きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
カテゴリー「海外小説」の記事一覧
- 2017.11.12 「グノーシスの薔薇」デヴィッド・マドセン(角川書店)
- 2017.10.27 「シッダールタ」ヘルマン・ヘッセ(新潮文庫)
- 2017.10.23 「リムレスの空~魚住くんシリーズ5」榎田尤利(クリスタル文庫)
- 2017.10.14 「嵐が丘」エミリー・ブロンテ(新潮文庫)
- 2017.09.28 「メルヒェン 」ヘルマン・ヘッセ(新潮文庫)
- 2017.09.12 「野性の呼び声」ジャック・ロンドン(光文社古典新訳文庫)
- 2017.09.03 「デミアン」ヘルマン・ヘッセ(新潮文庫)
- 2017.08.12 「地下室の手記」ドストエフスキー(新潮文庫)
- 2017.07.23 「青春は美わし」ヘルマン・ヘッセ(新潮文庫)
- 2017.06.11 「青い眼が欲しい」トニ・モリスン(ハヤカワepi文庫)
「グノーシスの薔薇」デヴィッド・マドセン(角川書店)
「なんじゃこりゃ!?」と度肝を抜かれたところから始まって、
まさかやるせなさに泣くとは思わなかった。
というか、泣いたら負ける気がしたから頑張って堪えたよね。←何と戦ってた?
人の欲望、身勝手さ、傲慢、猥雑、悲哀、献身、情愛。
人間らしい感情が良くも悪くも渦巻く物語。
よって引き起こされる悲劇や喜劇。
何に重きを置くかによって、己の行動指針は変わる。
彼が最後に選び取ったものは、私には必要のないもの。
だから「何やってんの~~!」と叫びを押し殺しての読了。
ルネッサンス期の歴史と虚構の見事な共演。
すごい作品を読みました。いろんな意味で。
この帯で先入観を植え付けたことによって、
作品の評価を下げる役割を果たしていると思うんだよね。
でも「インディペンデント」紙の評価には同感。なので、引用。
「出だしの俗っぽさに惑わされてはならない。
本書はその奥にぞっとするほど、深く暗い厳格さを秘めている」
厳格さがどこにあるかはそれはそれで謎なんだけど(笑)
おなかいっぱい感満載な感じで頁を閉じてみました。
やっぱ「すごかった」。この一言に尽きるわ。
【ガーディアン必読 58/1000冊】
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「シッダールタ」ヘルマン・ヘッセ(新潮文庫)
この世界に在るものの、一切の肯定。
そして、あるがままの我々の在り方の肯定。
一度は世俗に塗れたシッダールタの、否定の一切ない、
あたたかく愛に満ちたまなざしが胸に沁みる。
そんな彼とて、完璧ではない。
彼は父を顧みず、或は、息子を縛る。
痛みを知り、挫折を知り、哀しみを知る。
だからこそ、他者にやさしく、どこまでも寛容で在れる。
シッダールタの人生を例えるなら、まさしく「川」に他ならない。
たゆとう流れの中で、多くのことを知り、或は習得する。
流れの中で出会った他者との対話を通して、さらなる高みを極めていく。
ヘッセ自身が解脱者であるかのような壮大な物語。
その世界の美しさに、ただ、溜息。
今回の高橋氏のツボ訳は「ひげぼうぼう」でした。
ヒゲボーボー……原文、気になる(笑)
これは二度三度読んで身になる物語だと思いました。
完成度の高さ(って言うのかな?これだっていう言葉がみつからない)半端ない。
「リムレスの空~魚住くんシリーズ5」榎田尤利(クリスタル文庫)
変わったのは魚住だけではなかった。
二人の関係の変化は、久留米をも変えていく。
人は、その一点に留まっていることはできなくて。
大なり小なり変わっていく。
個々の人生がある以上、
必ずしも心浮き立つような変化ばかりではなく、
それぞれが立ち向かっていかなければならない壁が存在する。
ハピエンでありながら、ちょっと切なくなるような思いを抱えての読了。
だけど、これ以外ない選択だと思うのです。
自分の脚できちんと立っていながら、深い想いを抱えて寄り添っていられる
この二人の距離感がたまらなくいい。
本当に素敵な作品です。
「風が吹いているときに船をお出しなさい。
背中を押す追い風を感じたら、それがタイミングなのよ」
魚住の祖母のこの台詞、凄く響いた。
うん。頑張ろう、私。
「嵐が丘」エミリー・ブロンテ(新潮文庫)
「嵐が丘」と「鶫の辻」
とても狭い閉塞的な空間で展開された、あまりにも拗れに拗れた人間模様。
最初は「この人たち、何で結婚したんだろう?」と「何でこの二人、結婚しなかったんだろう?」
という問いだけがひたすらグルグル巡っていたけど、
気付けば彼らの愛憎劇に引きずり込まれて一気に読み切りました。
核になるのは「嵐が丘」の三人。
自分を幸せにするために、他の生き方はなかったのかな?と
復讐に身を投じた彼に問いたくなるけれども。
彼女の傍に在ることが至上の幸せだったのであれば、どうしようもないのかな。
でも、やっぱりあなたのしたことは間違ってるよ?と言いたくなるの。
やるせない。
逞しく生き抜く術を本能で知っていた子供たちが手にした未来に安堵した。
愛憎に翻弄された当人たちがどれだけ拗れたとしても、
そんな大人の諍いに巻き込まれて潰された子供がとても可哀そう。
名前がややこしすぎて入り込むのに少し時間を要したけど、
識別できれば一気でした。
【ガーディアン必読 57/1000冊】
「メルヒェン 」ヘルマン・ヘッセ(新潮文庫)
ヘッセの紡ぐ『メルヒェン』は、不思議な浮遊感の中に
胸を突かれるようなほろ苦さが織り交ざった物語。
透明な水が流れるような言葉の美しさに浸っていると、
不意に突きつけられた何かに息を呑む。
印象的なのは以下の三篇。
「アウグスツス」
愛されすぎることによる欠落と、見返りのいない愛を抱くことの充足。
ふり幅が極端すぎて疲れ切った彼が痛々しい。
「別な星の奇妙なたより」
彼が迷い込んだ世界こそが私たちの世界。
と、思えてしまったことがなんだか淋しい。
「ファルドゥム」
解けなかった魔法。
『メルヒェン』を冠するに、最もふさわしい物語。
「アウグスツス」を読みながら過ったのは『銀河鉄道999』。
愛されすぎて愛を返せず、生きることを放棄しかけた彼の心理と、
機械の身体で永遠を彷徨う人々の空疎さとが重なったのかな?
幼少期の私はメーテルじゃなくて鉄郎になりたかった。
「野性の呼び声」ジャック・ロンドン(光文社古典新訳文庫)
空気が凍る。
あたかも、未開の雪原に放り込まれたかのように。
胸が軋むほどに伝わってくる半端ない臨場感に
息苦しさを感じながら頁を捲った。
突然に断ち切られたあたたかで優しい世界。
突きつけられた過酷な世界で目の当たりにする
悲哀と、絶望、極限までの寒さ。
それでも、生き抜こうとする彼の命の力強さ。
だんだんとロクでもない人間に挿げ替えられていく主人。
死の淵で巡り逢えたソーントンと交わした愛情。
だけど、そこに安住できなかったのは、彼の業なのか。
次第に強く聞こえてくる彼を呼ぶ声。
眠れる野性の見事な目覚め。
圧倒されての読了。
計画性皆無で行き当たりばったりな人間に振り回される犬たちが哀れ。
これ、会社の上司とか国のトップがこんなんだったら……と考えると、
寒気がする。
身体がぼろぼろになっても持ち場につこうとするデーヴには涙出そうになった。
彼の人生は橇を引くこと以外になかったんだろうな。
淡々と、だけど、半端なく力強く描かれる物語。
100年以上前に描かれているにもかかわらず、ものすごい躍動感。
今も彼等はそこに鮮やかに存在している。
私的にはものすごく印象深い、素晴らしい読書でした。
【ガーディアン必読 56/1000冊】
「デミアン」ヘルマン・ヘッセ(新潮文庫)
デミアンとの出逢いによって開かれたシンクレールの世界。
彼の人生は様々な場所を巡り巡ってデミアンへと帰結する。
そして訪れた魂の導き手からの決別。
そこから先へ踏み出す瞬間こそ、彼自身で築きあげる世界の始まり。
美しい情景描写に彩られてきたこれまでのヘッセの作品とは打って変わって、
自らの在り様を、そして世界の在り様を内省していく物語。
「カインのしるし」
持っている人、持たざる人、とより分けられる線引きが、
率直に言ってしまえば鼻につくのがちょっと残念。
若いころに読んだ時の方が、同調できた気がする。
20年以上たって感じる乖離は、様々なものを見てきて感じてきた私自身の成長だと捉えることにします。
初読も高橋健二訳だと思っていたのですが、どうやら吉田正乙氏の訳が初読だったみたい。
吉田氏→高橋氏→高橋氏、と今回三度目。
読むたびに感想が違っていておもしろい。
というか、初読の時(1990年)の自分の感想に今の私がまったく同調できなくて、
眩暈がしました。(笑)
とはいえ、この作品が名著であるという思いも、この作品が好きな気持も
全く変わらず。
また時間をおいて再読してみたいと思います。
「地下室の手記」ドストエフスキー(新潮文庫)
なんてめんどくさい男なんだろう、と思いつつ読み進める。
人生を息苦しいものにしてしまっているのは、自分自身。
見栄を張ることも虚栄心を持つことも負けん気の強さを発揮することも時には大事。
だけど、度が過ぎるとただひたすら鬱陶しい存在になるだけ。
そして気づけばひとりぼっちになってしまう。
時に一歩引き、或は素直にならなければいけない局面もある。
俺が俺が俺が!が全面押しだと、理解しようという気持ちが萎える。
自尊が高いくせに自己を卑下し、他人を見下しつつ、
構ってほしい、認めてほしいという気持ちが抑えられない。
そんな孤独な俺様が記した手記。
「え?別に…」「ん?だから?」「御勝手に」
私からのレスポンスは一貫してこんな感じで、
投げかけられる問いにまったく相容れなかった。(笑)
素直になれなかったり、思ったことと逆のこと言っちゃったり。
それは私にもある。全然ある。
だから理解できる部分がないわけではない。
でも極端すぎて「あ、めんどくさい」と、なりました。
【ガーディアン必読 55/1000冊】
「青春は美わし」ヘルマン・ヘッセ(新潮文庫)
それは、淡く美しく、成就しない恋。
澄み切った余韻をどこまでも引きずりながら、
小さな痛みを胸に宿す。
決して穢れることのない、青春の思い出。
収録作品二編共に描かれていたのは、儚い恋。
ふわり、と、たゆとい、形を成す前にあえかに霧散する。
だけど、確かにそこにあった想い。
特に『ラテン語学校生』
当事者である主人公はまだ10代半ば。
彼の瑞々しい感受性がキラリと光る。
そして、最後に彼が目にした揺るぎのない愛。
実らなかった初恋の代償として得たものは、とてつもなく尊いものだった。
やさしく紡がれるヘッセの物語。爽やかに読了。
蛇足ながら付け加えれば、
主人公が若干思い込みが激しいところも二編の共通項。(笑)
数年帰らなくとも、あたたかく自分を迎え入れてくれる故郷がある。
それがどんなに喜ばしく、素晴らしいことなのかが伺える。
だけど、次の帰郷の時に彼女はいないのかな?
たった一行のとても気になる描写が引っかかって仕方がない。
「青い眼が欲しい」トニ・モリスン(ハヤカワepi文庫)
無いものねだりという次元ではとても括れない切実な祈り。
「青い眼が欲しいの」
黒人の少女の悲痛なまでの願いは、偽りの牧師にですら、こう、言わしめる。
「かなえてやるのに一番ふさわしい願い」だと。
彼女をそこまで追い詰めた、目を覆うような出来事。
そんな少女のために、姉妹が願った奇跡。
奇跡は起きなかったけれども。
それはあなた達のせいではない。
偏見や差別が、同じ黒人の間にも蔓延る悲劇。
他者と己を比べ、その優劣を見つけては他者を見下し、己を卑下する彼ら。
だけど、そこが、彼らの生きる世界。
物語の進行は分かりづらいけれども、これしかないと思えるものだった。
彼女が語るように「なぜ」の答えを得ることはとても難しい。
だからこそ、知らなければならない。
彼らの悲劇を。
根本的な問題は眼の色ではないのだ。
それでも、願わずにいられなかった少女。
Coccoの歌声が相応しいと、何故か思ってしまった物語。
重かった。
【ガーディアン必読 53/1000冊】