きままに読書★
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カテゴリー「小説」の記事一覧
- 2014.05.13 「天神」小森陽一(集英社文庫)
- 2014.05.10 「1985年のクラッシュギャルズ」柳沢健(文春文庫)
- 2014.04.20 「ハーモニー」伊藤計劃(ハヤカワ文庫JA)
- 2014.04.12 「公安捜査 傾国」浜田文人(ハルキ文庫)
- 2014.04.09 「図書館の神様」瀬尾まいこ(ちくま文庫)
- 2014.04.05 「虐殺器官」伊藤計劃(ハヤカワ文庫JA)
- 2014.03.30 「卵の緒」瀬尾まいこ(新潮文庫)
- 2014.03.29 「彼女がその名前を知らない鳥たち」沼田まほかる(幻冬舎文庫)
- 2014.03.26 「九月が永遠に続けば」沼田まほかる(新潮文庫)
- 2014.03.18 「晩鐘・下」乃南アサ(双葉文庫)
「天神」小森陽一(集英社文庫)
【だが、どんなに凄いパイロットであっても、
それを活かす者がいなければ輝かない】
就職を決める時に自分には彼らのような憧れや必死さ、決意や覚悟。
そういった類のものが果たしてあったのだろうか?と。
なんだか考えさせられてしまう本だった。
彼らが目指すものはファイターパイロット。
ブルーインパルスの飛行を何度も見てきたけど、
みなさん、こんなふうにものすごい訓練を日々重ねてきての編隊飛行なんだなーと、
あらためてその凄さを再認識しました。
挫折を知らずに歩んできた速が壁にぶち当たった時の苦悩がいたたまれない。
でも、彼は彼を一番活かすことのできる道を見つけたんだと思う。
欲を言えば、陸と父親が和解するシーンが見たかったかな?
適材適所。
天性のパイロットである陸と、そんな彼を活かすべく要撃管制官の道を選んだ速と。
一歩先に進んだ彼らの話を読んでみたいと、思わせてくれる小説でした。
内容(「BOOK」データベースより)
絶対にファイター・パイロットになるんだ―。親子三代での戦闘機乗りを目指す航空学生出身の坂上陸と、防衛大学卒業後、国を守りたいという強い思いから航空自衛隊に入ったエリートの高岡速。立場も考え方もまるで違う二人の青年の人生が交差するとき、心揺さぶられる熱いドラマが生まれる!戦闘機に乗ることに憧れを抱き、夢に向かって突き進む若者たちを描いた壮大な“空”の物語。
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「1985年のクラッシュギャルズ」柳沢健(文春文庫)
【誰も気づかないうちに
女子プロレスの時は止まっていたのだ】
何とも言い難い息苦しさを感じる本だった。
それはたぶん、当時の彼女たちを覚えているから。
その姿が脳裏に浮かべば、書かれている内容がよりリアルに迫ってくる。
特別プロレスに興味がなかった小学生の私でさえ、しっかりとその勇姿を覚えている言彼女たち。
筆舌に尽くしがたい苦悩と葛藤を抱えながらも、リング上では自分を最大限に魅せ、
観客を沸かせるプロレスラーを演じてきた彼女たちの必死さと懸命さが、
日本中の人たちの心を揺さぶったのだということが丁寧に書かれている本だった。
女子プロの栄枯盛衰は彼女たちと共にある。
時代を駆け抜けた彼女たちの生き様は、あまりにも壮絶で、あまりにもドラマティックだ。
内容(「BOOK」データベースより)
1985年8月28日、巨大な大阪城ホールを満員にしたのは、十代の少女たちだった。彼女たちの祈るような瞳がリング上の二人に注がれる。あの「クラッシュ・ギャルズ」の二人のように、もっと強く、もっと自由になりたい!長与千種とライオネス飛鳥、そして二人に熱狂した少女たちが紡いだ真実の物語。
「ハーモニー」伊藤計劃(ハヤカワ文庫JA)
【世界中で暴動や集団自殺が続いている今も、
わたしは別に世界にことなんか気に掛けちゃいなかった】
他者と同じであること。
決められた規則と法則に従って行動すること。
自分を取り巻くあらゆることに疑問を抱かないこと。
完璧なまでに管理された社会の中で何も考えることなく、
流されて生きることはとてもとても楽だろう。
そこに苦しみはない。恐れも、苛立ちも。
我々を脅かすものは何も存在しないのだ。
だが、それはただ息をしているだけ。
システムとしての個体を維持しているだけ。
独立した一人の人間として「生きて」はいない。
そして、知ることはない。
喜びも、幸せも、生き甲斐も。自分がこの世に存在する意味も。
この物語を読み終えた今、
エピローグに記載されている「いま人類は、とても幸福だ」という一文が
とても薄ら寒く、気味悪く思える。
そこにある幸福は、個々人が選択した幸福ではなく、
ごく一部の人間によって強制された幸福。
許されるなら、眠れる意識に問いかけたい。
あなたはいま、幸せですか?と。
内容(「BOOK」データベースより)
21世紀後半、「大災禍」と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。医療分子の発達で病気がほぼ放逐され、見せかけの優しさや倫理が横溢する“ユートピア”。そんな社会に倦んだ3人の少女は餓死することを選択した―それから13年。死ねなかった少女・霧慧トァンは、世界を襲う大混乱の陰にただひとり死んだはずの少女の影を見る―『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。第30回日本SF大賞受賞、「ベストSF2009」第1位、第40回星雲賞日本長編部門受賞作。
「公安捜査 傾国」浜田文人(ハルキ文庫)
【人それぞれに環境が異なり、様々な感情を抱いて生きている】
久しぶりに新刊キター!と思ったら、キャー!!と叫んで次巻に続く…
夏予告、しっかり守ってください!
鹿取と蛍橋の、そりゃないでしょ!という
捜査における相変わらずの傍若無人っぷりはおいておくとして。
(この話好きなんだけど、この点だけはどうしても気になってしまう…)
警察組織の複雑さと面倒くささともどかしさが歯がゆくてやりきれない。
何故同じ組織の人間に潰されそうにならないといけないんだろうなぁと思うと
本当にいたたまれない。
三好さんの漢気とやさしさと懐の広さ。
もっと自分のことだけ考えてもいいのに……とやるせなくなるけど、
だからこその人望であり、だからこその結束力なんだろうなぁ。
とはいえ、三好組も相当な危機的状況下にあるので、そこは何とか危機回避してほしい。
でも最後の最後で「追え!」って……
わかるけど。そうする以外ないのは分かるけど。
もしここでもう一悶着起こしたら、嫌な予感しかしないよね。
今回は要が大人しかったので、次巻ではもうちょっとヤンチャ(笑)に活躍してくれることを
希望します。
内容(「BOOK」データベースより)
神奈川県警公安の螢橋政嗣は、警察庁警備局長の田中一朗の指示で、特捜班の一人として動いていた。公安事案の闇を暴いてきた螢橋は、巨大な警察利権と警察の正義の狭間で、田中の指示を完遂することだけを決意した。そのさなか、殺人の捜査で動いていた捜査一課の鹿取信介と一年半ぶりの再会を果たす。二人は、公安事案、殺人事案、それぞれの立場から真の敵に立ち向かっていく。書き下ろしで贈る、ファン待望の「公安捜査」シリーズ、ここに復活!
「図書館の神様」瀬尾まいこ(ちくま文庫)
【うまい下手にかかわらず、
知っている人の書く文章はちゃんと心に響く】
なんとなく国語教師になり、意に沿わないながらも、文芸部の顧問となった清。
新任の講師としての彼女の一年は、投げやりな感じで始まったけれども、
その一年を実のあるものとして過ごした後の彼女の成長は、
受け取った三通の手紙に集約されていると思う。
不実との決別。教師であることへの激励。そして新しい未来。
不倫相手。文芸部の部員。弟。
彼らと過ごす時間を主軸に語られる物語。
苦痛でしかなかった学校での仕事が、
教師でいたいと自発的に思えるようになっていく清の心理が
とても自然に伝わってくる。
全く興味がなかった文学に対して面白みを感じていく様子も好ましい。
きっかけって大事。
どちらが生徒でどちらが教師なのかわからなくなってしまいそうな会話もいいし、
マイペースながらも姉を気にかけてくれる弟の存在もいい。
良くも悪くも人を変える力を持っているのは人。
世界は一人では変わらない。変えられない。
人と係わりあうことで、プラスに成長していけることはある意味理想的なことだと思う。
内容(「BOOK」データベースより)
思い描いていた未来をあきらめて赴任した高校で、驚いたことに“私”は文芸部の顧問になった。…「垣内君って、どうして文芸部なの?」「文学が好きだからです」「まさか」!…清く正しくまっすぐな青春を送ってきた“私”には、思いがけないことばかり。不思議な出会いから、傷ついた心を回復していく再生の物語。ほかに、単行本未収録の短篇「雲行き」を収録。
「虐殺器官」伊藤計劃(ハヤカワ文庫JA)
【死と隣り合わせの戦場で、ぼくは強く意識する。
----自分がまだ生きているということを】
綴られている言葉に、要所要所ではっとさせられる。
そして深く考えさせられてしまう。その意味を。
解釈を読み手にゆだねられる部分が多々あって、だけど、物語の軸は決してぶれない。
殺戮と虐殺が意図的に引き起こされる世界を転々としながら進行する物語。
一人称で語られる主人公との対話を胸の内で繰り返しながら辿り着く結末は、
一番納得できるものの、一番納得したくない結末だった。
大国のエゴイズム。そして因果応報。
もやもやとした想いを抱えながらも、一呼吸おいて再読したくなってしまう。
久しぶりに圧倒される文章に出会いました。
内容(「BOOK」データベースより)
9・11以降の、“テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう…彼の目的とはいったいなにか?大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは?ゼロ年代最高のフィクション、ついに文庫化。
「卵の緒」瀬尾まいこ(新潮文庫)
血の繋がらない母子の絆を描いた「卵の緒」
慈しみと愛情は血の繋がりに勝ると思う。
君子さんのおおらかで太陽みたいなあたかい愛情に包まれて育った育生。
彼らはまぎれもない親子であり、彼らの間の絆は揺るがない。
それは彼女が育生に対して言葉と態度でめいっぱいの「好き」を伝えてきたから。
だから育生は自分の出自を知っても揺らがない。
それは、二人の間にしっかりとした親子の絆があるから。
異母姉弟の交流と別れを書いた「7's blood」
子供が子供らしく在れない環境で生活しなければいけないのはひどく悲しい。
「一人では生きていけない」ということを理解したうえで、
聞き分けの良い子供で在りつづける七生。
それを糾弾したのが半分血の繋がった同じ子供である七子だったからこそ、
彼は心を開くことができたんだと思う。
そんな七生が傍にいてくれたからこそ、
表面上は何気ない風を装いながらも母の死から前に進めずにいた七子は
一人ではないということを認識することができたんだと思う。
別れは唐突にやってくる。
二度と会うことはないと確信を持って言える別れはひどく切ない。
「いつか」を願わずにはいられないほど。
内容(「BOOK」データベースより)
僕は捨て子だ。その証拠に母さんは僕にへその緒を見せてくれない。代わりに卵の殻を見せて、僕を卵で産んだなんて言う。それでも、母さんは誰よりも僕を愛してくれる。「親子」の強く確かな絆を描く表題作。家庭の事情から、二人きりで暮らすことになった異母姉弟。初めて会う二人はぎくしゃくしていたが、やがて心を触れ合わせていく(「7’s blood」)。優しい気持ちになれる感動の作品集。
「彼女がその名前を知らない鳥たち」沼田まほかる(幻冬舎文庫)
馬鹿だなーと思う。
自分を理解して、愛して慈しんでくれる人は、すぐそばにいたのに。
気付けなかったことが、十和子の陣治への想いが愛じゃなかったっていうことの証明なのかな。
陣治を一方的に罵り、誇りを持っていた仕事を捨てさせ、彼の稼いできたお金で自堕落に過ごす十和子。
でも、それでも陣治は十和子と共にいたかった。
陣治の想いはまぎれもない愛だったと思う。
時に、人の想いは、こんなにも噛み合わない。
一緒に居続けたのは十和子の弱さであり、狡さであり、それを許した陣治の孤独と淋しさ。
お金を稼ぐって大変なんだよ、人は働かないと生きていけないんだよ、と、十和子にはうっかり説教したくなりました(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
八年前に別れた黒崎を忘れられない十和子は、淋しさから十五歳上の男・陣治と暮らし始める。下品で、貧相で、地位もお金もない陣治。彼を激しく嫌悪しながらも離れられない十和子。そんな二人の暮らしを刑事の訪問が脅かす。「黒崎が行方不明だ」と知らされた十和子は、陣治が黒崎を殺したのではないかと疑い始めるが…。衝撃の長編ミステリ。
「九月が永遠に続けば」沼田まほかる(新潮文庫)
【性的な空想はどんなに常軌を逸していても
空想である限り、あるいは他人に危害を加えない限り許される】
期待感が高すぎたのか、衝撃を受けることなくスルリと読み終わってしまった……
真実を知りたいと願いながらも、真実を口にすることのない登場人物たち。
自分にとって都合の悪いことに関して咄嗟に嘘をついてしまうのは、
人間ならではの保身だったりエゴだったりするんだろうなぁ。
何が一番印象に残ったかって、服部父!
心配が先に立っての無遠慮無神経な振る舞いで佐知子をイラつかせ、毛嫌いされていたけれど
最終的には頭にのった雪を振り払ってもらうほどに受け入れてもらっているよ(笑)
事件の渦中の当人は食事どころではないのは痛いくらいわかるけども、
食べないとダメだよ、と、食事の支度をし続けた彼の気持ちもわかる。
常軌を逸した状況に巻き込まれた佐知子たちの傍には、
彼のように日常に両足をつけた人物の存在が必要だったのかもしれない。
でも、そこに佐知子に対する恋心があったのかどうかは読み解くことはできなかった。
いや、やっぱりこれ、ものすごく的外れな感想なんだろうな(笑)
内容(「BOOK」データベースより)
高校生の一人息子の失踪にはじまり、佐知子の周囲で次々と不幸が起こる。愛人の事故死、別れた夫・雄一郎の娘の自殺。息子の行方を必死に探すうちに見え隠れしてきた、雄一郎とその後妻の忌まわしい過去が、佐知子の恐怖を増幅する。悪夢のような時間の果てに、出口はあるのか―。人の心の底まで続く深い闇、その暗さと異様な美しさをあらわに描いて読書界を震撼させたサスペンス長編。
「晩鐘・下」乃南アサ(双葉文庫)
【もう、その必要はなくなった】
子供でいられるうちは子供でいていいんだよ。
前作「風紋」での建部の言葉が脳裏をよぎる。
だからこそ、大輔と俊平の対比が痛い。
子共が子供らしく笑うことのできない世界の中で、
誰の力も借りることができないまま、生きていかなければならないことが痛ましい。
絵里と大輔の選択はあまりにも悲しすぎる。
彼らの絶望はそれほどまでに深い。
図らずもそれは、最も残酷な形での松永への制裁。
だが、誰も、そんなことは望んではいなかったはずだ。
建部と再会し、俊平と出会い、人生を立すことのできた真裕子は本当に良かったと思う。
でも、読後に残るのは強烈な胸の痛み。
内容(「BOOK」データベースより)
話題作『風紋』続編!心に癒しがたい傷を負った人々の物語。