きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
カテゴリー「小説」の記事一覧
- 2013.03.19 「遮光」 中村文則(新潮文庫)
- 2013.03.17 「小説・震災後」 福井晴敏(小学館文庫)
- 2013.03.13 「145gの孤独」 伊岡瞬(角川文庫)
- 2013.03.09 「僕ら星屑のダンス」 佐倉淳一(角川文庫)
- 2013.03.08 「グラスホッパー」 伊坂幸太郎(角川文庫)
- 2013.03.06 「銃」 中村文則(河出文庫)
- 2013.03.04 「水の時計」 初野晴(角川文庫)
- 2013.03.01 『SOSの猿』 伊坂幸太郎(中公文庫)
- 2013.02.28 『恋』 小池真理子(新潮文庫)
- 2013.02.26 『出口のない海』 横山秀夫(講談社文庫)
「遮光」 中村文則(新潮文庫)
【現実を見ないために、私は敢えて
そういう演技を自分に課したのかもしれなかった】
それは純愛か?狂気か?
両親を亡くし、作り上げた自分を演じながらひとりぼっちで生きてきた主人公が、
ようやく手に入れかけた幸せ。
だが、その幸せは、ある日突然彼の手をすり抜けて、永遠に手の届かないものとなってしまった。
失った幸せを言の葉に乗せる嘘で取り繕いつづける日々。
あたかも、そこに在るかのように。
けれども、砂の城はいつかは崩壊する。
必ず。
あたしがこの本から受け止めたのは、純愛でも、狂気でもなく。
どうしようもない寂しさと哀しみ。
故に。
ラストは泣けて仕方なかった。
内容(「BOOK」データベースより)
恋人の美紀の事故死を周囲に隠しながら、彼女は今でも生きていると、その幸福を語り続ける男。彼の手元には、黒いビニールに包まれた謎の瓶があった―。それは純愛か、狂気か。喪失感と行き場のない怒りに覆われた青春を、悲しみに抵抗する「虚言癖」の青年のうちに描き、圧倒的な衝撃と賞賛を集めた野間文芸新人賞受賞作。若き芥川賞・大江健三郎賞受賞作家の初期決定的代表作。
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「小説・震災後」 福井晴敏(小学館文庫)
【人間はいつだって“結果”を生きているのではなく、
“過程”を生きているのだから】
ニュースで誰かが言っていた言葉を耳にした。
「それは安全神話じゃない。安全願望だ」
言われてなるほど、と、思う一方で、
後付けの理由(理屈)なんて、いくらでも探せる、と思った自分もいた。
否定をすることは簡単だけど、じゃあ、その代替えは?何か案があるの?
誰かを責めるのは簡単だけど、いまは、悪者捜しをしている場合じゃない。
本当にやるべきことはなに?
必要なのは、目の前の事象と向き合い、立て直していくための、勇気と決断力と知恵だ。そして思いやり。
いろんなことを目の当たりにして、いろんなことを考えて。
自分なりにやれることを探して、実際にやってみて。
でも、それだって“結果”ではなく、単なる“過程”にしかすぎない。
そんなふうに思わされた。
解決していない問題は山積みで、時間だけが二年も経過してしまった。
だけど、小さなことでもやらないよりは全然良いし、
何かをやりたくても、実際にはそれをやれない人もいることもわかっている。
結局、この先の世界がどうなるのか。
わかっている人なんて誰もいなくて、みんながそれぞれの立場でいろんなことを考えて、
探りながら未来へとつなげている。
現在、という、この時を。
納得のいく未来であることを願いたい。
と、重い話ばかりじゃアレなので。
蛇足っぽいけどどうしても言いたいこと。
渥美さんにまた会えたのがなんだかうれしかった。
読んでいてとってもテンションが上がった場面。(笑)
思わずイージスを引っ張り出してきたけど、ちゃんと読むのはまた今度。
内容(「BOOK」データベースより)
二〇一一年三月十一日、東日本大震災発生。多くの日本人がそうであるように、東京に住む平凡なサラリーマン・野田圭介の人生もまた一変した。原発事故、錯綜するデマ、希望を失い心の闇に囚われてゆく子供たち。そして、世間を震撼させる「ある事件」が、震災後の日本に総括を迫るかのごとく野田一家に降りかかる。傷ついた魂たちに再生の道はあるか。祖父・父・息子の三世代が紡ぐ「未来」についての物語―。『亡国のイージス』『終戦のローレライ』の人気作家が描く3・11後の人間賛歌。すべての日本人に捧げる必涙の現代長編。
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「145gの孤独」 伊岡瞬(角川文庫)
【夜が明けたのに、まだずっと夢を見ているようだ】
真佐夫との関係がどんなうふうに進展するのか、わくわくしながら読み進めていたのだけれども。
倉沢の心の傷は、思っていたよりもより深く、昏いものだった。
輝いていた過去は戻らない。
起こってしまった出来事もまた、なかったことにはできない。
思い通りにはいかなくても、いま在る現実と
折り合いをつけて生きていかなければいけないのが人生。
自分の代わりに「悔しい」と泣いてくれた田中。
「いい加減に目を覚ましてよ」と怒ってくれた晴香。
仕事を斡旋しつづけてくれた戸部。
倉沢は、決して孤独ではない。
故に。
彼が夜よりも長い夢から覚める日は、遠からず来るだろう。
内容(「BOOK」データベースより)
プロ野球投手として活躍していた倉沢修介は、試合中の死球事故が原因で現役を引退した。その後、雑用専門の便利屋を始め、業務の一環として「付き添い屋」の仕事を立ち上げる。その最初の依頼は「息子がサッカーの観戦をするので付き添ってほしい」という女性からのものだった。倉沢が任務を終えると、またも彼女から連絡が入り…。横溝正史ミステリ大賞受賞作家が情感豊かな筆致で綴る、ハートウォーミング・ミステリ。
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「僕ら星屑のダンス」 佐倉淳一(角川文庫)
【生きてりゃ、楽しいことだってあるんだ】
全体を通してお伽噺を読んでいるような気持ちになるのは、
出てくる人たちがみんな良い人だからなんだと思う。
そんないい人ばっかりなわけないじゃん、という思いがどこかにあるから、
素直に「良い話だったわー」と言えない自分が、なんだか寂しい。
でも、この話はそれでいい。
心の優しい人たちが、手を取り合って星屑のダンスを踊る。
誰かのために心を痛め、誰かのために涙を流す。
そして、みんなに「大好き」と、伝えることができる、とてもきれいな物語だ。
内容(「BOOK」データベースより)
借金で浜名湖に入水しようとしていた浅井久平は、同じく自殺を図る不思議な子どもヒカリと出会った。ヒカリは最先端科学センターから逃げ出してきた天才だという。半身半疑ながらも一緒に逃避行を始めた久平。一方、内閣官房から指令を受けた警察はヒカリの捜索を開始。だが、ヒカリはネットを駆使して逆にみずから誘拐を装い、100億円を要求した。果たしてヒカリたちは現金を奪取し、偽装誘拐を完遂できるのか?第30回横溝正史ミステリ大賞テレビ東京賞受賞作。
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「グラスホッパー」 伊坂幸太郎(角川文庫)
【世の中は善悪じゃないんだから】
妻を殺した「非、合法的」な組織に復讐目的で潜入した、ごく平均的な一般男子である元教師と、
自殺させたり、ナイフだったり、押したりと、それぞれ手法での殺しを生業とする殺し屋たちの物語。
殺しというからにはリアルに想像するとメッチャ凄惨なシーンが描かれていたりするわけなんだけど…
不思議と伊坂さんの文章はそれを「凄惨」と感じない。
そこ、納得したら倫理的にダメでしょ!という事柄を、
でも、そうなんだよねー、と、頷きたくなってしまう。
相変わらず伊坂さんの言葉には不思議な説得力があると思う。
それは、日々のなかで「なんかそれ、納得いかなくね?」「そうじゃないよね?」と
腑に落ちない部分を、スッパリ切ってくれるからなのかなぁ……と、個人的には思ってます。
復讐を成就しえなかった鈴木。
だからこそ、彼には明日がある。
「生きてるみたいに生きる」
あたりまえのようで、ひどく困難な言葉を、私自身にも贈りたい。
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「銃」 中村文則(河出文庫)
【拳銃のない私は無意味であり、私は拳銃に激しい愛情を向けていた。
が、拳銃は私には冷たかった。】
自分自身を演じることで、周囲とのコミュニケーションを図ってきたニシカワ。
生きることの意味を見出すことができないまま、行き過ぎる時の中で、
偶然手にした拳銃。
その拳銃に依存することで、活気づく世界。
だが、それはまやかしだ。
思い込みと妄想はあらぬ方へと走り出し、
ギリギリのところで踏みとどまったかと思ったのだけれども。
安堵しかけたのは束の間。
最後の最後で突き落とされる。
そして、彼同様に私もつぶやくのだ。
「これは、なしだ」
待ち受ける未来は、破滅でしかない。
内容(「BOOK」データベースより)
雨が降りしきる河原で大学生の西川が出会った動かなくなっていた男、その傍らに落ちていた黒い物体。圧倒的な美しさと存在感を持つ「銃」に魅せられた彼はやがて、「私はいつか拳銃を撃つ」という確信を持つようになるのだが…。TVで流れる事件のニュース、突然の刑事の訪問―次第に追いつめられて行く中、西川が下した決断とは?新潮新人賞を受賞した衝撃のデビュー作。単行本未収録小説「火」を併録。
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「水の時計」 初野晴(角川文庫)
【奇跡を祈るということは自分の力を放棄したときにすることだ。
たとえどんな困難な状況に陥っても、そんな無責任なことはするまいと思っていた】
物語全体を通してのイメージは、蒼い月の光。
表紙にインスパイアされる部分が過分にあるかもしれないけど、
脳裏に浮かぶのは、とても綺麗な蒼い色の世界。
だが、その世界で紡がれる物語を生きる彼らの中で、
幸せだと言い切れる者は果たしていたのだろうか?
「人の幸せは、その本人にしかわからない」
全くもってその通りで、皆が幸せと不幸せとを抱えている。
そうして生きていくのが人生……なのかな?
自らの臓器を、移植を必要としている人々に分け与えつづける葉月。
その臓器を秘密裏に運び続け、髪の色が変わるほどの苛烈な状況に在りながらも、
世界にひとりぼっちではないと気づけた昴。
幸福の王子をモチーフに紡がれる物語の結末は、切なくも、やさしい。
内容(「BOOK」データベースより)
医学的に脳死と診断されながら、月明かりの夜に限り、特殊な装置を使って言葉を話すことのできる少女・葉月。生きることも死ぬこともできない、残酷すぎる運命に囚われた彼女が望んだのは、自らの臓器を、移植を必要としている人々に分け与えることだった―。透明感あふれる筆致で生と死の狭間を描いた、ファンタジックな寓話ミステリ。第二十二回横溝正史ミステリ大賞受賞作。
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『SOSの猿』 伊坂幸太郎(中公文庫)
【すべてが悪だという人間も存在しなければ、すべてが善なる人間もいない】
前半の進みの悪さとは比較にならないくらい、一気に読み進んだ後半。
視点や時間軸が飛躍しながら展開されていくが故の混乱が収束されていく様はお見事。
結末までを踏まえたうえで二度読みすると、より深く楽しめるんだろうなぁ、と思いつつ、
初読で感想書いてます。
ラストの一文がとても好き。
「ふいに、別の自分が生れるかのような予感を覚えた私は、
ゆらゆらと落下する毛に向かい、変われ!とささやいた」
ここではない、どこかへ。
今の自分ではない、自分へ。
現実にもがきながら切ないほどの思いを抱いたことは、誰にでもあると思う。
それが顕著なのが「思春期」……なのかな?
「自分の存在意義とは何ぞや?」「死とは何か?」
覚えのありすぎるクエスチョン。
存在意義をみつけられずにぐるぐる考え続けて、それが苦しくて。
どうしようもなくてどうしていいかわからなくて……そんな思考にはまった時のことをはっきりと覚えています。
でも、ある日突き抜けたんだよね。
ま、いっかーって。(笑)
そんなあたしの座右の銘は「いきあたりばっちり」。
なかなか素敵な言葉だと思っています。
内容(「BOOK」データベースより)
三百億円の損害を出した株の誤発注事件を調べる男と、ひきこもりを悪魔秡いで治そうとする男。奮闘する二人の男のあいだを孫悟空が自在に飛び回り、問いを投げかける。「本当に悪いのは誰?」はてさて、答えを知るのは猿か悪魔か?そもそも答えは存在するの?面白くて考えさせられる、伊坂エンターテインメントの集大成。
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『恋』 小池真理子(新潮文庫)
【確かに、あれは誰もが落ちる恋には違いなかったが、健康的な恋ではなかった】
もし、あの時彼らに出会わjなければ?
出会ってしまった後の仮説には意味はない。
何故なら、具現化してしまった現実を、なかったことにすることはできないのだから。
健康的ではない、歪な関係の中にあった三人の前に現れた、一人の青年。
彼の指摘していることはとても真っ当で、その真っ当さ故に、彼は命を失うことになったんだと思う。
理解するに及ばない片瀬夫妻の関係。
でも、理解し得ないからこそ、彼らの織り成す物語に引き込まれていく。
そんな彼らのあり方を肯定的にみなすあたしの立場は布美子寄りで、
だからこそ、彼の真っ当な指摘にはっとさせられる。
それは、理解し得ないといいつつ、
三人の歪なあり方に魅了されていることに気付かされる瞬間でもある。
つまりは、作者が生み出した世界にどっぷり引きこまれているのだ。
妙義山・軽井沢・雲場池等々。
大好きな場所が随所にちりばめられているのも、個人的にはこの本に入れ込んでしまった理由。
情景がとてもリアルに目に浮かび、また足を向けたくなってしまう。
それにしても……
彼女の紡ぐ日本語はやはりとても綺麗だと思う。
内容(「BOOK」データベースより)
1972年冬。全国を震撼させた浅間山荘事件の蔭で、一人の女が引き起こした発砲事件。当時学生だった布美子は、大学助教授・片瀬と妻の雛子との奔放な結びつきに惹かれ、倒錯した関係に陥っていく。が、一人の青年の出現によって生じた軋みが三人の微妙な均衡に悲劇をもたらした…。全編を覆う官能と虚無感。その奥底に漂う静謐な熱情を綴り、小池文学の頂点を極めた直木賞受賞作。
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『出口のない海』 横山秀夫(講談社文庫)
【たったひとつ、それだけが気がかりだから、何度でも言う
幸せになってほしい。幸せになると約束してほしい】
第二次世界大戦の終戦前に展開された極秘作戦、人間魚雷「回天」。
目を逸らしてはいけない現実。
こんな兵器を作ったのは………人間。
宣告された死。
逃げることの許されない現実。
「生きること」の意味。「死ぬこと」の意味。
感情を持った人間であるが故に生ずる迷い。苦悩。
痛いくらい、リアルに伝わってくるのは、彼らが特別な人たちではなく、
ありふれた風景の中にいる、普通の若者だからなんだと思う。
特別な人間ではない、どこにでもいる若者だからこそ、彼らの苦悩や決断に、涙が止まらなくなる。
時代が違えば、彼らは自分であったかもしれないのだ。
時代も、置かれた状況も違うけれども、あたしも自分の人生と真っ向から向き合って
大切に生きていきたいなーと、と改めて思いました。
内容(「BOOK」データベースより)
人間魚雷「回天」。発射と同時に死を約束される極秘作戦が、第二次世界大戦の終戦前に展開されていた。ヒジの故障のために、期待された大学野球を棒に振った甲子園優勝投手・並木浩二は、なぜ、みずから回天への搭乗を決意したのか。命の重みとは、青春の哀しみとは―。ベストセラー作家が描く戦争青春小説。
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