きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「三匹のおっさんふたたび」有川浩(新潮文庫)
それぞれの家族との係わり方が印象に残ったシリーズ第二弾。
パート先で苦労をしていることを察しながらも敢えて口にせず、
さりげない気遣いをしながら、貴子の初めてのお給料で買ったケーキで、
家族で食卓を囲むシーンは、素敵だなぁ、と思った。
清一からまだいろんなことを学びたいと思い、健一のことを見直す祐希。
重雄のことをカッコいいと思う康生。
まだ則夫のそばにいたいと子供のようにダダをこねた早苗。
言葉にしてもしなくても、家族がきちんと向き合って、
生活をしているその姿には、地に足がついた安心感がある。
起きる事件は身近なもので、それ故に怖さややりきれない思いを抱かされた。
そんな中、書店主の井脇が万引きをした中学生たちに真摯に向き合ったその姿勢は
ちょっと感動しました。
向き合った相手がきちんと反省できる子でよかった。
内容(「BOOK」データベースより)
剣道の達人キヨ、武闘派の柔道家シゲ、危ない頭脳派ノリ。あの三人が帰ってきた!書店での万引き、ゴミの不法投棄、連続する不審火…。ご町内の悪を正すため、ふたたび“三匹”が立ち上がる。清田家の嫁は金銭トラブルに巻き込まれ、シゲの息子はお祭り復活に奔走。ノリにはお見合い話が舞い込み、おまけに“偽三匹”まで登場して大騒動!ますます快調、大人気シリーズ第二弾。
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「雪よ林檎の香のごとく」一穂ミチ(ディアプラス文庫)
一人で壊せない殻なら、誰かに叩いてもらえばいい。
ままならない現実が辛かったら、誰かに想いを吐き出せばいい。
自分自身で己に課した戒めに雁字搦めになって、
前に進むことができずにいた不器用な二人。
距離を縮めていくエピソードの数々が、怖いもの知らずの高校生らしくて。
それなりの挫折を経験してきた教師らしくて。
ストン、と、胸に落ちました。
まとまってみると、大人げのなさ全開の桂がなんだかかわいい。
桂の幸せを見届けることができた喜びと安堵が伝わってくる、葉子の涙は良かった。
将来に対する心もとなさって、志緒の年代なら誰もが経験するもの。
だからこその青春。
栫のしたことはとりあえず説教部屋行きだけど。
みんな泣き寝入りしなかったのが良かった。
桂の啖呵は大人げのなさ全開だったけど(笑)
りかちゃん、良い子で可愛かったよ。
内容(「BOOK」データベースより)
中学受験も高校受験も失敗し、父の母校に進学する約束を果たせなかった志緒。今は、来年編入試験を受けるため、じりじりする気持ちを抱えながら勉強漬けの毎日を過ごしている。五月雨の降るある日、志緒は早朝の図書室で、いつも飄々としている担任・桂の涙を見てしまった。あまりにも透明な涙は、志緒の心にさざなみを立て―。静かに降り積もるスノーホワイト・ロマンス。期待の新鋭・一穂ミチのデビュー文庫。
「アンフォーゲタブル」一穂ミチ(ディアプラス文庫)
恋した人を想う気持ちの深さ。
やり遂げようという意思の強さ。
職場の仲間を案じる気持ち。
家族を思いやるやさしさ。
がんばって日常を生きる人たちのたくさんの想いが溢れて伝わってくる。
一穂さんの話が好きだなーと思う所以です。
望に対する想いを冬梧が自覚する場面がすごく好き。
そして封筒に入れたいちょうの葉に託した望みの想い。
それを汲んだ冬梧と一緒に泣きたくなりました。
そして再会。
冬梧の記事を望が追いかけていたということがなんだかじんわり嬉しかった。
穏やかに寄り添って生きていってほしいなぁ、と思います。
未帆ちゃんが本当に良い子だった。
泣いている未帆と途方に暮れる冬梧の脇を通り過ぎようとした静に笑ってしまった。
気持はわからなくもないけど!
でも私も叫ぶわ。「何で無視するんですか!」って(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
ある夜、新聞社勤めの冬梧が証明写真を撮っていたボックスに見知らぬ青年が闖入、身も世もなく泣き出してしまう。お詫びをと連絡してきた製薬会社勤務の望と交流を重ね、冬梧はデートめいて心地いい時間に戸惑う。やがて懇願される形で体をつなげ、すでに惹かれていたのだと観念した冬梧だが、望はその日から「もう会えない」人になっていた―。
「僕はここにいる」飯田雪子(ホワイトハート)
【これからもずっと、僕はここにいる】
綺麗で純粋でちょっと切ないお伽噺。
不思議な瓶の音に導かれて出会ったのは、透明で優しい雰囲気をまとった彼だった。
逢うたびに彼に惹かれ、淡い想いを抱いていく涼香だったけれども。
いつしか彼女は気づいていく。
それは抱えきれない哀しみが引き寄せた出逢いであることを。
前に進むためには彼とはもう二度と会えない、会ってはいけないのだということを。
だけど、その出逢いは涼香にとっては必要なものだった。
人生に立ち向かっていくために。
いつだって笑っていられるために。
ぼくはずっとここにいる。
泣き顔しか見せなかった彼に、とびきりの笑顔を。
内容(「BOOK」データベースより)
はじまりは、瓶の音だった。夜の庭に響く、聞こえるはずのない音。中一の春。新しい町で幸せに過ごしていくはずだったのに、いつしか家の中には険悪な空気が流れ、そしてある夜、それは哀しい空気へと変わってしまった。なす術もなく立ちつくすあたしの前に現れた、不思議な雰囲気をもつ人。彼が教えてくれたことは…。心に染みる、せつなく美しいファンタジー。
「皆月」花村萬月(講談社文庫)
【ふつうの生活をしていると、そこまでするかって思うけど、
渦中にいると、何も見えなくなってしまのよ】
一千万円の貯金を奪われ、突如として妻に捨てられた諏訪徳雄。
沙夜子の元夫である彼は、アキラの兄貴であり、由美のオッサンであり、
我孫子たちのおとうさんだった。
これは再生の物語。
諏訪は男として、由美は女として、そしてアキラは人間として。
人生に躓いた人たちが互いに支えあいながら、前に進む物語。
アキラの無邪気さと純粋さ、そしてまっすぐさは人を守る最強の盾であり、
時に人を死に至らしめる最凶の鉾でもある。
大人になりきれない淋しさと孤独が見え隠れする彼はどこか不憫で憎めない。
だからと言って人を殺していいということにはもちろんならないけどねww
居場所を作って待っていてくれる人ができて、ホント、良かった。
必死でがんばった由美の頭を私も撫でてあげたいなぁ、と思いました。
内容(「BOOK」データベースより)
諏訪徳雄は、コンピュータおたくの四十男。ある日突然、妻の沙夜子がコツコツ貯めた一千万円の貯金とともに蒸発してしまった。人生に躓き挫折した夫、妻も仕事も金も希望も、すべて失った中年男を救うのは、ヤクザ者の義弟とソープ嬢!?胸を打ち、魂を震わせる「再生」の物語。吉川英治文学新人賞受賞作品。
「ナイトガーデン」一穂ミチ(フルール文庫)
豊かな感性で生きる柊と、理詰めで生きる和章。
真逆なようでいて、実は分かり合える部分もあわせ持つ二人。
飾らない言葉と偽らない態度。
静かな山の中の自然に囲まれた空間の中で、
過去に大きな傷を抱えた二人がお互いの言葉でお互いのことを語りあい、
次第に気持ちを寄せていく様子がとても真摯に伝わってきて。
ああ、人って、こうやって惹かれあっていくんだなぁ、ということが
とても綺麗に伝わってきた。
お互いの弱さと強さを見失わずに「いい大人」に成長していくことが信じられるラスト。
「一度は物の数じゃない」
挫けそうになったときは、柊の解釈を思い出して頑張ろうと思いました。
内容(「BOOK」データベースより)
静かな山の中で祖父と暮らす石蕗柊のもとに、祖父の昔の教え子だという男・藤澤和章が訪ねてくる。このまま一生山を出ずに生きていく、そう思っていた自分はなんて狭い世界しか知らなかったんだろう…生まれてはじめて触れた人の肌の熱さに和章への想いを自覚する柊。だが彼の瞳はいつも柊ではない“誰か”を見ていた…。「ふったらどしゃぶりWhen it rains,it pours」から一年、消えない傷を抱えた和章の愛と再生の物語。
「erotica」榎田尤利(リブレ出版)
何処か常軌を逸したようなあまりにも濃密な情事。
勘違いと好きすぎる気持ちが暴走した微笑ましい逆転劇。
快楽に奔放な男が知った、未知なる愉悦。
本当の自分を曝け出した男に絆されて踏み越えた一線。
嫉妬に狂った故の暴走……からの立場の逆転。
そして、美しい文体で綴られる書簡の往復と日記と間に差し込まれる胸に迫る小説。
6編の短編のどれもが秀逸すぎて、息を呑むような真剣さで読みふけってしまいました。
しばらく浸っていたいこの読後感を、なんと形容するのが適切なのか、
ちょっと言葉が見つかりません。
ときに秘やかに、ときに大胆に。
あとがきの榎田さんの言葉通りの短編集でした。
内容(「BOOK」データベースより)
弱みを握られ、脅され、ふたりがかりで辱められ―支配するものがその立場を奪われ、悦楽に跪くとき…。『10×3』をはじめ、書き下ろし含む全6編、密室、玩具、極道など、榎田尤利がこだわりぬいた極上のエロティック短編集。
「向こう側の遊園」初野晴(講談社文庫)
花々が咲き乱れる廃園となった遊園地。
月明かりに照らされる夜に、彼岸と此岸の境界は曖昧になり、
動物たちの最後を看取る青年に巡り合える。
初野さんらしい、優しさと厳しさを備えた話。
語られる言葉の断片に、時に胸を抉られる。
生と死。
どんな命にも、生きてきた年数分の物語と想いが刻まれる。
人の想いですら理解に苦しむ人という存在が、
動物たちの最期にどんな想いを託すのか。
或は。
何を願うのか。
それぞれの章から投げかけられる問はどこまでも真摯で重い。
蒼い光を投げかける月の光。
匂いたつ数多の花の香り。
終末の物語の中に在って、唯一語られる再生の物語。
彼らに、光ある未来を。
内容(「BOOK」データベースより)
花々が咲き乱れる廃園となった遊園地。そこには、謎めいた青年が守る秘密の動物霊園があるという。「自分が一番大切にしているものを差し出せば、ペットを葬ってくれる」との噂を聞いて訪れる人人。せめて最期の言葉を交わせたら…。ひとと動物との切ない愛を紡いだミステリー。
「ふったらどしゃぶり」一穂ミチ(フルール文庫)
ひとつの彫刻作品を見てこみあげる思い。
その思いを、いま、この瞬間に伝えたいという衝動。
きっとわかりあえる。
そんなふうに思える相手に出会えたこと。
それは、たぶん、運命。
誤送信で始まったメールのやりとり。
やり場のない想いは吐き出す場所が必要で、
自分を理解してくれる相手の存在は、ただそれだけで心強い。
他愛もない言葉のやり取りから、真摯な想いを吐き出すまでに至るメールの往復は
胸に迫るものがあり、だからこそ、どん底に落ちた時に縋った言葉が痛い。
どこまでも際限なく求め合う二人の姿が痛々しくて切なくなる。
やっと一歩を踏み出すことができた二人。
お幸せに☆
実は私、一顕と同じ誤送信メールを送ったことがあります。
退職した部長に(爆笑)
レストランの店舗情報だけを送られてきた部長は、
どんな意味があるのかしばらく悩んだそうな。
一方の私は……あれ?届いてない?
ま、いっかー、送るつもりだっただけで実は送ってなかったのねー、
と、のんきになかったことになっていました。
ゴメンナサイ(*^_^*)
内容(「BOOK」データベースより)
同棲中の恋人とのセックスレスに悩む一顕。報われないと知りながら、一緒に暮らす幼馴染を想い続けている整。ある日、一顕が送信したメールが手違いで整に届いたことから、互いの正体を知らぬまま、ふたりの奇妙な交流が始まった。好きだから触れてほしい、抱き合いたい―互いに満たされない愛を抱えながら、徐々に近づいていくふたりの距離。降り続く雨はやがて大きな流れとなってふたりを飲み込んでいく―。