きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
「黒警」月村了衛(朝日新聞出版社)
【窮地に追い込まれて人は初めて己と己以外の他者の本性を知る】
人間、誰しもが表裏の顔を持っている。
警察官、武闘派ヤクザ、中国黒社会の首領。
立場の全く違う三人を結びつけたのは、ヤクザの男が垣間見せた、
日向に立つ者のような裏の顔。
信じると決めた男になら、裏切られても構わない。
無気力だった警察官にそこまでの決意をさせたのは、
一人の男の死、そして、同じ義憤を抱く男からの義兄弟の契り。
彼らの仇である巨悪のラスボスは、的外れな正義を振りかざす人間に、
不相応な権力を与えちゃダメよね、の、典型。
その男を斃すために投じた仕掛けがうまくはまっていく様は、小気味良かった。
タイトルは一人の男の再生を見事に表現していたと思う。
相対することで、過去の最低な自分を忘れないでいようとするかのような
沢渡と波多野の関係性がいい。
ファミレスで向き合う沢渡と波多野の間に沈が割り込むシーンがなんだかツボでした。
内容(「BOOK」データベースより)
警視庁組織犯罪対策部の沢渡と滝本組幹部の波多野は、組織に追われる中国人女性を見殺しにしたトラウマを抱えていた。そんな二人のもとに中国黒社会の新興勢力「義水盟」の沈が現れる。黒社会の大組織・天老会に追われているカンボジア人女性サリカを匿ってほしいと沈から頼まれる二人。サリカは天老会の最高機密を握っているらしい。義侠心に富む波多野はサリカを隠れ家に匿うことになるが…。トラウマをもつ無気力警官、武闘派ヤクザ幹部、そして若き黒社会の首領が交錯するとき、漆黒の闇に潜む巨悪が顔を覗かせる―『機龍警察』の著者による書き下ろし長篇警察小説。
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「夏の吐息」小池真理子(講談社文庫)
【生き続けること、愛し続ける事、諦めないこと、
笑うこと、突き進むこと、振り返らないこと】
淡々とした言葉でつづられる、愛の話が六篇。
一つ一つの物語の後を引く余韻が鮮烈で、
次の物語に進む前に一度本を閉じて、その余韻を噛みしめる。
すると、流麗な言葉で綴られる物語の情景が浮かんできて、気持ちが揺さぶられる。
やるせなさと切なさに涙が滲む物語。
生死観を考えさせられる物語。
街の活力と人の逞しさに力づけられる物語。
それらは、命への讃歌であり、愛の讃歌でもある。
特別な話はひとつとしてなく、どれもが日常の中で起こり得る物語。
だからこそ、余計に胸に迫るものがある。
特に印象に残ったのは
「月の光」の不安定さ「パロール」のやるせなさ「上海にて」の力強さ。
六篇の収録順はこれ以外ないと思いました。
内容(「BOOK」データベースより)
永遠に待ち続けると思うのです。世界のどこに行っても、地の果てにいても、私はあなたを待っている。―六年前、突如行方が分からなくなった恋人を待つ女性のモノローグからなる表題作他、濃厚な死の影の間近で紡がれる詩情。
「ワーキング・ホリデー」坂木司(文春文庫)
あったかくてほっこりする、日なたの匂いのする物語。
亡くなったと言われていた父親・大和が実は生きていることを知って、
夏休みを利用して会いに来た進。
突然現れた小学校5年生の子供に戸惑いつつも、
父親らしくあろうとする大和の態度は好感が持てます。
物分かりの良すぎる子供だった進が夏休みの終わりに
「帰りたくない」と感情を爆発させて駄々をこねるシーンでちょっと安心しました。
うん。
子供はこのくらいじゃないと。
楽しかった一夏の思い出の後には、最初から決められていた別れ。
だけど、これが最後ではない。
ほら、次は冬休みが!
読後感の申し分ないホンワリしたお話でした。
内容(「BOOK」データベースより)
「初めまして、お父さん」。元ヤンでホストの沖田大和の生活が、しっかり者の小学生・進の爆弾宣言で一変!突然現れた息子と暮らすことになった大和は宅配便ドライバーに転身するが、荷物の世界も親子の世界も謎とトラブルの連続で…!?ぎこちない父子のひと夏の交流を、爽やかに描きだす。文庫版あとがき&掌編を収録。
「デルフィニア戦記18 遥かなる星の流れに・下」茅田砂胡(C・NOVELS)
そして物語は終わりを告げる。
6年間苦楽を共にした同盟者は自らの故郷へと帰っていく。
別れの言葉を覚悟したウォルの涙。リィの涙。
離れ離れになることは身を切られるように寂しくて悲しいけれども。
そして、様々なことがあった6年だけれども。
「楽しかった」
その言葉で括れる6年であって良かったと思う。
彼らと共に戦ってきたキャラクターの魅力に引っ張られて、一気に読み切りました。
読みつづけている間中、私自身もとても楽しかったです。
終わりが近づくにつれ寂しくなっていく感覚を味わうのは久々。
出会えてよかったシリーズです。
沖さんのイラストがまた素晴らしく……イラスト集欲しいなぁ……←わりと真剣。
内容(「BOOK」データベースより)
放浪の戦士と異世界の少女の出逢い、すべてはここから始まった。盟約という堅い絆で結ばれた二人は、いくたの危地を乗り越え、あまたの合戦に勝ち抜いて、戦士は大国の王に、少女は王と国の守護神となった。獅子王と妃将軍がつむぐ、デルフィニアの伝説がここに完結する。
「デルフィニア戦記17 遥かなる星の流れに・上」茅田砂胡(C・NOVELS)
最後の奇跡……読み進めたいし、読み終わりたくないしで、気持ちは複雑。
リィを救う為に王位を(一時的に)捨てて出奔したウォル、
そして彼と共に飛び出したルウとシェラ。
夫と間男、もとい、ウォルとルウの会話は相変わらず緊迫感がなくて笑えます。
彼らが侵入した砦でリィの起こした奇跡。
崩れ落ちた瓦礫の中でウォルと再会したイヴン、バルロ、ナシアス。
イヴンがウォルを遠慮なく締め上げるシーン、好きだわ。
始終こうして屈託なく彼らとど付き合える関係こそがウォルの望むものなんだろうけど。
もう彼は後戻りできない「国王」という道を歩んでしまっている。
リィが宿敵の一人を打ち取ったところでいよいよ最終巻へ。
内容(「BOOK」データベースより)
リィを嫡子ナジェックの妻とする!勝利の女神を辱め、デルフィニアの戦意を削がんとするゾラタスの卑劣な策に、三騎はタンガへの途をひた走る。王位を捨て一戦士に戻ったウォル、異世界の相棒ルウ、己の意志で行動するシェラ―。昏々と眠り続けるリィだったが…。難攻不落のボナリス城に轟音が響く時、最後の奇跡が始まった。
「デルフィニア戦記16 伝説の終焉」茅田砂胡(C・NOVELS)
囚われの身となったリィ。
入れ替わるようにウォルの元へ来たリィの相棒のルウ。
ウォルのリィに対する想いとルウのリィに対する想いが伝わってくる二人の会話がとても好き。
「あの子に優しくしてくれてありがとう」
なんだか涙が溢れそうでした。
自らの意志で自らの生きる道を選んだシェラの決意。
彼の立ち回りは見事でした。
そしてファロット一族との決別と崩壊。
イヴンとルウのとぼけたようなやりとりは大変微笑ましかったです。
突拍子もない手段で単身でリィを救いに行くことを選んだウォル。
爽快な奪還劇を期待して次巻へ。
麻袋を見るとバルロは嫌な顔をするようですが。
私は笑ってしまいます。
「麻袋(特大)」この表記、ありなんですか!?(爆笑)
怒っている狸寝入りの虎さん。
この例えは秀逸すぎました。
内容(「BOOK」データベースより)
生きて戻れ―リィの言葉に送られてシェラは北を目指す。ついに、ヴァンツァーそしてファロット一族との死闘が演じられる時がきたのだ!一方、シェラと別行動中、騎士団員千人の命と交換に虜囚となり意識を無くした戦女神にレティシアは微笑みながら歩み寄る。研ぎあげた必殺の針を手に―。
「デルフィニア戦記15 勝利への誘い」茅田砂胡(C・NOVELS)
情勢が一気に動きましたが……
今回は海の上での戦い方があまりにもど迫力過ぎました。
味方でさえ度肝を抜かれて戦いの手を止めてしまう始末。
「ざくざく刻む」その戦いっぷりは読んでいてスカッとしました。
イヴンの活躍が個人的にとてもうれしい。
人脈って本当に宝だと思う。
そして、人との縁を繋いでいけるかどうかは人徳。
成り行きだって言うけど、全部イヴンじゃなきゃできなかったこと。
竹を割ったような気質の先住民の戦士たちは好印象でした。
リィに対する陰謀がめぐらされる中、とうとうリィの世界から迎えが……
内容(「BOOK」データベースより)
トレニア湾にスケニアの大艦隊、国境にはタンガ軍2万集結、ビルグナ砦陥落―!王妃の矢傷も癒えぬうちにデルフィニア包囲網は厚く強固に完成されつつあり、獅子王ウォルは防戦一方に―。この危機に黒衣の独騎長は飄然と形勢逆転の『切り札』を担ぎ出すべく、単身大海に乗り出すのだった。
「デルフィニア戦記14 紅の喪章」茅田砂胡(C・NOVELS)
読み手である私自身も、その神がかった無敵ぶりに、
リィは絶対に傷つかないものだと思っていたようで……
毒矢を受けたリィの状態に衝撃を受けました。
手負いとなったリィが身を守るために発動させた力。
惨状の中で動じないウォルは本当にありのままのリィを受け入れているんだなぁと思います。
この二人、文句なしの一対だわ。
とはいえ、リィには戻らなければならない世界がある。
『太陽』と『月』と『闇』の関係も明らかにされてしまいました。
二つの大国と暗殺集団とを敵にまわして彼らがどう戦うのか。
気になるので一気に読み進めます。
バルロはナイスフォローだったわ。
そしてイヴンの頑固さが好き。
内容(「BOOK」データベースより)
フェス河以北の一帯カムセンの地がデルフィニア領となって半年。タンガの元領主らがゾラタス王の制止すら振り切り、矢地回復を叫んで挙兵する。早急に鎮圧せんものと最前線で大剣を揮う戦女神リィ。だが、戦闘の混乱についてファロットが暗殺の魔手を延ばす。リィに向け必殺の矢が放たれたのだ。
「デルフィニア戦記13 闘神達の祝宴」茅田砂胡(C・NOVELS)
一致団結して王妃を祝典に出席させることに成功した国王と愉快な仲間達(笑)。
華やかな宴に隠れて暗躍する者もいれば、
思いがけない再会を果たす者もいる。
それがまた、新たな惨劇を生む。
「剣で殺すのと噛み殺すのと何が違うのか」
あの時の問いかけを改めて想起させられる。
暗殺者を剣で仕留めたのなら、
リィがアランナから化け物と叫ばれることもなかったんだろなぁ。
ナシアスがラティーナを。
シャーミアンがイヴンを。
必死に口説き落とそうとしているところを出歯亀よろしく聞き耳を立てる
国王・王妃・その他の愉快な仲間達。
そんなことをしている間に何やらキナ臭いことになっていますよ~?
レティシアの悪意のない殺意がゾクリとする。
彼に比べれば悩めるヴァンツァーはずいぶんと人間らしいよね。
そして、レティと対峙することによって、リィの人間離れした部分が際立ってしまう。
ジルとアヴィーはなんとなくスカールとリーファを彷彿とさせられました。
内容(「BOOK」データベースより)
獅子の紋章を象った招待状が届けられ使者が大陸全土からコーラルに赴く。豪華な式典の背後でタンガ・パラスト両大国は飽くことなき権力への執念に策動し周辺諸国と大華三国のかかわりは微妙にかわり始める。ウォルとリィは毅然と顔を上げ互いの手をとり大広間に踏み出した。偽りの宴が始まる―。
「デルフィニア戦記12 ファロットの誘惑」茅田砂胡(C・NOVELS)
話の通じないリィを説得するためにあの手この手を尽くす人々の必死さが本当にお気の毒。
国王夫婦の離婚の危機を死に物狂いで回避するも、リィの不用意な一言からさらにもう一波乱。
タッグを組んだバルロとイヴンvsリィの喧嘩シーン、ガッツリ見たかったわ(笑)
そして今回はリィの思いもよらない化けっぷりに度肝を抜かれます。
挿絵、神々しすぎました。
主だった面々が揃った和気藹々としたお茶会の場が、一転、暗殺現場へ。
そして繰り広げられるリィとレティシアの壮絶な死闘。
だが、二人は奇妙な理解を示しあう。
人ならざる者は、人ならざる者と分かり合う。
それでも、結局ウォルこそがリィの理解者であり、同士であることを伺わせる展開に
胸をなでおろしました。
内容(「BOOK」データベースより)
コーラル城の華やかな喧噪にまぎれ王妃暗殺の罠は巧妙に精緻に張りめぐらされた。無関係に見えた少女の死。王宮の内部で殺された侍女。決戦の場となった雪原で暗殺集団ファロットの青年はあでやかに微笑む。リィの本能が警鐘を鳴らす。この奇妙なイキモノは「人間」なのか。