここまでこの物語を追うことのできた満足感と、
更にその先の物語を読みたいという餓えと。
せめぎあう感情に揺られて溜息。
個人、家庭、会社、国、世界。
世界が個人に襲い掛かったら……逃れようがない。
世界のうねりを個人では止める術がないことを思うと、
うすら寒い気持ちになる。
そして、国のトップが変わる重みを、ここ数年、痛感させられることばかりだ。
前作「北の水晶」での出来事を同時系列・別視点から語られる物語。
作中に実際には登場しない葉山の存在感が半端ないのは、
誰もが彼に魅せられているから。
新たな謎が提示され、気になることばかり。
スパイの遺伝子。
あるのかな?と、ちょっと懐疑的。
遺伝子と言うよりも環境だと思うんだよね。
皆が彼にそうなることを望んでいる。
だからこそ、彼には周囲の思惑に収まらない場所に行ってもらいたいと思ってる。
とにもかくにも『パーフェクト・クオーツ』を出版してくださってありがとうございます!
そして『ソウル・キャッツアイ』の発売を心待ちにしています!
「パーフェクト・クオーツ 北の水晶」五條瑛 (小学館文庫)
身の丈、という言葉がある。
己の価値を見極めることができなかったことが、
彼を滅びへと誘った。
血の縛り、という柵がある。
我が子だからこそ、自らの目的達成のための贄にしてもかまわない、という心境が理解不能。
かつて、実際に起こった事件の数々が頭を過る。
その陰でこんな動きがあったとしても、不思議ではない。
そう思わせるリアリティがそこにある。
情報は武器。そして宝。
コツコツと事実を積み上げて手持ちのカードを増やしていった彼ら。
神経がタフでなければやり通すことのできない仕事。
と同時に、細やかな観察眼と先読みができなければ仕事にすらならない。
読了後、何この人たちのこの蜜月!と昇天しそうになる。
エディ、ここにきてデレたなぁ。
と同時に、新たに提示されたワードにより、
さらにその先を読みたいという想いが搔き立てられて眩暈がしそうになる。
この作品を手にすることができたように、
『ソウル・キャッツアイ』を手に取ることができる日が来ることを信じてる。
その前に、本作と対になっている『パーフェクト・クオーツ 碧き鮫』を読むお楽しみが待っているのです。
「恋する犬のしぐさ図鑑」海野幸(ショコラ文庫)
もしも相手の感情を読み取ることができるようになったら?
そんな直紀の都合の良い願いが聞き届けられたものの、
不思議な効力に頼り切らずに恋を成就させたところが好印象。
立ち位置の逆転があって、
そこから重倉サイドの心情が知れてより深みを増す構成がうまい。
感情を推しはかるアイテムが耳と尻尾なんだけど、
尻尾が揺れたり耳がたれたりしている様が
リアルに想像できてめっちゃ可愛かった。
五年前の出来事をお互いが同じような位置づけで胸に抱いていた事実にほっこりする。
から揚げ勘違いが個人的にツボッたお借り本。
「めんどくさい客の要求は通りやすい」にわかりみ。
受けた仕事の依頼は必ず回答期限を聞く。
期限元首は当然だけど、
その中でも時間かけるとうるさい客先の見積はさっさとやろう、って私も思う。
納期の指定と確認をゴリゴリするのは私もやる。
この場合、めんどくさい客は私。
でも、短納期の依頼でもみんなできる範囲でちゃんと協力してくれる。
無理が通った時のお礼は忘れずに。
「星条旗の憂鬱 情報分析官・葉山隆」五條瑛 (文芸社文庫)
『鉱物シリーズ』番外編。短編連作。
主軸はもちろん彼らの物語なんだけど、
韓国の大統領交代、思いやり予算、三菱重工のイージス艦入札等々。
あ、オーストラリアと中国の問題もか。
時事的な事象が端々で描かれていて、考えに沈みそうになること屡。
そしてまさかの人が転勤になっていて、えーー!と。
時間は留まることなく流れているんだと実感する。
昨今のアメリカ政権の変動を作中に反映させる場合、
五條さんはどう描くのか。興味あるなー。読みたいなー。
迷いなく生きる人たちの中で、一人惑う葉山。
だけど、彼の核は固い。
だから、溺れることはないと、信じてる。
まさかの邂逅にきゃーーー!となっての読了。
組織内での異動が気になる人もいるし。
次巻も文庫で出してくれることを願うわ。(個人出版で絶版中)
そしていよいよ本編『パーフェクトクォーツ』に。
積読が減るのは良いことだけど、
シリーズ既刊を読み切ってしまう淋しさがチラッと過る。
ああ、でもずっと続きが出ずにいた期間を思えば、
今こうやって読めていることが奇跡。
「囀る鳥は羽ばたかない 7」ヨネダコウ (HertZ&CRAFT)
行き場のない想いに縛られたままの4年はある意味残酷。
矢代の傍にいる事は叶わず、
だけど想いを諦める選択肢はなく、
ならばせめて、あなたと同じ世界の片隅に。
そう願った百目鬼。
一方の矢代も心の中に4年前に抱えた塊を
吐き出すことが出来ずに抱き続けている。
交わることを願った百目鬼。
接した点の上に立つ矢代に、何を見る?何を望む?
そして「変わらない」素振りの矢代はどう応える?
冒頭でオラオラな三角さんにドキドキして、
相変わらずな面々とのやり取りに和み、
ラストはこの後矢代の発する一言を思ってドキドキ。
うわー、次巻まで引っ張るドキドキ!
オウムを飼う時は家族会議が必要!
と、少し前に会社の人と話したことを思い出しました。
「え。なんで?うるさいから?」
「違うよ。寿命が相当長いから、後に託す人に了承を得ないといけないの」
その時私、初めて知ったのよ、オウムの寿命。
「天使の定理」沙野風結子 (ディアプラス文庫)
加速度的に増していく面白さは最後まで勢い衰えず。
圧巻の読み応え。
閉じた世界の中で過去と共に朽ちていこうとしていた弦宇。
そんな彼の世界の扉にうっかり手をかけてしまった槐。
他人と深くかかわらず自らを保ってきた槐にとって、
物事を俯瞰できなくなった時点で傍観者ではいられなくなった。
そこからの二人の文字通り命がけのバトルが壮絶。
そしてまさかの第三者の介入での豪快な着地。
弦宇の抱えた雑音の正体に感極まったところでクライマックスかと思ったけど、
もう一段高みへと引き上げられての読了。
笠井さん絵には見惚れてため息。
前作での不安定さがまったくなくなっていた要斗。
聰一郎との関係が良好な証。
しっかり仕事をしている姿が嬉しい。
今作のその後は堕ちた天使の世話をかいがいしく焼いているツキノワグマの姿が
垣間見られるペーパーが嬉しい。