きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
カテゴリー「海外小説」の記事一覧
- 2023.12.24 「越境 」コーマック・マッカーシー(ハヤカワepi文庫)
- 2023.10.12 「ムービータウン・マーダーズ 殺しのアート5」 (モノクローム・ロマンス文庫)
- 2023.09.24 「ケリー・ギャングの真実の歴史」(早川書房)
- 2023.04.22 「果樹園の守り手」コーマック・マッカーシー(春風社)
- 2022.05.05 「悪の法則」コーマック・マッカーシー(早川書房)
- 2022.02.20 「野獣死すべし」ニコラス・ブレイク (ハヤカワ・ミステリ文庫)
- 2022.01.16 「すべての美しい馬」コ―マック・マッカーシー (ハヤカワepi文庫)
- 2021.12.12 「贖罪」イアン・マキューアン (新潮文庫)
- 2021.11.14 暗号機エニグマへの挑戦 (新潮文庫)
- 2021.10.23 「ザ・ボーダー 下」ドン・ウィンズロウ (ハーパーBOOKS)
「越境 」コーマック・マッカーシー(ハヤカワepi文庫)
一連の出来事の発端をどこに見出せばよいのだろう?
だが、それを突き止めたところで、意味はない。
彼は既に、国境を越えてしまったのだから。
僅か10代の少年の3度の国境越え。
国境を越えるたびに彼は何かを失い、悲しみに見舞われ、そして何かを背負い、生者としての深みを増す。
理不尽に翻弄されながらも、損なわれることのなかった矜持。
それがひどく痛々しくも、眩しくもある。
個人的に一度目の越境の時の理不尽が一番許せなかった。
ああ、もう!と、胸をかきむしりたい読後。
だけど、それがマッカーシー。
中毒患者は次作に手を伸ばすのみ。
読んでる途中で注文していたBL本がドサドサッと届いた。
気になる。開封したい。
一般書の併読はできないけど、一般書とBLの併読はできる私。
楽しみにしていた新刊だから、
開封しちゃったらBLに手を出しちゃうのはわかってる。
だけど。
今回に限っては、本書を読み終わるまでこのストイックで野性味を帯びた世界に浸っていたい、いや、いなければ、という思いの方が勝って、読み終わるまでBLは封印。
その判断は間違っていなかった。
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「ケリー・ギャングの真実の歴史」(早川書房)
権力の理不尽に捻じ曲げられた人生。
正しく在ろうとする人を、捻じ曲げる社会。
犯した罪と捏造された罪。
それが、同等に扱われる不合理。
罪が権力者や裏切りによって作り上げられ、
だからこそ、虐げられる側の者たちは罪人に手をさしのべる。
オーストラリアがイギリスの植民地だったことを思い出し、
移民や元罪人があまりにも生き辛い社会であったことにやりきれなさを覚える。
何より。
これが史実であったことを知った時の衝撃。
苦難と貧困の中、愛する者たちのためにどうにか生き抜こうとしたネッド。
彼の人生を「こんなもの」にしたのは、彼だけの責任では断じてない。
久しぶりのガーディアン読書。
良い本を手にしたと思う。
積読棚から迷わず選んだけど、ハードカバーの500ページ越え。
平日だし、仕事バタバタしてるし、でも今週中に読み切りたいし、と、
一日100ページを目安に!と意図して区切って読んだのは実は初めて。
功を奏したみたいできっちり5日で読了☆彡
【ガーディアン必読116/1000冊】
「果樹園の守り手」コーマック・マッカーシー(春風社)
老人のターンは風景と人が完全に同化したかのような描写。
それも、ひっそりとした、どこかくすんだ色合いの風景。
けれども、彼の生活圏に少年が紛れ込んだ瞬間、
色味は鮮やかさを増し、どこか人間味を帯びる。
子どもって偉大だ。
人の命を殺め、違法な商売に手を染めた男が、少年に言い含めた言葉。
意外だった。
誰かに対しては悪であっても、他の誰かに対しては善になれる。
その少年が若者となった所で物語は幕を閉じるけれども。
彼を取り巻いていた色味は鮮やかさよりも落ち着きを醸し出し、
それが彼の成長を物語っている。
マッカーシーデビュー作。
久々の海外小説だったからなのか、マッカーシーだからなのか。
最初の30ページくらいまでを読みきるのに時間がかかることかかること。
いつものペースで読めるようになった瞬間、何故かほっとしました。(笑)
曇天の空の下、風と草木の香りを感じながら読むのがベストマッチな気がする。
「悪の法則」コーマック・マッカーシー(早川書房)
法に触れることは最初からやっちゃいけない。
やるならすべての段取りを自分自身で。
裏切りや罠はいたるところに存在する。
小説ではなく、映画脚本。
最初は読みづらさを感じつつ、
簡潔な情景描写に逆にリアルに想像力をかきたてられ、
だんだんドキドキしながらのクライマックス。
読後の第一声は一言。
怖っ!
何が怖いって、やっぱり人間がおっかない。
大なり小なりの暴力性はすべての人間が内在しているものだと思う。
だけど、それを他者へ向けられるかどうかは全然別だ。
欲があってこその悪なのか、そもそっもが悪だから悪なのか。
問いかけたところで、彼女の笑い声がきこえてきそうだ。
昔は凄惨な映画も見られたんだけど。
今は怖くて見られない気がする……。
それにしても。
「首なしライダー」と言われるといまだに私は「銀郎奇怪ファイル」を連想するようです。
「野獣死すべし」ニコラス・ブレイク (ハヤカワ・ミステリ文庫)
「死んでしまえ」と思うこと。
「死んだほうがいい」と思うこと。
心の中で念じるのは自由だ。
だが、実際に殺してしまうこととなると、
人間社会で生きる限り、超えてはいけない一線がある。
彼の殺意には思わず首肯してしまいたくなる理由があるけど、
法的に告発できる手段を模索すべきだった……と思うのは、
私が自分の子どもを殺されていないからかな。
結果的に大人たちの騒動に巻き込まれてしまった子どもがいることが痛々しい。
それ以外なかっただろうなぁ、と思えるエピローグが胸に刺さる。
そして本を閉じて眺めるこの表紙が物悲しい。
それにしたってですよ。
この作品が発表されたのが1938年!
そういえば南北戦争の話してたなーという個所はあったけど、
年代の古さを全く感じさせない読み応えでした。
【ガーディアン必読114/1000冊】
「すべての美しい馬」コ―マック・マッカーシー (ハヤカワepi文庫)
再読ながら、齢16歳の少年が、こんなふうに生きられるのかと。
その生き様に、あの過酷な状況を生き抜けたことに圧倒される。
けれども。
北畠顕家が駆け抜けた人生も20年。(『破軍の星』参照)
年齢じゃないんだよね。
例え、運命に翻弄されようとも、
何を抱え、何を捨て、何を貫いて生きるのか。
それらは自らの意思で選択することが出来る。
だから、彼の生き様が胸に刺さる。
馬と友と。信頼と正義と。
自らの信念を潔いほどまっすぐに貫きとおした少年は、
いつしか一人の男として乾いた大地を踏みしめる。
再び故郷をあとにするために。
『国境三部作』の未読の二作を読むにあたって、一作目を再読。
読むのは六年ぶり。
初読の時よりも彼らとの距離がぐっと近づいた気がするのは、
再読だからなのか、その間の私の成長なのか。
読むべき時が来たから、読む気になったんだろうなぁ。
と、メッチャ楽しみだったのに!
あとがきーー!
そう。私が後書きを好んで読みたくない理由は、時に続刊のネタバレや結末を示唆するような
内容を書く人がいるから。
記憶リセット!
【ガーディアン必読 再読/1000冊】
「贖罪」イアン・マキューアン (新潮文庫)
静かなる良作。
安堵した後に突き付けれらた真実が苦しくて。
声を上げて泣いてしまった。
第一部で描かれるのは群像劇。
同じ物事を語るにしても、見る視点が違えば捉え方も違う。
真実とすれ違い、ねじ曲がって捉えられていく過程が恐ろしい。
その時彼女が声をあげたことによって奪われてしまった彼らの未来。
続く第二部。そして第三部。
恋人たちの繋がりが潰えなかったことがただ、嬉しい。
その一方で、取り返しのつかない罪は存在するのだと切実に思う。
ちょっと待って、と、反射的に読み返してしまった最終章。
贖罪。
その言葉の持つ意味が、読了後に重くのしかかってくる。
こういう出会いがあるからガーディアン読みがやめられない。
イアン・マキューアン。
他の作品も追いかけたい作家です。
まずは集めるところから。
【ガーディアン必読113/1000冊】
暗号機エニグマへの挑戦 (新潮文庫)
ジェリコが職務を休業するに至った理由が、
ハードワークによるメンタル疲労に加えて失恋と言うダブルパンチ。
静養中のところを呼び戻され、
復職を余儀なくされた彼の職務内容と元カノの失踪が
微妙にリンクしていって……フィクションとノンフィクションの
絶妙なコラボにミステリー要素が加味され、
ワクワクしながら読み進めていったのですが。
行きついたのが非道極まりない歴史的事実「カチンの森」で、胸が軋みました。
とはいえ、暗号解読に挑むイギリスチームの尽力は読み応えあり。
戦争ならではの理不尽と、
ミステリアスにロマンチックを加味した余韻を残して終幕。
序盤で波に乗り切れず、読み進めるのに時間がかかりましたが、
そこを乗り切った後は一気読み。
再読時には最初から楽しめる気がします。
せっかくなので第二次世界大戦(海外作家)の本棚を追加しました
日本人作家編同様少しずつ増やしていこうと思います。
【ガーディアン必読112/1000冊】
「ザ・ボーダー 下」ドン・ウィンズロウ (ハーパーBOOKS)
「いったいどうしてこんなことになったのか」
もちろん要因は一つではない。
いくつもの欲と闇が絡み合って構築された泥沼は、
人々の命を絡めとり、呑み込んでいく。
そしてそれは、メキシコの問題であり、アメリカの問題でもある。
犯罪は取り締まるべきもの。
それなのに、その犯罪を正そうとした者たちが、何故こんなにも疲弊しきっているのか。
漂う無力感と虚無感と憤りは、それが現実であることと、
それ故に問い続けなければならないことを物語っている。
アメリカの国民でありながら、メキシコの麻薬組織とアメリカの中枢と戦ったアート・ケラー。
圧巻の物語。
私が読メに登録してきた中で、多分一番分厚い小説。
これを越えるのは京極しか思い浮かばない(笑)
以下ネタバレ。
カランを取り戻したノーラの在り様がとてもカッコよかった。
シレロ、ホントに頑張ったね。お疲れさま。