きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「間の楔」吉原理恵子(光風社出版)
原点回帰。
イアソンは究極の執着愛。
リキは至高の存在。
『間の楔』は私のバイブル。
文庫版より単行本派。
荒削りだけど、一切の無駄のない文章と迸る熱に抉られる。
媚びることを由とせず、最後まで意地を張り通したリキ。
根底に滲む想いが垣間見れる瞬間がとても切ない。
何も望まず、何も期待せず。
ただ、リキに対する想いを貫き通したイアソン。
ヒリヒリとした緊張感が終始付きまとい、最後の結末に息を呑む。
これしかなかった。
これ以外なかった。
わかっているからこそ、胸が軋む。
わかっていても、涙が溢れる。
10代の私には衝撃的な出逢いでした。
カセットテープ→ドラマCD/サントラその他イロイロ→ビデオ→DVD。
ここまできっちり追いかけた作品はほかにないんじゃないかなぁ?
雑誌総集編→単行本→文庫。
こちらも正しく追いかけました。
でもやっぱりこの単行本がザ・ベスト。
何度読んでも震える名作。やっと感想かけて満足!
内容(「BOOK」データベースより)
何もかもが管理された未来都市・タナグラ。その片隅の、歓楽都市・ミダスの怠惰な息遣いの中でしか生きられない若者たちには、夢を語り合い愛を求めることすら許されないのか…。耽美SF大河ロマン。
「ヒート」堂場舜一(実業之日本社文庫)
完璧にお膳立てのなされた舞台での、望まれた通りのレース。
結果を出せるだけの実力がありながら、思惑に乗ることを由としなかった山城は、
職業人ではなく、やはり競技者だ。
(天邪鬼という言葉はこの際置いておく)
「自分のためだけに走ればいい」という
山城の言葉はある意味正論で、何かが欠けている。
その欠けている部分を埋めてくれるのが浦なのだと思う。
迷いながらも職業人として自分の役割を全うしようとした甲本。
「最後まで走ればいい」という吉池の言葉で、彼もまた、競技者となる。
最後の最後まで競い合った二人。
彼らと一緒に私も「東海道マラソン」を駆け抜けました。
最後の一行。
そこからさらに物語が続くことを期待して捲った頁には解説が綴られていて、
ちょっと待って!私、『チームⅡ』買ってない!と、本気で思った私は
続が気になって相当錯乱しいたようで、
『ヒート』と一緒に購入した『チームⅡ』は手の届くところにありました(笑)
コースを作り上げていく過程が垣間見れたのが良かった。
たくさんの人がいろいろな努力を積み重ねて、素晴らしいレースが展開されるんですね。
内容(「BOOK」データベースより)
日本男子マラソンの長期低迷傾向に歯止めをかけるべく、神奈川県知事の号令のもと新設された「東海道マラソン」。県庁職員の音無は日本陸上界の至宝・山城悟のペースメーカー役に、孤独なランナー・甲本剛を起用する。果たして世界最高記録達成はなるか。数多の人間の欲望と情熱を乗せたレースは、まさかの展開に―。箱根駅伝を描いた『チーム』の続編。
「いちご同盟」三田誠広(集英社文庫)
「どうせ死ぬのに……」の言葉の後に10代の私が抱えていたクエスチョンは
「何のために生きるの?」だった。
死の淵に立った瞬間でもその答えは出ないかもしれない。
それでも存在意義を突き詰める息苦しさから抜け出た当時の私の答えは
「生きるために生きる」だ。
だが、それも選択できる未来があるからこそだと思わされる、直美の言葉が辛い。
15歳の少年と少女が向き合うには、あまりにも酷な現実。
人が人である限り、逃げることができない運命から目を逸らさずに、
真摯に立ち向かった彼らは、この先、強くやさしく在れる。
その命を大切にできる。
同じ哀しみを知っている心強い盟友と共に。
『四月は君の嘘』からの『いちご同盟』
かをりがこの本を読んでいたことに、何とも言えない想いを噛みしめました。
内容(「BOOK」データベースより)
中学三年生の良一は、同級生の野球部のエース・徹也を通じて、重症の腫瘍で入院中の少女・直美を知る。徹也は対抗試合に全力を尽くして直美を力づけ、良一もよい話し相手になって彼女を慰める。ある日、直美が突然良一に言った。「あたしと、心中しない?」ガラス細工のように繊細な少年の日の恋愛と友情、生と死をリリカルに描いた長篇。
「イケメンとテンネン」流月るる(アルファポリス)
オフィスラブ。素敵な響き。
軽く読めるだろう、と、タカをくくっていたら、
あまりの切なさに本気泣き。
全力で恋をする人たちの物語。
不安になる気持ちも、自分に自信にない気持ちも、
それでも表面取り繕って毅然としていたい気持ちも、わかるだけに切ない。
好きすぎて苦しくて、だけど自分から別れを切り出すことはできなくて……
咲希の涙と、そんな咲希の気持ちを間違えることなくちゃんと汲み取った朝陽の涙で
私も涙……
物分かり良いふりをして、我慢して我慢して我慢して。
本音をちゃんと朝陽にぶつけることができた咲希に安堵しました。
お幸せに。
いつか朝陽に透をぎゃふんと言わせてもらいたいと思いました。
って、表現古い?(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
ある事情から、イケメンと天然女子を毛嫌いする咲希。彼らを避けて生活していた、ある日のこと。ずっと思い続けてきた男友達が、天然女子と結婚することに!しかもその直後、彼氏に別れを告げられてしまった。思わぬダブルショックに落ち込む咲希。そんな彼女に、犬猿の仲である同僚の朝陽が声をかけてきた。イケメンは嫌い!と思いつつ、気晴らしのため飲みに行くと、なぜかホテルに連れ込まれてしまい―!?天邪鬼なOLとイケメン同僚の、恋の攻防戦勃発!
『仮面の告白』三島由紀夫 新潮文庫
己の性癖に葛藤と煩悶を繰り返した少年時代。
この時代の描写が秀逸。
艶めかしさと婀娜めかしさ、そしてその背徳感に身震いを覚える。
紡がれる言葉の、なんと美しいこと。
隠匿すべき衝動に震える少年は、いつしか処世術としての演技を身に着ける。
同性への衝動を周囲の人間に気取られぬためには、
仮面を被った道化になるしかなかったのかもしれない。
女を愛せるという演技をし、園子とのつながりを欲し続けたのは、
「ふつう」で在りたいという願望の表れか。
マイノリティであるが故に、孤独で在ること畏れたのかもしれない。
人は画一的である必要はない。
だが、それは、今の時代であるからこそ言える言葉なのだろう。
鬼気迫るものが薄れてきた後半で、ようやく息が付けたものの、
前半部を読みながら、比喩ではなくクラクラしました。
言葉に絡みつかれるような、そんな感覚に囚われて。
内容紹介
「私は無益で精巧な一個の逆説だ。この小説はその生理学的証明である」と作者・三島由紀夫は言っている。女性に対して不能であることを発見した青年は、幼年時代からの自分の姿を丹念に追求し、“否定に呪われたナルシシズム"を読者の前にさらけだす。三島由紀夫の文学的出発をなすばかりでなく、その後の生涯と、作家活動のすべてを予見し包含した、戦後日本文学の代表的名作。
「小さな君の、腕に抱かれて」菅野彰(ディアプラス文庫)
軽く言える「さよなら」と身を切られるような「さよなら」がある。
好意を持っている相手との、
二度と会えないことがわかっている「さよなら」はとても切ない。
「久しぶり」と思わぬ偶然に手をあげる再会もあれば、
ひたすら探し求めて偶然を装う再会もある。
人と人。
深く関わりあえば、良くも悪くも何らかの影響を及ぼしあうのは必須。
誰かの支えがあったからこそ、笑っていられることもある。
だから、そんなに負い目に感じなくてもいいんだよ、
と、奏一には言ってあげたくなって、後半ちょっと辛かった。
だけど祐貴は、あのときより幸せな自分にきっと出会える。
たぶん、出会えている。
とんでもないことを言い出した峰崎が実は常識人だったことに安堵して、
そして、彼もまた、過去に捕らわれた人であったことを知って愛しくなりました。
個人的には峰崎が大変好みでした。
巴ちゃんとの12年後は是非!
それにしても……しんみりとした余韻がペーパー読んで台無し!と思ったのは
私だけでしょうか?(笑)
面白かったからいいんですけど。
ってか、面白すぎました。
内容(「BOOK」データベースより)
ある朝ほぼ全裸で目覚めた大学の図書館司書の奏一は、勤務先の学生が一緒にいることに愕然とする。その彼・祐貴は、思わせぶりな言葉を紡ぎ、脅すように度々部屋を訪れるが、触れてくる手はとてもやさしい。とまどう奏一は、ようやく記憶の底にあった八年前の、短い季節を思い出す。小さな手でしがみつきながら、何度も「歌をうたって」とせがんだ、幼い少年のことを…。一途な年下攻ラブ・ストーリー!!
「世界の名詩を読みかえす」(いそっぷ社)
美しいイラストと読み継がれてきた名詩の素敵なコラボ。
一気読みするものではないなぁ、と、
数日かけて作家たちの言葉を追いかけました。
ヘッセはやさしくて淋しい。
リルケは愛。
ゲーテは力強さ。例えるなら父。
ハイネは繊細。
ケストナーは皮肉屋。
ボードレールは絵画的。
ランボーは挑発的。
カフカは幻想。
ブレヒト、グラス、ホイットマンははじめましての作家さんだったため
具体的なイメージが浮かびませんでした。
ということは、私の彼らに対するイメージは、収められている数編の詩からというよりは、
今まで読んできた彼らそのもののイメージということなんですね。
ヘッセとランボーは私の中では別格。
鎌倉散策中に素敵な建物に出会いました。
「あら、カフェかしら?」
と、足を向けたその建物は「葉祥明美術館」
そこで手にしたのがこの本です。
大好きな作家さんの胸打たれる詩が素敵なイラストに彩られていて、
うっかり涙ぐんでしまいまして(^^;……自分土産にお持ち帰りした本です。
改めて読んでうっとりしました。
内容(「BOOK」データベースより)
青春のはかなさを叙情豊かにうたったヘッセ、恋愛のロマンチシズムにただよう寂しさをつづったハイネ、人間の卑小さをわらい、社会に怒りをむけたケストナー、人生の暗闇を美しい言葉で描いたボードレール、自然の雄大さを素朴な筆致で浮き彫りにしたホイットマン、…ほか、リルケ、ゲーテ、ランボー、カフカ、ブレヒト、グラスの名詩45編を収録。
「チーム」堂場瞬一(実業之日本社文庫)
一生のうちでただ一度、刹那に賭ける瞬間があってもいい。
走るときは一人。
だけど、孤独ではない。
限界を超える力を振り絞って走る彼らを支えるのは、
仲間の存在であり、声援であり、そして自分自身を信じる気持ちである。
その原動力は、チームメイトとの信頼と友情。
同じ高みを目指す以上、ある種の一体感は存在する。
勝つためには、そうでなければならない。
学連選抜。
にわかに集まった彼らが目指した「優勝」という最高点。
温度差がある中で反発しあながらもまとまっていく彼らの在り方がとても良かった。
非情に徹しきれなかった彼ら。
同じ痛みを感じて一皮剥けたエース。
ライバルであり、親友である存在。
そして、浦。
最後の山城の言葉に落涙でした。
「ここが限界だと思った瞬間から、本当のスタートが始まるんです」
そう言っていたイモトの言葉を思い出した。
堂場さんは刑事ものばかり読んでいたけど、
スポーツ小説も安定の読みやすさと面白さでした。
野球!野球も気になります!
内容(「BOOK」データベースより)
箱根駅伝出場を逃がした大学のなかから、予選で好タイムを出した選手が選ばれる混成チーム「学連選抜」。究極のチームスポーツといわれる駅伝で、いわば“敗者の寄せ集め”の選抜メンバーは、何のために襷をつなぐのか。東京~箱根間往復217.9kmの勝負の行方は―選手たちの葛藤と激走を描ききったスポーツ小説の金字塔。巻末に、中村秀昭(TBSスポーツアナウンサー)との対談を収録。
「悲しみのイレーヌ」ピエール・ルメートル(文春文庫)
混在する真実と虚構。
彼らは何処までが彼ら自身だと言えるのか。
『悲しみのイレーヌ』
ある意味、虚像のままだった彼女。
これは、犯人ありきの物語。
破壊される人間の描写に、いや、もうたくさんです。
キャパオーバーで感覚麻痺ってきました!と言いたくなった第一部。
そこから展開される怒涛のような第二部。
描かれている彼らにどこまで肩入れしていいのかは、
次作を読んでからじゃないと判断がつかないじゃん!と、唸ってしまう結末。
口直しが必要な読後感ではあったけど、
最後まで失速することなくグイグイと読ませる展開はさすがでした。
個人的には『ブラック・ダリア』読了後の本作で思いっきりタイムリー。
ルメートルは『その女、アレックス』を読んだからこそ、
他の作品も手に取ることになった作家ではあるけれども。
未読の方は『悲しみのイレーヌ』→『その女、アレックス』の順番で読まれることをおススメします。
とはいえ、完成度と面白さでは断然『アレックス』だと思うので、
『イレーヌ』のザラザラした読後感にめげずにチャレンジしてもらいたいです。
内容紹介
『その女アレックス』の刑事たちのデビュー作
連続殺人の捜査に駆り出されたヴェルーヴェン警部。事件は異様な見立て殺人だと判明する…掟破りの大逆転が待つ鬼才のデビュー作。