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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「三匹のおっさん」 有川浩(文春文庫)



【願わくばこのまま、行きつ戻りつしながら何かがいい方向へ変わっていけばいい。】

面白かったぁ!!!
読後、単純にそう叫べる本。
そして誰かに勧めたくなる本。
自発的に自警団を結成したかつての悪がきトリオ。現在還暦の三匹のおっさん。
遠慮のないやりとりや、戦っても負けない強さや、人を許せる度量の広さが底抜けにカッコイイ。

生意気なイマドキの子供かと思っていた祐希が、実は両親よりもよっぽど大人で、
定年退職するまで距離を置いていた祖父の清一と、改めて交流を深めていく様子に気持ちがあったかくなる。

いくつなっても気持ちは現役。
お洒落して、できることを精いっぱいやって、楽しいことを見つけて、友だちと馬鹿話に花を咲かせたい。
そんなふうに年を重ねていけたらいいなーと思いました☆



内容(「BOOK」データベースより)

還暦ぐらいでジジイの箱に蹴り込まれてたまるか、とかつての悪ガキ三人組が自警団を結成。剣道の達人・キヨ、柔道の達人・シゲ、機械いじりの達人の頭脳派・ノリ。ご近所に潜む悪を三匹が斬る!その活躍はやがてキヨの孫・祐希やノリの愛娘・早苗にも影響を与え…。痛快活劇シリーズ始動。

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「闇の底」 薬丸岳(講談社文庫)



【たとえ犯人が捕まったとしても、けっして納得のいく答えは出ないだろう】

殺人を抑止するために、かつての犯罪者を殺す。
それは是なのか、或は非なのか?
司法や警察は何のために存在するのか?
その模範回答と、家族を殺された遺族の側の感情は、必ずしも一致するものではないだろう。
だから処刑人としてのサンソンが擁護される。
だが、それはとても怖くて悲しい世の中だと思う。
犯罪はなくならいない。それが現実。
それ故、刑事の仕事も潰えるいことはない。
妹を殺した犯人と対峙させるというやりかたで、長瀬の刑事としての成長を願った藤川。
身勝手だと思った。
誰しもが強く在れるわけではない。
そして、誰しもが赦せるわけではないのだ。


内容(「BOOK」データベースより)

子どもへの性犯罪が起きるたびに、かつて同様の罪を犯した前歴者が殺される。卑劣な犯行を、殺人で抑止しようとする処刑人・サンソン。犯人を追う埼玉県警の刑事・長瀬。そして、過去のある事件が二人を結びつけ、前代未聞の劇場型犯罪は新たなる局面を迎える。『天使のナイフ』著者が描く、欲望の闇の果て。

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「おれのおばさん」 佐川光晴(集英社文庫)



【人と人とはお互いの何もかもを知らなくてもつきあっていけるのだし、
 だからこそ、いつかすべてを知っても、それまでと変わりなくつきあいつづけられるのだ。】

それぞれの事情を抱え、児童養護施設で暮らしながらも、現実を見据え、懸命に生きていく中学生の子供たちと、
彼らの成長をあたたかく、時にきびしく見守るおばさんとの物語。
親の犯罪や虐待等の過酷な体験をしながらも、
自分のおかれた環境に腐ることなく、相手を思いやり、互いの自主性を尊重し、
人としてまっすぐに育っていく彼らの成長過程は、読んでいてとても心強い。
なんにだってなれると信じて全力で生きる。
忘れかけていた熱い想い。
なんだかパワーを注入してもらったような気持ちになれる一冊でした。


内容(「BOOK」データベースより)

ある日突然、父の逮捕を知らされた陽介。父が横領した金を返済するため、陽介は都内の名門中学を退学し、母の姉が運営する札幌の児童養護施設、魴〓(ぼう)舎に入ることになる。急激な暮しの変化に当惑しながらも、パワフルなおばさんと個性豊かな仲間に囲まれて、陽介は“生きる”ことの本質を学んでゆく。ときに繊細で、たくましい少年たちの成長を描いた青春小説。第26回坪田譲治文学賞受賞作。

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「ヒートアイランド」 垣根涼介(文春文庫)



【もし決心がついたら、一年後の今日のこの時刻に、ここに来い。
 俺たちが待っている】

熱気を孕んだ街、渋谷で繰り広げられる破天荒な攻防戦。
若さ故の熱さと傲慢、そして不安定さを孕んだストリートギャングのアキとカオル。
成熟し、安定した大人の魅力溢れるプロの強盗の柿沢と桃井。
そして、ヤクザの裏金を巡って二重三重……と思いきや、四重に絡み合うストーリー展開。
テンポよく読めます。そしてキャラがとっても魅力的。
何度読み返しても面白い。

主だった登場人物が活き活きしているのは、それぞれのバックボーンがしっかりと描かれているから。
だから彼らの息吹をリアルに感じられる。(柿沢は除く>笑)
個人的にはチューンナップについてマニアックに語られていてニンマリ。

この物語は終わりの物語でもあり、始まりの物語でもある。
「雅」というチームで共に過ごしたアキとカオルの青春時代は、この本で終わりを告げる。
その後の彼らの人生は………続編に期待を寄せることにしよう。


内容(「BOOK」データベースより)

渋谷でファイトパーティーを開き、トップにのし上がったストリートギャング雅。頭のアキとカオルは、仲間が持ち帰った大金を見て驚愕する。それはヤクザが経営する非合法カジノから、裏金強奪のプロフェッショナルの男たちが強奪した金だった。少年たちと強奪犯との息詰まる攻防を描いた傑作ミステリー。

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「オルゴール」 中園直樹(幻冬舎文庫)



【正しい、まちがってるは関係なく、
 「生きるためには自分を変えていかなくてはいけなかった」のです。】

いつ買ったのかわからないけれども、なぜか今朝積読本棚から足元に落ちてきた本。
読み時なのねー、と、鞄にしまって家を出てみた。

感情移入しすぎるとツライだろうなぁ、と思ったので、なるべく俯瞰的に読むようにしながらの読書。
感受性が強くて繊細な子供が生きることを耐えがたく思ってしまう世界。
不合理で理不尽だ。
剥き出しの悪意を、どうしてあんなにも執拗に醜悪に、他者に向けることができるのだろう?

何度も何度も押しつぶされそうになりながら這い上がってきたという、アンデルセンのようにはなれなかった彼。
幸せのかけらを分け与えたいと願い、幸せのかけらを受け取りながらも、それでも、命を絶つことを選んだ彼。
やるせなさすぎる……

作者のおっしゃる通り、いつか、このような小説が必要となくなる日が来ることを、切に願います。



内容(「BOOK」データベースより)

デパートのオルゴール売り場で出会った「ぼく」と克己。育った環境も性格も正反対なふたりに、友情が芽生えていく。ある日、克己は、誰にも言えない秘密を抱えたまま、「ぼく」の前からいなくなった。一通の手紙とオルゴールを残して。純粋であるがゆえに傷つけ合う若者の心とすれ違いの葛藤を瑞々しいタッチで描いたデビュー作、待望の文庫化。


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「5年3組リョウタ組」 石田衣良(角川文庫)



【誰かを教えることが、自分を教えることになる】

教師も同じ人間。
新任教師として赴任してきた中学の担任と自分が同じ年になった時に、しみじみと思った。
背伸びしたがりの小生意気な言動で相当な苦労をかけたんだなぁ、と。
でも、最後まできちんと私たちと向き合って指導をしてくれた担任は、まぎれもない「先生」でした。
いまもお元気で教鞭をとられているのかしら?
良太と染谷。
まったくタイプの異なる二人が、同じ教師として互いを認め合い、
協力しながら問題に対峙していく様子が小気味よかった。


内容(「BOOK」データベースより)

希望の丘小学校5年3組、通称リョウタ組。担任の中道良太は、茶髪にネックレスと外見こそいまどきだけれど、涙もろくてまっすぐで、丸ごと人にぶつかっていくことを厭わない25歳。いじめ、DV、パワハラに少年犯罪…教室の内外で起こるのっぴきならない問題にも、子どもと同じ目線で真正面から向き合おうと真摯にもがく若き青年教師の姿を通して、教育現場の“今”を切り取った、かつてなくみずみずしい青春小説。


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「ふがいない僕は空を見た」 窪美登(新潮文庫)



【神さまどうか、この子を守ってください】


キレイな世界でも、特別な世界でも、悲惨な世界でもなく。
そこにはあたりまえの日常が描かれている。
そんなあたりまえの日常の中で、
それぞれが痛みを堪え、誰かに嫉妬し、誰かを愛し、そして他人には言えない秘密を抱えている。
それが、誰にでも起こりうることだからこそ、彼らのやるせない想いがリアルに伝わってくる。
痛くて、切なくて、やさしい想いが流れ込んでくる。

この本は五つの物語が連なって、一つの物語を構成している。
一話目より二話目、二話目より三話目と、グイグイ引き込まれるように頁を捲った。
たとえば………
良太は卓巳に自分のしたことを告白したのか。
あんずの旦那のいやがらせ行為は終わったのか。
卓巳と七菜はどうなったのか。
答えは読者の想像に委ねたまま、物語は幕を下ろす。

子供を想う母親の気持ちが、何よりも胸に刺さった。


内容(「BOOK」データベースより)

高校一年の斉藤くんは、年上の主婦と週に何度かセックスしている。やがて、彼女への気持ちが性欲だけではなくなってきたことに気づくのだが―。姑に不妊治療をせまられる女性。ぼけた祖母と二人で暮らす高校生。助産院を営みながら、女手一つで息子を育てる母親。それぞれが抱える生きることの痛みと喜びを鮮やかに写し取った連作長編。R‐18文学賞大賞、山本周五郎賞W受賞作。


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「悪党」 薬丸岳(角川文庫)



【いつでも笑っていいんだぞ。
 いや、笑えるようにならなきゃいけないんだぞ。
 おれたちは絶対に不幸になっちゃいけないんだ。】

「業」という言葉の意味を「行為」と捉えるのなら。
まさしく、人生とは「業」だと思わせられた作品。
人のあらゆる行為は「点」で帰結することはなく、すべてが「線」となってつながっていく。
被害者や被害者の家族の人生も、そして、加害者や加害者の家族の人生も。
「事件」が起こった後も、脈々と続いていく。
人生に幕が引かれるその瞬間まで。
犯罪というものに巻き込まれた人々の記憶は決して薄れることはなく、
癒えることのない傷を抱えたまま、日々を過ごしていかなければならないのだ。

どうしたら赦すことができるのか。
どうしたら赦されることができるのか。
当事者ではない私は、語る言葉を持たない。

ただ、佐伯のまわりには、彼を見守り、支えてくれる人たちがいてよかったと。
そう、思った。
一人ではないと、実感できること。
自分に好意を持ってくれている人たちと、同じ時間を共有できること。
そして、そんな人たちに心を開くことができること。
それらのことが、人を強くもするし、やさしくもする。
そして、歪まずに生きる力を与えてくれる。


内容(「BOOK」データベースより)

探偵事務所で働いている佐伯修一は、老夫婦から「息子を殺し、少年院を出て社会復帰した男を追跡調査してほしい」という依頼を受ける。依頼に後ろ向きだった佐伯だが、所長の木暮の命令で調査を開始する。実は佐伯も姉を殺された犯罪被害者遺族だった。その後、「犯罪加害者の追跡調査」を幾つも手がけることに。加害者と被害者遺族に対面する中で、佐伯は姉を殺した犯人を追うことを決意し…。衝撃と感動の社会派ミステリ。


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「指揮官たちの特攻」 城山三郎(新潮文庫)



【特攻を考えた奴は、修羅だ。
 特攻を命じた奴も、修羅だ。】

特攻。
それは、戦略でも戦術でもなく、ただのやけっぱち。或は、虐殺。
立場上、拒絶することのできない人たちに、同じ人として、どうしてそんな命令を下すことができたのだろう?
人の命は、そんなに軽いものではない。
そして、そんなふうに散らしていいものでもない。
死ぬとわかっていて鋼鉄の機体に乗り込んだ彼らの想いは計り知れない。
彼らが守りたかったものは、たぶん、家族。
彼らの背中を押したのも、たぶん、家族。
そんな命令を発した人や国家ではないはずだ。

過去の歴史はすべて、私たちの存在する現在へとつながっている。
今を生きる私たちは、かつて、そのような出来事があったことを忘れてはいけないんだと思う。


内容(「BOOK」データベースより)

神風特別攻撃隊第一号に選ばれ、レイテ沖に散った関行男大尉。敗戦を知らされないまま、玉音放送後に「最後」の特攻隊員として沖縄へ飛び立った中津留達雄大尉。すでに結婚をして家庭の幸せもつかんでいた青年指揮官たちは、その時をいかにして迎えたのか。海軍兵学校の同期生であった二人の人生を対比させながら、戦争と人間を描いた哀切のドキュメントノベル。城山文学の集大成。

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「悪意の手記」 中村文則(新潮文庫)



【不意に、どこまでも行こうと思った。
 どこまでも堕ちていけば、いずれ自分を、
 何かが虫のようにひねり殺してくれるような気がした】

タイトルと内容を見て想像した「悪意」とは大分意味合いの違う悪意。
死への恐怖から逃れるために世界を憎悪し、
死への衝動を断ち切るために親友を殺す。
そして殺人という重さから逃れるために人間の屑であることを目指した
主人公の気持ちに寄り添うことなんてとてもできなくて、
でも、気づけば彼の綴る言葉から目が離せなくなってしまっていた。

達観したようにみせかけつつ、自分の犯した殺人という罪に苦悩し、
世界の醜悪に塗れることまで想い描きながらも、
結局は「私」の言うところの「悪意」に染まりきることなく、むしろ、贖いの様相を呈してこの手記は閉じられる。
人はなぜ人を殺してはいけないのか。
人はなんのために生きるのか。
読み手にはずしりと重い、問いかけが残されたまま。


内容(「BOOK」データベースより)

至に至る病に冒されたものの、奇跡的に一命を取り留めた男。生きる意味を見出せず全ての生を憎悪し、その悪意に飲み込まれ、ついに親友を殺害してしまう。だが人殺しでありながらもそれを苦悩しない人間の屑として生きることを決意する―。人はなぜ人を殺してはいけないのか。罪を犯した人間に再生は許されるのか。若き芥川賞・大江健三郎賞受賞作家が究極のテーマに向き合った問題作。


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