きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「秋の牢獄」恒川光太郎(角川ホラー文庫)
今私が知覚するすべては幻。
本物の私は夢を見ている。目覚める日を待ちながら、夢の中を生きている。
そんなふうに夢想していた少女時代を思い出しました。
ここではないどこかへ。
一度は思い描いたことがあるはず。
だけど、踏み出してしまった「どこか」は、儚くて、恐ろしくて、淋しい世界。
多分幸せは「ここ」にある。今、自分自身が在るこの世界に。
短編三篇。
様相の全く違う幻想世界を、眩暈がするような感覚を抱きながら浮遊しました。
著者の描く独特の世界観が好き。
「幻は夜に成長する」
この後に展開される狂気めいた世界を垣間見たいと、惜しみながらの読了。
11月7日に読むつもりで楽しみに温存していたけど、
その日接待で夜中まで拘束されること確定な気がするのでフライング。
私の半年越しの計画台無し!キーーッ!!←落ち着こう。
それはさておき。
「秋の牢獄」途中、泣きたくなるほど切なくなって、最後、なんとなく安堵した。
その安堵は「やっと終わり」なのか「これで次へ」なのか。
読んだ時の自分の状況で変わってきそう。
内容(「BOOK」データベースより)
十一月七日水曜日。女子大生の藍は秋のその一日を何度も繰り返している。何をしても、どこに行っても、朝になれば全てがリセットされ、再び十一月七日が始まる。悪夢のような日々の中、藍は自分と同じ「リプレイヤー」の隆一に出会うが…。世界は確実に変質した。この繰り返しに終わりは来るのか。表題作他二編を収録。名作『夜市』の著者が新たに紡ぐ、圧倒的に美しく切なく恐ろしい物語。
PR
「私が殺した少女」原尞(ハヤカワ文庫JA)
硬質な文体からは地に足の着いたカッコよさが滲んでいる。
生き様のブレない登場人物達。
探偵・刑事・ヤクザ。
どうあっても相容れない者達が、互いに認め合っている。
だが、彼らは決して馴れ合わない。
そんな関係が魅力的。
本筋から外れるけど、沢崎に橋爪が仕事を依頼する場面がとても好き。
誘拐事件を軸に展開する物語。
グイグイと引きこまれ、一気に読み進めるのだけれども。
クライマックスで自分が物語から弾かれてしまったかのような
疎外感を味わって途方に暮れる。
その理由は真相解明の手法。
とはいえ、登場人物が魅力的なことには変わりないので、
続刊も楽しみに読もうと思います。
以下ネタバレ含みます。
個人的にべらべら喋って一方的な真相解明をするのが好きじゃないので、
読後のすっきりしない感は個人的な好みによるものだと思います。
『そして夜は甦る』を読了した時の高揚感が半端なかったので、
本作に対する期待感が高すぎたのも余計な先入観。
とりあえず真っ正直に感想を綴ってみました(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
まるで拾った宝くじが当たったように不運な一日は、一本の電話ではじまった。私立探偵沢崎の事務所に電話をしてきた依頼人は、面会場所に目白の自宅を指定していた。沢崎はブルーバードを走らせ、依頼人の邸宅へ向かう。だが、そこで彼は、自分が思いもかけぬ誘拐事件に巻き込まれていることを知る…緻密なストーリー展開と強烈なサスペンスで独自のハードボイルド世界を確立し、日本の読書界を瞠目させた直木賞・ファルコン賞受賞作。
「レベッカ・ストリート」菅野彰(ディアプラス文庫)
傍らに恋人がいるのに、癒えない傷が終始疼いて。
彼らの抱えた淋しさと孤独と後悔に、侵食される。
自分の尺度でしか愛を計れなくて。
ちゃんと愛せているのかどうか惑って。
自分がその愛に値するか悩んで。
それでも、懸命に誰かを愛そうとして、その愛故に傷つき、不安に苛まれる。
だけど、気づいて。
貴方たちは何も欲しがっていない。
ただ、与えたいだけ。
ただ、ぬくもりを感じていたいだけ。
離れてしまっては、今度こそ後悔と寂しさに押しつぶされてしまう。
だから、その愛を受け取って。
そう思った時。
「あんたは、何が欲しい?」という幸也の問いかけに対するカイルの答えに号泣しました。
それしかないと思ったから。
抉られるような硝子みたいな淋しさに泣かされて、
根底に滲む濁りのないやさしさにやっぱり泣かされる。
菅野さんの物語は総じてそんなイメージ。
そして私は、そんな菅野さんの感性がとても好き。
久しぶりに『HARD LUCK』読み返したくなりました。
読み返すというより、改めて文庫で買いそろえよう!と思ってみました。←
内容(「BOOK」データベースより)
1996年、ニューヨーク。探偵事務所を開業したカイルと幸也のもとに舞い込んだ依頼は、死んだ女を葬るため彼女の愛した人を捜してほしいというものだった。癒えない心の傷を抱えて彷徨った女と、その女を深く愛した依頼人。それはいつしかカイルと幸也の関係にもシンクロして…。孤独で傷ついた魂同士が、出会い、深く求め合って始まる、心震わす愛の物語。オール書き直し&加筆で、著者初期の傑作が完全復活!!
「ガソリン生活」伊坂幸太郎(朝日文庫)
スキルはあくまでも一般車の範疇を出ないまま。
アクセルを踏む人間がいなければ、彼らはどこにも行けないし、
彼らの傍での会話以外は伺い知ることができない。
だけど、意思を持った彼らの視点で物語はめまぐるしく進行し、
幾重にも積み重なった謎が、彼らの会話で見事に解明されていく。
車独特の言い回しがとても愉快で、
そんな彼らの発言に思わず口元が緩んでしまう。
一癖も二癖もある人物に好感が持てるのも、
ろくでもない人間をサラッと描いてしまっているのも、相変わらずの伊坂節。
ラストはなんとなく淋しさを覚えつつ……のエピローグ。
最後の最後まで楽しませてもらいました。
彷彿とするのは機関車トーマス?
いや、違う!アスラーダだ!と思いつつ。
彼らと違って人間と相互理解できないところが緑デミくんたち。
そんな緑デミくんたちがとてもとても可愛かった。
ザッパで思い出したのが、かつて、
サニーに乗っていた友達のナンバーが2332(ニッサンサニー)だったこと。
これ、希望番号が獲れるようになる前の偶然の組み合わせだったんですよ!
作中には車好き、ガンダム好きにはイロイロとたまらない描写がチラホラと。
何より地元故の土地勘があるおかげで、リアルに景色が脳裏に浮かびました。
内容(「BOOK」データベースより)
のんきな兄・良夫と聡明な弟・亨がドライブ中に乗せた女優が翌日急死!パパラッチ、いじめ、恐喝など一家は更なる謎に巻き込まれ…!?車同士がおしゃべりする唯一無二の世界で繰り広げられる、仲良し家族の冒険譚!愛すべきオフビート長編ミステリー。
「水滸伝19 旌旗の章」北方謙三 (集英社文庫)
砕け散った夢。
失った多くの仲間たち。
戦って、戦って、戦って……そして訪れる、別れの時。
これは、最後の瞬間まで生ききった英雄たちの物語。
そこで眠りについた者がいる。未来を託された者もいる。
出自も立場も境遇も違った者達が、
同じ志を胸に抱き、一つ所に集い、時代を懸命に駆け抜けた物語。
多くの男達の生き様と、その生き様に相応しい死に様を鮮烈に胸に刻み、
「北方水滸伝」はここで終わりを告げる。
だが、託された旗がある。
それは、次代へ受け継がれていく物語の証。
この世に光があるのかどうか。
私も彼と一緒に見届けなければならない。
いまだに脳裏では彼らが生きている。
原野を駆け、互いを罵倒しあい、酒を酌み交わして酔っ払い、
湖の月を見上げている。
篤い友情で結ばれ、同じ志を抱き、絶対の信頼を持って戦いに臨む。
梁山泊は私にとって、いつまでも夢の拠り所。
再読だからこそ、より深く物語に寄り添えた気がする。
浪漫に満ち溢れた北方水滸伝、どっぷり浸って楽しませてもらいました!
ありがとう!←誰に?(笑)
少しでも興味を抱いている方には是非手に取ってもらいたい物語です。
内容(「BOOK」データベースより)
最終決戦の秋が訪れる。童貫はその存在の全てを懸けて総攻撃を仕掛けてきた。梁山泊は宋江自らが出陣して迎え撃つ。一方、流花寨にも趙安が進攻し、花栄が死力を尽くし防戦していた。壮絶な闘いによって同志が次々と戦死していく中、遂に童貫の首を取る好機が訪れる。史進と楊令は、童貫に向かって流星の如く駈けた。この国に光は射すのか。漢たちの志は民を救えるのか。北方水滸、永遠の最終巻。
「水滸伝18 乾坤の章」北方謙三(集英社文庫)
風はいつまでも駆け続けるもの。
そう願いたくなるけれども。
確かに貴方たちの行く処に敵はいなかった。
そう叫びたくなるけれども。
突きつけられる現実に涙が止まらなくなる。
もう、ゆっくり休んでいいんだよ、と。
立ち止まった彼にそう語りかけながらも、
公孫勝の涙に誘われるように涙腺が盛大に決壊した。
楊令はまさに梁山泊の申し子。
そこに在る姿に、違った意味で涙が込み上げた。
上官としての童貫の姿は理想的。
だから、彼の軍はこんなにも強い。
その軍との最終決戦。
人は来て、人は去る。
夢のような時を過ごせたのは私も同じだ。
号泣しながら感想打ってる自分に苦笑。
思い返すだけで泣けてくる。
「罵る相手がいなくなった。私を罵倒する者もおらん」
……うわーん。
ここまでくると、楊令伝に手をつけたくなるわけですが。
それは来年のお楽しみにとっておきます。
その前に19巻!大事に読みます。
「ルバイヤート」オマム・ハイヤーム(岩波文庫)
「有限」であることが怖くて、いつかいなくなる自分がここにいる意味をどうにか見つけたくて。
ぐるぐる惑っていた時期に読んだ詩集。
二十歳くらいかな?
1000年も前の偉大なる詩人も同じようなぐるぐる感を抱えていたんだなーと、
とてもとても共感を覚えることができた詩集。
結局、惑うところはみんな同じ。
「何故生きるの?」そんな問いに正解はない。
大切なのは自分が納得できるように生きられるかどうか。
自分が生きていること自体に意味がある。
当時読んだ色々な本から教えられたこと。
そう思えた瞬間、楽に息ができるようになった気がしました。
だから、私にとってとても大切な詩集。
当時はよくわからなかったけど、今読んでみると、
だんだんと酒に傾倒していくのが、まるで、死に近づいていく現実から
逃避しているかのように受け止められるのがなんだか切ない。
この世の真相?死後の世界?
わかるわけねーよ!
あっちから戻ってきたヤツなんていないんだから。
という、作者に同意(笑)
「酒を飲め こう悲しみの多い人生は
眠るか酔うかしてすごしたがよかろう!」
うん。
お酒はできれば楽しく飲んで幸せに眠りたいです。
「イスラム飲酒紀行」高野秀行(講談社文庫)
酒飲みの、酒飲みによる、酒飲みも酒飲みじゃなくても楽しめる本。
酒を禁じるイスラム圏を旅する著者が、いかに楽しく酒を飲むかに全力で挑む本。
見つかったら危険が伴うであろう行為を「現地の人たちと楽しく酒が飲みたい!」一心で
ダダをこねる子供のようにやり通す。
時に酒で腹を下して野グソをしたとしても、懲りずに酒を求める。
はっきり言って馬鹿である。
だけど、その馬鹿っぷりは尊敬に値する。
そして、そんなふうに人生楽しめたらいいなーと、ちょっと羨ましくもなる。
酒飲みは酒飲みを呼ぶ。
著者の出会った酒飲みたちは、概ね陽気で面白みのある人たちばかりだ。
個人的には「秘密警察と酒とチョウザメ」の章が好き。
そして、これを読んだら『ルバイヤート』を再読しないといけない気がしてきました。
内容(「BOOK」データベースより)
イラン、アフガニスタン、シリア、ソマリランド、パキスタン…。酒をこよなく愛する男が、酒を禁じるイスラム圏を旅したら?著者は必死で異教徒の酒、密輸酒、密造酒、そして幻の地酒を探す。そして、そこで見た意外な光景とは?イスラム圏の飲酒事情を描いた、おそらく世界で初めてのルポルタージュ。
「水滸伝17 朱雀の章」北方謙三(集英社文庫)
その男にあまりにも似つかわしい壮絶な死に様に、
読後、たまらずに溜息が零れた。
彼に限らず、戦いの中で散っていった多くの男達。
敵は強大。
圧倒的な数の差はあまりにも大きくのしかかる。
戦闘を「愉しみだ」と言う童貫の余裕が薄ら寒い。
梁山泊に集った彼らは掲げた志のために駆け続ける。
自らの命が尽きる、その瞬間まで。
だが、彼らの命は受け継がれる。
その想いを受け取った仲間たちによって。
そして、彼らの生き様を語り継ぐ者達によって。
「替天道行」の旗に包まれて梁山湖に沈む彼には穏やかな眠りを。
労いの言葉の代わりに、月明りを。
ケイロニアの王に「息子よ」と言われたグインに私、号泣しましたが。
蘆俊儀の「わが息子、燕青よ」でやっぱり泣きそうになってしまった。
血の繋がりがなくとも、心の底から想いあう絆には心が震えます。
そして下村(@ブラディドール)がいますよ!ここに下村が!と、
ふいに叫びたくなるシーンが(笑)
珍しく雄弁な彼の語った壮絶な過去。
窮地に陥ればお互い助けにいくくせに遠慮なく罵りあう相手がいてよかったね。
内容(「BOOK」データベースより)
童貫と〓美(ほうび)が、怒涛の猛攻を開始した。董平率いる双頭山が総力を挙げて迎え撃つが、次々と同志は討たれていく。更なる禁軍の進攻を止めるため、侯健は偽の講話案を進めていた。巧みに高〓(こうきゅう)を信じさせるが、そこには思わぬ落とし穴が待ち受けている。一方、致死軍と高廉の軍の決戦が間近に迫っていた。闇の中で、両者は息を潜め、刃を交える時を待っている。北方水滸、悲泣の十七巻。
「俺様にゃんこ、極道のもふもふになる」朝香りく(ガッシュ文庫)
とてもかわいらしい猫の恩返し。
助けてもらった恩を返すために人間の姿になった押しかけ居候のアザミ。
最初は不信感を抱えながらもそんなアザミを傍に置くことにした極道・神名木。
ネコ社会の常識でアザミが一生懸命話していることが、
なぜか人間の神名木に通じている不思議。
嘘をついてないし、猫ってそうだよね、って思うアザミの言葉は、
ストン、と心に入ってくる。
人間社会で頑張るアザミの姿が清々しくて可愛いし、
若干誤解も交えつつ、徐々にアザミを受け入れていく神名木の態度も好き。
私的なキング・オブ・オトコマエは神名木ではなく、
アザミの幼馴染の野良ネコのキンメでした。
極道に説教する黒猫……カッコイイ!
もふっとなるもふもふを期待するとちょっと期待外れになっちゃうかな?
これはネタバレだと思わずに主張しますが☆
「俺様にゃんこ、極道の恋人(もしくは愛人)になる!」が
正しく内容を表している気がします。と、おこがましくも言ってみます(笑)
何も考えたくない時や、疲れた時、
ほこっと癒されたい時におススメ。
ものっすごく幸せな気持ちになれます。
可愛かった!
内容(「BOOK」データベースより)
新米ノラ猫のチビは、発泡スチロールで川に流されていたところをヤクザの神名木に救われた。怪我を負ってまで助けてくれた神名木に恩返しがしたいと神社でお祈りしてみたら、なんと人間の姿に大変身!実はそこは猫の守り神がおわす神社で、猫の恩返しに力を貸してくれるらしい。だが、相手に正体がバレて忌み嫌われると、毛玉になって消えてしまうという。短い生涯になっても俺様は恩返しをする!と、チビは神名木のもとに乗り込むが―!?