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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「弟の戦争」ロバート・ウェストール(徳間書店)



ジワジワと胸に迫ってくる想いが痛くて、哀しくて。
だけど、それだけではない何かが込み上げてきて、気付けば涙が溢れていました。
「良い戦争なんてない」
身につまされる言葉。
それぞれの国にはそれぞれの正義がある。
何より、どんな正義があったって、
そこに暮らす一般の人々の生活は誰かが勝手に踏み躙る権利は誰にもない。
イギリスという国にありながら、予想もしなかった方面から、
湾岸戦争の影響を被った家族がいる。
これは、そんな彼らの物語。
感受性の豊かなフィギスの身に起こった、とても不思議な出来事。
たくさんの人に手に取ってもらいたい良書。

ウェストール二作目。
この作者の語る物語は、児童文学の息に留まらない、訴えかける何かがある。
最後の一文を反芻しては、胸が疼く。
子供達の辿った運命が、とてもいたたまれない。
だけど、それが戦争。
目を背けることのできない真実。
著者の他の本も追いかけてみようと思います。



内容(「BOOK」データベースより)

ぼくの弟フィギスは、心の優しい子だった。弱っている動物や飢えた難民の子どもの写真なんか見ると、まるでとりつかれたみたいになって、「たすけてやってよ」って言う。人の気持ちを読みとる不思議な力も持っている。そんな弟が、ある時奇妙な言葉をしゃべりだし、「自分はイラク軍の少年兵だ」と言い始めた。フィギスは12歳。1990年、湾岸戦争が始まった夏のことだった…。弟思いの15歳の兄が、弟を襲った不思議な事件を語る、迫力ある物語。イギリスで子どもの読者が選ぶ賞を複数受賞、ヨーロッパ各国でも話題を呼んだ作品。シェフィールド児童文学賞受賞、ランカシャー州児童書賞第1位、イギリス児童書連盟賞部門賞受賞、カーネギー賞特別推薦、ウィットブレッド賞推薦。小学校中・高学年~。

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「流刑の街」チャック・ホーガン(ヴィレッジブックス)



義勇軍を気取った退役軍人の彼らは、
この世界とどうにか折り合いをつけて、
楽しく真っ当に生きようとしただけなのに。
知らぬ間にはまり込んでいた泥沼。
後戻りできない道。
生き残った者も心に深い傷を負い、
その傷を抱えたまま、歩き続ける。
裏切った者は裏切られる。
彼が最も軽んじたであろう者に。
冒頭から鷲掴まれた物語の中に、ガッツリ引きずり込まれた。
そして、めまぐるしく展開していく物語をドキドキしながら追い続けた。
彼を最後まで突き動かした想いが哀しい。
この結末でメイヴンは救われたのか?
願わくは、彼の瞳に再び光の宿らんことを。

「明日の男理論」これはとても素晴らしかった。
「昨日の男」にしてほしかったことを、「明日の男」のために実行しろ。
「男」を「自分」に置き換えて、この部分を何度か反芻しました。

【ここからネタバレ】
諸悪の根源は男であって、言葉には罪はない。
それでも、弁舌巧みな男の言葉に拍手喝采を送りたくなった自分を、
後で罵りたくなるわけなのです。
ホント、イイこと言ってるだけに……ね。
こうやって人心を掌握していくんだわーと思うと、なんだかやるせない。



内容(「BOOK」データベースより)

ボストンの駐車場で夜間警備員として働く、若きイラク帰還兵メイヴン。ある晩、強盗に襲われた彼は、反撃のすえ相手を殺しかけてしまう。その翌日、メイヴンは一人の美しい女からある人物に連絡するよう伝言を受ける。メイヴンを待っていたのは元軍人だという謎めいた男ロイス。彼はメイヴンに自分のチームで働かないかと言ってきた。除隊後鬱屈した日々を送るメイヴンのような男たちを集め、麻薬組織を襲撃して街を浄化すること―それがロイスの“仕事”だった。戦場を思い起こさせる仲間たちとの絆と多額の報酬、すべては完璧に思えた。ある日歯車が狂いだし、街に血が流れ始めるまでは…。

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「機関銃要塞の少年たち」





友だちと遊び、喧嘩をし、親に内緒で秘密基地をつくりあげる。
どこにでもある、子供たちの日常。
違うのは、ある日突然、近隣の家がまるごとなくなってしまう恐怖と
隣り合わせの日常だということ。
そして、彼らの秘密基地には武器があったこと。
戦時下の生活の中での、子供故の純粋さと、無自覚な残酷さ。
戦争コレクションの延長で拾った機関銃。
「機関銃要塞」はそこに敵兵を受け入れることで完成する。
敵兵ルーディと子供たちの交流には、気持ちがあたたかくなった。
そして迎える、少し早い少年期の終わり。
二度と会うことはないかもしれない仲間たち。
だけど、共に過ごした時間は決して忘れないだろう。


子供は身勝手に大人を詰るけれども。
大人にならないとわからない苦労がある。
息子が行方不明だと告げられても、自らの任務を放棄しなかったマッギルの姿が、
とても印象的でした。
【ガーディアン必読 42/1000冊】

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「LAコンフィデンシャル 下」ジェイムズ・エルロイ(文春文庫)




貫いた正義。
故に失くした大切なもの。
憎悪を越える正義。故に生れた連帯感。
どんな名声を与えられようとも。
どんな泥にまみれようとも。
結局彼らは警察官でしかなかった。
そして、彼らをもってしても、裁ききれなかった害悪。
あと少しで安寧を手に入れられたはずの男。
満身創痍で表舞台から去らざるを得なかった男。
残った男は彼に対して正義を誓う。
その瞬間が、とてもやるせない。
読後に残るのは、前作と同じく悲哀。
湖畔の家でのリンとエドの情交もひどく切なかった。
過去から現在へ。
点在する事象がすべて繋がっていく後半は圧巻でした。

そして物語は『ホワイト・ジャズ』へ。
暗黒四部作の最終作。
以下、若干ネタバレ??いや、心構え??
『ホワイト・ジャズ』を読まなければ、物語は真のカーテンコールを迎えることはないようです。
『LAコンフィデンシャル』ですべての片が付くと思っていると、
ラストで「ちょっと待って!」と絶叫したくなります。私はもやもやしました。
【ガーディアン必読 41/1000冊】




内容(「BOOK」データベースより)

事件その1、“血塗られたクリスマス”。署内のパーティで酔った刑事たちが勾留中の容疑者に集団暴行!事件その2、コーヒー・ショップ“ナイト・アウル”で虐殺事件発生!事件その3、複数の余罪を暗示する、あまりにもどぎつい変態ポルノ写真の犯濫!事件1、2で明暗をわけた三人は、それぞれのやり方で悪の中枢へと近づいてゆく。

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「LAコンフィデンシャル 上」ジェイムズ・エルロイ(文春文庫)



出世欲。偏見。嫉妬。
歪んだ使命感。衝動的な暴力。
泥臭さ満載のロス市警の警官たち。
彼らは平気で嘘をつき、自分の都合の良い話をでっち上げても、
自分自身に対しては率直で、嘘はついていない。
だから、彼らの行為に眉を潜めても、嫌悪するには至らない。
それぞれが掲げる正義があって、それが噛み合わないものだから、
同じ事件を扱っていても、真っ向から対立するハメになる。
ありえない仮定だけど、彼らが同じ方向を向いて同じ志を抱いたら、
とてつもない力を発揮できそうなのに。
ちりばめられた伏線が時々カチリとはまりながらも、
幾つもの謎と混乱を抱えたまま、次巻へ。

前作でもそうだったけど、導入部の
登場人物の多さに整理がつくまでは、なかなかに大変でした。
とはいえ、気づけば途中からは一気読み。
こちらの作品はできれば『ビッグ・ノーウェア』からの流れで
読んで頂くことをおススメします。
今回印象に残った単語ナンバーワンは「メリケンサック」。
アメリカ警察の支給品に「メリケンサック」あるの!?←ありません。


内容(「BOOK」データベースより)

賄賂、密告、拷問、虐殺…あらゆる悪行を身にまとって、50年代暗黒絵図を織りなすロス市警のタフな面々。血塗られたクリスマスからナイト・アウルの虐殺へ、血まみれのLA50年代ふたつの大事件。

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「牧師館の殺人」アガサ・クリスティ(ハヤカワ文庫)



冒頭部分での噂好きのご婦人たちのかしましさについていけるのかとビクビクしたけど、
素人探偵の皆々様の推理展開に、いつしか引き込まれていました。
閑静な田舎町での殺人事件。
ヒリヒリした緊迫感のないままに進行する真犯人探し。
だからこそ、余計に彼らの暮らしぶりや人となりが際立った気がします。
少しずつ浮かび上がってくる事実。
垣間見える誰かの思惑。
語られる真実。そして嘘。
絡まる糸を解きほぐし、真実へとたどり着く過程は十分楽しめました。
そして、事件とは全く関係ありませんが
牧師の若い妻、グリゼルダがなんだいかとってもチャーミングでした♪

いちばん不可解だったのは、料理のできないメイドをずっと雇い続けていること。
どうせ作ってもらうなら美味しい料理が食べたいです!(笑)




内容(「BOOK」データベースより)

嫌われ者の老退役大佐が殺された。しかも現場が村の牧師館の書斎だったから、ふだんは静かなセント・メアリー・ミード村は大騒ぎ。やがて若い画家が自首し、誰もが事件は解決と思った…だが、鋭い観察力と深い洞察力を持った老婦人、ミス・マープルだけは別だった!ミス・マープルの長篇初登場作を最新訳で贈る。

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「アルジャーノンに花束を」ダニエル・キイス(早川書房)



幸せって?家族って?友達って?
普遍的な正解のない問を終始突きつけられながら読了。
知ること。学ぶこと。
誰にだって与えられた権利のはずなのに。
知力を増していけばいくほど陥る孤独。
彼にとっての幸せはどこにあったのだろう?
人が彼から離れていった理由が身勝手なら、
再び歩み寄ってきた理由も身勝手だ。
世界を知ってしまったら、知らなかった自分には戻れない。
この先の自分の状況を理解した上で、それを受け入れる以外の選択肢がない恐怖。
次第に崩れていく文章のやるせなさ。
それでも、彼は最後まで誰かの幸せを思っていた。
それでも、彼は不幸ではなかった。

再読して改めて、本書がたくさんの人に読み継がれていってもらいたい
名作であることを実感。
大昔の読書ノートを引っ張り出してみたら、初読は16歳の時でした。
そして、言ってること、変わってない(笑)
当時の私もチャーリーにとっては何が幸せだったのかを自問していました。

内容(「BOOK」データベースより)

32歳になっても幼児なみの知能しかないチャーリイ・ゴードン。そんな彼に夢のような話が舞いこんだ。大学の先生が頭をよくしてくれるというのだ。これにとびついた彼は、白ネズミのアルジャーノンを競争相手に検査を受ける。やがて手術によりチャーリイの知能は向上していく…天才に変貌した青年が愛や憎しみ、喜びや孤独を通して知る人の心の真実とは?全世界が涙した不朽の名作。著者追悼の訳者あとがきを付した新版。

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「動物農場」ジョージ・オーウェル(角川文庫)



最初はみんな、同じ夢を見ていた。
同じ理想を掲げていた。
成就した反乱。
自らの手による政治。
だが、いつしか生じた格差は歪みを産み、最初に掲げた理念を持歪ませる。
そして始まる、追放。虐殺。圧制。
だが、彼らは声を上げることができない。
絶対的な恐怖を盾に出され、小さな疑問を飲み下す。
次第に停止していく思考。
気付けば、どうにもならない支配に呑みこまれていく。
項を捲っていくほどに、ジワジワと押し寄せる薄気味悪い恐怖。
それは、豚の在り方に起因する。
何故そこを目指した?
何故そう在ろうと思った?
いろいろと考えさせられる物語。

その状況を受け入れざるを得なかった動物たち。
理不尽を感じながらも、彼らをジワジワと追い詰めていく豚のやり方が
本当にいやーな感じ。


内容(「BOOK」データベースより)

飲んだくれの農場主を追い出して理想の共和国を築いた動物たちだが、豚の独裁者に篭絡され、やがては恐怖政治に取り込まれていく。自らもスペイン内戦に参加し、ファシズムと共産主義にヨーロッパが席巻されるさまを身近に見聞した経験をもとに、全体主義を生み出す人間の病理を鋭く描き出した寓話小説の傑作。巻末に開高健の論考「談話・一九八四年・オーウェル」「オセアニア周遊紀行」「権力と作家」を併録する。 --このテキストは、文庫版に関連付けられています。

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「俺たちの日」ジョージ・P・ペレケーノス(ハヤカワ文庫)



貧しさの中でも笑いあい、喧嘩をし、元気いっぱいに走り回っていた悪ガキたち。
世界大戦という戦いに巻き込まれ、帰らなかった仲間もいた。
戦争を生き抜いた彼らは、戦後のアメリカでそれぞれの日々を営んでいる。
そんな彼らの生き様を淡々と綴った物語。
重ねた歳の分だけ増える柵や行き違い。
自らの意思には関係なく、やがてくる、決断の時。
大切なものを守る為に彼が選んだのは、後には引けない道。
覚悟を決めた彼らの辿る道が見えてしまった瞬間、頁を捲る手が震えた。
降り損なったバス。
壮絶な幕引き。
その日を「俺たちの日」と笑いあった彼らに弔いの酒を。

「愛してるよ」
方々に遺した彼らの言葉に胸が軋む。
フローレックが振り返る思い出の中に在る
ピートたちと過ごした時間が、キラキラと輝いたものであるといい。
本書に先駆けた三部作と、本書に続く三部作があるんですね。
き、気になるわ!
心にズシンと残る男たちの物語。
ハードボイルド好きにはお勧めです。

内容(「BOOK」データベースより)

ギャングのボスのために借金を取りたてる―どんな危険も顧みない幼なじみのジョーとピートにとって、それは簡単な仕事だった。が、非情になりきれないピートは取り立てを見送り、見せしめのためギャングの手下に脚を折られてしまう。三年後、小さな食堂の店員として働くピートのまえに、いまやボスの片腕となったジョーが現われ…“ハードボイルドの次代を担う”と絶賛される著者が贈る、心を震わせる男たちの物語。

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「ニューロマンサー」ウィリアム・ギブスン(ハヤカワ文庫)



めまぐるしく行き来する、電脳世界と現実。
いつしか、曖昧になる、二つの世界の境目。
濁流のように渦巻くのはイメージの洪水。
それはすべて、言葉から思い浮かべた私の想像の産物。
だが、それでいい。
想像は際限なく自由。
私も彼らと一緒に浮遊する。
イカれた電脳世界を。
読み解こうとするものは、誰にとっての真実か。
波打ち際でのシーンがとても印象的。
少年の明かした真の名。
それは、物語の総称。
その瞬間、何故か鳥肌がたった。
到底理解しきれてるとは言えないけれども、
「イカしてる」という言葉が最適だと思える物語。
再読必須です。

私が最も魅了されたのは、ハイテクと汚職の街、千葉シティ。
“さらりまん”の訳語が、とても微笑ましい。
電脳世界の彼女に「寒くなるから」とジャケットを渡したケイスが
とてもカッコよかった。


内容(「BOOK」データベースより)

ケイスは、コンピュータ・カウボーイ能力を奪われた飢えた狼。だが、その能力を再生させる代償に、ヤバイ仕事をやらないかという話が舞いこんできた。きな臭さをかぎとりながらも、仕事を引き受けたケイスは、テクノロジーとバイオレンスの支配する世界へと否応なく引きずりこまれてゆく。話題のサイバーパンクSF登場!

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