きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「風葬」北方謙三(集英社文庫)
友との再会。
そして目覚めた獣。
決別した時に分かたれた道は、決して重なることはない。
それでも、彼らは覚えている。
老犬トレーのメロディを。
共に生きたあの日々を。
道は違えども、互いにかけがえのない友だった。
心の内をすべてわかりあえる友だった。
「会ってよかったのかどうか、俺にゃわからねぇ」
再会した時は、既に事は動き出していた。
どう足掻いても、運命は変えられなかっただろう。
だからこそ、彼らは出会えてよかったのだ。
「淋しければいつも一緒にふるえ合える相手を求める」
幸太と別れた後の高樹の孤独を象徴するような言葉。
二人で一緒に生きてこれたなら。
淋しければ一緒にあたため合える相手を求められたのかな?
物語のラストとタイトルのはまり具合がたまりません。
涙の出ない高樹のかわりに、私が号泣でした。
そしてものすごーーく久しぶりに口笛を吹こうとしてスカスカッぷりにがっかり。
大人しくピアノの鍵盤叩くことにします。
内容(「BOOK」データベースより)
刑事となった良文は、抜群の検挙率をあげた。ある夜、連続殺人事件の捜査で、少年時代の親友・幸太に会い、彼が事件に関係していることを知った。いつものように走り、獲物を追う。その結果手に入れた真実の味は?昭和35年、高度成長前夜の東京。27歳の『老いぼれ犬』高樹良文は悲しみで一杯の獣だった。
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「傷痕」北方謙三(集英社文庫)
爪を研ぎ、牙を磨く。
武器を手にし、沈黙の中で鋭く周囲を探る。
自らが、生き延びるために。
戦後直後の混乱の中にある東京。
家もなく、親もいない子供たち。
それでも彼らは、生きていかなければならなかった。
子供達の集団の中にあって、子供のままではいられなかった良夫と幸太。
男になりたいと、小さな身体で必死で頑張った和也。
理不尽には抗い、結束し、どんなにうまく立ち回ったかに見えても。
大人の狡さと汚さには抗いきれなかった。
どうしても報いなければならない一矢がある。
そして、決別。
ああ、と。
理不尽さに天を仰ぎたくなるけれども。
幸太の選択はとても正しい。
何故なら、彼らは何よりも強い絆で結びついていたから。
岡本の存在が鮮烈に印象に残っている。
命を捨てたも同然の男が浮かべる狂気を孕んだ微笑。
彼が何を考え、何故そうしたのか。
推し量る術はない。
そして、小さな和也の姿にただただ涙を零し続けました。
内容(「BOOK」データベースより)
孔雀城―無頼の少年たちは、自分たちの寝ぐらをそう呼んだ。戦争直後の東京、焼けくずれた工場の跡地である。隠匿物資を盗み出し、闇市で売りさばくことを覚えた良文とその仲間にとって、最大の敵は浮浪児狩りと暴力団だった。幼い良文は野獣のように生き抜いてゆく。「老いぼれ犬」高樹刑事の壮絶な小年時代。
「眠りなき夜」北方謙三(集英社文庫)
【「つまんない意地を張るのね、男って」
「大事なことさ。男にはな」】
友が死んだ。
それも、理不尽な死を強要された。
闘う理由はそれだけで十分だった。
そして、いつしか袋小路に追い込まれた男の戦いが始まった。
昼行燈かと思った男が身体を張って彼を助けてくれた。
一時の安らぎを与えてくれた女は何も語らずに彼の行動を見守っていた。
静かに隣に立った友軍は、彼が血まみれになることも辞さない、冷徹な男だった。
そうやって一つ一つ積み重ねたことが、敵を追い詰めていく。
一介の弁護士が巨悪に立ち向かっていく様に拳を握る物語。
「つまんない意地を張るのね、男って」
そう言った順子こそが、女にだって張る意地があることを証明している。
好いた女が望むことを。
好いた女が信じることを。
斎藤のスタンスは女としてぐっときました。
さて。
次は老犬シリーズですか。
北方祭への片足だけ参加から本腰への参加へ。
内容(「BOOK」データベースより)
弁護士・谷の同僚、戸部が失踪、つづいて彼と関わりのあった小山民子が殺された。彼女が書き残したメモを手がかりに、谷は山形県S市に飛んだ。事件の深奥を探る中、早速、3人組に襲われる。黒幕とみられる大物政治家・室井などの名が浮かぶが、事件の謎は深まるばかり。そして戸部の惨殺体発見……。民子との間に何があったのか?室井との関連は?友の死を追って、谷は深い闇を解明すべく、熱い怒りを雪の街に爆発させる。第4回吉川英治文学新人賞、第1回日本冒険小説協会大賞受賞作。
「あひるの空 43巻」日向武史(マガジンコミックス)
「こっちにもいるぞ。すごいのが」
そう、思える安心感。
弧を描く、鮮やかな軌跡。
僅差での勝負を勝ち得たのは、運でも偶然でもなく、
緻密な計算と積み重ねた努力の成果。
それを伺い知ることのできる描写の一つ一つに、震えが走る。
そして、百春がコートにいることの揺るぎない安定感。
私、待ってた!
菖蒲の監督の生徒との向き合い方が好き。
というか、もう、尊敬。
「正解」はいらない。
「間違っていない」という確信さえあればいい。
在校生・卒業生の在り様が、彼女のやり方を肯定してくれていると思う。
勝者は休む間もなく次の戦いへ。
巻末の作者の言葉を拾って、私、盛大に主張します。
この漫画が本当に大好き!
連載一話目からずっと読みつづけてきた私は、何度でも言います。
描きたい話を描きたいように描き切ってほしい。
最後までついていきます。
「高い砦」デズモンド・バグリィ(ハヤカワ文庫NV)
【我々はまだ生きている。
血が男の中に流れている限り、不可能ということはないのだよ】
直面した事態を打開するためには、全力で臨まなければならない。
理不尽な死を黙って受け入れるわけにはいかない。
性別も年代も職業もバラバラな九人が
知恵を振り絞り、勇気を奮い起こし、命を繋ぐために
戦闘を生業とする男たちと対峙する。
荒唐無稽な戦術は何もなく、彼らは彼らなりにできることを懸命に模索する。
組み立てられた投石器。
命がけの雪山越え。
震えながらも武器を手にした彼女。
臆病な彼が見せた勇姿。
ラストに向けて高まる緊張感。
戦いを知る男たちが歯を食いしばって見せた闘志。
満身創痍の彼らにあたたかな食事と穏やかな休息を。
そして死者の魂に安らかな眠りを。
極上の冒険小説。
一気に読み切ってしまうおもしろさでした。
「我々はまだ生きている。
血が男の中に流れている限り、不可能ということはないのだよ」
このアギヤルの言葉に、彼の政治家としての不屈の魂を見た気がしました。
諦めちゃだめだよ、というメッセージに自分なりに置き換えて、明日も頑張ろうと思います。
内容(「BOOK」データベースより)
旅客機がハイジャックされ、操縦士のオハラはアンデス山中の高所に無謀な不時着を強いられた。機体はひどく損傷し、犯人らは死亡。かろうじて生き残ったオハラたち九名は、高山病に苦しみながらも救助を求め山を下り始めた。そんな一行を、突如銃撃が襲う。一体誰が、何のために?背後は峻険な峰々。絶体絶命の窮地に陥った彼らは、驚くべきアイデアでこれに挑むが…壮大な自然に展開する死闘。冒険小説史上屈指の名作。
「ダミー」水壬楓子(リンクスロマンス)
欲しい時に欲しい言葉をストレートにくれる男子は
三割増しでカッコよく見えます。
あの瞬間の祥吾の言葉には、私もくらっときました。
自分のことが好きになれなくて、諦めることに慣れてしまっていて。
素直に言葉が発せられなくなっていた環。
それでも卑屈にならずに毅然として生きてきたのは彼の強さ。
祥吾と再会して前に進めた環。
素直に泣ける場所ができたことに安堵しました。
故人を想い続ける人生もありだと私は思います。
でも、心が壊れちゃったままなのは痛々しすぎる。
だから、環と再会した篠崎さんも、幸せの一歩を踏み出せるといいな、としみじみ思います。
祥吾の携帯待ち受けの件は、兄弟ドタバタまで含めて微笑ましくてとても好き。
榎本が律を殴れない理由に納得☆
内容(「BOOK」データベースより)
人材派遣会社『エスコート』の調査部に所属する環は、オーナーの榎本から、警備対象の影武者になる仕事を引き受けさせられる。その間、環のボディガードにあたるのは、警視庁のSP・国沢だった。彼とは大学時代の同級生で、かつて環は彼に想いを寄せていた。しかし辛い恋の経験から、それを告げずに彼の前から逃げるように姿を消した環。約十年ぶりに再会し、共に行動する中で環は捨てたはずの国沢への想いを再び募らせていき―。
「ラストダンス」堂場瞬一(実業之日本社)
それがどんなに稀有な事かわかっている。
思い描いたところで現実には起こりえない。
そのまま9回までなんて進むわけがない。
だけど、いや、だからこそ願ってしまう。
今回だけは、と。
どうか、今回だけは、彼らの望み通りの試合を、と。
一体となった球場と一緒に息を呑む。
その臨場感と緊張感。
それを味わうことができただけでも、一読の価値はある。
加えて、野球の舞台裏を垣間見ることもできる物語。
その部分も興味深く楽しめる。
最後はスマートさのカケラモない、あまりにも泥臭い幕切れ。
彼らの気迫と根性の成せる業。
だけど、それでいい。
だって彼らは笑っているのだから。
極めて個人的な感想ですが。
作中で「イーグルス」が多発されていたのがとてもうれしかった(笑)
あ、地元球団とはまったく関係ないのはわかっていますよ。
ユニフォーム羽織ってメガホン持って。
わくわくしながら野球場に行きたくなりました。
内容(「BOOK」データベースより)
プロ野球チーム「スターズ」の同期、真田誠と樋口孝明。ドラフト5位からスター投手にのし上がった真田に対し、即戦力と期待された捕手・樋口は準レギュラーに甘んじていた。そして今季、40歳のふたりに引き際が訪れる。優勝争いにからむシーズン終盤、真田と樋口は17年ぶりにバッテリーを組むことになるが―予想外の展開を見せる引退ドラマを濃密に描く感動作。
「クライアント」水壬楓子(リンクスロマンス)
「俺が信じられなければ、自分を信じてみれば?」
マリヤのこの言葉、とても素敵。
自分に自信がなければ言えない台詞だよね。
気負わず、力まず。
ふわっと読める作品。
それは、彼らが地に足をつけて、迷いなく自分の道を歩いているからかな。
甘えも依存もない対等な関係。
愛情故とはいえ、それを崩そうとしたジェラルドに反発したマリヤ。
仕事に誇りと自負を持っている男として、当然の反応だと思う。
マリヤがボディガードであるが故の「覚悟」を背負った上での恋愛。
彼らなら素敵なパートナーで在り続けることができると思う。
書き下しの『キティテイル』では、
一人と一匹の猫に振り回されるジェラルドがオモシロ可愛くて……
こういうドタバタ大好きです。
「頭のてっぺんから吹き上げる雄叫び」聞いてみたい(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
人材派遣会社『エスコート』に所属するボディガードの鞠谷希巳は、ダン・サイモンのボディガードとしてアメリカに赴いた。迎えにきたのはダンの養子であるジェラルドで、鞠谷の美しい容姿から本当にボディガードなのか、ダンと恋愛関係にあるのではないかと疑っていた。一緒に過ごすうち、二人の関係は修復され、距離が縮まっていくが、実は鞠谷とダンとの間には秘められた理由があり…。大人気『エスコートシリーズ』第二シーズン始動。
「ゴッドファーザー 下」マリオ・プーヅォ(ハヤカワ文庫NA)
【人生はこんなにも美しい】
上巻は家族の物語。
そして下巻は戦いの物語。
揺るぎない絆がある一方で、昨日肩を抱き合っていた仲間を弾く裏切りがある。
愛には愛を。忠誠には報酬を。裏切りには死を。
彼らの棲まう世界は、かくも厳しく、かくも公平だ。
故に、水面下で秘密裏に進行した復讐への準備。
たとえ、愛する者がその行為によって悲嘆にくれたとしても。
横っ面を張られたままではいられないのだ。
守るべきは家族。組織。総括しての「ファミリー」
故に与えられる「ゴッドファーザー」の称号。
決して感情的になることなく、そして時を逸することなく、
誰もが認めざるを得ない状況下でその称号を見事に継承したマイケル。
ケイの祈りが彼の歩く道を清めてくれますように。
壮大な物語に読了後呆然。
頭角を現したマイケルのかっこよさったら!
改めて冒頭の無邪気に身を寄せ合っているマイケルとケイの姿と、
ラストの二人の姿を見比べるとちょっと胸が痛いけど。
同じところにとどまったままではいられないのが人間。
安らぐ時間はないかもしれない。
だけど、進んだ時間の先に、二人なりの幸せがありますように。
内容(「BOOK」データベースより)
ニューヨーク五大ファミリーを巻きこんだ全面戦争は、コルレオーネ家の長男ソニーの死によって終結した。ドン・コルレオーネはシシリーに潜伏していた三男マイケルを呼び戻す。やがてファミリーの後継者となったマイケルは、ドンが死を迎えると直ちに壮絶な復讐戦を開始した…アメリカを陰で支配する巨大組織マフィア。現代社会が喪失した血縁と信頼による絆がそこにはある。愛と血と暴力に彩られた壮大なる叙事詩。
「ゴッドファーザー 上」マリオ・プーヅォ(ハヤカワ文庫NA)
【友情がすべてなんだ。
友情に比べれば、才能なんて屁のようなもんだ。
友情とは家族みたいなもので、国家よりも大切なものなんだ】
友情に篤く、友情に重きを置いた偉大なる父と、
その父に敬意を抱き、そして愛した家族の物語。
血の繋がりだけには留まらない、なんとも広範囲にわたる「家族」の存在に、
ゴットファーザーの懐の広さが伺い知れる。
彼が凶弾に斃れた時の周囲の一致団結ぶりにこそ、
これまで彼が歩んできた人生が垣間見られる。
特に自らの度量とやるべきことを瞬時に判断できた長男と三男の存在。
自らの器をしっかりと自覚していた長男・ソニーの立ち回りっぷりは好感が持てたし、
堅気の道を歩むことを望んだはずの三男・マイケルが、
抗争の中へ足を踏み入れていく様は圧巻。
強大なファミリーの成り立ちを垣間見、現実に立ち戻ったところで次巻へ。
フラッシュバックするように映画のシーンが断片的に浮かんできて、
ワクワクしながら頁を捲りました。
テーマ曲のタイトル「愛のテーマ」に激しくうなずきたくなる内容。
感想の冒頭で引用している言葉を胸に刻んで、下巻へ進みます。
内容(「BOOK」データベースより)
全米で最も強大なマフィアの組織を築き上げた伝説の男、ヴィトー・コルレオーネ。絶大な力を持つこのマフィアのドンを、人々は畏敬の念をこめてゴッドファーザーと呼ぶ。そんな彼の三男マイケルは、家業に背を向け家を出ていた。が、麻薬密売をめぐる抗争でドンが瀕死の重傷を負った時、彼は、父、家族、そして組織のために銃を手に起ち上がった…独自の非合法な社会に生きる者たちの姿を赤裸々に描き映画化もされた名作。