きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「threesome…」榎田尤利(リブレ出版)
「現実世界でなくしたものが、夢の中で蘇る。
そして夢から覚めた途端に、再びすべてを失ってしまう」
何かが欠けていて、どこかが壊れていて。
淋しさに気付かないふりをして、愛を嗤う。
甘さのない乾いた世界。
だからこそ、そこに介在する情が哀しい。
当人を目の前にしながらも、写真にしか手を伸ばすことのできなかった櫛田。
辻が財津とも菊池とも築くことのできない絆を確かに彼は持っていたのに。
「さよなら」
その言葉を言わせたのは、櫛田自身だ。
疲れ切った辻を労わるように甘やかす財津と菊池。
明日また、活力を伴って目覚めるために。
残酷で厳しい現実世界の中で、彼ら二人に愛を囁かれながら、
愛を語らない辻は、これからもしたたかに生きていいくのだろう。
乾いた切なさが尾を引く読後感でした。
やっぱり榎田さん、好きだわ。
内容(「BOOK」データベースより)
快楽主義で女好きの極道・辻良典は、あるきっかけから、男ふたりと肉体関係を持つようになった。切れ者弁護士の財津と、使い走りの舎弟・菊池―ふたりから鬱陶しいほどの愛を捧げられながらも、辻が愛するのは常に自分だけだったが…。大人気エロティック短編集「erotica」内の続編が、長編書き下ろしで登場。
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「一瞬の風になれ 第二部」佐藤多佳子(講談社文庫)
【でも、もう、降りることのできない山を登っているのだと思った。
仲間たちと。苦しさと喜びをともに。】
今日と同じ走りを再現することはできない。
すべては、一回きりの走りだ。
だからこそ、その一回がとても大切で、その瞬間にすべてを賭ける。
その一瞬に、様々な想いをぶつけ、感情を揺さぶられ、責任を感じ、
悔しさを噛みしめて、喜びに沸く。
試合で勝てない自分を思い描いたとしても、
明日走ることの出来なくなる自分を思い描いている者はいないだろう。
守屋のために連のみせたこだわりと本気。
健一の怪我がきっかけでぶつけ合う悲鳴のような言葉。
離れようとした部に再び戻っていく新二の姿。連の言葉。
後半は本当に涙が溢れて仕方がなかった。
次巻は「走りたい」という想いを再び胸にいた新二たちの最後の学年の物語。
ドキドキします。
内容(「BOOK」データベースより)
オフ・シーズン。強豪校・鷲谷との合宿が始まる。この合宿が終われば、二年生になる。新入生も入ってくる。そして、新しいチームで、新しいヨンケイを走る!「努力の分だけ結果が出るわけじゃない。だけど何もしなかったらまったく結果は出ない」。まずは南関東へ―。新二との連の第二シーズンが始まる。吉川英治文学新人賞、本屋大賞ダブル受賞。
「一瞬の風になれ 第一部」佐藤多佳子(講談社文庫)
【神様にもらったものを粗末にするな。
もらえなかったヤツらのことを一度でもいいから考えてみろ】
共に戦う仲間がいるからこそ、そして、
絶対に負けたくない相手がいるからこそ、更なる速さを目指して頑張れる。
憧れるだけではなく、いつかは彼以上のスピードで走りたいと、希う。
部活に対する姿勢の温度差でぶつかりあいながらも、
次第にチームとしてまとまっていく姿。
他校の選手たちと試合ごとに顔見知りになり、言葉を交わしていく姿。
指導者に対する反発
恋愛事でのもやもや。
家のこと、犬のこと、家族のこと、兄弟のこと。
どれをとっても、10代のその瞬間でしか味わうことのできない感性が滲んでいて、
読んでいて清々しい気持ちになれました。
彼らの成長が楽しみ。
三年間部活としてかかわった陸上部。
フィールドの雰囲気、スタート前の緊張感、先輩への憧れ、限界を認識した時の悔しさ。
等々を懐かしく思い出しました。
内容(「BOOK」データベースより)
春野台高校陸上部、一年、神谷新二。スポーツ・テストで感じたあの疾走感…。ただ、走りたい。天才的なスプリンター、幼なじみの連と入ったこの部活。すげえ走りを俺にもいつか。デビュー戦はもうすぐだ。「おまえらが競うようになったら、ウチはすげえチームになるよ」。青春陸上小説、第一部、スタート。
「遺体」石井光太(新潮社)
津波で亡くなった一人でも多くの方々を家族の元へ帰そうと、
そして、土葬が検討される中、何とか火葬して供養できるようにと、
一心不乱に努力した数多くの方々へのインタビューをまとめたルポルタージュ。
遺体を丁寧に扱い、語りかけ、身元を示すものを見つけ出そうと、
懸命に努力する数多の人たち。
一人一人がそれぞれの立場で今の自分にできることを。
模索しながら十分すぎる程心血を注いでいるにもかかわらず、
それでも、他にもっとなにかできることが、と、自らに問う姿勢に胸を打たれた。
津波に流されて建物が何もなくなった土地に、
穏やかな日差しが降りかかる光景を見た時、涙が溢れて仕方がなかった。
内容(「BOOK」データベースより)
あの日、3月11日。三陸の港町釜石は海の底に沈んだ。安置所に運び込まれる多くの遺体。遺された者たちは懸命に身元確認作業にのぞむ。幼い我が子が眼前で津波にのまれた母親。冷たくなった友人…。悲しみの底に引きずり込まれそうになりながらも、犠牲者を家族のもとへ帰したい一心で現実を直視し、死者の尊厳を守り抜く。知られざる震災の真実を描いた渾身のルポルタージュ。
「ワンダーリング」一穂ミチ(ディアプラス文庫)
分かり合えないからこそ惹かれ、相容れないからこそ、
相手の存在に苛立って、もどかしくなる。
雪が藤堂にだけズバズバ物が言えて突っかかれるのは、
裏を返せば彼にだけ甘えられるということ。
素直になれないのは、ありのままの自分を認めてもらえないことへの反発。
柔和で穏やかな性質だと思っていた藤堂が見せつけた強心臓っぷりがかっこよくて、
裏カジノでのやりとりにはドキドキしました。
そして悔しさに泣く雪は、本当にルーレットが好きなんだなぁ、と。
令輝のけじめのつけ方は、相当粋な計らいだった。
ここでの雪の涙は安堵と感謝の涙。
藤堂の包容力は底なしだと思うので、安心して振り回すとよいと思います(笑)
前作から想像していた藤堂と雪のイメージがまったく違っていて、
最初は戸惑いつつも、脳内で軌道修正(笑)
藤堂は思っていたよりも真っ当な感覚を持った常識人で、
雪は思っていたよりも随分と複雑な性格をしていました。
良い意味で裏切られた感じ。
こたつのエピソードは相当可愛すぎました。
内容(「BOOK」データベースより)
七つの年にラスベガスのカジノで拾われた芦原雪。自分を拾ったシンガポール華人の令輝から徹底的にルーレットを仕込まれ、雪は一流の腕を持つまでになる。厳しい育ての親とは対照的に、“雪”に名前をつけ、無条件に甘やかそうとするのが令輝の腹違いの弟、藤堂だった。雪にはそれが煩わしくて仕方ない。現在は藤堂が社長を務める東京の公営カジノで働く雪だが、どんなに素っ気なくしても藤堂の態度は変わらず…?
「ノーモアベット」一穂ミチ(ディアプラス文庫)
【俺だって、好きなのに。ずっと前から、好きだったのに。】
家族同然の従兄弟同士。
近くにいる分素直になれなくて、関係性を壊すのが怖くて踏み込めない。
父親に対する反発。つくつもりのなかった嘘と誤解と嫉妬。
捩れた感情の果ての「しんどい」という言葉。
15年越しの一哉の告白には涙が出ました。
泣いて泣いて、泣きつくして。
そこからの逸の巻き返しはお見事。
欲しかったら自分から全力で捕りにいく。
全てを賭けて臨んだ「絶対に負けたくない賭け」
そしてまさかの逃避行からの初エッチ。
一生一哉しか知らなくていい。
心の声だけど、至上の愛の告白だと思いました。
そして、イイ感じで絡んでくれた藤堂さんがタイヘンかっこよかったです。
モンスターペアレントを親バカと翻訳した香住さん。
彼女の母親っぷりと懐の広さって半端ないぁ、と思っていたけど。
ふと零した本音がなんだか切なくて、
でも平気な顔しなきゃってのはなんだかわかるわ~、と、妙な親近感。
内容(「BOOK」データベースより)
東京湾に浮かぶ日本初の公営カジノNew Marina Bay。都の広報職員として出向している逸は、ディーラーの一哉とは家族同然の従兄弟同士。けれどここ数年、顔を合わせれば言い争いばかりで、どう接していいのかわからない。自分と母を置いて世界中のカジノを飛び回っている父への反発もあり、父と同じ道を選んだ一哉に対してどうしても素顔になれない逸だけど…?全てを賭けた、一世一代の恋の大勝負開幕。
「虐殺器官[新版]」伊藤計劃(ハヤカワ文庫JA)
美しいとすら言える亡骸の描写に鳥肌が立つ導入部。
これは、死者を語りながら生者を語る物語。
他者とそして自己の内面との対話を繰り返しながら問われる罪の意識。
「大切な人の死体は物に見えない」
だから、面識のない数多の人間を手にかけることができるし、
大切なたった一人の人間を手にかけることを躊躇し、苦悩する。
たとえ、平和な世界を願ったとしても、
それが他者の累々とした屍の上に築かれる社会がまっとうであるはずがない。
クラヴィスはそのことに気付き、そして選択した。
自らの意志で罪を背負うことを。
たとえその思考の果てにどんな結果を引き起こしたとしても、
人は考えることをやめてしまったらいけないんだと思う。
一気に読みきった初読の時に比べると、倍近く読むのに時間がかかったのは、
彼らの紡ぐ言葉を拾いもらすまいと、懸命になっていたためか?
咀嚼しきれていない部分もあるだろうけど、反芻しながら噛み砕いて行こうと思います。
映画が楽しみ。
内容(「BOOK」データベースより)
9・11以降の、“テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう…彼の目的とはいったいなにか?大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは?現代の罪と罰を描破する、ゼロ年代最高のフィクション。
「ジャイアントキリング 35」ツジトモ(モーニングコミックス)
「ピッチに立つ以上誰一人手ぶらで帰ってくるんじゃねぇぞ」
厳しい言葉ではあるけれども、プロとしてそれは当たり前に要求されること。
だけど、達海のサッカーの根底にはわくわくするような楽しさがある。
ガツガツした大阪の気質と、ダルファーのハングリーさは噛み合ってるんだろうなぁ。
今回の試合は全力での泥臭い試合展開だけど、迫力があっておもしろい。
「俺達は変わった」
一丸となって戦うETUの選手たちの頼もしいことといったら。
選手あっての監督。監督あっての選手。
如実に感じさせられる試合展開だった。
躍動感あふれる椿のシュートで次巻へ。
楽しみだわ。
内容紹介
首位・大阪ガンナーズを相手に1点をリードし、ハーフタイムを迎えたETU。浮き足立つ選手達だったが、ロッカールームでの達海の言葉に選手達の表情は一変する――。経験に打ち克つには、変化と成長しかない。勝て、そしてフットボーラーとしての未来を拓け! 激闘の後半戦、スタート!!
「誘眠ドロップ」崎谷はるひ(ガッシュ文庫)
【たぶん、どっちも過剰で、欠乏していて、
ただ、ふたりでいれば、きれいにまるく完結する】
鉄壁の自制心で恋情と劣情を隠す空慈に、体当たりの告白をした光樹。
お互いしか目に入っていない二人の
会話の噛み合わなさと、必死さと、気持ちのまっすぐさに、
可愛い~~!!と、ジタバタしながら読み進めていたのですが。
それだけで終わらないのが崎谷さん。
空慈の情の強さにゾクリとし、光樹の見た夢に胸が苦しくなりつつも、
何年たっても一緒にいられる二人の姿に安堵するのでした。
二人でいて完璧な一対。
それはたぶん、底の知れない共依存。
だけど、そこに陰はなく、どこまでも微笑ましい二人がいました。
流れた時間の分だけ、人として成長している姿も嬉しい。
お幸せに☆
内容(「BOOK」データベースより)
平凡な高校生・梶尾空滋の幼馴染み兼同居人は、人気アイドルの藤代光樹。“クールでミステリアスな美少年”と有名な光樹だが、その実態は生活能力皆無で、空滋がいないと寝食もままならない超あまったれ。危なげな光樹のため、空滋は恋心をひた隠し、世話を続けている。空滋のそばでしか安眠できない光樹とベッドを共にしながら情欲をこらえることにも慣れた。可愛い幼馴染みをずっと守っていく覚悟だったが、ある日、光樹に思いがけないスキャンダルが―。
「ステノグラフィカ」一穂ミチ(ルチル文庫)
【好きが過ぎると泣きたさを催されるものだとは知らなかった】
ひっそりと胸の内で育まれてきた恋心。
決して表に出てくることのないはずだった秘めやかな想い。
彼の声に耳をそばだて、ただ存在を感じている
だけで満ち足りていた碧の想いは、
とある出来事から西口と接点を持ったことによって、動き出す。
見栄を張らず、弱音も吐けて、自然体で接することのできる相手と過ごすことの心地よさ。
元妻との恋に傷ついた西口にとって、碧の存在は得難いものだったのだろう。
瞬間的に燃え上がるのではなく、相手を知れば知る程静かに募っていく二人の想いが
とてもきれいに伝わってきて、甘やかで幸せな余韻に浸れました。
すみれの送別のシーン。
送る方も送られる方も気持ちのいい別れ方で本当によかった。
いつか、彼女が再び彼らと出逢う未来を碧や西口と一緒に信じられる。
そして私は「よくないやつ」と評された佐伯がやっぱり好きだわぁ、と、改めて思いました(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
国会で働く碧は、その「声」に耳をそばだててしまう。滑舌よく明瞭な声の主は新聞社政治部記者の西口。食堂の定位置―碧の隣のテーブルで忙しなく騒がしく食事して去る彼は、日々をひっそり重ねる碧とはまるで正反対だった。しかしある出来事を境に、西口は碧を何彼と構うようになる。彼の素顔に触れるにつれ、次第に惹かれていく碧だが…。