きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「残り全部バケーション」伊坂幸太郎(集英社文庫)
【どうせいつかは死ぬけどな。生き方は大事なんだよ】
伊坂ワールド堪能しました!
一癖も二癖もありそうな登場人物のオンパレード。
このままじゃ終わらないよね、という第一章。
溝口と岡田。
この二人に魅力を感じた時点で物語に取り込まれている。
過去と現在を行き来する章を読み進めていくうちに、
章と章がつながっていく構成はお見事。
分担作業の殺人。
サラッと語られるアングラな仕組みも本当にありそうで不気味。
だけど、ジメッとしていない。
全体的な物語のイメージは溝口の性格によるところが大きいのかな?
そして最終章。
結局私も『それらしい』話に乗せられる。
カチッとはまったピース。
唸りました。
おもしろかった。
3年ぶりに伊坂作品読みました。
伊坂さんの構築された世界に足を踏み入れて、ただいまー!って言いたくなりました。
うん。
この独特の世界観、やっぱり好き。
内容(「BOOK」データベースより)
当たり屋、強請りはお手のもの。あくどい仕事で生計を立てる岡田と溝口。ある日、岡田が先輩の溝口に足を洗いたいと打ち明けたところ、条件として“適当な携帯番号の相手と友達になること”を提示される。デタラメな番号で繋がった相手は離婚寸前の男。かくして岡田は解散間際の一家と共にドライブをすることに―。その出会いは偶然か、必然か。裏切りと友情で結ばれる裏稼業コンビの物語。
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「今宵天使と杯を」英田サキ(SHY NOVELS)
表紙から私の脳裏に一瞬で浮かんだ諸々のイメージとは
ちょっと違ったストーリーだったけど、
このイラストとストーリーにはまったく齟齬がない。
むしろぴったり!
英田さんとヨネダさんの素晴らしいコラボでした。
人生ってほんとままならない。
だけど、生きていればこんな素敵な出逢いもある。
そんな二人の物語。
何も欲しがらなかった四方が最後に欲した柚木。
四方の一途さがとてもいい。
四方にひたむきに迫られて躱しきれず、でもただ流されたわけじゃなかった柚木。
戸惑いが恋に変わっていく過程がとても綺麗に伝わってきました。
「ひとりじゃないから歩いていける」
この描写がとても好き。
どんな形でも誰かと係わりあって生きていくのが人生。
だったら、せめて良好な関係でありたいと。
昨日母と大ゲンカした私は深く思うのでありました。(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
人生なんて一寸先は闇―飲み過ぎたある夜背中に天使の刺青を背負うヤクザ四方と一夜の過ちを犯してしまったらしい柚木は、それ以来しつこく迫られ肉体関係を強要されるようになってしまう。その上会社からはリストラを宣告され妻には家出されて…。純情ヤクザ×中年リーマンの奇妙な関係の行方は。
「薔薇の名前 下」ウンベルト・エーコ(東京創元社)
一人の僧の死から次々と発生した殺人事件。
闇の中に身を潜め、事の真相を知っていた彼は、何を望み、何を畏れたのだろう?
知識の流布を蛇蝎のように嫌った彼の主張は、
あまりにも独善的で、あまりにも身勝手だ。
殺人が殺人を呼び、僅かな綻びから手繰り寄せられる真実。
そして、決着は文書館で。
ひとたび明るみに出た謎は、その時点で秘匿性を失い、
白日の下にさらされる。
それを、身の内に喰らってまで阻止しようとした彼の、
結局は思惑通りだったのか?
少し先の時代に印刷術が発達することを想えば、答えは否、だ。
謎解きをするウィリアムとアソドの師弟関係がとても微笑ましかった。
さて。
ぶっちゃけトーク!
君たちはいったい何をしにそこへ?と、その瞬間、唖然としてみました。
ひっかきまわすだけひっかきまわして何もかもを灰燼に帰した感が否めない。
いや、その責任が彼らにあるとは言いませんが。
そしてとってもとっても一生懸命だったのもわかるけど。
なのに、どうしてあんなことに……
古代から伝わる数多の本たち。
印刷技術が発達する以前の時代には人の手によって書き写され来たという事実を
改めて思い知り、なんだか圧倒されました
内容(「BOOK」データベースより)
中世、異端、「ヨハネの黙示録」、暗号、アリストテレース、博物誌、記号論、ミステリ…そして何より、読書のあらゆる楽しみが、ここにはある。全世界を熱狂させた、文学史上の事件ともいうべき問題の書。伊・ストレーガ賞、仏・メディシス賞受賞。
「紙つなげ!彼らが本の紙を造っている」佐々涼子(早川書房)
未曽有の災害に直面した時に、
どんな備えをすればいいのか。どう行動すればいいのか。
あの地震を経験して実感したこと、学んだことはたくさんある。
だけど、それらを実践する日は二度と来なければいい。
正直、それが私の本音です。
でも、語り継がなければいけない。
あの時、何が起きたのか。その後、人々がどんな思いをして頑張ってきたのか。
本書は瓦礫の中から奇跡の復興を果たした人たちの物語。
あの日何が起こったのかを記録した物語。
そして、こうして手にする紙がどうやって作られているのかを知ることができる物語。
三重の意味での良書だと思います。
人と人。
同じ方向を向いて力を合わせれば、こんなにも素晴らしいことができる。
そして、何事かをやり遂げようと思った時の明確な目標と期日の提示の重要性を
改めて思い知らされました。
「命があるうちに好きなことをしないと」
本当にその通りだと、しみじみ思います。
全力で生ききりたい。
内容(「BOOK」データベースより)
「8号(出版用紙を製造する巨大マシン)が止まるときは、この国の出版が倒れる時です」―2011年3月11日、宮城県石巻市の日本製紙石巻工場は津波に呑みこまれ、完全に機能停止した。製紙工場には「何があっても絶対に紙を供給し続ける」という出版社との約束がある。しかし状況は、従業員の誰もが「工場は死んだ」と口にするほど絶望的だった。にもかかわらず、工場長は半年での復興を宣言。その日から、従業員たちの闘いが始まった。食料を入手するのも容易ではなく、電気もガスも水道も復旧していない状態での作業は、困難を極めた。東京の本社営業部と石巻工場の間の意見の対立さえ生まれた。だが、従業員はみな、工場のため、石巻のため、そして、出版社と本を待つ読者のために力を尽くした。震災の絶望から、工場の復興までを徹底取材した傑作ノンフィクション。
「薔薇の名前 上」ウンベルト・エーコ(東京創元社)
濁流のように渦巻く膨大な情報量に翻弄されながらも、
気付けば物語世界に迷い込んでいる。
時は中世。
北イタリアの僧院の、薄暗く神秘的な迷路の中を彷徨っている。
神に仕える者たちの棲まうその場所は
決して人には語れぬ秘密を抱えた者達の潜む魔窟でもあった。
印刷技術の発達する少し前の時代。
書物を管理し、知識の流布を恐れた件は、
いつの時代にも起こり得る情報の統制を想起させる。
文書館にはどんな秘密が隠されているのか。
持ち去られた書物には何が記されていたのか。
そして、このタイトルの意味は?
現代では考えられない程、ゆったりと流れる時。
手がかりのカケラ得られない私は、逸る気持ちを抑えながら次巻へ。
メガネ薀蓄
・メガネの発明は12世紀の終わりごろ(作中記述有)
・メガネを日本に初めて伝えたのはフランシスコ・ザビエル(勝手に調べてみた)
調べ物をしていると、遭遇する率が高いザビエル。
「カッパ」を検索して「ザビエル」と出てきたときの衝撃(笑撃?)と言ったら!
確かに、老眼や近視は昔からあるわけで、矯正するもののなかった時代の人たちは
さぞ不便だったろうと。
メガネやコンタクトがないと生活できないわが身に置き換えてしみじみ思いました。
内容(「BOOK」データベースより)
迷宮構造をもつ文書館を備えた、中世北イタリアの僧院で「ヨハネの黙示録」に従った連続殺人事件が。バスカヴィルのウィリアム修道士が事件の陰には一冊の書物の存在があることを探り出したが…。精緻な推理小説の中に碩学エーコがしかけた知のたくらみ。
「望郷」北方謙三(集英社文庫)
「あの焼け野原に帰りたい」
それは叶わぬ夢だけれども。
切に願った。
ふたり、共に生きたあの日々へ、と。
老犬トレー。ゴロワーズ。ロンソン。
きちんとしたスーツ。磨いた靴。そして刑事であり続けること。
日常の中に見え隠れする幸太の存在。
そして、因縁としか言いようのない邂逅。
獣の子は獣。
和也に出会った高樹は生き急いだのか、死に急いだのか。
事件解決の糸口を辿ったその手法は褒められたやり方ではない。
疑問だってある。
だけど、そう在ることしかできなかった。
獣を胸の内に飼いつづけたた高樹の人生には、
どこまでも幸太が寄り添っていた。
高樹の幸せはどこにあったのかな?と。
考えるとなんだかやるせない気持ちになってしまう。
『眠りなき夜』→『老犬シリーズ』ときたので『夜が傷つけた』で一段落に
しようと思っていたのですが。
ここまできたら『挑戦シリーズ』も読まないといけないような気がしてきました(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
「因果な癖だ。臭いものには必ず首を突っ込む」高樹はつぶやく。平凡な事件だった。やくざの抗争、男が殺され、犯人は自首。だが、定年間近な『老いぼれ犬』高樹警視は、そこに不審な影を見る。大胆な捜査と周到な罠。やがて飛び込んで来る獲物を待つ…。老犬シリーズ3部作、堂々の完結。
「フィフティ」水壬楓子(リンクスロマンス)
前半は門真と榎本のお話。
17年続けてきた関係の変化に戸惑う榎本。
あわてて「恋人らしく」過ごす必要はないよね。
今まで通りの部分もあって、だけど、一歩踏み出した部分もあって。
無理なく寄り添っていけばいい。
「逢いたいときに逢える」関係って、そういうことだよね。
ちょっと手がかかる年下の恋人を存分に甘やかす年上の恋人。
私、門真の榎本に対する「この子」呼びがとても好き。
お互いに、手放せない、離れられない二人。お幸せに☆
そして後半はオールキャストでのフィナーレ。
ここまでシリーズを読んできたご褒美的な甘さに思わずにこにこしてしまいます。
最後まで楽しく読み切りました♪
オールキャスト揃ってみて改めて。
私、真城が好きだわ~。清家にはもっともっと男として成長してほしい。
そして、延清のいい方向への人との関わり方の変化が好ましかった。
内容(「BOOK」データベースより)
人材派遣会社「エスコート」のオーナーの榎本。恋人で政治家の門真から、具合の思わしくない、榎本の父親に会って欲しいと連絡が入る。かつて、門真とはひと月に一度、五日の日に会う契約をかわしていたが、恋人となった今、忙しさから連絡を滞らせていたくせに、そんな連絡はよこすのかと榎本は苛立ちを募らせる。そんな中、門真の秘書である守田から、門真のために別れろとせまられ…。オールキャストの特別総集編も同時収録!!
「風葬」北方謙三(集英社文庫)
友との再会。
そして目覚めた獣。
決別した時に分かたれた道は、決して重なることはない。
それでも、彼らは覚えている。
老犬トレーのメロディを。
共に生きたあの日々を。
道は違えども、互いにかけがえのない友だった。
心の内をすべてわかりあえる友だった。
「会ってよかったのかどうか、俺にゃわからねぇ」
再会した時は、既に事は動き出していた。
どう足掻いても、運命は変えられなかっただろう。
だからこそ、彼らは出会えてよかったのだ。
「淋しければいつも一緒にふるえ合える相手を求める」
幸太と別れた後の高樹の孤独を象徴するような言葉。
二人で一緒に生きてこれたなら。
淋しければ一緒にあたため合える相手を求められたのかな?
物語のラストとタイトルのはまり具合がたまりません。
涙の出ない高樹のかわりに、私が号泣でした。
そしてものすごーーく久しぶりに口笛を吹こうとしてスカスカッぷりにがっかり。
大人しくピアノの鍵盤叩くことにします。
内容(「BOOK」データベースより)
刑事となった良文は、抜群の検挙率をあげた。ある夜、連続殺人事件の捜査で、少年時代の親友・幸太に会い、彼が事件に関係していることを知った。いつものように走り、獲物を追う。その結果手に入れた真実の味は?昭和35年、高度成長前夜の東京。27歳の『老いぼれ犬』高樹良文は悲しみで一杯の獣だった。
「傷痕」北方謙三(集英社文庫)
爪を研ぎ、牙を磨く。
武器を手にし、沈黙の中で鋭く周囲を探る。
自らが、生き延びるために。
戦後直後の混乱の中にある東京。
家もなく、親もいない子供たち。
それでも彼らは、生きていかなければならなかった。
子供達の集団の中にあって、子供のままではいられなかった良夫と幸太。
男になりたいと、小さな身体で必死で頑張った和也。
理不尽には抗い、結束し、どんなにうまく立ち回ったかに見えても。
大人の狡さと汚さには抗いきれなかった。
どうしても報いなければならない一矢がある。
そして、決別。
ああ、と。
理不尽さに天を仰ぎたくなるけれども。
幸太の選択はとても正しい。
何故なら、彼らは何よりも強い絆で結びついていたから。
岡本の存在が鮮烈に印象に残っている。
命を捨てたも同然の男が浮かべる狂気を孕んだ微笑。
彼が何を考え、何故そうしたのか。
推し量る術はない。
そして、小さな和也の姿にただただ涙を零し続けました。
内容(「BOOK」データベースより)
孔雀城―無頼の少年たちは、自分たちの寝ぐらをそう呼んだ。戦争直後の東京、焼けくずれた工場の跡地である。隠匿物資を盗み出し、闇市で売りさばくことを覚えた良文とその仲間にとって、最大の敵は浮浪児狩りと暴力団だった。幼い良文は野獣のように生き抜いてゆく。「老いぼれ犬」高樹刑事の壮絶な小年時代。
「眠りなき夜」北方謙三(集英社文庫)
【「つまんない意地を張るのね、男って」
「大事なことさ。男にはな」】
友が死んだ。
それも、理不尽な死を強要された。
闘う理由はそれだけで十分だった。
そして、いつしか袋小路に追い込まれた男の戦いが始まった。
昼行燈かと思った男が身体を張って彼を助けてくれた。
一時の安らぎを与えてくれた女は何も語らずに彼の行動を見守っていた。
静かに隣に立った友軍は、彼が血まみれになることも辞さない、冷徹な男だった。
そうやって一つ一つ積み重ねたことが、敵を追い詰めていく。
一介の弁護士が巨悪に立ち向かっていく様に拳を握る物語。
「つまんない意地を張るのね、男って」
そう言った順子こそが、女にだって張る意地があることを証明している。
好いた女が望むことを。
好いた女が信じることを。
斎藤のスタンスは女としてぐっときました。
さて。
次は老犬シリーズですか。
北方祭への片足だけ参加から本腰への参加へ。
内容(「BOOK」データベースより)
弁護士・谷の同僚、戸部が失踪、つづいて彼と関わりのあった小山民子が殺された。彼女が書き残したメモを手がかりに、谷は山形県S市に飛んだ。事件の深奥を探る中、早速、3人組に襲われる。黒幕とみられる大物政治家・室井などの名が浮かぶが、事件の謎は深まるばかり。そして戸部の惨殺体発見……。民子との間に何があったのか?室井との関連は?友の死を追って、谷は深い闇を解明すべく、熱い怒りを雪の街に爆発させる。第4回吉川英治文学新人賞、第1回日本冒険小説協会大賞受賞作。