きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「華胥の幽夢」小野不由美(新潮文庫)
それぞれの国の在り様、そして王の在り様が描かれた短編集。
重責から逃れることなく、言い訳を断ち切り、それが、前王を討った自らの責任であると。
苦悩し、葛藤した末に、施政者であることを決意するまでの月渓の在り様がたまらなく好き。
一方、砥尚の孤独には息が詰まりそうになった。
現実から目を背け、華胥華朶に夢を見た彼らの危うさが痛々しい。
理想を掲げる事、誰かを責める事はたやすい。
ならば、理想を具現化するためにどうすればよいのか、
或は責めた誰かに成り変わって何ができるのか。
問われて答えられることのできるものは、果たして如何ほどか。
答えられないものは同罪だということに、誰もが気づかなかった。
結局は道を誤ったけれども、砥尚は最期まで王だった。
泰麒、楽俊、延王と利広。
彼らの物語には気持ちがほっとしました。
内容(「BOOK」データベースより)
王は夢を叶えてくれるはず。だが。才国の宝重である華胥華朶を枕辺に眠れば、理想の国を夢に見せてくれるという。しかし采麟は病に伏した。麒麟が斃れることは国の終焉を意味するが、才国の命運は―「華胥」。雪深い戴国の王・驍宗が、泰麒を旅立たせ、見せた世界は―「冬栄」。そして、景王陽子が楽俊への手紙に認めた希いとは―「書簡」ほか、王の理想を描く全5編。「十二国記」完全版・Episode 7。
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「乱れ咲く薔薇の宿命」犬飼のの
その頑なさに焦れながらも、彼らの迸る思いに結局はのめり込んで頁を捲ってしまう。
「理性的でおさえきれないほどの、おまえの本気が見たい!」
結局はそういうことなんだろうなぁ。
際限のない飢え。満たされることのない想い。狂おしいほどの恋情。
どこまでも欲しい。それが己のエゴでも、たったひとり、おまえだけ。
剥き出しの想いをぶつけ合う恋は種の禁忌に振れ、命がけの逃避行へ……
65年もの間紲を想いつづけたルイの一途さには切なくなる。
そして蒼真の相変わらずの癒し。
豹柄のバスローブに身を包む豹貴族……素敵☆
続き……読まねば!
内容(「BOOK」データベースより)
赤い瞳、年を取らない身体―。半分人間ではない者の世界で、「下級」である香具山紲と、「貴族」のルイは、気の遠くなるような歳月を経て、ようやく恋を実らせ、永遠の愛を手に入れたかのように思えた。しかしそれは、ふたりにとって壮絶な運命の始まりだった。身分の違うふたりを引き裂こうと、様々な妖しい魔の手が紲を狙い、紲を守ろうとするルイと激しい死闘を繰り返す。譲れない愛情は、ふたりを次第に追いつめてゆき…。狂おしいほどに純粋な禁断の恋物語。
「丕諸の鳥」小野不由美(新潮文庫)
国の礎を担うのは民である、ということを改めて痛感させられた4編。
王が不在でも、国が荒廃しても、そこで生活を営まなければいけない民がいる。
そんな彼らが国を案じ、己にできることを必死でやり遂げようとする様に、胸を打たれる。
「丕諸の鳥」情景描写が溜息が零れるほど見事だった。
未来を諦めないでほしい。ここに人々の心の叫びを汲み取れる王がいるのだから。
「落照の獄」読後の苦い思いを形容する言葉がみつからない。
「青条の蘭」災害を食い止めようと王宮を目指してひたすらに走り続けた標仲。
動けなくなった彼の代わりに人々の手から手へと青条が託されていく様には涙が滲んだ。
苦悩や絶望の中にあっても、希望の光が決して潰えてはいないことを示してくれた物語だった。
内容(「BOOK」データベースより)
「希望」を信じて、男は覚悟する。慶国に新王が登極した。即位の礼で行われる「大射」とは、鳥に見立てた陶製の的を射る儀式。陶工である丕緒は、国の理想を表す任の重さに苦慮していた。希望を託した「鳥」は、果たして大空に羽ばたくのだろうか―表題作ほか、己の役割を全うすべく煩悶し、一途に走る名も無き男たちの清廉なる生き様を描く全4編収録。
「砕け散る薔薇の宿命」犬飼のの(ラヴァーズ文庫)
こんなにも恋焦がれているのに、狂おしいほどの想いは伝わらない。
手に入らないくらいならばいっそ殺してしまおうか、と
思い詰める誇り高き吸血鬼貴族、ルイ。
この身が彼の血肉となるならば、と、抗わずに瞳を閉じようとした下級淫魔、紲。
長い年月を過ごしてきた人ならざる者たちの、
あまりにも不器用で一途な、命がけの恋。
彼らの心情がキリキリとした痛みを伴って突き刺さってくる。
作りこまれた世界観がとても綺麗で、ロマンチック。
リミッターなんて最初からなくて、
両極に揺れ動く二人のバランサーであった獣人貴族、蒼真に癒されました。
続編一気買いしたので読むの楽しみ♪
内容(「BOOK」データベースより)
赤い瞳、年をとらない身体―。誰にも言えない秘密を抱えて生きてきた、調香師の香具山紲は、都会を避け、軽井沢の別荘地でひっそりと暮らしていた。しかしそこへ、過去に最悪の別れ方をした元恋人のルイが姿を見せ驚愕する。「次に私の前に現れれば殺す」。別れ際、酷い言葉を残したルイは、今も紲も憎んでいるはずだった。あれから百年近く経った今になってルイが現れたのは、裏切りにも似た過去の紲の決断を裁くためなのか、それとも…。人間よりも麗しく、獣よりも狂おしい、人ならざる者たちの気高い愛の物語。
「ハサミ男」殊能将之(講談社文庫)
タイトルが秀逸。
ハサミ男がハサミ男に出会い、これで事態は終息へ……とは向かわず、
さらに新たな展開へ。
真剣な人の気持ちを弄んだり、試したりしちゃいけないよ、と思いつつ、
だからってそれが殺される理由にはならない。
逆に殺す言い訳にもならない。
そんな理由で!?と思った瞬間、ハサミ男も同じことを叫んでたよ。
とはいえ、そう言ったハサミ男に正当な理由があるわけでもない。
そんなんでも理由のある殺人は、まったく理由のない殺人よりは人間らしい気がした。
実はしっかりと仕事をしていた警察の皆々様。
捜査ってそうやって行われていくのねー、と、感心しつつも、ラスト、思いは複雑でした。
内容(「BOOK」データベースより)
美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。三番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。精緻にして大胆な長編ミステリの傑作。
「進撃の巨人 15」諌山創(マガジンコミックス)
「何が事実かを決めるのはこの戦に勝った奴だ」
理不尽だけど、争いの真理を表す言葉だと思う。
そして、人類の未来を守るため、その理不尽に徹底的に抗う調査兵団。
ボンクラかと思っていたリーブス商会の息子もまた、理不尽に抗する声を上げ、
市民が自らの意志で立ち上がる。
革命へと時代が流れる。
ピクシス司令もだけど、ザックレー総統のタヌキっぷりがカッコイイ(笑)
再び問われるエルヴィンの覚悟。
迷いなく突き進むリヴァイたち。
捕らわれのエレンが見た過去は……嫌な予感しかしない。
ああ、でも続きが気になって仕方がない。
破綻なくきっちり進んでいる物語展開。最後まで描きたいように描ききってほしいです。
内容紹介
巨人がすべてを支配する世界。巨人の餌と化した人類は、巨大な壁を築き、壁外への自由と引き換えに侵略を防いでいた。だが、名ばかりの平和は壁を越える大巨人の出現により崩れ、絶望の闘いが始まってしまう。
「図南の翼」小野不由美(新潮文庫)
「王の責務を正しく果たせるのか?」と、問われ、
「あたしにできるはずないじゃない!」と、叫んだ珠晶。
ここから珠晶が想いを爆発させるシーンは本当に好き。
文句を言うのも嘆くのもやるべきことをやってからではないのか?と、珠晶は問いかける。
誰もが自分さえ良ければいいと思っている限り、国の窮状は救えない。
彼女の言うことは間違ってはいない。
十二歳の子どもにここまで言わせてしまう大人の不甲斐なさ。
でも、可もなく不可もない現状に甘んじる心境も
なんとなく理解できてしまう自分がちょっとさみしかったりもする。
でも珠晶の周りには頑丘や利広のような大人もいる。
彼らと共に作り上げる恭国の未来は溌剌とした色をしているような気がします。
そして供麒と珠晶。なんだかとっても素敵なコンビだと思います(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
恭国は、先王が斃れてから27年。王を失くした国の治安は乱れ、災厄は続き、妖魔までが徘徊するほどに荒んでいた。首都連檣に住む珠晶は、豪商の父をもち、不自由のない生活と充分な教育を受けて育った。しかし、その暮らしぶりとは裏腹に、日ごとに混迷の様相を呈していく国を憂う少女は、王を選ぶ麒麟に天意を諮るため、ついに蓬山をめざす。珠晶、12歳の決断。「恭国を統べるのは、あたししかいない」。
「風の万里 黎明の空 下」小野不由美(新潮文庫)
陽子、祥瓊、鈴。
三人の娘たちが人として成長していく様が描かれた物語。
特に王として自らのあり様を見出した陽子の凛とした様子は見事だった。
彼女たちだけではなく、圧政に屈せず、機会を伺い、獣のような施政者たちに
反旗を翻した虎嘯や桓魋たちの在り方もすごい。
読後に感じる爽快感と力強さは、彼らの気概と息吹そのもので、
自分もがんばろう、という思いにさせられる。
学ぶこと。知ること。己を顧みること。人のせいにしないこと。
読むたびに背筋が伸びる思いがします。
他国の様子も随分とわかってきたことだし、今後の物語の行方がとっても楽しみです。
内容(「BOOK」データベースより)
王は人々の希望。だから会いに行く。景王陽子は街に下り、重税や苦役に喘ぐ民の暮らしを目の当たりにして、不甲斐なさに苦悶する。祥瓊は弑逆された父の非道を知って恥じ、自分と同じ年頃で王となった少女に会いに行く。鈴もまた、華軒に轢き殺された友の仇討ちを誓う―王が苦難から救ってくれると信じ、慶を目指すのだが、邂逅を果たす少女たちに安寧は訪れるのか。運命は如何に。
「風の万里 黎明の空 上」小野不由美(新潮文庫)
いつまでも心に留めておきたい名言格言だらけの巻。
自分がかわいそうで仕方のない鈴。
自分の苦境をすべて人のせいにして嘆く祥瓊。
あまりにも自分のことしか考えていなかった二人が、
旅の途中で人々と交わる中で、少しずつ周囲に目を向けていく。
誰かのせいにして文句を言うことも泣くことも簡単だけれども、
そこから抜け出す努力をしなければ何も変わらない。
とはいえ、言うは易し、なんだよね。生きる、ということは本当に大変だ。
一方、自分が国の民のことを何も知らないことを誰よりもわかっている陽子は、
身分を隠して民の中へと分け入っていく。自国の民のことを知るために。
様々な柵を抱えた三人の少女たちの物語に自分を顧みながら次巻へ…
内容(「BOOK」データベースより)
人は、自分の悲しみのために涙する。陽子は、慶国の玉座に就きながらも役割を果たせず、女王ゆえ信頼を得られぬ己に苦悩していた。祥瓊は、芳国国王である父が纂奪者に殺され、平穏な暮らしを失くし哭いていた。そして鈴は、蓬莱から辿り着いた才国で、苦行を強いられ泣いていた。それぞれの苦難を負う少女たちは、葛藤と嫉妬と羨望を抱きながらも幸福を信じて歩き出すのだが―。