きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「GIANT KILLING 37」ツジトモ(モーニングコミックス)
現状に甘んじるな、という、ブランの姿勢は、
厳しいけれども人間が成長するのに相応しい在り方だと思う。
A代表の中という選び抜かれた人間の中に入って、
自分の在り方を改めて突きつけられる椿。
結果を出しているからこそ、許されているんだろうなぁ、という
花森の言動が面白い。
でもその「結果を出す」ことが、どれほど大変な事か。
知っているからこそみんな一目置くのだろう。
自分にはそこで戦える力がある、という自負は、
代表の中で戦っていくためには絶対に必要なもの。
だからこそ、試合に出られなかったことで込み上げる椿の悔しさは、
彼をステップアップさせる糧になる。
次巻、楽しみ。
ストーリーはとても楽しいです。
それとはまったく次元の違う問題で……
そろそろジーノが恋しくなってきました。←大好き。(笑)
そして、一コマだけのモッチーで、テンションあがりました。
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「晴天の迷いクジラ」窪美澄(新潮文庫)
【絶対に死ぬな。生きてるだけでいいんだ】
生きるって、こういうことだよなーと、思いました。
迷わずにまっすぐ道を歩いていける人も、もちろんいるだろうけど。
傷ついて、悩んで、後悔して。
いろんなことを抱えて苦しんで、一人じゃ息ができなくなって。
誰かに支えられて、それで、漸く前に進むことができる人もいる。
自分は「死んじゃおうか」と思っても、
近しい人が練炭を持っていたら、必死で止める。
そう思った瞬間から、「生きる」ことを考えている。
どこか壊れた家族。
他人の方が労わりあえる歪さが、哀しい。
だけど、寄り添える誰かがいてくれるだけで幸せなのだと。
そう思いました。
とりあえず、ガンバレ!と。
闘っていもがいているみんなにエールを送りたくなりました。
そして、自分にも(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
デザイン会社に勤める由人は、失恋と激務でうつを発症した。社長の野乃花は、潰れゆく会社とともに人生を終わらせる決意をした。死を選ぶ前にと、湾に迷い込んだクジラを見に南の半島へ向かった二人は、道中、女子高生の正子を拾う。母との関係で心を壊した彼女もまた、生きることを止めようとしていた―。苛烈な生と、その果ての希望を鮮やかに描き出す長編。山田風太郎賞受賞作。
「蒼穹のローレライ」尾上与一(Holly NOVELS)
【生きて。生きて。生きて。どうか生きてほしい】
多分、彼は、幸せだったのだと思う。
大切に慈しまれ、愛される喜びを知ることができて。
存在の肯定。
自分が自分のまま、ここいいていいのだと。
ありのままの自分を認めてもらえることほど、
彼にとって心強いことはなかったと思う。
「ローレライ」
死を運ぶ魔物の鳴き声。堕とすための咆哮。
けれども、その声が愛を叫ぶ魔物の鳴き声に転じた時、
その叫びは祈りに変わる。
殺す為ではなく、守る為に。どうか、と。
三上に伝わったメッセージ。
それは、三上が教えてくれた生きる喜び。
知ることができて、本当によかった。
命はとても尊いものなのだと、改めて教えてもらいました。
小野が運んでくれた言葉に、既に溢れていた涙が止まらなくなりました。
三上の本当の意味での終戦は、その瞬間だったのかなぁ、と。
特典ペーパーも胸に沁みる話でとてもよかった。
内容(「BOOK」データベースより)
戦後十八年目のある日、三上徹雄を病死した旧友・城戸勝平の息子が訪れた。三上へ一通の封筒を預かったという。中には、戦死した零戦搭乗員・浅群塁に関する内容が記されていた―。太平洋戦争中期。整備員の三上はラバウルに向かう途中、不思議な音を響かせて戦う一機の零戦に助けられる。着任後、命の恩人を捜していた三上は声の出ない碧い目の搭乗員に出会う。彼こそが三上たちを救ったあの零戦乗り、「ローレライ」と呼ばれる浅群塁一飛だった。整備魂に燃える三上は、「敵機を墜として俺も死ぬ」と言う浅群をどうしても許せず…。
「Tonight,The Night」 一穂ミチ(SHY NOVELS)
【好きじゃなくなる方法も、好きなまま我慢する方法もわかんない。
俺にできそうなのは、真知にも好きになってもらえるように
頑張るぐらいだと思った】
透明度と純度の高い、とても綺麗な物語。
飾らず、偽らず。
それでいて、背伸びをしていないまっすぐな子供の、或は、
ごまかしたりいいくるめたりしないしようとしない素直な大人の言葉が
とても綺麗に胸に響きました。
「大人だから」とか「子供だから」とか。
そんな線引きをしないで、自分の気持ちとまっすぐに向き合った二人だったからこそ、
成就し得た恋。
出逢ってから六年。
お互いの年齢と立場を大事にしながら培ってきた二人の日常が、
あたたかくて、微笑ましくて。
終始、あったかい気持ちのまま読み終えました。
キラキラしたものをもらったような気持ちになった物語。
「お洗濯ものは夜に外に干してもいいと思うの」
「何で?」
「だって、迷子のお星さまがくっつくかもしれないでしょ?」
と言った姪っ子ちゃんの言葉を何故か思い出しました。
内容(「BOOK」データベースより)
ある夏の日、熱中症にかかった真知は、偶然とおりかかった佑に助けられた。真知の実家は和菓子屋で、佑は得意先のひとり息子だった。報われない恋をしている大人とまだ恋をしらない子ども、真知・二十一歳、佑・十二歳、それが出会いだった―。以来、佑はなにかと真知に懐き、少年らしい潔さとまっすぐな心を向けてくる。そして佑は真知に想いを告げる。「俺、真知が好き、どうしたらいいの」と。幼い告白に真知の心は揺れ―。
「神々の山嶺 下」夢枕獏(集英社文庫)
【人には権利がある。
何を奪われようが、何を失おうが、最後にただ一つ残された権利だ。
それは、自分の選んだ生き方に、命を賭けてもいいという権利である】
聳え立つ山をひたすら睨みつづけて生きた羽生。
その羽生に魂ごと引き寄せられた深町。
拘り続けた前人未到の単独登頂。
拘ることは生きることと同意。
そんな厳しさをひしひしと感じた。
最も過酷な状況下での8000メートルの氷壁。
深町の叫び。
「それが、ビカール・サンだ」
その言葉で深町は救われ、私は納得できました。
物語はそこでは終わらない。
すべてが収束したかに思えた後での出逢いに震え、
涙が止まらなくなってしまった。
ありったけの心で想え。
その言葉のとおり、想い続けた羽生が示した生き様。
最初から諦めていては何も敵わないと、改めて教えられた気がする。
羽生の生き様がほんとうにたまらない。
気になるのに、怖くて一気に読めませんでした。でもこの本に出会えてよかった。
ここからは余談ですが……
私の数少ない登山経験の一つが槍ヶ岳です。
せっかく上った槍のてっぺんで、もやもやの濃霧に見舞われて何も見えなかった残念な私。
でも、翌日晴れ渡った山頂の景色を見て、この景色を見るために、ここまで来たんだなぁとジワリと思いました。
いつもの地上にいたら絶対に見ることの敵わない、澄んだ空気の中での美しい景色。
貴重な体験でした。
内容(「BOOK」データベースより)
その男、羽生丈二。伝説の単独登攀者にして、死なせたパートナーへの罪障感に苦しむ男。羽生が目指しているのは、前人未到のエヴェレスト南西壁冬期無酸素単独登頂だった。生物の生存を許さぬ8000メートルを越える高所での吐息も凍る登攀が開始される。人はなぜ、山に攀るのか?永遠のテーマに、いま答えが提示される。柴田錬三郎賞に輝いた山岳小説の新たなる古典。
「神々の山嶺 上」夢枕獏(集英社文庫)
【この地上にただひとつしかない場所。地の頂。そこにこだわりたい】
翼をもたない人間は、大空に憧れ、鋼鉄の翼を作った。
空には自力では舞い上がれない。
けれども、聳え立つその山の頂には、自らの足で登り立つことができる。
選ばれし、ごく一握りの人間にのみ立つことを許されたその場所は、
この地上のどこよりも天に近い場所。
マロリーのエヴェレスト初登頂の是非の謎。
山に魂ごと取り込まれたかのような羽生の人生。
そして、マロリーの謎と羽生に惹かれる深町。
あたかも、高度数千メートルの山に立っているかのような臨場感あふれる描写に
ひたすらのめり込む様に頁を捲り続けて上巻終了。
先の展開がまったくわからないので、本当にドキドキしています。
長谷と羽生。
日常では接点のない二人が「山」を介してこれほど密につながっているというのが
なんだか不思議。
そして、二人の在り方がとてもいたたまれない。
内容(「BOOK」データベースより)
カトマンドゥの裏街でカメラマン・深町は古いコダックを手に入れる。そのカメラはジョージ・マロリーがエヴェレスト初登頂に成功したかどうか、という登攀史上最大の謎を解く可能性を秘めていた。カメラの過去を追って、深町はその男と邂逅する。羽生丈二。伝説の孤高の単独登攀者。羽生がカトマンドゥで目指すものは?柴田錬三郎賞に輝いた山岳小説の新たなる古典。
「ヴェネツィアに死す」トーマス・マン(光文社古典新訳文庫)
【なるほど、私を待っていたのは海と浜辺ではなかったのだ。
おまえがいる限り、私はここにとどまろう!】
水の都、ヴェネツィア。
その街の美しさと醜悪さを描く描写。
比類ない美しさを備えた少年の描写。
そして、孤高の老作家の内面の描写。
情景がとてつもなく鮮明に脳裏に浮かび、
心理がひしひしと押し迫る描写にくらくらとするような眩暈を覚えながら読了。
身も蓋もなく言ってしまえば、老作家はストーカー。
少年にしてみれば、見知らぬ老人につけ回される気味の悪い話である。
が、少年と老作家の視線が交わった瞬間の描写はあまりにも美しく、
鳥肌が立つかと思いました。
一度は逃げ出そうとした街に再び戻らざるを得なかった老作家。
多分、その瞬間から彼の運命は決まっていたのだろう。
彼を奈落の底へと呑みこんだのは少年の存在か、或は、芸術という概念そのものなのか。
私には計り知れない。
内容(「BOOK」データベースより)
高名な老作家グスタフ・アッシェンバッハは、ミュンヘンからヴェネツィアへと旅立つ。美しくも豪壮なリド島のホテルに滞在するうち、ポーランド人の家族に出会ったアッシェンバッハは、一家の美しい少年タッジオにつよく惹かれていく。おりしも当地にはコレラの嵐が吹き荒れて…。
「怒りの葡萄 下」スタインベック(新潮文庫)
【あたしたちのすることは、どんなことでも
生きていくことを目指しているんだと思うだよ】
旅の途中で物語は幕を閉じる。
とてつもない虚脱感を抱えたまま、彼らの明日に想いを馳せる。
散り散りになった家族。
満たされることのない空腹。
拭い取ることのできない疲労感。
それでも、明日に命を繋ぐために彼らは進みつづける。
これは、搾取され続ける現実に翻弄されながらも、
明日を生きることを諦めなかった人々の物語。
泣き言ばかり言っていた娘の示した慈愛と、
最後まで揺らぐことのなかったジョード家の母親の強さがとても印象的でした。
優しくはない大地に立つ彼らの明日への力の源は怒り。
ならば私は、その怒りが凪ぐ日が訪れることを、願いたい。
淡々としていながらも、力強い情景描写に圧倒されました。
そして『あたしたちのすることは、どんなことでも
生きていくことを目指しているんだと思うだよ』
この母の言葉にひたすら頷くしかありませんでした。
「ラブレス」桜木紫乃(新潮文庫)
【どこへ向かうも風のなすまま。
からりと明るく次の場所へ向かい、
あっさりと昨日を捨てる。捨てた昨日を惜しんだりしない】
人には自分ひとりだけの人生の物語がある。
何を幸せと感じ、何を不幸せと感じるのか。
それは、その人生を生ききった当人にしかわからない。
これは、三世代にわたる女たちの人生を描いた物語。
詰りあっても、嫌悪しても、時に血の繋がりが枷となっても。
「家族」という絆を断ち切ることのなかった彼女たちの物語。
喜びも裏切りも、じっと耐えてきた苦しみも大きな虚無も。
すべてを抱きしめて慈しむ、大きな愛。
そんな愛を静かに胸の内に抱いていた百合江の最期に向けた
彼の囁きに、読後しばらく涙が止まらなかった。
「生ききった」のだと思う。
彼女は彼女の人生を。
同じく「生ききった」のであろう、ハギの孤独が胸に刺ささった。
教えられた文字で書きつづった言葉がとても哀しい。
理恵と過ごせた時間が、彼女の光になってくれているといい。
内容(「BOOK」データベースより)
謎の位牌を握りしめて、百合江は死の床についていた―。彼女の生涯はまさに波乱万丈だった。道東の開拓村で極貧の家に育ち、中学卒業と同時に奉公に出されるが、やがては旅芸人一座に飛び込んだ。一方、妹の里実は地元に残り、理容師の道を歩み始める…。流転する百合江と堅実な妹の60年に及ぶ絆を軸にして、姉妹の母や娘たちを含む女三世代の凄絶な人生を描いた圧倒的長編小説。
「檻」北方謙三(集英社文庫)
【昔、一緒に生きた。
同じものに賭け、同じ夢を見て生きた。】
気づかなければ良かったのに。
自分が檻の中にいることに。
だけど彼は、気づいてしまった。
自分の牙はまだ抜けていないことを。
そして再び出会ってしまった。
同じ夢を見て生きた、かつての戦友と。
友の抱えた厄介事を、見て見ぬふりはできなかった。
眠った獣は既に目覚めている。
望んで修羅に飛び込みたがっている自分を、彼は知っている。
思い出されるのは、自分を導いてくれた男の背中。
滝野と高安の人生に絶大な影響を残した桜井生き様がぐっとくる。
そして彼は走る。
狭い檻から解き放たれるために。
あまりにも愚直。だからこそ、哀しくて愛おしい。
高樹と対峙した幸江が、寂しかったけど、静かに強くて、
とても印象的でした。
初読の時は覚えなかった感情。