きままに読書★
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カテゴリー「海外小説」の記事一覧
- 2017.03.05 「春の嵐」ヘルマン・ヘッセ(新潮文庫)
- 2017.02.28 「ウバールの悪魔 下巻」ジェームズ・ロリンズ(竹書房文庫)
- 2017.02.25 「ウバールの悪魔 上巻」ジェームズ・ロリンズ(竹書房文庫)
- 2017.02.14 「車輪の下」ヘルマン・ヘッセ(新潮文庫)
- 2017.02.09 「紅はこべ」バロネス・オルツィ(創元推理文庫)
- 2017.01.29 「郷愁~ペーター・カーメンチント~」ヘルマン・ヘッセ(新潮文庫)
- 2017.01.14 「レ・ミゼラブル 下」ヴィクトル・ユゴー(角川文庫)
- 2017.01.07 「HHhH~プラハ、1942年」ローラン・ビネ(海外文学セレクション)
- 2016.12.08 「制裁」 ルースルンド&ヘルストレム(ランダムハウス講談社文庫)
- 2016.12.06 「ハピネス」崎谷はるひ(ルチル文庫)
「春の嵐」ヘルマン・ヘッセ(新潮文庫)
哀しくも、美しい物語。
そこに苦悩と愛憎が描かれていても、ヘッセの紡ぐ物語はどこまでも透明で濁りがない。
健常な脚を対価として音楽に対して謙虚に、そして真摯に向き合うようになったクーン。
音楽を介して出逢ったムオトとゲルトルート。そして、タイザー兄妹。
彼らの歩んだ人生の物語。
孤独も喜びも哀しみも。
他者があってこそ、心に響く。
彼女の存在を愛すると同時に、彼の存在も愛した。
故に、その先に破滅が見えていたとしても、
干渉することのできなかった二人の結婚生活。
「青春は一生のもっとも困難な時代です」
そう叫んだ彼を欠いた彼らが振り返るのは、輝かしい青春の日々。
ヘッセの翻訳は高橋健二氏!というのは揺らぎませんが。
時々彼の日本語選択に引っかかるときがあるのです。
今回は「ちょうちん」
「え?そこでちょうちん??」と思った瞬間、
着物姿で提灯を持って歩いている人の姿が脳裏を過り、
物語世界から現実世界に帰ってきちゃいました(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
少年時代の淡い恋が、そりの事故を機に過ぎ去り、身体障害者となったクーンは音楽を志した。魂の叫びを綴った彼の歌曲は、オペラの名歌手ムオトの眼にとまり、二人の間に不思議な友情が生れる。やがて彼らの前に出現した永遠の女性ゲルトルートをムオトに奪われるが、彼は静かに諦観する境地に達する…。精神的な世界を志向する詩人が、幸福の意義を求めて描いた孤独者の悲歌。
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「ウバールの悪魔 下巻」ジェームズ・ロリンズ(竹書房文庫)
ハイスケールなエンターテイメントアクション。
ロケットランチャーが火を噴き、銃撃戦が繰り広げられるという
生きるか死ぬかの極限状態の中で、
誕生したカップルあり、失恋した人あり。
いいとこどりのテンコ盛り。
反物質を理解していてもいなくても、最後まで一気に読ませてくれます。
砂漠の砂が肌を掠めていく感覚と、不思議な水の満ちる洞窟。
見たことのないはずの感覚と光景が、リアルに脳裏に浮かぶ表現力は素晴らしい。
身を潜める敵を暴き出したところで、組織はようやくスタート地点に。
我らが司令官ペインター・クロウの誕生で閉幕。
カッコイイ!!!
脳内BGMとしては「シバの女王」が正しいんだろうけど。
乳香、最高級の乳香、と、乳香が連呼されたおかげでこどもさんびかの
「遠くの東から ラクダにまたがって」の歌がぐるぐる。
この歌のおかげでそのものがなんたるかはさっぱりわからないまま、
没薬と乳香は黄金と並ぶお宝だとインプットされた子供時代(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
カサンドラに拉致されたサフィアは、霊廟で発見された手がかりをもとにウバールの場所を突き止める。一方、カサンドラの襲撃を逃れたペインターたちも、ウバールを目指していた。砂漠でかつて繁栄を極めながら、神の怒りに触れて砂に埋もれたとされるウバールには、本当に反物質が存在するのか?不思議な力を持つ部族の力を借りながら、ペインターたちはギルドの攻撃に立ち向かう。だが、ペインターが相手にしなければならないのは、かつてのパートナーのカサンドラが率いるギルドの部隊だけではなかった。ウバールには超大型の砂嵐が迫っていたのである。砂嵐の影響で不安定になった反物質は、その膨大なエネルギーを放出し始めた。果たしてペインターはギルドの野望と反物質の暴走を阻止することができるのか?
「ウバールの悪魔 上巻」ジェームズ・ロリンズ(竹書房文庫)
アメリカ、イギリス、そしてアフリカ・オマーンへ。
砂漠のアトランティス。
その言葉だけでも気持ちが躍り出しそうなくらい魅力的なのに、
「ウバール」と検索して、出てきた画像の美しさに息を呑む。
砂漠に眠る都市に隠された謎を巡り、
繰り広げられる命がけの戦い。
彼らを戦いへと突き動かすものは、国家に与えられた使命か、愛しい人への想いなのか。
歴史・科学・謎・アクションそして、恋愛。
美味しい要素がテンコ盛りで、頁をめくる手が止まらなくなる。
に見える敵と、見えざる敵と。
白馬が彼らに幸運をもたらしてくれることを私も願いつつ、
謎がすべて持ち越された次巻へ。
1作目の『マギの聖骨』を手に取って以来、今でも新刊が出るたびに買い続けるも、
何故かこの『ウバールの悪魔』で読むのを中断してしまっていたシグマフォースシリーズ。
「反物質」はなんぞや?と途中でひっかかり、
調べみたところで理解することを放棄したものの、
そんなことはニュアンス理解で軽くスルー(笑)
読み始めたら一気読みの面白さでした。
やっぱり好きだわ~、このシリーズ。
内容(「BOOK」データベースより)
激しい雷雨に見舞われた深夜の大英博物館で起きた爆破事件により、一人の警備員が犠牲になった。博物館の学芸員のサフィア・アル=マーズ、サフィアの幼馴染みで大富豪のキャラ・ケンジントン、サフィアの元恋人の考古学者オマハ・ダンは、爆破事件がキャラの父の死の謎と関連があると知り、調査のためにオマーンの砂漠の失われた都市「ウバール」へと向かう。一方、米国の秘密特殊部隊シグマフォースのペインター・クロウ隊長も、爆発の陰に無尽蔵のエネルギーを持つ反物質が存在していることをつかみ、身分を隠してサフィアたちに同行する。だが、テロ組織ギルドも反物質を入手しようと狙っていた。ギルドがペインターたちに差し向けた刺客は、ペインターのことを公私ともに知り尽くした人物だった。
「車輪の下」ヘルマン・ヘッセ(新潮文庫)
澄んだ空気が伝わってくるかのような自然描写がただただ美しく、
そして彼の辿った人生がただただ哀しい。
何故生きるのか。
何のために生きるのか。
根本的な問いを突き付けられたところで、答えは人それぞれ。
でも、生きる道に自分の意思がなければ、頑張れないと思う。
息苦しさから結果的に逃れることのできなかったハンス。
私も最後まで息苦しかった。
当人は在るべき場所に在ることができず、
一部の大人もまた、指し示すべき方向が的確ではなかったといったところだろうか?
とはいえ、彼の周囲には理解者も、友となれるはずの者もいなかったわけではない。
だからこそ、やるせなさいっぱいの読後感。
10代の頃、『春の嵐』→『デミアン』→『車輪の下』と読み進めていったヘッセ。
私、ヘッセが大好きですが、『車輪の下』から読み始めたら、なかなか次の作品に
手を出そうとは思わなかったかも?という当時の印象は変わらず。
この作品の読了後、あの頃は憤っていたけど、今はただ苦しい。
内容(「BOOK」データベースより)
ひたむきな自然児であるだけに傷つきやすい少年ハンスは、周囲の人々の期待にこたえようとひたすら勉強にうちこみ、神学校の入学試験に通った。だが、そこでの生活は少年の心を踏みにじる規則ずくめなものだった。少年らしい反抗に駆りたてられた彼は、学校を去って見習い工として出なおそうとする…。子どもの心と生活とを自らの文学のふるさととするヘッセの代表的自伝小説である。
「紅はこべ」バロネス・オルツィ(創元推理文庫)
フランス革命時のフランスで横行する貴族の処刑。
動乱の最中のフランスからの貴族の亡命を指揮するイギリス人たちの秘密結社「紅はこべ」。
この物語は、彼らの活躍を描いた冒険活劇であり、パーシーとマルグリートの恋愛物語でもある。
というまとめ方に、誇張はないはず。
ならば、息をつく間もない緊迫の展開か!?と思いきや。
物語はゆる~く、なんだかほのぼのしく進行します。
敵役ですら、対応が甘い。
そのゆるさが楽しめれば、極上の娯楽。
迷惑と紙一重なマルグリートの一途さも、最後は許容できてしまう不思議。
行動を起こせる女子と甲斐性のある男子に喝采を。
私だけの王子様!的な感じで、パーシーのような男子に憧れる時期って、
どこかに絶対あると思う。
高校生の頃の私のこの本の感想は「パーシー、カッコイイ!」でした。軽い。(笑)
今回はそこまでのトキメキは残念ながらなかったわ~。
手元にあったのが西村氏の翻訳だったので、素直にそちらで読みましたが。
村岡花子女史の翻訳で読んでみたいわ!と思ったことを付け加えておきます。
「郷愁~ペーター・カーメンチント~」ヘルマン・ヘッセ(新潮文庫)
美しい描写で綴られる自然の情景。
物語の中心には、常に彼の故郷の湖や山がある。
澄んだ空気の中の美しい村の風景だけが印象に残っていて、
再読して主人公の思い込みの激しさと頑なさに驚いた。
だが、そんな彼もいつしか、やさしさと思いやりを備えた深みのある人間になっていく。
これは、一人の青年の成長の物語。
人との対話が人を育てることを、やさしく語りかけてくれる。
そして、生きる、ということは、死と密接に関係してくることも。
無垢で純粋な魂に涙し、情景描写の美しさに溜息を零し、
日々を生き抜く人々の命の讃歌に清々しい思いを抱きながらの読了。
やっぱりヘッセの作品が好き。
初読は18歳の時。
当時の読書ノートを引っ張り出して大笑い。
「人が人を育てる」というのは同じようなことを綴っていたけど、
今回私が最初のうちは「あれ?こんな自己中な人だっけ?」と
首を傾げたたペーター・カーメンチントを最初から「純粋な人」と
手放しで褒め称えていました。
そりゃあ、印象合致しないわ。(笑)
「青春はいかばかりうるわしき。されどそははかなく過ぎ行く。楽しからんものは、楽しめ。あすの日はたしかならず。」
心に刻んでおきたい言葉。
「レ・ミゼラブル 下」ヴィクトル・ユゴー(角川文庫)
激動の時代に生きた人々の物語。
19世紀を生きた著者が願った通りの平穏な未来が、
今、この世界にないことが些か残念だと思うと同時に
人間の刻む歴史はそんなものだと思う自分もいる。
一人の男と係わり続けた結果、揺らいだジャヴェールの信念。
二律背反に引き裂かれて自らの未来を閉ざした彼は、頑なに過ぎたのだろう。
そして己の信念に殉じたジャン・ヴァルジャン。
あまりにも厳しく、苛烈な生き様に胸を打たれる。
彼が「幸せだった」と感じられる時を過ごせたことは救いだけれども。
「これからの」幸せにも目を向けて欲しかった。
それだけの贖罪はしたのだと、思うから。
下巻はマリウスの青二才っぷりにイラッとしつつ読了。(苦笑)
奔放なガヴローシュがとても魅力的。
1862年に発行された本。
150年以上たった今でも、その面白さは損なわれることなく、こんなにも惹きこまれる。
岩波→角川と読んできたので、いつか新潮版も読んでみたい。
【ガーディアン必読 49-2/1000冊】
内容(「BOOK」データベースより)
あわただしい時代のなかで、貧しくても上昇志向でがんばっていた青年マリウスは、ある美少女に恋をした。謎の男性といつも一緒のコゼットだ。彼女への思いをつのらせる彼だったが、革命騒ぎのまっただなかに巻き込まれ、絶対絶命となる。そのとき、コゼットと一緒にいた男、ジャン・ヴァルジャンと再会した!ジャヴェール警部、凶悪犯テナルディエなどもまじえながら、壮大な物語は感動のクライマックスへと向かう―。
「HHhH~プラハ、1942年」ローラン・ビネ(海外文学セレクション)
作中で物語を進行するのは著者自身。
俯瞰しているのと同時に、渦中に在る視点。
故に、臨場感を伴って、より視覚的に事象が伝わってくる。
「歴史」ありきの物語。
語られるのは「人の」ではなく「時代の」狂気。
虐殺された人々の姿を、その数を思い描くことを、頭が拒絶する。
だけど、穴の中に折り重なる死体から目を背けてはならない。
これは、その死体の山を築いた男と、その男を暗殺した男たちの物語。
そして、彼らに係ったが為に、皆殺しの憂き目にあった人たちの物語。
ここまで詳細に調べ上げ、物語として完成させた著者に、敬意を。
圧巻でした。
「どうして自分の仲間を裏切ることができたのか?」
「百万マルクも貰えるとしたら、あなただって同じことをしたと思いますよ」
一緒にしないでよ!と、心の底から叫びたい。
懸命に暗殺者を支え続けたのは、「同じことをしない」人たちだ。
密告がなくても、もしかしたら彼らは発見されたかもしれない。
だけど、万死に値するのは裏切り者のチュルダだと思えてならない。
気になる方のために「HHhH」の意味。
「ヒムラーの頭脳はハイドリヒ(ユダヤ人大量虐殺の首謀者)と呼ばれる」
内容(「BOOK」データベースより)
ユダヤ人大量虐殺の首謀者、金髪の野獣ハイドリヒ。彼を暗殺すべく、二人の青年はプラハに潜入した。ゴンクール賞最優秀新人賞受賞作、リーヴル・ド・ポッシュ読者大賞受賞作。
「制裁」 ルースルンド&ヘルストレム(ランダムハウス講談社文庫)
読後のやりきれなさが半端ない。
でも、こんな重苦しい余韻が残る話は好き。
バッシング覚悟で
正しい裁判を執り行おうとしたオーゲスタムこそ英雄だと思った。
フレドリックのしたことを間違いだとは言いたくないし、
心情的には彼の行動に寄り添える。
だけど、社会の中に在る以上、彼は悲劇の英雄にしかなり得ない。
人は法に縛られる。
はみ出した世界に秩序はない。
便乗した馬鹿たちが皮肉にもそれを証明している。
だから、納得はしている。
だけど、感情的にはどうしたってやるせなくなってしまうのです。
同害報復を実行する組織の話を思い出した。
自らの欲望のために少女たちをレイプしたルンドこそ、
彼女たちと全く同じ目にあってみるといい。
目に目を。
まぁ、あくまでも物語世界的な話ですけど。
オスカーションの秘密って何かしら?何かしら?と思っていたわけですが。
うっそー!?となる秘密でした。腐的にちょっとテンションあがります。
次作は「ボックス21」
うまく入手できるかしら?
内容(「BOOK」データベースより)
スウェーデンのとある町。古いアパートの地下室で、二人の少女の死体が発見された。凄惨な強姦殺人事件に人々は震え上がるが、ほどなく犯人は逮捕された。それから四年後―。作家のフレドリックは、テレビのニュースに映った脱走犯の顔を見てパニックに陥った。娘を幼稚園に送ったときに入口で挨拶を交わした男だったのだ!娘の無事を必死に願うフレドリックだったが…。グラスニッケル賞最優秀北欧犯罪小説賞受賞作。
「ハピネス」崎谷はるひ(ルチル文庫)
子供の恋愛めんどくさい……(笑)
大人だったらもうちょっと上手く立ち回るんだろうけど。
にっちもさっちもいかなくなった恋情をどう封じていいのかわからなくなった10代は
結果、養い親に対する突然のシャットアウト。
いままで大切に育ててきた子供から
強烈な爆弾を喰らったような20代はそれは衝撃大きいわ。
理由もなく相手に拒絶されるのは、本当に辛いんだよ?
とはいえ、根底にあるのは憎しみではなく恋情なわけで、
歳の差カップルは周囲を盛大に巻き込んでの大団円。
原野と朱美さん、いい人だったわ~。
この二人、くっついちゃえばいいのに。
とりあえず、社会人。
お仕事はちゃんとしよう。
そんな理由での欠勤は、二日酔いで会社に行けないよりダメだと思います(笑)。
なんだかんだ崎谷さんはコンプリ目指して買っちゃうんですよね~。
蔵書は65冊前後あるかな?
積読もあるので、読んでいない本は何を所有しているのか全く把握できていないので、
購入時は要注意なのです。
内容(「BOOK」データベースより)
流水純司が二十二歳のとき、友人の忘れ形見・日置裕太を引き取ってから七年が過ぎ、裕太も高校三年生に。流水が若くして課長になれたのも、裕太を育てるため頑張って働いた結果だ。健やかに成長した裕太は流水唯一の自慢。しかし、次第に流水と距離を置きはじめた裕太が、家を出ようとしていると知り、流水は…!?商業誌未発表短編も同時収録。