きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
カテゴリー「BL小説」の記事一覧
- 2021.09.22 「金のフォークに銀の匙」かわい有美子 (SHY NOVELS)
- 2021.09.19 「最凶の恋人 ―for a moment of 15―」水壬楓子(ビーボーイスラッシュノベルズ)
- 2021.09.13 「冬色ドロップス」尾上与一 (幻冬舎ルチル文庫)
- 2021.09.08 「HOLLY MIX」 (Holly NOVELS)
- 2021.09.07 「二月病」尾上与一 (Holly NOVELS)
- 2021.09.05 「彼岸の赤」尾上与一 (ドルチェノベルズ)
- 2021.08.31 「僕のねむりを醒ます人―Sanctuary―」沙野風結子 (Splush文庫)
- 2021.08.22 「色悪作家と校正者の別れ話」菅野彰 (ディアプラス文庫)
- 2021.08.10 「緑土なす きみ抱きて大地に還る」みやしろちうこ(リブレ出版)
- 2021.08.05 「緑土なす 黄金の王と杖と灰色狼」みやしろちうこ(リブレ出版)
「金のフォークに銀の匙」かわい有美子 (SHY NOVELS)
大人げなくて利己的個人主義な大人・不破と
温和でふんわりした大学生・三谷。
性格に難ありな不破がギリギリ悪い人になってない描写がうまいなーと。
外堀を埋められて頼まれごとを断れなくなっているあたり、
本人が思ってるほど世渡り上手じゃないよね。
そしてなんだかんだ三谷の面倒をみたりで、本質は優しいんだと思う。
それを引き出した三谷は性格の良さと人当たりの良さが天然記念物級の良い子。
三谷に感化されて不破の雰囲気がやわらかくなっていく過程が心地よい。
「逆玉」と言われて「かっこ悪い」と肩を竦めた不破が微笑ましかった。
センターラインをオーバーして突っ込んできた対向車を避け、
ハンドルを切ったはずみで隣の走行車線の車にぶつかり、突っ込んできた車は無傷。
結果、ぶつけてしまった自分が一番重い過失となってしまった業者さん曰く。
「自分が絶対に間違ってないと思ったら、たとえ反対車線の車が突っ込んできてもハンドルを切ってはいけません!」
そうも言っていられないんだけど、言いたくなる気持ちはわかる。
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「最凶の恋人 ―for a moment of 15―」水壬楓子(ビーボーイスラッシュノベルズ)
表紙がトンチキじゃないことにほっと胸をなでおろして読み始めた
シリーズ15冊目は、文句なしの面白さでした。
陰謀めいたお話超ウェルカム。濡れ場なしでも無問題。
遥が巻き込まれ体質なのは変わらないなぁ。
頭が切れる分、災厄を招いてしまっているのはお気の毒。
そして好んで巻き込まれに行くのは知紘。
どうしようもない政治家と、どうしようもないヤクザが組んで引き起こした事件。
遥のピンチにはこの男ありの柾鷹の働きぶりはカッコ良かったよ。
今回は待てができるワンコで納得のご褒美。
互いに認識しながらも名乗らない母子の姿はなんだか潔かった。
『組員日誌』を覗いたシリーズ7冊目『ある訣別』の内容を踏まえると、
より楽しめる内容になっています。
このシリーズの表紙はこの着衣路線でいってほしいと、切実に思うわ。
「冬色ドロップス」尾上与一 (幻冬舎ルチル文庫)
短編連作のピュアラブ。
ピュアすぎて……というより、トヨの言動が優等生すぎて、
途中でなんだか落ち着かなくなってきた自分、大丈夫?と思いつつ……
高校を卒業した彼らが大学生になり、社会人になるに至ってようやく
居心地の良いところに着地しました。
この高校生たちが時間を積み重ねていくと、
こんなカップルになるのね、という納得の展開。
最終話とあとがきの赤いドロップの使い方がとても好き。
トヨと伊吹に対してどこまでも自然体だった洋平が好き。
三人で綺麗なトライアングル。
この友情と愛情のベクトルを持ち合わせた三人の関係がずっと続くといい。
面接当日。
事故ではなく肺に穴が開いて入院したのは私の身内。
退院したら面接を仕切りなおそう、と言ってくれた人事の人の言葉は、
誰もが社交辞令的なものだと思っていたんだけど。
本当に面接をセッティングしなおしてくれて、
スルッとその会社に入社できちゃって今に至る……どっちもすごいな。
「HOLLY MIX」 (Holly NOVELS)
今回は尾上さんの番外読み。
『二月病』番外「真夏の花」。
もうやめよう、諦めよう。
そう言い聞かせているうちは、その恋を終わらせることはできない。
想いを伝えることが出来ない相手が始終そばにいる事は、幸せなのか、苦行なのか。
蒼司のお遍路に対する願いが逆転した瞬間がとても印象的で良い。
それでいいんだと思うよ。
『碧のかたみ』番外「間宮」。
間宮って誰?と思ったら補給艦だった。
補給を無視したインパール作戦の惨状を読んだばかりだったので、
配給のありがたみをしみじみ思う。
そしてずいぶん久しぶりに再会した彼らがやっぱり好きだわ、と更にしみじみ。
香川で食べた讃岐うどんが本当に美味しかった。
大盛にすればよかったと、食べてから思った。
お土産に讃岐うどんの半生麺を買って帰ったけど、やっぱりそれも美味しかった。
また行こう、四国。(四県ひとくくり)
「二月病」尾上与一 (Holly NOVELS)
血なまぐさい事件。
高校生男子の日常。
職を辞した元新聞記者。
そして身を焦がすような恋心。
相容れないようなそれらのものがすべて違和感なく混在し、
見事に紡がれる一つの物語。
「何故?」とか「結局犯人は?」とか、
そんなことは些細なことで、圧倒的な読み応えに震える。
二月に恋を告白した蒼司と、少し遅れて自覚した千夏は、
二月が終わる前には深く気持ちを添わせていく。
静かに燃え上がった苛烈な恋。
同じく二月に起こった物騒な出来事は、二月が終わる前に沈黙する。
そして若田は足りない二月を永遠に追い続ける。
そして私は彼らの幸せを希う。
実際に鉄塔を見た時に周囲をがっちり柵で囲まれていて、
「ボルトを抜かれたりいたずらされたりしないようにこうしてるんだよ」という説明をしてもらった。
「何かあったら電気が滞って大変でしょ?」と。
その時は「そうだね」で終わったけど、
まさか実際の送電鉄塔倒壊事件をモデルにした作品にここで出会うとは思わなかった。
経験値って色々繋がるものなのね。
「彼岸の赤」尾上与一 (ドルチェノベルズ)
絶望している、というよりも、未来に対する希望が見いだせなかったが故の恋慈の選択が辛い。
マイナスがマイナスしか呼ばなかった紘平との出会い。
その選択に恋慈が納得づくだったことが根が深い。
だけど。
マイナスをプラスに転じることを可能にした幸久との衝撃的な出会い。
内側に籠った心には周りが何を言ってもダメで、
自分で自分を解放してあげないと幸せになれない。
過去と言う深淵をのぞき込むばかりだった恋慈と
まっすぐに向き合ってその想いを伝え、本音を引っ張り出した幸久。
そして最初に取り付けた約束への見事な着地。
未来を考え始めた恋慈に安堵しての読了。
太郎丸……学校で飼っていたニワトリに冬休み中に餌をあげに出かけて行って、
威嚇どころじゃなくガチで攻撃され、校庭中走り回った思い出がフラッシュバック。
水道が凍っていて水が出なかったから、
プールの氷をたたき割って水を汲んだのがいけなかったのかしら?
「僕のねむりを醒ます人―Sanctuary―」沙野風結子 (Splush文庫)
二人が共有する過去は甘やかで優しい色あいのものが大半だったけれども。
力ずくで捻じ伏せ、凌辱した最後の一日が、幸せな過去を覆いつくす。
そんな幼馴染の11年ぶりの再会。
感情の起伏が停止してしまった雪弥と自身を壊しかねなかった耀。
二人を繋いだのは、耀の別人格の晧。
彼失くしては、二人のどんな未来も立ち直りも語れない。
二人の幸せを願い、懸命に立ち回った晧の在り様が、切ない。
ああ、だけど、彼が存在するに至った経緯を思えば、
それ以外の選択肢はなかったんだろうなぁ。
穏やかに眠りについた彼を思って涙。
私にとっては彼が主役の物語だった。
だって耀はやりたい放題だっただけじゃん。(極論だけど間違ってない)
とはいえ、主人格は彼だからね。
そもそも雪弥が恋をしたのは彼だからね。
ハッピーエンドのはずなのに、なんだかとても切ない。
「色悪作家と校正者の別れ話」菅野彰 (ディアプラス文庫)
愛しすぎたが故の別れ話。
蔵書多い問題からの同棲トライアル。
そんな彼らと一緒になって
公私を分けられない状況に慄き、
互いの頑固さにもどかしくり、
話の噛み合わなさに笑って、
愛情の深さにウルっとなって切なくなって。
で、え、結論そこ!?って驚いて、
だけど、この二人ならそうだよね、と、
しみじみ納得しての読了。
大吾からの正祐を慮る言葉も良かったし、
自分の想いを懸命に大吾に伝えようとする正祐も良かった。
時間をかけてゆっくりと育んでいく愛情の尊さを垣間見た気がして、感慨深い。
続きもスピンも楽しみに待ちます。
無限の書庫。いいなー、私も欲しい。
私が同一の作品で複数冊所有している本は単行本と文庫と、形態が異なる場合においてのみ。
あとは新装版で描き下ろしが入っている時。
他は全て一作品につき一冊ずつ。
例外が太宰の『人間失格』。
これは文庫本の装丁をいろいろと変えてきた新潮文庫の戦略(?)にやられました。(笑)
「緑土なす きみ抱きて大地に還る」みやしろちうこ(リブレ出版)
山野で独り生活してきた足弱にとって、
多くの者に傅かれ、王族として生きていく覚悟を決めるためには
一度原点に立ち返る必要があったんだろうなぁ。
戻った故郷で知った忌まわしい過去の真実。
彼を山で育てた老人の王族に対する悪意が気持ち悪い。
愛情をもって育てたなら、きちんと名前をつけたはず。
一方で、敵地にじっと身を潜めて「その時」に備えていた灰色狼の王族への献身は
ただただ素晴らしい。
報われて良かった。
九死に一生を得たレシェは……うん。やっぱりケダモノだった(笑)
まぁ、足弱が愛を自覚して受け止めてるから良いのかな。
二段組で400頁近いと、
感想も何処から切り取っていいか迷う。
世界観が緻密に作りこまれているから、
矛盾なく展開して、ぐっと引き込まれていくんだろうなぁ。
「緑土なす 黄金の王と杖と灰色狼」みやしろちうこ(リブレ出版)
好き好き大好き言ってれば、何したって許されると思わないでよ?
という思いが途中まで抜けずに、
私の評価が底辺だったレシェイヌ。
とはいえ、彼の立場や置かれた環境を想えば、仕方ないのかな?
でもそれは人としてどうよ?
あれ?彼、人じゃない??
王族が愛し合うことによって土地が肥える。川の水が綺麗になる。
彼の孤独を知り、そのあたりの世界観を汲み取ったあたりから面白くなってきました。
とはいえ、ワンパターンな濡れ場には飽きてきて、そこは斜め読み。
不自由なく暮らせる立場にありながら、
自分にできる事を模索する足弱の佇まいは好印象。
色々気になるので次巻へ!
この物語で特筆すべきは<灰色狼>の皆々様の存在。
王族に仕えることに生きがいを見出し、
かいがいしく二人のお世話をする様がとても楽しい。
というか、仲間内での相談内容がとても愉快。
表紙もイラストも綺麗で、4冊表紙が見えるように並べて飾りたい。
無理だけど(笑)