きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「アルジャーノンに花束を」ダニエル・キイス(早川書房)
幸せって?家族って?友達って?
普遍的な正解のない問を終始突きつけられながら読了。
知ること。学ぶこと。
誰にだって与えられた権利のはずなのに。
知力を増していけばいくほど陥る孤独。
彼にとっての幸せはどこにあったのだろう?
人が彼から離れていった理由が身勝手なら、
再び歩み寄ってきた理由も身勝手だ。
世界を知ってしまったら、知らなかった自分には戻れない。
この先の自分の状況を理解した上で、それを受け入れる以外の選択肢がない恐怖。
次第に崩れていく文章のやるせなさ。
それでも、彼は最後まで誰かの幸せを思っていた。
それでも、彼は不幸ではなかった。
再読して改めて、本書がたくさんの人に読み継がれていってもらいたい
名作であることを実感。
大昔の読書ノートを引っ張り出してみたら、初読は16歳の時でした。
そして、言ってること、変わってない(笑)
当時の私もチャーリーにとっては何が幸せだったのかを自問していました。
内容(「BOOK」データベースより)
32歳になっても幼児なみの知能しかないチャーリイ・ゴードン。そんな彼に夢のような話が舞いこんだ。大学の先生が頭をよくしてくれるというのだ。これにとびついた彼は、白ネズミのアルジャーノンを競争相手に検査を受ける。やがて手術によりチャーリイの知能は向上していく…天才に変貌した青年が愛や憎しみ、喜びや孤独を通して知る人の心の真実とは?全世界が涙した不朽の名作。著者追悼の訳者あとがきを付した新版。
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「ルパンの消息」横山秀夫(光文社文庫)
濃密な一日の物語。
その一日の中に、彼らの歩んできた人生があり、彼らの今がある。
追憶でもあり、告白でもある彼らの供述。
あまりにも鮮明に浮かび上がってくる彼らの青春時代。
確かに、共有しあっていた時間。
分かち合っていた想い。
けれども、十五年という歳月は、こんなにも人の在り方を変える。
だが、彼らの「今」は、確実にその十五年前に端を欲しているものなのだ。
次第に浮かび上がってくる事件の真相。
十重二重に畳みかけてくる結末は、息をつく暇を許さない。
重い息を吐き出す読後。
彼らと同じ一日を共有できた疲労感が心地よい。
漸く時間の動き出した彼。
優しい記憶を胸に留めていた彼女。
堅実な人生を歩んでいる彼。
被害者でしかありえなかった彼女。
昔のまま、変わらない彼。
そして、事件解決に奔走した刑事たち。
皆の緊張が解けた瞬間が一気に伝わってくるような読後感。
どうしたって一気読みになってしまう作品でした。
内容(「BOOK」データベースより)
十五年前、自殺とされた女性教師の墜落死は実は殺人―。警視庁に入った一本のタレ込みで事件が息を吹き返す。当時、期末テスト奪取を計画した高校生三人が校舎内に忍び込んでいた。捜査陣が二つの事件の結び付きを辿っていくと、戦後最大の謎である三億円事件までもが絡んでくるのだった。時効まで二十四時間、事件は解明できるのか。
「純真にもほどがある!」崎谷はるひ(ルチル文庫)
20年に及ぶ付き合いのある幼馴染兼親友から恋人への関係の変化。
その変化に付随する戸惑いや揺らぎがストレートに伝わってきて、
彼らと一緒にハラハラしたりドキドキしたりしながらの読了です。
茅野と瀬戸。双方の視点からのその時々の想いが綴られているけど、
個人的には瀬戸寄りな目線で追っていました。
セックス込の付き合いでより大きな変化を強いられるのは瀬戸の方で、
そりゃあ、イロイロ考えるよね。
とはいえ、茅野もなんだかんだイロイロ我慢してがんばったなーと。
結果、彼らの辿りついた「甘く爛れきった」三日間。
愛情あふれるいちゃいちゃはこっちも照れくさく幸せになりますわ。
当人同士では近すぎて見えなくなっていることも、
冷静に分析してくれる第三者の存在の心強いことといったら。
アツミさん、カッコよかったです!
内容(「BOOK」データベースより)
茅野和明は「燃えあがるような恋をしてみたい」が口癖で恋愛依存症。ある日茅野は、共同経営者で幼いころからの友人である瀬戸光流と酔った勢いでベッドイン。思わず「なんでおまえなの!?」と叫ぶ茅野に、瀬戸はそっけない。そんな瀬戸が気になる茅野は…!?続編「強情にもほどがある!」、書き下ろし「蜜月にもほどがある!」を収録。
「その鏡は嘘をつく」薬丸岳(講談社文庫)
期待か強制か。
愛情かエゴか。
紙一重なんだなぁ、と。
やりたいいことを主張できるだけの明確な目的と意志の強さがあれば
自分の思い描いた未来と親の描いた未来との折り合いをつけることもできるのだろうけど。
彼らの年代や立場を思えば、それがままならない子供たちがいることもあるだろう。
どうしても親や周囲の期待通りにいかないもどかしさ。
そこから逃げることのできない閉塞感。
その揺らぎに付け入る大人は最低だし、ましてや、彼のやったことは人として最悪だ。
たったひとりの命を救おうと、必死で立ち回った青年の姿は、とても痛々しい。
けれども、そんな彼の想いは確かに届いたのだと。
そして、周囲の人の想いもまた、彼に届いたのだと。
思えるラストがあたたかい。
親子の間に確執があって歩み寄りたいと願っているのなら。
早いうちに、と。
想いを伝えられるうちに、と。
思えてならない。
死者に想いを伝えることは叶わないから。
死者からの言葉を聞くことはできないから。
内容(「BOOK」データベースより)
鏡ばかりの部屋で発見されたエリート医師の遺体。自殺とされたその死を、検事・志藤は他殺と疑う。その頃、東池袋署の刑事・夏目は同日現場近くで起こった不可解な集団暴行事件を調べていた。事件の鍵を握るのは未来を捨てた青年と予備校女性講師。人間の心の奥底に光を当てる、著者ならではの極上ミステリー。
「動物農場」ジョージ・オーウェル(角川文庫)
最初はみんな、同じ夢を見ていた。
同じ理想を掲げていた。
成就した反乱。
自らの手による政治。
だが、いつしか生じた格差は歪みを産み、最初に掲げた理念を持歪ませる。
そして始まる、追放。虐殺。圧制。
だが、彼らは声を上げることができない。
絶対的な恐怖を盾に出され、小さな疑問を飲み下す。
次第に停止していく思考。
気付けば、どうにもならない支配に呑みこまれていく。
項を捲っていくほどに、ジワジワと押し寄せる薄気味悪い恐怖。
それは、豚の在り方に起因する。
何故そこを目指した?
何故そう在ろうと思った?
いろいろと考えさせられる物語。
その状況を受け入れざるを得なかった動物たち。
理不尽を感じながらも、彼らをジワジワと追い詰めていく豚のやり方が
本当にいやーな感じ。
内容(「BOOK」データベースより)
飲んだくれの農場主を追い出して理想の共和国を築いた動物たちだが、豚の独裁者に篭絡され、やがては恐怖政治に取り込まれていく。自らもスペイン内戦に参加し、ファシズムと共産主義にヨーロッパが席巻されるさまを身近に見聞した経験をもとに、全体主義を生み出す人間の病理を鋭く描き出した寓話小説の傑作。巻末に開高健の論考「談話・一九八四年・オーウェル」「オセアニア周遊紀行」「権力と作家」を併録する。 --このテキストは、文庫版に関連付けられています。
「ガンルージュ」月村了衛(文藝春秋)
偶然居合わせてしまった殺戮現場から拉致された我が子の救出を賭けての壮絶な死闘。
元公安の主婦と元公安の元カレに未練たらたらな教師のバディvs韓国の特殊精鋭部隊。
殺るか、殺られるか。
息つく間もないガッツリハードなバトル展開に突入するかと思いきや。
とある登場人物の際立つ個性(?)により、あっちこっちで大爆笑でした。
リアリティを求めたら負け。
文中の言葉をちょこっと借りれば、バカになった方が楽しめる。
「ただの主婦です」
「ただの先生です」
闘える女子はカッコイイ。
そして、子供ながら祐太郎の頑張りもかっこ良かった。
スカッと楽しく読了しました。
今更私が言及することではありませんが。
『新宿鮫』を既読の方は、頁を捲りながら同じ人物を連想されるかと。
まったく別人なのはわかっていますけど。
あっちの彼女はもっとスマートに戦うとも思いますけど。(笑)
こっちの彼女のバット捌きはピカイチでした。
ああ、そしてここで言っても意味のないことを。
『機龍警察』の続編が!
私はとっても読みたいのです。
内容(「BOOK」データベースより)
韓国の大物工作員キル・ホグン率いる最精鋭特殊部隊「消防士」が日本で韓国要人の拉致作戦を実行した。事件に巻き込まれ、人質となってしまった中学1年生の祐太朗。日本政府と警察は事件の隠蔽を決定した。祐太朗の母親で、かつて最愛の夫をキルに殺された元公安の秋来律子は、ワケあり担任教師の渋矢美晴とバディを組み、息子の救出に挑む。因縁の関係にある律子とキルの死闘の行方は、そして絶体絶命の母子の運命は―。
「会いたかった人」小池真理子(集英社文庫)
収録作品三篇。
「会いたかった人」
度を越した執着は恐怖でしかない。
そして、あんな風に向けられた悪意は防ぎようもないことも、また恐怖。
「倒錯の庭」
美しい言葉で紡がれる、狂気を孕んだ男女の情念。
向けられた想いを、女として幸せと感じるか、
恐怖を感じるかは個々人によるのだろうが、私は彼女の幸福感に寄り添える気がする。
でも、彼の感情が逆のベクトルを向いたときは、次は我が身だという怖さは拭えない。
「災厄の犬」
自ら不幸を招き入れている話なんだけど、
読み進めていくうちに果たして本当にそうなのか?という疑念に苛まれる。
気味の悪さはこの短編が随一。
文章の美しさが不気味さをより際立たせていたように思う。
個人的には「倒錯の庭」がとても好き。最も小池さんらしい作品だと思います。
内容(「BOOK」データベースより)
25年ぶりの親友との再会。TV出演した小夜子を見て連絡をとってきた女は、まるで別人のように変貌していた。うずまく疑念、そして…。表題作「会いたかった人」。他に男と女の妖しく美しい愛の行き着く果てを描く「倒錯の庭」、犬を飼い始めてからはじまる不運にみずからとりつかれていく男の物語「災厄の犬」を収録。静かな狂気を描くサイコ・サスペンス短編集。
「李歐」高村薫 (講談社文庫)
共に過ごした時間は、ほんの僅か。
だが、その僅かな時間が、男の運命を劇的に変える。
余りにも鮮やかに男の傍に在り続けた、彼の残像。
それは幻影ではなく、確かに感じられる息吹きを伴っていた。
いつかの未来を約束しながら、相見えることなく過ごした十数年。
遥かな夢を胸に秘めながら、その十数年の間に過ごした現実の中にも、
確かに築き上げてきたものがあるのだと。
はっきりと自覚した瞬間の喪失。
胸が軋みました。
自分自身と向き合った時に拾った「恋しい」という想い。
それこそが、男が胸の内に抱き続けた彼に対する真摯な想い。
そして、掴みとった未来。
桜の季節が繰り返し巡ることを願ってやまない。
初読の時は一彰と李歐の関係に心が持っていかれてしまっていたけれども、
守山と笹倉の存在もとても大きかったのだと。
しみじみ思いました。
記憶に残っていた印象的なシーンがいくつもあって、それを時系列がバラバラな状態で
覚えていたものだから、え?あのシーンどこ行った??となることが何度か。
既読の弊害を初めて感じました。
とはいえ。
何度読んでも胸が震える物語。改めて読めて良かったです。
内容(「BOOK」データベースより)
惚れたって言えよ―。美貌の殺し屋は言った。その名は李欧。平凡なアルバイト学生だった吉田一彰は、その日、運命に出会った。ともに二十二歳。しかし、二人が見た大陸の夢は遠く厳しく、十五年の月日が二つの魂をひきさいた。『わが手に拳銃を』を下敷にしてあらたに書き下ろす美しく壮大な青春の物語。
「GIANT KILING 40」ツジトモ(モーニングコミックス)
達海の存在感が半端ない巻。
そして、甲府の監督も胸に響く言葉を投げかけてくる。
とかく、選手に注目がいく競技だけど、
監督の背負ったものや果たすべき使命は
とてつもなく大きいということを思い知らされる。
移籍先で石浜が直面した現実。
そこで気付いたのは、かつての自分の恵まれた環境。
彼の決意には胸に熱く迫るものがある。
甲府の頑張りに連鎖するように奮起するETUの選手たち。
熱い試合にならないわけがない。
甲府戦の決着がつけば、残り試合はあと僅か。
物語はどう展開していくのか?
なんだか気持ちが落ち着きません!
ようやく!
ようやく私の大好きな王子活躍のターン。
「格好悪いと思われるのだけは、ボクもごめんだ」
きゃーー!
村越と杉江というベテランの言葉にも重みがある。
ああ、そしてモッチー!
王子好きーな私が!
何故かテンション高く連呼したくなるモッチー。
次巻で活躍が見れるのかしら?
アグレッシブな表情が相変わらずで、ドキドキしました。
「俺たちの日」ジョージ・P・ペレケーノス(ハヤカワ文庫)
貧しさの中でも笑いあい、喧嘩をし、元気いっぱいに走り回っていた悪ガキたち。
世界大戦という戦いに巻き込まれ、帰らなかった仲間もいた。
戦争を生き抜いた彼らは、戦後のアメリカでそれぞれの日々を営んでいる。
そんな彼らの生き様を淡々と綴った物語。
重ねた歳の分だけ増える柵や行き違い。
自らの意思には関係なく、やがてくる、決断の時。
大切なものを守る為に彼が選んだのは、後には引けない道。
覚悟を決めた彼らの辿る道が見えてしまった瞬間、頁を捲る手が震えた。
降り損なったバス。
壮絶な幕引き。
その日を「俺たちの日」と笑いあった彼らに弔いの酒を。
「愛してるよ」
方々に遺した彼らの言葉に胸が軋む。
フローレックが振り返る思い出の中に在る
ピートたちと過ごした時間が、キラキラと輝いたものであるといい。
本書に先駆けた三部作と、本書に続く三部作があるんですね。
き、気になるわ!
心にズシンと残る男たちの物語。
ハードボイルド好きにはお勧めです。
内容(「BOOK」データベースより)
ギャングのボスのために借金を取りたてる―どんな危険も顧みない幼なじみのジョーとピートにとって、それは簡単な仕事だった。が、非情になりきれないピートは取り立てを見送り、見せしめのためギャングの手下に脚を折られてしまう。三年後、小さな食堂の店員として働くピートのまえに、いまやボスの片腕となったジョーが現われ…“ハードボイルドの次代を担う”と絶賛される著者が贈る、心を震わせる男たちの物語。