忍者ブログ

きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「ジャッカルの日」フレデリック・フォーサイス(角川文庫)



「ジャッカル」
それは、カウントゼロになるまで止まらない時限爆弾のようなもの。
個人的にはそんなイメージで読み進めました。
殺し屋vs警察。
入念な下準備。
しらみつぶしの捜査。
どちらも完璧なプロフェッショナルな仕事ぶりにただただ舌を巻く。
歴史は覆らない。
ならば、この物語はどんな決着を迎えるのか。
完璧を期した準備も捜査も、どこかに小さな穴がある。
そして、人智を超えた力にはどう頑張っても抗えない。
どちらにも肩入れしすぎて、たまらない緊張感を抱いたまま、頁を捲り続けた。
静かに進行する物語にも拘らず、ものすごい力で惹きつけられました。圧巻。



この先どうなるのか気になりすぎて、こんなに緊張しながら読んだ本って久しぶり。
初・フォーサイスだったけど、面白かった!
読友さんにもお友達にも『オデッサ・ファイル』を薦められたので
そちらも読んでみようと思います。
そしてやっぱり『ツーリングEXP』読みかえしたい。
私の中で殺し屋と言えば、ディーン・リーガルなのです。
【ガーディアン必読 47/1000冊】

拍手

PR

「少年は残酷な弓を射る 上 」ライオネル・シュライヴァー(イースト・プレス)



刻々と近づく運命の『木曜日』。
母親であるエヴァ視点で語られていることを差し引いても、
父フランクリンのケヴィンに対する接し方には首を傾げざるを得なかった。
ありのままの息子ではなく、理想の息子を見続けたフランクリン。
だったら、ここにいる「自分」は誰?
父の愛情が誰に向けられたものなのか、わからなくなって当然だろう。
エヴァは本当のケヴィンを知っていた。
そして、ケヴィンはエヴァの本質を見抜いていた。
多分、理解しあえた二人に足りなかったものは何だったのだろう?
「愛情」という言葉だけでは片付けられないものがそのこはある。
絶望からの再スタート。
疲れ切った彼らの旅は終わらない。

シーリアと同じ年の姪がいるだけに、彼女の身に降りかかった出来事は本当に辛かった。
後半、泣きながら読んじゃったよね。
タイトルの意味が分かった時には、絶望的な気持になってみました。
重くのしかかるものが半端なくて、だけど読み進める手も「何故?」と問いかけ続ける思考も止まらなくて。
かなりヘヴィ―な読書だったけど、出逢えて良かった一冊がまた増えました。


内容(「BOOK」データベースより)

16歳の誕生日の3日前、“事件”は起こった。異常なまでに母に執着する息子と、息子を愛せない母。二人が迎える衝撃の結末とは―?100万人が戦慄した傑作エモーショナル・サスペンス。2005年英オレンジ賞受賞作。

拍手

「少年は残酷な弓を射る 上 」ライオネル・シュライヴァー(イースト・プレス)



事件は既に起こってしまった。
その事件に至るまでを、母親であるエヴァ視点の語りで終始進行する物語。
たとえば、この時の夫側の見方は?息子であるケヴィンの主張は?
それは彼女の被害妄想なのかもしれないし、
夫の理解不足なのかもしれない。
だが、そのどれもが推測にすぎず、正解はどこにも見当たらない。
息苦しい「家」の中で誰からも理解を得らぬまま過ごした彼女の孤独と不安。
それを払拭するために彼女が選んだ手段。
最悪だ、と思わず呟いたのは私だけだろうか?
ケヴィンを誰よりもわかっていて、そして、誰よりもわかっていなかったエヴァ。
いや、わかっていないのは私なのか?
救いのある展開になるとは微塵も思えないまま、下巻へ。

以下ネタバレ……になるかな?どうだろう?
興味深く読んでいたのです。
ラスト近くまでは。
この三人だけの関係であったなら、ここまで気持ちが落ちなかった。
読むの嫌だなー、下巻。
ものすごーく嫌だなー、下巻。
無垢で生まれてきた赤ちゃんが辛い思いをしませんように。
ただそれだけを切に願うわ。
ああ、でもなんかもう、辛いフラグが立っているようにしか思えない。←私の主観です。
でも読まないと嫌な気分のままだから、読みます、下巻。

内容(「BOOK」データベースより)

キャリアウーマンのエヴァは37歳で息子ケヴィンを授かった。手放しで喜ぶ夫に対し、なぜかわが子に愛情を感じられないエヴァ。その複雑な胸中を見透かすかのように、ケヴィンは執拗な反抗を操り返す。父親には子供らしい無邪気さを振りまく一方、母親にだけ見せる狡猾な微笑、多発する謎の事件…そんな息子に“邪悪”の萌芽を見てとるが、エヴァの必死の警告に誰も耳を貸さない。やがて美しい少年に成長したケヴィンは、16歳を迎える3日前、全米を震撼させる事件を起こす―。100万人が戦慄した傑作エモーショナル・サスペンス。女性作家の最高峰・英オレンジ賞受賞作。

拍手

「おれにはアメリカの歌声が聴こえる」ホイットマン (光文社古典新訳文庫)



溌剌とした自己肯定。
人生を謳歌する著者の叫びは、暑苦しいが故に心地よく響く。
肉体を賛美し、己の幸運を喜び、大らかに人々を抱きしめる。
光溢れる生の中に在った著者はやがて死者と対峙し、
別離の哀しみと敬愛する者との別離を綴るも、彼の歌声は曇らない。
アメリカの歌は、即ち、彼自身の歌。
人生への讃歌。
外の世界に向けられていた意識が自己の内面と対峙するに至る晩年。
力強さが少しも損なわれないまま詠まれた辞世の句。
最後まで力強さに溢れている。
豪胆に生きた知人にお別れをしてきた本日ほど
読了するに相応しい日はないと思えてしまった。

基本的に読書は室内や移動中に限るのですが。
この詩集に関しては、光に満ち溢れた屋外で読むのが相応しい気がする。
眩しいかな?(笑)
「南北戦争」繋がりで『風と共に去りぬ』が観たくなりました。

拍手

「ルバイヤート」オマム・ハイヤーム(岩波文庫)



「有限」であることが怖くて、いつかいなくなる自分がここにいる意味をどうにか見つけたくて。
ぐるぐる惑っていた時期に読んだ詩集。
二十歳くらいかな?
1000年も前の偉大なる詩人も同じようなぐるぐる感を抱えていたんだなーと、
とてもとても共感を覚えることができた詩集。
結局、惑うところはみんな同じ。
「何故生きるの?」そんな問いに正解はない。
大切なのは自分が納得できるように生きられるかどうか。
自分が生きていること自体に意味がある。
当時読んだ色々な本から教えられたこと。
そう思えた瞬間、楽に息ができるようになった気がしました。
だから、私にとってとても大切な詩集。

当時はよくわからなかったけど、今読んでみると、
だんだんと酒に傾倒していくのが、まるで、死に近づいていく現実から
逃避しているかのように受け止められるのがなんだか切ない。
この世の真相?死後の世界?
わかるわけねーよ!
あっちから戻ってきたヤツなんていないんだから。
という、作者に同意(笑)
「酒を飲め こう悲しみの多い人生は
眠るか酔うかしてすごしたがよかろう!」
うん。
お酒はできれば楽しく飲んで幸せに眠りたいです。




拍手

「長いお別れ」レイモンド・チャンドラー(



時に冗長に、時に退屈に進行する物語。
だけど、片時も目を離せない。
気付けば、引きずり込まれるように頁を捲りつづける自分がいる。
特別に飾り立てられることはなく、ただ淡々と綴られる彼らの日常。
交差する想い。
少しずつ肉迫していく真実。
そして、ラストにはあまりにもドラマティックな展開が待っていた。
ちょっと震えました。私。
亡くなった友だちのためにコーヒーを淹れるシーンがとても好き。
あんなふうに誰かを偲びたいし、偲ばれたい。
「さよなら」
作中の人物達が何度も何度の口にする言葉。
また会える「さよなら」
二度と会えない「さよなら」
彼らの交わす最後の「さよなら」がとても切なく響いた。

何がびっくりって、再読にも係わらず、
話の展開を全く覚えていなかった自分にびっくり。
でも、おかげでとても楽しく読めました。
初読が1992年って……いくつだ?(笑)
これ、ある程度人生を経験しないと楽しめない物語なのかも、と、
今の私はしみじみと思います。
1992年の私の感想は唸ってました。(笑)
改めて読めて本当に良かった。

拍手

「肩胛骨は翼のなごり」デイヴィッド・アーモンド(創元推理文庫)



どうか、彼女の鼓動が止まってしまいませんように。
どうか、彼の翼が美しく広がりますように。
子供の体温を、そのぬくもりを知っているからこそ。
そして、妹を愛おしく思う兄の気持ちが伝わってくるからこそ。
どうしようもなく胸が締め付けられる。
必死で生きようとする存在がある一方で、
ただそこに「在る」だけの彼の姿にやるせなくなる。
彼に翼を与えることができたのは、子供たちの純真でひたむきな想いがあったから。
だから彼は、彼女の枕辺に立った。
祝福を与えるかの如く。
込み上げる涙の意味を考えることに意味はない。
透明な想いに心が震える。そんな物語。

この邦題が秀逸すぎて、何度も何度も反芻しました。
反芻すればするほど泣きたくなるのは、
彼らが私がどこかに置き捨ててきてしまったものを、
綺麗なままで抱えているから?
とてお素敵な物語。
「この子を、愛して、愛して、愛してあげる」
そう言うキミも、愛されるべき存在。
リウマチの症状をなんとかやわらげてあげようと、懸命であったキミ。
優しい想いに包まれて、
読了直後の私は、これを打っているだけで涙ぐんでしまいます。

内容(「BOOK」データベースより)

引っ越してきたばかりの家。古びたガレージの暗い陰で、ぼくは彼をみつけた。ほこりまみれでやせおとろえ、髪や肩にはアオバエの死骸が散らばっている。アスピリンやテイクアウトの中華料理、虫の死骸を食べ、ブラウンエールを飲む。誰も知らない不可思議な存在。彼はいったい何?命の不思議と生の喜びに満ちた、素晴らしい物語。カーネギー賞、ウィットブレッド賞受賞の傑作。

拍手

不在の痕~ヘル オア ハイウォーター2~S・E・ジェイクス (モノクローム・ロマンス文庫)



気軽く背負うには、余りにも重すぎる二人の過去。
傍にいない方が安全だ。
そんな判断から一度はプロフェットの元を離れたトム。
同じ懸念を抱いていたプロフェットは、
もう二度と、トムの手の届かない所へ足を踏み入れかけていた。
ギリギリで、間に合ったのだ。
離れ離れだった二人のあまりにも劇的な再会に安堵すると同時に、
その抱擁の激しさに、互いにどれだけ渇えていたのかを思い知らされる。
ハリケーンが直撃した町で殺人事件に巻き込まれた二人。
ろくでもない事件の中で、次第に気持ちを寄り添わせていく二人の距離感がとてもいい。
ラストの占い師の言葉にうっかり涙ぐみそうになってしまった。

この表紙、本当に綺麗で大好き!
「畜生、こんなにおまえのそばにいたいなんて、いい加減どうかしてる」
「そのセリフ、そのまま返してやるよ」
傭兵稼業をこなす、戦える男たちのこんな台詞がとても好き。
ワニを捕獲するにはどうすればいいのか。
頭では理解してみました。←実地は絶対無理!
続編、絶対あるよね。




内容(「BOOK」データベースより)

民間傭兵派遣会社EEの仲間たちの前から完全に姿を消したプロフェットは、地の果ての砂漠で核物理学者の娘の保護をしていた。もうEEに戻ることはない―そんな彼を引き戻したのは、新たなパートナーを選びながらもしつこく送り続けてくるトムからのメールだった。ハリケーンの中、ルイジアナのトムの叔母の家で再会した二人は、その直後、地元の殺人事件に巻き込まれる。被害者はマイルズ―トムとかつての恋人・エティエンヌの少年時代を地獄にした男だった。そしてプロフェットの携帯にエティエンヌからの呼び出しが―。湿地帯の中に封印された秘密が、次々と暴かれてゆく―人気シリーズ第二弾。

拍手

「耳ラッパ~幻の聖杯物語」レオノーラ・キャリントン(工作舎)



おばあちゃんっ子だった私は、読み始めた直後は家族のマリアンに対する仕打ちに
憤っていました。
92歳の彼女が追いやられたのは老人ホーム。
読み進めるうちに、思いやりのない家族と意思の疎通のない生活をつづけるよりは、
同じような境遇の仲間と暮らす方がよっぽど楽しいのじゃないかと思いは変わります。
経営者の理不尽には納得がいかないものの、
彼女の暮らしぶりはそこで落ち着くかと思いきや。
彼女が手にした不思議な本と、ホームで起こった事件を契機に
私の想像力なんて及ばないところへ吹っ飛んだ、奇想天外な世界に物語は広がり、
最後はワクワクしながら頁を閉じました。

今まで読んだことのない類の本。面白かった!
老婦人たちがとてもお洒落。
そしてカルメラのマリアンに対する友情がとても素敵。
カルメラはこの物語の影の功労者だと思います。



内容(「BOOK」データベースより)

老女マリアンが友人から贈られた奇妙な耳らっぱを手に、老人ホームで痛快な冒険を繰り広げる。92歳のアリスの大冒険。

拍手

「グレート・ギャツビー」フィッツジェラルド(中央公論新社)



読後に胸の中に広がる感情を言葉に表すなら「寂しい」の一言。
それが、身を切られるような寂しさではなく、
どこかにあたたみの感じられる寂しさである所以は、
語り手であるニックの目縁が、最後までギャツビーに寄り添い、
どこまでも優しかったから。
デイジーに想いを馳せつづけたギャツビー。
ありとあらゆるものを手にしていたかのように見えた彼の掌を、
唯一、すり抜けていったかつての恋の象徴。
象徴が実態を持って手の届くところに現れた時、降りかかる悲劇。
何もかもが虚飾にすぎなかったかのような人生。
だが、彼は孤りではなかった。ニックという友が、傍にいたのだから。

自分の浮気を棚に上げ、妻のかつての恋の再燃を詰るトムは最低だと思う。
デイジーを詰る資格は彼にだけは絶対にありえない。
そもそもの悲劇の一因はトムにあるのだから。
トムの言い分もしでかしたことも身勝手すぎて、個人的には許せない。
というわけで、彼に神の鉄槌が下ればいいと、大人げなく思うのでありました。
村上氏の訳は素晴らしかった。
かつて読んだ他の訳者の「グレート・ギャッツビー」とはまた違った物語を堪能させてもらいました。




内容(「BOOK」データベースより)

村上春樹が人生で巡り会った、最も大切な小説を、あなたに。新しい翻訳で二十一世紀に鮮やかに甦る、哀しくも美しい、ひと夏の物語―。読書家として夢中になり、小説家として目標のひとつとしてきたフィッツジェラルドの傑作に、翻訳家として挑む、構想二十年、満を持しての訳業。

拍手

  

カレンダー

10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 5 6 7 8
11 12 13 15 16
18 19 21 23
24 25 26 27 28 29 30

フリーエリア

プロフィール

HN:
みやこ
性別:
非公開

バーコード

ブログ内検索

P R

Copyright ©  -- きままに読書★ --  All Rights Reserved

Design by CriCri / material by DragonArtz Desighns / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]