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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「ガラスの鍵」ダシール・ハメット(光文社古典新訳文庫)



金と権力と人脈。
掌握したものを駆使すれば、事件の真相すら自在に操れる時代が
確かに存在した。
禁酒法が施行されていた時代のアメリカ。
市政に打って出ようとしたマドヴィッグと、彼の友人ボーモントの物語。
会話と情景描写に徹した文体。
それでも、ボーモントのマドヴィッグに対する友情が確かに伝わってくる。
彼はただ、友人の窮地を救いたかっただけ。
殴られても、その友と喧嘩をしても、見事に謎解きを果たしたボーモント。
だけど、読後に漂う寂寞感がやるせない。
開かれた扉を見つめるボーモントは何を思ったのだろうか?
75年前に書かれた本書。
名作は、時代を経ても名作。

読みやすさという点では文句の付け所がないけれども。
ハードボイルド好きとしては、
もう少し硬派を気取った訳文で読んでみたかったかも。
なーんて。
贅沢かな?

内容(「BOOK」データベースより)

賭博師のボーモンは、建設会社を経営する友人のマドヴィッグから大胆な計画を打ち明けられた。地元の上院議員の後ろ盾となって、市政の実権を握ろうというのだ。が、その矢先、議員の息子が殺され、関係者のもとにマドヴィッグを犯人とほのめかす匿名の手紙が届けられた。窮地に立たされた友のため、ボーモンは自ら事件の渦中に飛び込んでいく。非情な世界に生きる男たちを鮮烈に描くハードボイルドの雄篇。新訳決定版。

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「パルプ」チャールズ・ブコウスキー(新潮文庫)



ヤバくなったら金蹴り。
殴った相手の財布の中身は自分のもの。
飲んだくれの自称LA一の名探偵。
その名もニック・ビーレン。
調査に乗り出しては事態を引っ掻き回しているだけにしか見えないにも拘らず、
何故か依頼人達の問題は次々と解決していく。
何この人!?と、最初は思うわけですが……
彼の日常を追っていくと、彼なりの筋が通っている。
女好きに見えても、仕事の据え膳は喰わない。
いい加減だけど、決して人生を楽観視はしていない。
むしろ、終始ハチャメチャなだけに、チラリと覗く諦念が余計に際立って
哀愁さえ帯びるところがなんだかずるい。
とてもずるい。

宇宙人がいても赤い雀がいても、まったく不思議のない世界。
頭をニュートラルにして読むのが一番。
不思議と物語世界に馴染んでいきます。
「十匹のうさぎみたいにばんばん跳ねてる」
私、この表現はしばらく忘れられそうにありません。(笑)


内容(「BOOK」データベースより)

ニック・ビレーンは、飲んだくれで、競馬が趣味の超ダメ探偵。ところが、そんな彼に仕事が二つ転がり込む。ひとつは死んだはずの作家セリーヌをハリウッドで見かけたから調べてくれという“死の貴婦人”の依頼、もうひとつは“赤い雀”を探してくれという知人の依頼。突然の仕事に大張り切のビレーンは、早速調査にのり出すのだが…。元祖アウトロー作家の遺作ハードボイルド長編。

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「ビッグ・ノーウェア 下巻」ジェームス・エルロイ



【友人がいるってのはいいものだが、
 ひとたびその友人たちに嫌われたら地獄だよ】

読後に胸を占めるのは、やはり悲哀。
そして、少しの安堵とやるせなさ。
動機は出世欲だったとしても。
彼はただ、事件を解決しようと懸命になっていただけだったのに。
どうして?と、問うことは愚問だろうか。
奪われた幾つもの命。
残酷な事件の根底にあった醜悪な真実。
真実が浮かび上がっていくその様に、
息をつく暇もないくらいぐいぐいと引き込まれる。
志半ばで倒れた彼。
そんな彼の遺志を受け継いだのは、私にとっては意外な人物だった。
自らの危険を顧みなかった彼は、ある意味、とてもきれいな幕引きをした。
仲間たちに手向けの業火を。
そしてエルロイには喝采を。

正直、思想的な場面は読み進めるのが大変でしたが、
そこを乗り越えた先の事件の顛末にドキドキしました。
何故かミッキーに愛嬌を感じるのは私だけでしょうか?
ずっしりとした重量感のある読後感。
幾つかクッションを置いたら、次作『LAコンフィデンシャル』にいきます!



内容(「BOOK」データベースより)

残虐な殺人者と共振するように事件に没入するアップショー。その粘りを買って、コンシディーンは彼をアカ狩り捜査班に加える。だがアップショーの執念の捜査が一つの事件を結ぶカギを探り当てたとき、闇にひそむ悪辣な罠が動きはじめた―「LA四部作」中、もっともヘヴィな余韻を残す現代ノワールの傑作。

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「ビッグ・ノー・ウェア 上巻」ジェームス・エルロイ



狂気を孕んだ1950年のロサンゼルス。
彼は考える。
犯人は何故そんなことを?
密室で彼らは策謀を巡らせる。
どうやったら名声を?
異常殺人事件を追う彼と、出世欲のためにアカ狩りを目論む彼ら。
そして、『ブラック・ダリア』に引き続き、チラつくギャングの存在。
まったく異なる目的のために動いていた彼らのベクトルが、
少しずつ重なっていく。
そして、邂逅。
利害の一致から同じ軌道に乗った彼らが、
この先、どんな糸を辿り、どんな真相に行きつくのか。
すべては下巻を手に取ってみなければわからない。
良くも悪くも個性的な彼らと共に、下巻へ。

『怒りの葡萄』の時代の延長に、この時代がある。
そして『二進法の犬』や『老犬シリーズ』を彷彿とさせる単語がチラホラ。
この時代とほぼ同じ時代に日本には高樹がいたと思えばなんだか感慨深い。
登場人物の多さと、伏線を見落としてはなるまいという思いから行きつ戻りつして、上巻読了。

内容(「BOOK」データベースより)

1950年、正月―共産主義の脅威に怯えるLA。異常殺人を追う若き保安官補アップショー、アカ狩りで名声を狙う警部補コンシディーン、暗黒街の始末屋ミークス。策謀と欲望の迷宮で翻弄される三人の男たちは、暗い道の果てに何を見るのか?傑作「LAコンフィデンシャル」前夜を描く「暗黒のLA四部作」その二、待望の文庫化。

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「薔薇の名前 下」ウンベルト・エーコ(東京創元社)



一人の僧の死から次々と発生した殺人事件。
闇の中に身を潜め、事の真相を知っていた彼は、何を望み、何を畏れたのだろう?
知識の流布を蛇蝎のように嫌った彼の主張は、
あまりにも独善的で、あまりにも身勝手だ。
殺人が殺人を呼び、僅かな綻びから手繰り寄せられる真実。
そして、決着は文書館で。
ひとたび明るみに出た謎は、その時点で秘匿性を失い、
白日の下にさらされる。
それを、身の内に喰らってまで阻止しようとした彼の、
結局は思惑通りだったのか?
少し先の時代に印刷術が発達することを想えば、答えは否、だ。
謎解きをするウィリアムとアソドの師弟関係がとても微笑ましかった。

さて。
ぶっちゃけトーク!
君たちはいったい何をしにそこへ?と、その瞬間、唖然としてみました。
ひっかきまわすだけひっかきまわして何もかもを灰燼に帰した感が否めない。
いや、その責任が彼らにあるとは言いませんが。
そしてとってもとっても一生懸命だったのもわかるけど。
なのに、どうしてあんなことに……
古代から伝わる数多の本たち。
印刷技術が発達する以前の時代には人の手によって書き写され来たという事実を
改めて思い知り、なんだか圧倒されました


内容(「BOOK」データベースより)

中世、異端、「ヨハネの黙示録」、暗号、アリストテレース、博物誌、記号論、ミステリ…そして何より、読書のあらゆる楽しみが、ここにはある。全世界を熱狂させた、文学史上の事件ともいうべき問題の書。伊・ストレーガ賞、仏・メディシス賞受賞。

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「薔薇の名前 上」ウンベルト・エーコ(東京創元社)



濁流のように渦巻く膨大な情報量に翻弄されながらも、
気付けば物語世界に迷い込んでいる。
時は中世。
北イタリアの僧院の、薄暗く神秘的な迷路の中を彷徨っている。
神に仕える者たちの棲まうその場所は
決して人には語れぬ秘密を抱えた者達の潜む魔窟でもあった。
印刷技術の発達する少し前の時代。
書物を管理し、知識の流布を恐れた件は、
いつの時代にも起こり得る情報の統制を想起させる。
文書館にはどんな秘密が隠されているのか。
持ち去られた書物には何が記されていたのか。
そして、このタイトルの意味は?
現代では考えられない程、ゆったりと流れる時。
手がかりのカケラ得られない私は、逸る気持ちを抑えながら次巻へ。

メガネ薀蓄
・メガネの発明は12世紀の終わりごろ(作中記述有)
・メガネを日本に初めて伝えたのはフランシスコ・ザビエル(勝手に調べてみた)
調べ物をしていると、遭遇する率が高いザビエル。
「カッパ」を検索して「ザビエル」と出てきたときの衝撃(笑撃?)と言ったら!
確かに、老眼や近視は昔からあるわけで、矯正するもののなかった時代の人たちは
さぞ不便だったろうと。
メガネやコンタクトがないと生活できないわが身に置き換えてしみじみ思いました。


内容(「BOOK」データベースより)

迷宮構造をもつ文書館を備えた、中世北イタリアの僧院で「ヨハネの黙示録」に従った連続殺人事件が。バスカヴィルのウィリアム修道士が事件の陰には一冊の書物の存在があることを探り出したが…。精緻な推理小説の中に碩学エーコがしかけた知のたくらみ。

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「高い砦」デズモンド・バグリィ(ハヤカワ文庫NV)



【我々はまだ生きている。
 血が男の中に流れている限り、不可能ということはないのだよ】

直面した事態を打開するためには、全力で臨まなければならない。
理不尽な死を黙って受け入れるわけにはいかない。
性別も年代も職業もバラバラな九人が
知恵を振り絞り、勇気を奮い起こし、命を繋ぐために
戦闘を生業とする男たちと対峙する。
荒唐無稽な戦術は何もなく、彼らは彼らなりにできることを懸命に模索する。
組み立てられた投石器。
命がけの雪山越え。
震えながらも武器を手にした彼女。
臆病な彼が見せた勇姿。
ラストに向けて高まる緊張感。
戦いを知る男たちが歯を食いしばって見せた闘志。
満身創痍の彼らにあたたかな食事と穏やかな休息を。
そして死者の魂に安らかな眠りを。

極上の冒険小説。
一気に読み切ってしまうおもしろさでした。
「我々はまだ生きている。
血が男の中に流れている限り、不可能ということはないのだよ」
このアギヤルの言葉に、彼の政治家としての不屈の魂を見た気がしました。
諦めちゃだめだよ、というメッセージに自分なりに置き換えて、明日も頑張ろうと思います。


内容(「BOOK」データベースより)

旅客機がハイジャックされ、操縦士のオハラはアンデス山中の高所に無謀な不時着を強いられた。機体はひどく損傷し、犯人らは死亡。かろうじて生き残ったオハラたち九名は、高山病に苦しみながらも救助を求め山を下り始めた。そんな一行を、突如銃撃が襲う。一体誰が、何のために?背後は峻険な峰々。絶体絶命の窮地に陥った彼らは、驚くべきアイデアでこれに挑むが…壮大な自然に展開する死闘。冒険小説史上屈指の名作。

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「ゴッドファーザー 下」マリオ・プーヅォ(ハヤカワ文庫NA)



【人生はこんなにも美しい】

上巻は家族の物語。
そして下巻は戦いの物語。
揺るぎない絆がある一方で、昨日肩を抱き合っていた仲間を弾く裏切りがある。
愛には愛を。忠誠には報酬を。裏切りには死を。
彼らの棲まう世界は、かくも厳しく、かくも公平だ。
故に、水面下で秘密裏に進行した復讐への準備。
たとえ、愛する者がその行為によって悲嘆にくれたとしても。
横っ面を張られたままではいられないのだ。
守るべきは家族。組織。総括しての「ファミリー」
故に与えられる「ゴッドファーザー」の称号。
決して感情的になることなく、そして時を逸することなく、
誰もが認めざるを得ない状況下でその称号を見事に継承したマイケル。
ケイの祈りが彼の歩く道を清めてくれますように。

壮大な物語に読了後呆然。
頭角を現したマイケルのかっこよさったら!
改めて冒頭の無邪気に身を寄せ合っているマイケルとケイの姿と、
ラストの二人の姿を見比べるとちょっと胸が痛いけど。
同じところにとどまったままではいられないのが人間。
安らぐ時間はないかもしれない。
だけど、進んだ時間の先に、二人なりの幸せがありますように。


内容(「BOOK」データベースより)

ニューヨーク五大ファミリーを巻きこんだ全面戦争は、コルレオーネ家の長男ソニーの死によって終結した。ドン・コルレオーネはシシリーに潜伏していた三男マイケルを呼び戻す。やがてファミリーの後継者となったマイケルは、ドンが死を迎えると直ちに壮絶な復讐戦を開始した…アメリカを陰で支配する巨大組織マフィア。現代社会が喪失した血縁と信頼による絆がそこにはある。愛と血と暴力に彩られた壮大なる叙事詩。

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「ゴッドファーザー 上」マリオ・プーヅォ(ハヤカワ文庫NA)



【友情がすべてなんだ。
 友情に比べれば、才能なんて屁のようなもんだ。
 友情とは家族みたいなもので、国家よりも大切なものなんだ】

友情に篤く、友情に重きを置いた偉大なる父と、
その父に敬意を抱き、そして愛した家族の物語。
血の繋がりだけには留まらない、なんとも広範囲にわたる「家族」の存在に、
ゴットファーザーの懐の広さが伺い知れる。
彼が凶弾に斃れた時の周囲の一致団結ぶりにこそ、
これまで彼が歩んできた人生が垣間見られる。
特に自らの度量とやるべきことを瞬時に判断できた長男と三男の存在。
自らの器をしっかりと自覚していた長男・ソニーの立ち回りっぷりは好感が持てたし、
堅気の道を歩むことを望んだはずの三男・マイケルが、
抗争の中へ足を踏み入れていく様は圧巻。
強大なファミリーの成り立ちを垣間見、現実に立ち戻ったところで次巻へ。

フラッシュバックするように映画のシーンが断片的に浮かんできて、
ワクワクしながら頁を捲りました。
テーマ曲のタイトル「愛のテーマ」に激しくうなずきたくなる内容。
感想の冒頭で引用している言葉を胸に刻んで、下巻へ進みます。


内容(「BOOK」データベースより)

全米で最も強大なマフィアの組織を築き上げた伝説の男、ヴィトー・コルレオーネ。絶大な力を持つこのマフィアのドンを、人々は畏敬の念をこめてゴッドファーザーと呼ぶ。そんな彼の三男マイケルは、家業に背を向け家を出ていた。が、麻薬密売をめぐる抗争でドンが瀕死の重傷を負った時、彼は、父、家族、そして組織のために銃を手に起ち上がった…独自の非合法な社会に生きる者たちの姿を赤裸々に描き映画化もされた名作。

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「やんごとなき読者」アラン・ベネット(白水社)



【本は暇つぶしなんかじゃないわ。
 別人生、別の世界を知るためのものよ】

読書の魅力に引き込まれていく女王の様子に、
共感を覚える読書家さんたちは、たくさんいらっしゃると思います。
一冊の書物を手にすることで、ここに居ながら別の世界に飛び立つことができる。
決して自分では歩むことのないであろう人生を、知ることができる。
そこで揺さぶられる感情は本物。
そして、育まれる想像力。
人生を豊かにするツールの一つが読書なんだと思っています。
とはいえ、公務はある程度の手抜きは許されても、
疎かにしちゃいけません、女王様(笑)。
そんな彼女の姿すら、かわいらしく思えてしまう、魅力的な本。
読了後は、引用されているたくさんの本に興味津々。
まさに「一冊の本が別の本へとつながる」のである。

装丁がとてもかわいらしくて、手触りも素敵。
箔押し好きな私にとってはたまりません。
装丁と言えば、個人的に「はてしない物語」の装丁が今の所ベストかしら?
一般書外だと、紫宸殿の「EINSTEIN」を超える装丁はないかも。
和紙に紅葉。宝物。



内容(「BOOK」データベースより)

英国女王エリザベス二世、読書にハマる。おかげで公務はうわの空、側近たちは大あわて。「本は想像力の起爆装置です」イギリスで30万部のベストセラー小説。

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