きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
カテゴリー「海外小説」の記事一覧
- 2017.06.03 「クヌルプ」ヘルマン・ヘッセ(新潮文庫)
- 2017.05.17 「蝶」ヘルマン・ヘッセ(同時代ライブラリー)
- 2017.05.14 「変わらぬ哀しみは」ペレケーノス(ハヤカワミステリ文庫)
- 2017.04.26 「流浪の果て」ヘルマン・ヘッセ(新潮文庫)
- 2017.04.15 「城」カフカ(新潮文庫)
- 2017.03.11 「武器よさらば」ヘミングウェイ(新潮文庫)
- 2017.03.05 「春の嵐」ヘルマン・ヘッセ(新潮文庫)
- 2017.02.28 「ウバールの悪魔 下巻」ジェームズ・ロリンズ(竹書房文庫)
- 2017.02.25 「ウバールの悪魔 上巻」ジェームズ・ロリンズ(竹書房文庫)
- 2017.02.14 「車輪の下」ヘルマン・ヘッセ(新潮文庫)
「クヌルプ」ヘルマン・ヘッセ(新潮文庫)
静かに、とても静かにこみ上げる涙。
ヘッセの物語には濁りがない。
清らかな水のように心に沁みる。
さすらい続けたクヌルプの人生。
彼の魂は孤独を訴えかけるけれども。
彼の周囲は愛にあふれていて、誰もが彼に手をさしのべる。
心からの善意と親しみで。
「死」はいずれ誰しもが直面する事象。
その前に故郷に帰りたいという彼の願い。
辿りつけたことに安堵する。
神さまとの対話で顧みる彼の半生。
あるがままに、思う通りに生ききったのだと、
微笑むことのできるおだやかさが、とてもやさしい。
そして、最後の一文を噛みしめる。
ある意味、理想。
繰り返し読みたい作品。
心の中が清らかになった気がする不思議。(笑)
そして、ここまで読んでくると、時々「ん??」ってなる高橋訳も楽しいスパイス。
PR
「蝶」ヘルマン・ヘッセ(同時代ライブラリー)
ヘッセにとって、儚く、美しく、そして滅びゆくものの象徴、それが蝶。
蝶に纏わる短編や詩編を収めた本書。
色とりどりな蝶に飾られた本書は、装丁も美しい……けど、
リアル蝶や蛾なので、苦手な方は要注意。
蝶を形容するために散りばめられた言葉の多彩さと、
その表現の美しさに魅惑され、
「キベリタテハ」を読みながら、指先に止まった蝶の軽やかさを思い出す。
本書購入のお目当ては「クジャクヤママユ」。
馴染の良いタイトルだと「少年の日の思い出」。
覆水盆に返らず、という言葉しか浮かばない。
とは言え、子供を正しく導くことのできる母親の存在は偉大だな、と、改めて。
「白と深紅のその蝶は、野の奥深くへと吹かれていった」
この表現が一番印象に残った。
蝶を追いかけて捕まえることのなくなった私にとっての蝶は「モチーフ」。
服や小物の柄に、綺麗で神秘的に描かれている物であるイメージ。
実際は繊細な翅をはためかせ、ふわりと風に舞うように飛んでいる生き物であることを、
改めて思い出しました。
蝶を触らなくなってどのくらいになるんだろう?
内容(「BOOK」データベースより)
美しいもの、亡びゆくものの象徴―蝶を、生涯にわたって愛しつづけたヘルマン・ヘッセ。蝶採集のときめき、異国の蝶や高山の蛾の珍品との出会い…。「華麗な恋人」蝶との熱いかかわりを綴る散文作品と、「色美しくそよ風のように飛ぶ」蝶を讃え、「きらめきながら消えてゆく」生命の神秘をうたいあげた詩。手彩色の銅版画などのカラー図版で飾る。
「変わらぬ哀しみは」ペレケーノス(ハヤカワミステリ文庫)
1960年代のアメリカ社会の混乱と騒動の中に生きる人々の人生が、
過剰な装飾はなく、淡々と語られる物語。
だが、その時代に生きた人々の日常はこうであったのだろうと、
圧倒的なリアリティを伴って迫ってくる。
家族。暴力。愛情。自立。人種。堕落。
そんな彼らの人生は、どこかほろ苦い。
道を過たず、堅実に人生を歩む者。
どうしようもない悪行に手を染める者。
気付けば、深みにはまって抜けられなくなってしまった者。
たくさんの登場人物たちの人生と、当時のアメリカの現状を
むせ返るような熱気と共に見事に描いた物語。
一気に読まされました。
読後はやるせない余韻がジワジワと染みてくる。
何故かこれがシリーズ1作目だと思って読み始めた私。
実際は4作目だけど、時代的には一番過去の物語だから結果オーライ?
ペレケーノスもコンプリしたい作家さんの仲間入り。
【ガーディアン必読 52/1000冊】
内容(「BOOK」データベースより)
1968年、黒人警官デレク・ストレンジは己れの職務をまっとうしていた。白人から罵られ、黒人から同砲を取り締まる裏切り者と蔑まれても。時代は大きくうねり、黒人はキング牧師の下、権利の拡張のため社会運動を起こしていた。その最中、黒人青年が車に轢かれて不可解な死を遂げた。警察の捜査は進まず、やがて黒人による暴動の兆しが見え始める。その時デレクは…ハードボイルドの詩人ペレケーノスが綴る時代の慟哭。
「流浪の果て」ヘルマン・ヘッセ(新潮文庫)
対照的な二編を収録。
人生の終焉間近な人たちの物語と、これからの時代を担う若者たちの物語。
「流浪の果て」
冒頭ののどかな風景描写に、
余生を仲間たちと穏やかに暮らす人々の姿を思い描いて読み始める。
個性が強い面々の養老院での暮らしがコミカルに描かれていて、
微笑ましく読んでいられるのも最初の内だけ。
孤独で生きる目的のない毎日に、壊れていく心。
そして、唐突に訪れる終焉。
とても寂しい。生き甲斐って大事。友達も大事。
「干草の月」
恋とは言えない。
かけひきですらない。
熱に浮かされたようなその瞬間の高揚に心を浮き立たせる少年と少女。
純情で残酷。
残念なことに、私にとっては二編とも読後感があんまりよくなかった。
とはいえ、風景描写の美しさは相変わらず素敵。
特に「干草の月」ではロママンチックな響きのある夜の描写が印象的。
でも、総括すると、うー、と、唸りたくなる読後なのでありました。
もうこれは私の受け止め方の問題(笑)
「城」カフカ(新潮文庫)
本題に関してはびっくりするぐらい何も起こらず、
恋愛に関してはびっくりするぐらい急展開で事が進行し、
結果、この人はいったい何をしにここに?と、ぽかーんとして読了。
恋に落ちるのは早いし、たとえそれが勘違いだったとしても結婚を決意するのは早いし、
別れるのも早いし。
かといって、肝心なことは一切進展せずに物語は終幕。
お城!お城が遠いよ!
なのに、不思議と読みつづけてしまう物語。
閉鎖的で排他的な村にKが拘った理由が、わからないようでわかる。
村そのものじゃなく、自分の存在意義に拘ったんだろうなぁ。
それが幸か不幸かは私が決める事じゃないけど、
私だったらとっととUターンしてるわ。
『虐殺器官』の作中で「カフカの『城』」というセリフがなかったら、
読むのはもうちょっと後になっていたかも?
クラムの存在は『闇の奥』のクルツと重なった。
名前、似てるし(笑)
とりあえず私、この村には住めないと思ってみました。
内容(「BOOK」データベースより)
測量師のKは深い雪の中に横たわる村に到着するが、仕事を依頼された城の伯爵家からは何の連絡もない。村での生活が始まると、村長に翻弄されたり、正体不明の助手をつけられたり、はては宿屋の酒場で働く女性と同棲する羽目に陥る。しかし、神秘的な“城”は外来者Kに対して永遠にその門を開こうとしない…。職業が人間の唯一の存在形式となった現代人の疎外された姿を抉り出す。
「武器よさらば」ヘミングウェイ(新潮文庫)
第一次世界大戦下のイタリアで出会ったアメリカ人青年と、イギリス人女性。
酷く過酷な状況下で、それでも、時に笑顔を向けあいながら向かった彼の地で
彼らは幸せになるはずだった。
何度もささやきあった愛の言葉。
それなのに、心に残るこの喪失感とやるせなさ。
戦場での兵士たちの陽気な会話。
戦場の中に在っても、恋に落ちる者もいる。
戦争の中にも、生活があるのだ。
と、同時に、戦場の中では命はいとも簡単に失われ、
理不尽な思いを強いられる。
戦争は悲劇しか生み出さない。
それを、改めて突きつけられた。
フレドリックに降り注ぐ雨は、いつかは止む。
けれども、失ったものは決して戻らない。
「戦闘に勝ったからって、戦争に勝利することはできない」
色々と考えさせられる言葉。
え、ちょっとぉ!という、読後の放り出され感が半端なかった。
【ガーディアン必読 51/1000冊】
内容(「BOOK」データベースより)
苛烈な第一次世界大戦。イタリア軍に身を投じたアメリカ人青年フレドリックは、砲撃で重傷を負う。病院で彼と再会したのは、婚約者を失ったイギリス人看護師キャサリン。芽生えた恋は急速に熱を帯びる。だが、戦況は悪化の一途を辿り、フレドリックは脱走。ミラノで首尾よくキャサリンを見つけ出し、新天地スイスで幸福を掴もうとするが…。現実に翻弄される男女の運命を描く名編。
「春の嵐」ヘルマン・ヘッセ(新潮文庫)
哀しくも、美しい物語。
そこに苦悩と愛憎が描かれていても、ヘッセの紡ぐ物語はどこまでも透明で濁りがない。
健常な脚を対価として音楽に対して謙虚に、そして真摯に向き合うようになったクーン。
音楽を介して出逢ったムオトとゲルトルート。そして、タイザー兄妹。
彼らの歩んだ人生の物語。
孤独も喜びも哀しみも。
他者があってこそ、心に響く。
彼女の存在を愛すると同時に、彼の存在も愛した。
故に、その先に破滅が見えていたとしても、
干渉することのできなかった二人の結婚生活。
「青春は一生のもっとも困難な時代です」
そう叫んだ彼を欠いた彼らが振り返るのは、輝かしい青春の日々。
ヘッセの翻訳は高橋健二氏!というのは揺らぎませんが。
時々彼の日本語選択に引っかかるときがあるのです。
今回は「ちょうちん」
「え?そこでちょうちん??」と思った瞬間、
着物姿で提灯を持って歩いている人の姿が脳裏を過り、
物語世界から現実世界に帰ってきちゃいました(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
少年時代の淡い恋が、そりの事故を機に過ぎ去り、身体障害者となったクーンは音楽を志した。魂の叫びを綴った彼の歌曲は、オペラの名歌手ムオトの眼にとまり、二人の間に不思議な友情が生れる。やがて彼らの前に出現した永遠の女性ゲルトルートをムオトに奪われるが、彼は静かに諦観する境地に達する…。精神的な世界を志向する詩人が、幸福の意義を求めて描いた孤独者の悲歌。
「ウバールの悪魔 下巻」ジェームズ・ロリンズ(竹書房文庫)
ハイスケールなエンターテイメントアクション。
ロケットランチャーが火を噴き、銃撃戦が繰り広げられるという
生きるか死ぬかの極限状態の中で、
誕生したカップルあり、失恋した人あり。
いいとこどりのテンコ盛り。
反物質を理解していてもいなくても、最後まで一気に読ませてくれます。
砂漠の砂が肌を掠めていく感覚と、不思議な水の満ちる洞窟。
見たことのないはずの感覚と光景が、リアルに脳裏に浮かぶ表現力は素晴らしい。
身を潜める敵を暴き出したところで、組織はようやくスタート地点に。
我らが司令官ペインター・クロウの誕生で閉幕。
カッコイイ!!!
脳内BGMとしては「シバの女王」が正しいんだろうけど。
乳香、最高級の乳香、と、乳香が連呼されたおかげでこどもさんびかの
「遠くの東から ラクダにまたがって」の歌がぐるぐる。
この歌のおかげでそのものがなんたるかはさっぱりわからないまま、
没薬と乳香は黄金と並ぶお宝だとインプットされた子供時代(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
カサンドラに拉致されたサフィアは、霊廟で発見された手がかりをもとにウバールの場所を突き止める。一方、カサンドラの襲撃を逃れたペインターたちも、ウバールを目指していた。砂漠でかつて繁栄を極めながら、神の怒りに触れて砂に埋もれたとされるウバールには、本当に反物質が存在するのか?不思議な力を持つ部族の力を借りながら、ペインターたちはギルドの攻撃に立ち向かう。だが、ペインターが相手にしなければならないのは、かつてのパートナーのカサンドラが率いるギルドの部隊だけではなかった。ウバールには超大型の砂嵐が迫っていたのである。砂嵐の影響で不安定になった反物質は、その膨大なエネルギーを放出し始めた。果たしてペインターはギルドの野望と反物質の暴走を阻止することができるのか?
「ウバールの悪魔 上巻」ジェームズ・ロリンズ(竹書房文庫)
アメリカ、イギリス、そしてアフリカ・オマーンへ。
砂漠のアトランティス。
その言葉だけでも気持ちが躍り出しそうなくらい魅力的なのに、
「ウバール」と検索して、出てきた画像の美しさに息を呑む。
砂漠に眠る都市に隠された謎を巡り、
繰り広げられる命がけの戦い。
彼らを戦いへと突き動かすものは、国家に与えられた使命か、愛しい人への想いなのか。
歴史・科学・謎・アクションそして、恋愛。
美味しい要素がテンコ盛りで、頁をめくる手が止まらなくなる。
に見える敵と、見えざる敵と。
白馬が彼らに幸運をもたらしてくれることを私も願いつつ、
謎がすべて持ち越された次巻へ。
1作目の『マギの聖骨』を手に取って以来、今でも新刊が出るたびに買い続けるも、
何故かこの『ウバールの悪魔』で読むのを中断してしまっていたシグマフォースシリーズ。
「反物質」はなんぞや?と途中でひっかかり、
調べみたところで理解することを放棄したものの、
そんなことはニュアンス理解で軽くスルー(笑)
読み始めたら一気読みの面白さでした。
やっぱり好きだわ~、このシリーズ。
内容(「BOOK」データベースより)
激しい雷雨に見舞われた深夜の大英博物館で起きた爆破事件により、一人の警備員が犠牲になった。博物館の学芸員のサフィア・アル=マーズ、サフィアの幼馴染みで大富豪のキャラ・ケンジントン、サフィアの元恋人の考古学者オマハ・ダンは、爆破事件がキャラの父の死の謎と関連があると知り、調査のためにオマーンの砂漠の失われた都市「ウバール」へと向かう。一方、米国の秘密特殊部隊シグマフォースのペインター・クロウ隊長も、爆発の陰に無尽蔵のエネルギーを持つ反物質が存在していることをつかみ、身分を隠してサフィアたちに同行する。だが、テロ組織ギルドも反物質を入手しようと狙っていた。ギルドがペインターたちに差し向けた刺客は、ペインターのことを公私ともに知り尽くした人物だった。
「車輪の下」ヘルマン・ヘッセ(新潮文庫)
澄んだ空気が伝わってくるかのような自然描写がただただ美しく、
そして彼の辿った人生がただただ哀しい。
何故生きるのか。
何のために生きるのか。
根本的な問いを突き付けられたところで、答えは人それぞれ。
でも、生きる道に自分の意思がなければ、頑張れないと思う。
息苦しさから結果的に逃れることのできなかったハンス。
私も最後まで息苦しかった。
当人は在るべき場所に在ることができず、
一部の大人もまた、指し示すべき方向が的確ではなかったといったところだろうか?
とはいえ、彼の周囲には理解者も、友となれるはずの者もいなかったわけではない。
だからこそ、やるせなさいっぱいの読後感。
10代の頃、『春の嵐』→『デミアン』→『車輪の下』と読み進めていったヘッセ。
私、ヘッセが大好きですが、『車輪の下』から読み始めたら、なかなか次の作品に
手を出そうとは思わなかったかも?という当時の印象は変わらず。
この作品の読了後、あの頃は憤っていたけど、今はただ苦しい。
内容(「BOOK」データベースより)
ひたむきな自然児であるだけに傷つきやすい少年ハンスは、周囲の人々の期待にこたえようとひたすら勉強にうちこみ、神学校の入学試験に通った。だが、そこでの生活は少年の心を踏みにじる規則ずくめなものだった。少年らしい反抗に駆りたてられた彼は、学校を去って見習い工として出なおそうとする…。子どもの心と生活とを自らの文学のふるさととするヘッセの代表的自伝小説である。