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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「ラブ・ストーリー ある愛の詩」エリック・シーガル (角川文庫)



将来有望な男女が恋に落ち、歳若くして結婚をし、
金銭に苦労しながらも、仲睦まじく日々を過ごし、
漸く色々なことが軌道に乗り始めた時に直面した出来事。
彼らが向き合わねばならなかったのは自らの、或は最愛の者の死。
誰しもが平等に迎える終焉の時。
違うのは、それが「いつなのか」ということ。
病院に何を持っていきたいか?と尋ねられたジェニファーの答えに
オリバーへの想いが詰まっている気がして、胸に刺さった。
ジェニファーの父とオリバーの父。
接し方はそれぞれだけど、そこにも確かに愛がある。
透明なイメージの読後。
泣きつくした彼に笑顔が戻ることを信じて。


絶対に泣かないように。
声が震えてしまわないように。
それだけはどうにか頑張ってトイレに駆け込んで号泣した父の病室での出来事。
でも、お葬式では泣けなかったんだよね。多分それは私の意地。
蟠りがあるなら生きている間に解消してもらいたい。
今になって切実に思う。

【ガーディアン必読 70/1000】

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「天国でまた会おう 下」ピエール・ルメートル (ハヤカワ・ミステリ文庫)



嘘に重ねた嘘。
事を始めたのち、その重大さに怯えるアルベールと、
現状を豪胆にとらえるエドゥアール。
その先の未来を意識しているか否かの違いだったのかな。
と、両者の想いが垣間見れる瞬間瞬間がなんだか切ない。
そして重ねた嘘……というか悪事に首が回らなくなっていくプラデル。
自らの仕事を愚直なまでにきっちりと果たしたメルランと、
そして悲嘆に暮れていても判断を誤らなかったペリクール氏にも敬意を。
歪んでしまった彼らの人生の根底にあるのは戦争ではあるんだけど。
直接的な原因を作ったプラデルはクズだわ。
駅でのアルベールの涙に何故か安堵しての読了。


一体どうなるのかドキドキしながら読み進めた結果、
すべての事象が収まるべきところに収まったと言える結末。

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「天国でまた会おう 上」ピエール・ルメートル (ハヤカワ・ミステリ文庫)



第一次世界大戦終戦直前。
戦場で敵との戦闘ではなく、味方による悪辣な行為によって
その後の人生を大きく狂わされた若者が二人。
アルベールの命を救ったことで、エドゥアールが被った代償。
そんなエドゥアールの為のアルベールの献身。
困窮する生活の中、不器用なりに懸命に日々を生きようとする
アルベールの姿に頑張れ!と言いたくなる。
生きることに倦んでしまったエドゥアールが、
アルベールとルイーズの存在によって少しずつ取り戻した気力。
よかった……と思ったのは束の間、
え?そっち!?と、驚いたところで下巻へ。
とりあえず“奴”には天罰が下ることを願いつつ。

その人を失ってしまってから愛情を伝えることはできない。
喪失に泣くなら、どうしようもない状態に陥った時に
「家に帰りたい」と思ってもらえるような関係を
ちゃんと築いておけばよかったのに……
あんな状態になっても尚、
家族の元に帰りたくないと泣くエドゥアールが痛々しかった。

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「存在の耐えられない軽さ」ミラン・クンデラ (集英社文庫)



存在。そこに在るもの。
その価値の重さや軽さは結局は主観でしかなくて、
それが正しいのかを論じることに意味はない。
変革に揺れる国に在って、彼らが突き詰めたものは、
自らの思いや快楽に忠実であること。
社会人としては敬意を抱けても、夫としてはどうなの?と思ったトマーシュ。
私的にはまっぴらだと思ったテレザの立ち位置。
そんな彼らの人生は幸せだったのか否か?
ずっと考えながら読みつづけていたけれども。
得られると思っていなかった彼らなりの答えを最後の最後に示してくれて、
ジワッときた。
人生は一度きり。
結局はそこに帰結する。
やりきりたいね。

とても深い作品。
だけど、何が深いかを端的に説明することは、今の私にはできない。
再読必須。
ガーディアンに挙げられていなかったら、手に取ることはなかったと思う。
出逢えて良かった。

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「君の名前で僕を呼んで」アンドレ・アシマン (マグノリアブックス)



読み進める程に物語の中に引き込まれ、
気付けば鷲掴みにされていた。
ひと夏限り。
それは最初からわかっていた。
だからこそ、縋る刹那。焦燥感に駆られるように溢れ出す想い。
君が欲しい。
抱き合うことができるなら、ひと夏限りでも構わない。
否、この夏限りだからこそ、君を知りたい。
そして別離。
だが、物語はそこで終わらない。
夏が過ぎても、彼らの人生は時を刻み続ける。
こんな形で抱き続ける想いもあるのだと、切なくなる。
それ故に、最後のエリオの言葉がより深く、胸に刺さる。
人生は有限。
ならば、決して悔いのないように。

映画を観てから小説を読んだおかげで、
情景がリアルに浮かんできたのは良かった。
最初、物語世界に入り込みづらいなぁ、と感じたのは、
逆に映画を観ていたからなのかなぁ?と思ってみたり。
観てから読んでしまったので、検証はできないけどね。
語られると思っていなかった映画のエンドの後の彼らの人生。
二十年後まで追えたことに、感無量。
脱線すると、彼らが吸っていた煙草がゴロワーズだったことに、北方脳がピクリと反応してみました。




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「エデンの東 新訳版 (4)」スタインベック (ハヤカワepi文庫)



ラスト一文を読み終えた瞬間、え!?ここで!
という思いが真っ先に過った。
もう少しだけ、彼らに寄り添いたかった。
彼らのこれからを見届けたかった。
そんな想いが自然と込み上げた読後。
一人の人間が生涯かけて描くことのできる物語は一つ。
自らの在り様は、己にしか決めることができない。
どの選択も、結局は己自身に跳ね返ってくる。
例え後悔に苛まれても、軌道修正することは可能だと、
あのヘブライ語が示している。
諦めるのも掴み取るのも自分自身。
三世代にわたる人々の人生が描かれた物語。
力強く、或は脆く、悲劇的で、或は美しい。

現実を生き抜く術は、どうやったら得ることができたのだろう?
御伽の国のアロン。
彼は最後まで現実世界を直視することができなかった。
ケイトにはもっと強かな女であってほしかったけれども。
彼女の揺らぎは老いのせい……というよりも、自らの行いの跳ね返りなのかもしれない。
父親の愛を求めたキャル。
空まわってしまった愛情の行方が哀しい。
現実を直視していたアブラ。
大人びた彼女の在り様は、迷いがなかった。
そしてリー。
彼の存在なくしては、この物語は語れない。
【ガーディアン必読 67-4/1000】



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「ブラッド・メリディアン」コーマック・マッカーシー(早川書房)



繰り返される殺戮と虐殺。
それが、文明が発展していく傍らで行われていた蛮行であることに身震いがする。
剥ぎ取られる頭皮。
打ち砕かれる四肢。
狩って狩って狩りつづける日常が淡々と繰り返される。
故に、時折差し挟まれるあまりにも人間らしい描写にはっとさせられるのだが……
忘れてはいけない。
血生臭い行為を繰り返す彼らこそ、人間であることを。
異臭と砂埃と血と贓物と。
ありとあらゆる穢れの中に在って、ただ一人、その穢れに塗れることなく
異彩を放ち続けた判事。
悪と弾劾されることのなかった彼の在り様が象徴するものは何なのか。
表題の意味が重い。


淡々と綴られる事象。
訴えかけてくる感情の起伏がないのに、いや、それ故になのか?
マッカーシーの紡ぐ物語に、ただひたすら圧倒される。
「こういう世界がほかにもあるんだろうか。それともここだけなのかねぇ」
どちらであれば、尋ねた男の慰めになったのだろう?
死にゆく男が歌う讃美歌が脳裏に響く。
血の色に塗り込められての読了。
【ガーディアン必読 68/1000】




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「エデンの東 新訳版 (3)」スタインベック (ハヤカワepi文庫)




虚ろに生きる男が再生する様が見事に描かれている。
だが、彼に再び命を宿した男は、もう、いない。
そして、彼が会いたいと欲した男も、手の届かないところに行ってしまった。
対面しないと打ち砕くことのできない幻想もある。
意を決して会いに行った悪魔は、畏れるに値しないものだった。
この巻で語られるのは、アダムの再生。
そして、ハミルトン家の静かなる崩壊。
死は、人生において誰もが避けることのできないものだということを思い知らされる。
悲しみと諦めに覆い尽くされる様がやるせない。
次巻はいよいよ双子の物語。
リーの存在なくしてトラスク家は語れない。極論?


トラスク家もハミルトン家も
色々と想いを巡らせれば、ただただやるせなさが込み上げる。
だけど、それが人生。
そう思わせる圧倒的な何かがある。
さて。以下ネタバレです。
遅きに失した時。
アダムにはチャールズと再会を果たしてもらいたかった。
ものすごく期待しただけに私の落胆が半端なかった。
チャールズは、幸せだったのかな?

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「エデンの東 新訳版 (2)」スタインベック (ハヤカワepi文庫)



大地と共に生きる人々のあたたかくて懐の広い思いに泣きそうになって読了。
キャシーに去られて抜け殻のようになったアダムに対する
サミュエルとリーの真摯な働きかけに、何故か私が感謝したくなった。
生まれたばかりの子どもたちが放置されるのは本当に忍びない。
名前のないまま一年以上も放っておかれた双子。
命名のために展開された聖書の解釈がとても興味深かった。
キャシーの悪女っぷりにはひたすら圧倒され、
とりあえず人としてお近づきにはなりたくないと思ってみた。
飛行機に乗ったライザのエピソードがとても好き。
そして、リーがとても好き。→


『エデンの東』を読むか読まないか。
迷っている方には是非お勧めしたい!
と、2巻目で言い切るのは早い?
だけど、一つクレーム。
続巻がある作品で先の巻の展開をあとがきでばらすのは私的には無しだと思うのよね。
知ってたら「あ、言っちゃう?それ」で済むけど、
知らなかったら「え~~!」って文句言いたくなっちゃう。
とはいえ、ネタバレされても次巻を読むのがとても楽しみなのです♪←クレームどこへ?(笑)

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「エデンの東 新訳版 (1)」スタインベック (ハヤカワepi文庫)



二家族の親子三代にわたる壮大な物語の幕開け。
愛情を与えられていながら、そんな父が嫌な人だったとつぶやく息子と、
求めた愛情が与えられなかったと傷つきながら、
父親が好きだったと泣く息子。
そんな彼らの元へ転がり込んだ悪女。
散りばめられた色々なファクターに心が掻き乱されるけれども、
除隊後の兄の帰りを待つ弟の姿が一番印象的だった。
本当に寂しくて、心待ちにしていたんだろうなぁ。
幼少期から想像した姿とは逆の大人に育った感じがする対比がおもしろい。
底冷えのするような悪意に絡みつかれた善意。
絆は壊れるのか?
ドキドキしながら次巻へ。

ものっすごく読みやすいのは新訳だから?
つづきが気になりすぎて、読後のドキドキが止まらない。
月に一冊ずつ読んでいこうと思っていたけど……
一気に読んでしまいたい衝動に駆られています。
【ガーディアン必読 67-1/1000】

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