きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
カテゴリー「海外小説」の記事一覧
- 2015.10.16 「幼年期の終わり」アーサー・C・クラーク(ハヤカワ文庫)
- 2015.10.08 「華氏451度」レイ・ブラッドベリ(ハヤカワ文庫)
- 2015.10.01 「蠅の王」ウィリアム・ゴールディング(新潮文庫)
- 2015.09.26 「そして誰もいなくなった」アガサ・クリスティ(ハヤカワ文庫)
- 2015.09.18 「闇の奥」ジョゼフ・コンラッド(光文社古典新訳文庫)
- 2015.09.12 「恐るべき子供たち」ジャン・コクトー(光文社古典新訳文庫)
- 2015.08.15 「時の娘」ジョセフィン・ティ(ハヤカワ・ミステリ文庫)
- 2015.08.09 「星の王子さま」サン・デグジュベ(岩波書店)
- 2015.07.25 「ガラスの街」ポール・オースター(新潮文庫)
- 2015.07.14 「死のドレスを花婿に」ピエール・ルメートル(文春文庫)
「幼年期の終わり」アーサー・C・クラーク(ハヤカワ文庫)
【われわれはこの先、どこにいくのだろうか?】
人類が宇宙に飛び立とうとする、まさにその瞬間。
遥か彼方から地球に訪れた、生命体との出逢い。
この出逢いがもたらすものは一体何なのか。
「人類はもはや、孤独ではないのだ」
わくわくするようなプロローグ。
しかし、別の惑星に住む高度な知的生命体との出逢いは、
私の知る「人類」の終幕へのカウントダウンだった。
産み育てた子供が手の届かない存在となってしまう悲哀と喪失。
未来があると信じられるからこそ生じる活力。
「幼年期」を終えた地球の在り方を見届けられるものは誰もいない。
「その記憶とは、過去の記憶ではなく未来の記憶」即ち予兆。
誰もが知る「悪魔」という概念に対する時間軸の逆転の発想には、ただ唸るしかなかった。
沼沢氏の翻訳した創元版と併読。
言葉の言い回しの細かいニュアンスはこんなに違うんだなーと、
なかなか面白い読書体験でした。
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「華氏451度」レイ・ブラッドベリ(ハヤカワ文庫)
【ぼくたちが幸福でいられるために必要なものは、
ひとつとして欠いていません。
それでいて、ちっとも幸せになれずいにいます】
思索することを禁じ、情報の画一化された世界の中で、
知的財産、即ち書物を焼き払うことを生業とする男たちがいる。
知的好奇心を抹消され、己の意思を奪われ、無為に過ごす時間に疑問を持つことは、
果たして、幸か、不幸か。
身を置く世界に異を唱えれば、己の身に危険が及ぶ。
だが、一度溢れ出した疑問は、烏合することをよしとしない。
流れに身を任せて生きることは簡単で安全だけれども。
現実に抗った結果、モンターグが失ったものと得たものをどう捉えるのか。
「一番大切なことは単に生きるのではなく、善く生きることです」
ソクラテスの言葉が脳裏に浮かんだ。
愛してやまない書物を焼き払う炎の描写の美しさに息を呑みました。
書かれたのが1953年。
今なお色褪せないおもしろさ。
内容(「BOOK」データベースより)
華氏451度―この温度で書物の紙は引火し、そして燃える。451と刻印されたヘルメットをかぶり、昇火器の炎で隠匿されていた書物を焼き尽くす男たち。モンターグも自らの仕事に誇りを持つ、そうした昇火士のひとりだった。だがある晩、風変わりな少女とであってから、彼の人生は劇的に変わってゆく…。本が忌むべき禁制品となった未来を舞台に、SF界きっての抒情詩人が現代文明を鋭く風刺した不朽の名作、新訳で登場!
「蠅の王」ウィリアム・ゴールディング(新潮文庫)
孤島に不時着した少年たち。
直面したのは、大人のいない世界で生き抜かなければいけない現実。
最初はその自由が楽しかった。
彼ら自身の力で秩序ある生活を保ちながら救助を待つはずが、どこかで歯車が狂い始める。
それは、豚を殺し、血の匂いを知ってしまったがための歪みなのか?
少しずつ何かが軋み始めた集団の中で拮抗する二つの力が反目し合った時、悲劇が起きる。
理性をかなぐり捨て、熱に浮かされたように殺戮へと走り出す。
人から獣へ、完全なる変貌を遂げようとした瞬間の、文明との邂逅。
安堵よりいたたまれなさを感じたのは、何故だろう?
救助された彼らの未来に光を感じることはできなかった。
「たぶん、獣というのは僕たちのことにすぎないのかもしれない」
とても象徴的なサイモンの言葉。
高校生の頃。理性をなくし、本能のままに殺戮に走り出した少年たちの姿に
感じた衝撃がずっと残っていて、またあの嫌な気持ちを引きずるのかなぁ、と、
警戒しながら読み始めたけど、意外とあっさり読了。
それは、内容を知っていたから、というよりも、今に至るまでの私の経験値が
人間ってそういうとこもあるよね、と、思えるようになってしまったから。
何とも複雑な気持ちになりました。
内容(「BOOK」データベースより)
未来における大戦のさなか、イギリスから疎開する少年たちの乗っていた飛行機が攻撃をうけ、南太平洋の孤島に不時着した。大人のいない世界で、彼らは隊長を選び、平和な秩序だった生活を送るが、しだいに、心に巣食う獣性にめざめ、激しい内部対立から殺伐で陰惨な闘争へと駆りたてられてゆく…。少年漂流物語の形式をとりながら、人間のあり方を鋭く追究した問題作。
「そして誰もいなくなった」アガサ・クリスティ(ハヤカワ文庫)
孤島に招かれた面識のない十人。
美味しい晩餐の後の満たされた時間。
そこに響き渡るのは、彼らを断罪する声。
それが合図。
独りずつ命を絶たれていく恐怖の時間の幕開け。
自分だけは大丈夫。
そんな過信は許さない。
迫りくる恐怖に互いに疑心暗鬼になり、或は、精神を喪失していく描写はお見事でした。
終始気になっていたのは「何故」。
犯人は何故そんなことを?
独善的な理由に、それは貴方の役目ではない、と、言いたくなりました。
クローズドサークル内での、童謡の歌詞通りに遂行される殺人。
最後の一人の追い詰められ方にはゾクリ、としました。
赤川氏の解説は共感できることがたくさん書かれていましたが、
「過不足のない、必要にして十分な描写」
この一言に尽きると思います。
簡潔ながら明確に描写された十人の過去と心理。
だからこそ、よりこの物語世界にのめり込めました。
内容(「BOOK」データベースより)
その孤島に招き寄せられたのは、たがいに面識もない、職業や年齢もさまざまな十人の男女だった。だが、招待主の姿は島にはなく、やがて夕食の席上、彼らの過去の犯罪を暴き立てる謎の声が響く…そして無気味な童謡の歌詞通りに、彼らが一人ずつ殺されてゆく!強烈なサスペンスに彩られた最高傑作。新訳決定版。
「闇の奥」ジョゼフ・コンラッド(光文社古典新訳文庫)
【誰にも束縛冴えずに歩いていく人間が、孤独を潜り抜け、
静寂を通り抜けて、原始の世界のどんな異様な場所へたどり着いてしまうことがあるか、
君らにわかるはずがない】
熱帯の密林。大陸の河。異文化の人々。未知の大地。
語り手であるマーロウと共にアフリカの河を遡ることは、
文字通り「闇の奥」へと分け入っていく行為。
まとわりつく熱気を感じ、息苦しい空気を感じ、
息を呑み、眩暈を覚えながら、頁を捲る手が止まらない。
クルツに相見える瞬間を心待ちにしながら。
彼の抱えた闇も狂気を宿した行為も、具体的には何も語られてはいない。
だが、抽象的であり、時に象徴的でもマーロウの言葉が、
彼の狂行を浮かび上がらせる。
彼の「雄弁」さを、納得してしまう。
ジワジワと闇の奥に引き込まれるような読後感。
圧巻でした。
片方の国にとっては「開拓」であっても、片方の国にとっては「侵略」。
ちょっとイロイロ考えさせられました。
読みながらゴールディングの「蠅の王」が頭を過ったので、こちらもそのうち再読したいです。
内容(「BOOK」データベースより)
船乗りマーロウはかつて、象牙交易で絶大な権力を握る人物クルツを救出するため、アフリカの奥地へ河を遡る旅に出た。募るクルツへの興味、森に潜む黒人たちとの遭遇、底知れぬ力を秘め沈黙する密林。ついに対面したクルツの最期の言葉と、そこでマーロウが発見した真実とは。
「恐るべき子供たち」ジャン・コクトー(光文社古典新訳文庫)
粗悪で稚拙な、けれども繊細でただ美しいだけのガラスの城。
それが、彼らの生きる世界。
外界から隔離されたその世界の中でのエリザベートとポールの姉弟は、
いつままでも子供のままで在ることを許される存在で、
だからこそ、子供特有の残酷さと純粋さで他者をふりまわす。
あまりにも無邪気に、あまりにも狡猾に。
それを許容するジェラールと、甘受するアガート。
危ういバランスで成り立っていた4人の交友。
けれども、振りかざされたエリザベートの自己愛は、
その部屋での4人の「遊戯」を終幕へと導くものだった。
来るべくして訪れたカタストロフィー。
彼らは最後まで「子供」だった。
高校生だった頃の私の感想。
「モノクロのサイレント映画を見ているようだった」
うまいこと言ったなーと、20数年後に感心する私(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
14歳のポールは、憧れの生徒ダルジュロスの投げた雪玉で負傷し、友人のジェラールに部屋まで送られる。そこはポールと姉エリザベートの「ふたりだけの部屋」だった。そしてダルジュロスにそっくりの少女、アガートの登場。愛するがゆえに傷つけ合う4人の交友が始まった。
「時の娘」ジョセフィン・ティ(ハヤカワ・ミステリ文庫)
真実はひとつ。
それを知り得る当事者たちが既に時の彼方に旅立ってしまっている場合、
今を生きる者たちは、書物を紐解き、思考を巡らせることで、その真実を考察する。
そのことにどれだけ膨大な労力と時間を費やしても、
そこでたどり着いた答えはどこまでも推測でしかなく、
本当の真実は当事者しか知りえない。
歴史的事実は明確であっても、そこに付随する真実は
黙して語らない死者のみが知るところ。
歴史は浪漫だなぁ、と思う所以です。
それぞれが蓄えた知識を持ち寄りながら、何故?どうして?を
調べて考察していく過程が、とても面白かった。
英国史上最も悪名高い王、リチャード三世——彼は本当に残虐非道を尽した悪人だったのか? 退屈な入院生活を送るグラント警部はつれづれなるままに歴史書をひもとき、純粋に文献のみからリチャード王の素顔を推理する。安楽椅子探偵ならぬベッド探偵登場。探偵小説史上に燦然と輝く歴史ミステリ不朽の名作。
「星の王子さま」サン・デグジュベ(岩波書店)
【砂漠が美しいのは、どこかに井戸をかくしているからだよ】
人と人。
対話は二人いないと成り立たない。
喜びも寂しさも哀しみもそして笑顔も。
相手があってこそ派生する感情で、孤独の中には生まれない。
相手を知ったからこそ、彼(or彼女)が特別な一人になり、
その動向が気になってしまうし、心が揺り動かされる。
だからこそ、静かに涙がこみ上げるラストでした。
「砂漠が美しいのは、どこかに井戸をかくしているからだよ」
手の届かない不確定なものを望むから、苦しいのかな?という思いと、
そんな希望があるから生きていけるのかな?という思いと。
最初から最後まで深い言葉が綴られる中、この一文がとても印象的な言葉でした。
初読は18歳の時。
読書ノートから引っ張り出した当時の感想を抜粋すると……「私はヘビにはなれてもキツネや王子さまにはなれない」
人生模索中だったようです(笑)
そしてチェックした言葉は昔も今も変わりませんでした。
商品説明
著者の生誕100年を記念し作られた復刻版。挿絵は著者自身が描いた米オリジナル版そのままの絵が載せられている。これまで親しんできた挿絵と比べると輪郭がはっきりしていて鮮明、そのほかにも「ささいな違い」を見つけながら読み進めていく楽しみもある。
本書は、ストーリーの展開を楽しむ意味においては子ども向けだが、むしろ大人向けのメッセージに満ちていて、本来人間には「心の目」が備わっているということを呼び起こされる。その、真実を見ることのできる「心の目」をもって、大切にしていかなければならないモノを感じ取り、それを生かしていくことで人は豊かになれるはずなのだが、さまざまなことに心を奪われ見えなくなっていき、やがて見ようともしなくなる(王子が訪れた星に住む大人たちは点灯夫以外その象徴のようでもある)。
キツネの言葉「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目には見えないんだよ」は著者からの、大人、そしてこれから大人になる子どもたちへの警鐘なのかもしれない。(加久田秀子)
「ガラスの街」ポール・オースター(新潮文庫)
意識は定まることなく常にどこかを浮遊し、
物事を俯瞰しているのか、とても狭い一点を凝視いているのかわからなくなる。
物語が進行するにつれ、虚と実の曖昧さに眩暈がする。
街そのものに存在が溶け込んでいくような不安定さ。
けれども、そこに混乱はなく、淡々と語られる物語を追い続ける。
探偵は探偵として機能せず、いつしか透明な存在へと成り変わっていく。
そして冒頭の「どこにもいないこと」という言葉が腑に落ちる。
存在の不確かさに想いを馳せ、自らがここに在ることを確認するかのように息を吐く。
立ち返った現実で噛みしめるのは、とても不思議な読後感。
【ガーディアン必読1000冊】
理解はしきれていないんだろうなぁ、と思います。
でもそれでいいんじゃない?と思える物語。
カテゴライズは多分、必要ないんだろうな。
しばらく積んでた「ムーン・パレス」と同じ著者だということに、読後に気付きました(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
「そもそものはじまりは間違い電話だった」。深夜の電話をきっかけに主人公は私立探偵になり、ニューヨークの街の迷路へ入りこんでゆく。探偵小説を思わせる構成と透明感あふれる音楽的な文章、そして意表をつく鮮やかな物語展開―。この作品で一躍脚光を浴びた現代アメリカ文学の旗手の記念すべき小説第一作。オースター翻訳の第一人者・柴田元幸氏による新訳、待望の文庫化!
「死のドレスを花婿に」ピエール・ルメートル(文春文庫)
他人の生活を踏みにじり、身勝手な理由でぶち壊す妄執と狂気。
知らぬ間に悪意が生活の中にスルリと入り込んでくるその様は、まるで透明な蛇。
見えない蛇がそこらじゅうを這いずり回って全てを伺っているかのような、
得体のしれない気持ち悪さに背筋がゾワリとする。
それでも、ソフィーの強さとしたたかさには拍手喝采。
オーヴェルネ氏の機転のきいた連係プレイも素晴らしかった。
逆恨みとしか言いようのない行為を繰り返した彼の末路は因果応報。
どゆこと?とぐるぐるする1章。うわ、キモチワルイ!と悪意に戦く2章。
そして3章から4章へと展開される逆転劇。
読み始めたら、最後まで一気読みでした。
読み進めていくと、このタイトルにも激しく納得。
次は爽やかな話しが読みたい(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
ソフィーの目の前に転がる男児の無残な死体。ああ、私はついに人を殺してしまった。幸福だった彼女の破滅が始まったのは数年前。記憶にない奇行を繰り返し、彼女はおぞましい汚名を着て、底辺に転落したのだ…。ベストセラー『その女アレックス』の原点。あなたの心を凍らせる衝撃と恐怖の傑作サスペンス。