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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「ペンギンの憂鬱」アンドレイ・クルコフ(新潮社)




自らの生活が誰かの監視下に置かれている薄気味の悪さ。
仕事をしていたはずが、「殺人」という犯罪に荷担していた事実。
そして誰かの意のままに命が扱われる理不尽。
日記のように綴られる日常生活の中に、
他者の思惑が知らず浸食している恐怖。
だが、語られるペンギンと少女の存在が、日常を日常たらしめ、
禍々しい雰囲気を感じさせない。
だからこそ、ラストの驚愕度合いは半端なかった。
これぞ、不条理。
うっそー、と、心の中で叫びつつ、彼らのその後を思うが、
同じような日常の延長しか思い描けない。
願わくば、彼らに穏やかな未来を。

ペンギンのミーシャがとても物悲しく可愛らしい。
ミーシャの憂鬱はヴィクトルの憂鬱。
やりきれないけど、おもしろかった!

内容(「BOOK」データベースより)

恋人に去られた孤独なヴィクトルは、憂鬱症のペンギンと暮らす売れない小説家。生活のために新聞の死亡記事を書く仕事を始めたが、そのうちまだ生きている大物政治家や財界人や軍人たちの「追悼記事」をあらかじめ書いておく仕事を頼まれ、やがてその大物たちが次々に死んでいく。舞台はソ連崩壊後の新生国家ウクライナの首都キエフ。ヴィクトルの身辺にも不穏な影がちらつく。そしてペンギンの運命は…。欧米各国で翻訳され絶大な賞賛と人気を得た、不条理で物語にみちた長編小説。

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「その女アレックス」文春文庫(ピエール・ルメートル)



監禁された女の物語は、殺人を犯す女の物語へと変容し、
孤独で虐げられた女の物哀しい人生の物語に帰結する。
と同時に、これは綿密に練り上げられた復讐の物語でもある。
檻の中に裸で閉じ込められ、命の火が消えかけながらも、
生きることに執着した彼女の理由がとても哀しい。
そして女として、とても悔しい。
砂漠に埋もれた砂を探すような警察官たちの地道な捜査には、
ひたすら拳を握り続けたわけですが、
最後の最後であ~!と声を上げてしまった理由。
彼らには復習に加担するのではなく、司法できっちりと決着をつけてほしかった。
そうあるべき立場の人たちなのだから。

とはいえ、最後までドキドキハラハラしながら一気に読ませる構成はお見事でした。


内容(「BOOK」データベースより)

おまえが死ぬのを見たい―男はそう言ってアレックスを監禁した。檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが…しかし、ここまでは序章にすぎない。孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進するのだ。イギリス推理作家協会賞受賞作。

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「ジェファーソンの密約 下」ジェームズ・ロリンズ(竹書房文庫)



【いずれ答えは出るだろう】

限られた時間の中で繰り広げられる戦い。
事の始まりはアメリカの建国の時まで遡る。
解かなければいけない謎。
止めなければいけない爆発。
守らなければいけない人たち。
めまぐるしく展開していく事象から目が離せなくなり、
ひたすら文字を追い続ける。
膨大な知識の数々が破綻することなく綴られる筆力は相変わらずお見事。
彼らの尽力があって、地球規模の危機を何とか脱するのだけれども。
失ったものはあまりにも大きかった。
カイとジョーダンの若いカップルに救われた感じかな。
絶望の底あるグレイが這い上がってくる、その時の姿を想いながら捲った最後のページ。
ラスト一行で受けた衝撃は半端なかった。
続きが楽しみ。

個人的に今回のベスト・オブ・シーンはムササビのように四肢を広げて宙を飛ぶ犬、カウッチ。
笑う場面じゃないんだけど、想像したらあまりの可愛さに笑ってしまった。


内容(「BOOK」データベースより)

先住民の歴史から調査を続けるペインターたちと、アメリカ建国の歴史から調査を続けるグレイたち。彼らが探すのは、あらゆるものを粉末へと分解してしまう「大いなる秘薬」―古代のナノテクノロジー技術から生まれた物質が大量に貯蔵されている場所。アイスランドでの爆発により、新たにニュートリノが放出され、次の爆発へのカウントダウンが始まる。金でできた地図からグレイは物質の貯蔵場所を突き止める。そこは考えられる限りで最悪の場所だった。アイスランドの百倍以上の規模と予想される爆発によってその地の火山が噴火すれば、全世界に壊滅的な被害が及ぶ。ペインターとグレイは、人類滅亡へのカウントダウンを止めることができるのか?そして、ギルドに関して驚愕の事実が明らかになる。

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「ザ・ロード」コーマック・マッカーシー(ハヤカワepi文庫)



【絶対に忘れないからね。なにがあっても】

滅びゆく世界の極限状態の中で、飢えをしのぎ、寒さと戦い、
南へ、ただひたすらに南へと向かう父と息子。
そこに楽園があるとはとても思えない終末世界。
だが、希望を失うことは、生きることを諦めること。
だから二人は歩き続ける。
そのぬくもりを分かち合い、少ない食料を等分し、互いを自らの生きる寄る辺として。
人が人であることをやめてしまったような荒れ果てた世界で
他人を思いやる純真さを失わない少年。
そして父もまた、あたたかな大地のような愛を失ってはいない。
ふたりの在り方があまりにも私の知る人間らしくて。
淡々と描かれる二人の姿に、父の愛と息子のやさしさに、胸が締め付けられた。


内容(「BOOK」データベースより)

空には暗雲がたれこめ、気温は下がりつづける。目前には、植物も死に絶え、降り積もる灰に覆われて廃墟と化した世界。そのなかを父と子は、南への道をたどる。掠奪や殺人をためらわない人間たちの手から逃れ、わずかに残った食物を探し、お互いのみを生きるよすがとして―。世界は本当に終わってしまったのか?現代文学の巨匠が、荒れ果てた大陸を漂流する父子の旅路を描きあげた渾身の長篇。ピュリッツァー賞受賞作。

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「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」フィリップ・K・ディック(ハヤカワ文庫F)




アンドロイドを狩ることを生業とする賞金稼ぎ、リック。
8人のアンドロイドを狩る仕事にとりかかった彼が次第に陥っていく孤独と迷いが痛々しい。
アンドロイドを「個人」として知れば知るほど、彼らに寄り添ってしまう苦悩。
相手を「物体」と認識するか「個体」と認識するか。
迷いなく銃を撃てるか撃てないのかの違いはそこにあるのだろうか?
そしてそれは、彼が人間であるが故の迷いと揺らぎだ。
人と外見上では見分けのつかないアンドロイドを製造しながら、
彼らを見分けるためのシステムを作り出す矛盾。
それもまた、ひどく人間らしい矛盾だと思う。
論理的に説明のつかない「感情」は、人間らしさの最たるものだと思う。
喜怒哀楽。数多ある感情に、個人的には大いに振り回されていたい。


商品説明

長く続いた戦争のため、放射能灰に汚染され廃墟と化した地球。生き残ったものの中には異星に安住の地を求めるものも多い。そのため異星での植民計画が重要視されるが、過酷で危険を伴う労働は、もっぱらアンドロイドを用いて行われている。また、多くの生物が絶滅し稀少なため、生物を所有することが一種のステータスとなっている。そんななか、火星で植民奴隷として使われていた8人のアンドロイドが逃亡し、地球に逃げ込むという事件が発生。人工の電気羊しか飼えず、本物の動物を手に入れたいと願っているリックは、多額の懸賞金のため「アンドロイド狩り」の仕事を引き受けるのだが…。

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「フランキー・マシーンの冬 下」角川文庫 ドン・ウィンズロウ



【おれの愛する人生は、もうこの手には戻らない】

たぶん、わかっている。
平穏な時間はもう戻らない。
たとえ生き延びたとしても、フランクの愛した人生はもう、戻ってはこない。
過去が、彼を忘れてはくれなかった。
過去に怯える人たちが、彼をそっとしておいてはくれなかった。
フランクには誰を陥れるつもりもなかったのに。
誰が何故自分を殺そうとしているのか?
過去を思い起こしながら、襲い来る猛威を跳ね除け、今を闘うフランキーの哀しい呟き。
「すべてのものをひとつづつ奪われていく人生」
だが、紳士の時間を共にした友は、最後まで友だった。
一度使った銃は破壊して捨てる。
殺し屋になるつもりはないけど(当たり前)お勉強になりました(笑)


内容(「BOOK」データベースより)

何者かの罠にはまり姿をくらました伝説の凄腕“フランキー・マシーン”を、マフィアの刺客がつけ狙う。20年来の友人、連邦捜査官のデイヴ・ハンセンも重要証人の殺害容疑でフランクの逮捕状を取った。じりじりと包囲網が狭まる中で、フラッシュバックする記憶をふるいにかけるフランク。誰がなぜ、彼を消そうとしているのか。だが容疑者のリストはあまりに長く、残された僅かな時間は尽き果てようとしていた―。黄昏の元殺し屋に仕掛けられた罠。鬼才、円熟のクライム・ノヴェル。

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「フランキー・マシーンの冬 上」ドン・ウィンズロウ(角川文庫)



【サーフボードで海に出て、ただパドリングをしていたいと思った。
 ひょっとすると、大波に揉まれて、罪が洗い流されるかもしれない】

日々の仕事を真面目にこなし、サーフィンを楽しみ、魅力的な恋人と愛を語らい、
別れた妻や娘に対する配慮も忘れない。
地元のみんなに愛され、頼られる存在であるフランク。
けれども。
そんな彼の平穏な一日が、ある日突然瓦解する。
差し向けられる殺し屋。狙われる命。
それは、凄腕の殺し屋だった彼の過去に起因するものなのか、
現在進行する、何者かの陰謀によるものなのか。
遺体がメキシコではなくアメリカに流れ着いたとき、思わず声を漏らしてしまった。
過去と現在を行き来する物語。
黒幕は誰なのか?誰が敵で味方なのか?
全く読めない展開に、ワクワクしながら下巻へ。


内容(「BOOK」データベースより)

フランク・マシアーノはマフィアの世界から足を洗ったつもりだった。地元サンディエゴで釣り餌店をはじめ複数のビジネスを営むかたわら、元妻と娘、恋人の間を忙しく立ち回り、“紳士の時間”にはサーフィンを楽しむ62歳の元殺し屋。だが“餌店のフランク”としての彼の平和な日々は、冬のある一日に突然終わりを告げる。過去の何者かが、かつて“フランキー・マシーン”と呼ばれた凄腕の存在を消し去ろうとしていた―。

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「一九八四年」ジョージ・オーウェル(ハヤカワepi文庫)



破壊される言語。書き換えられる歴史。
一体何が真実で、何が虚構なのか。
同じことがいま自分たちの身の周りで行われていても、
果たして気づくことができるのだろうか?
答えは多分、否、だ。
「戦争は平和なり」「自由は従属なり」「無知は力なり」
どういうこと?と思ったスローガンを唸るように納得させてしまう論説に圧倒された。
これが1948年に書かれた文書であるということには、ただ感嘆するしかない。
ウィンストンを追い詰めていくオブラエンのやり方には背筋に薄ら寒いものが走るけれども、
それが効果的な手法であることは認めざるを得ない。
自由意思で謳歌することにのできない人生に何の意味があるのか?
と、問いかけたいところだけれども。
ウィンストンと同じ境遇に置かれたとき、
果たして自分はその問題提起を掲げることができるのだろうか?
即答できなかったことに、愕然とした。

内容(「BOOK」データベースより)

“ビッグ・ブラザー”率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。彼は、完璧な屈従を強いる体制に以前より不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと恋に落ちたことを契機に、彼は伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが…。二十世紀世界文学の最高傑作が新訳版で登場。

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「日の名残り」カズオ・イシグロ (ハヤカワepi文庫)



【私どもは、みな、いま手にしているものに満足し、感謝せねばなるまい】

とても美しい言葉で紡がれた物語でした。
静かに語られる、一人の執事の、そして、執事の目から見たイギリスの物語。
「日の名残り」は「人世の夕暮れ」
仕事一筋で生きてきたスティーブンスが与えられた一週間ほどの休暇。
仕事を離れ、イギリスの美しい田園風景を車で旅しながら、
自らの過去に思いを馳せ、係わってきた人々との在り方を顧みなながら、祖国の歴史を忍ぶ。
そして手のひらをすり抜けてしまった恋。
旅の終わりに夕日を眺めながら、過ぎた時を思って涙をこぼす彼の姿はとても切ない。
だが、その時出会った男の言葉が、彼のこれからの人生に光を灯す。
「それでも、前を向きつづけなくちゃいかん。人生、楽しまなくっちゃ」
いつまでも心に留めておきたい言葉でした。

内容(「BOOK」データベースより)

品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、短い旅に出た。美しい田園風景の道すがら様々な思い出がよぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々―過ぎ去りし思い出は、輝きを増して胸のなかで生き続ける。失われつつある伝統的な英国を描いて世界中で大きな感動を呼んだ英国最高の文学賞、ブッカー賞受賞作。

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「七王国の玉座〔改訂新版〕下」ジョージ・R・R・マーティン(ハヤカワ文庫)



【どうしてみんな、これほどまで盲目でいられたのだろう?】

なんとも読み応えのある物語。
国と国。人と人。
絡み合う煩雑な事情の中で、非常にわかりやすいのが私情と愛情。そして私利私欲。
敵地にも等しい陰謀の渦巻く宮中において、
正しくあろう、慈悲深くあろうとしたエダートが謀られて命を落とす様がやりきれない。
父の死を知って黒の城を抜け出したジョンを、命がけで連れ戻しに来た仲間たち。
ジョンの葛藤を汲んだうえで彼を傍に置こうとした熊の御大。
彼の居場所が居心地の良いものであるかどうかはわからないけれども、
彼が孤独でないことになんだかほっとした。
スターク家の子どもたちのこれからの運命がとても気になる。
ラニスター家でもまた、血の繋がった家族の間でそれぞれの思惑を抱えた不穏な気配がぬぐえない。
そしてターガリエン家の遺児、デナーリス。
ドロゴの元で安寧を得たかと思った彼女に襲い掛かる悲劇。
まだ序章に過ぎない物語。
これからの展開が気になります。

内容(「BOOK」データベースより)

前任の“王の手”は暗殺されたのでは?疑惑を胸に王都におもむいたエダード・スタークは、密かに調査を進めるうちに驚くべき秘密をつきとめる。だが同時に、彼のまわりには覇権を賭けた諸候の怖るべき罠が、幾重にも張りめぐらされていたのだ。一方、南方の草原では、ターガリエン家の遺児が騎馬民族と結託し、“鉄の玉座”奪還を狙う。さらに王国の北を守る“壁”の向こうでは、人知を超えた邪悪な力が蠢きだしていた。ローカス賞受賞。

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