きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
カテゴリー「小説」の記事一覧
- 2014.08.21 「永遠の仔 二」天童荒太(幻冬舎文庫)
- 2014.08.19 「永遠の仔 一」幻冬舎文庫(天童荒太)
- 2014.08.13 「メルサスの少年」菅浩江(新潮文庫)
- 2014.08.10 「リナリアのナミダ」崎谷はるひ(ルチル文庫)
- 2014.08.09 「狐笛のかなた」上橋菜穂子(新潮文庫)
- 2014.08.06 「海は涸いていた」白川道(新潮文庫)
- 2014.08.04 「逃走」 薬丸岳(講談社文庫)
- 2014.07.25 「ミントのクチビル」崎谷はるひ(ルチル文庫)
- 2014.07.23 「午後からはワニ日和」似鳥鶏(文春文庫)
- 2014.07.22 「冬の旅」立原正秋(新潮文庫)
「メルサスの少年」菅浩江(新潮文庫)
精一杯背伸びをし、早く大人として認められたいと願う少年イェノム。
自分を優しく包み込み、保護してくれている世界から
少しずつ外の世界のことを学ぶにつれて見えてきた大人の世界は、
駆け引きや嘘や偽りが混在する世界だった。
あれほど大人になることを夢見ていた少年の叫び。
「もう大人になんかなりたくないや!」
それは、純粋さ故に出てきた言葉なのだろう。
けれども。
大きく変動する時代の流れは、少年を子供のままではいさせてはくれない。
壁にぶつかり、悩みながらも、いつしか、少年も大人の世界の理を知ることになる。
時には思いやり故の嘘が必要なこともある。
そして、すべてが汚れきった大人ではないことを、
まわりの大人たちが身を以て証明してくれるのだ。
イェノムのように大人になっていけることは、人として最高の幸せだと思う。
内容(「BOOK」データベースより)
辺境の荒野に囲まれた〈螺旋の街〉。そこは貴重な鉱石パラサンサを採掘する男相手の歓楽街、女ばかりの街だった。ある時、予言者の孫娘カレンシアが街に逃げてきた。彼女は、パラサンサを独占して世界の支配を狙う「トリネキシア商会」の軍隊に追われていたのだった。街でたった一人の少年イェノムは彼女をかくまうが、トリネキシアの魔手は〈螺旋の街〉にも忍び寄っていた…。
「リナリアのナミダ」崎谷はるひ(ルチル文庫)
シリーズの中で一番好きな話になりました。
読後にいろんな感情がジワジワと染みてきて、思わず涙が零れてしまった。
辛さや困難から逃げ、闇に堕ちかけた佐光の手を引いて、
間違わないように、迷わないように、懸命に進むべき道へと導いた高間。
迷いの中にいた佐光が、周りの人たちの助けを得て、
ひとりの男として成長していく様が、とても自然に納得のいく形で描かれていました。
どうしようもない男だったけれども、高間の躰にその想いを刻んだ廉。
ただ高間を振り回しただけの存在だと思われていた彼の、死した後に伝わる切なる想い。
そんな廉の想いを読み解き、高間の過去ごと抱きしめられる男に成長した佐光は
心の底からカッコいいと思います!
ああ、ホント良い話でした!
内容(「BOOK」データベースより)
佐光正廣は、不運が重なり三年連続で受験に失敗し、二十一歳にして専門学校に入学した、いわゆる仮面浪人。荒んだ気分で煙草を吸う佐光に、「ここは禁煙」と学校の売店店員・高間一栄が注意してきた。以来、声をかけてくる高間を不愉快に思いながらもなぜか気になる佐光。ある夜、高間に助けられた佐光は次第に心を開き始め…。
「狐笛のかなた」上橋菜穂子(新潮文庫)
【どうしようもない思いってあるよね。
その思いを守るために、人から見たら、
ばかだなぁと思うようなことをしてしまうことも、あるよね。】
特別な能力を持った少女・小夜と、呪者の使い魔である霊狐・野火の物語。
権力や政治、そして恨みと妬み。
隣り合う国の大人たちの思惑に翻弄されながらも、
決して揺るがず、自らの想いを貫いた二人の生き様の、なんと潔いことか。
小夜と野火の想いはどこまでもやさしい。やさしくて強い。
その思いは、長年にわたる二国の諍いの火種を消してしまうほどの凛とした強さを秘めていた。
孤独の中に生きてきた二人が、よりそって生きる姿には思わず涙が出そうになりました。
私、逆だと思ってたんですけどね(笑)
読後にほんのり気持ちがあたたかくなる、純粋でとてもきれいな物語です。
内容(「BOOK」データベースより)
小夜は12歳。人の心が聞こえる“聞き耳”の力を亡き母から受け継いだ。ある日の夕暮れ、犬に追われる子狐を助けたが、狐はこの世と神の世の“あわい”に棲む霊狐・野火だった。隣り合う二つの国の争いに巻き込まれ、呪いを避けて森陰屋敷に閉じ込められている少年・小春丸をめぐり、小夜と野火の、孤独でけなげな愛が燃え上がる…愛のために身を捨てたとき、もう恐ろしいものは何もない。野間児童文芸賞受賞作。
「海は涸いていた」白川道(新潮文庫)
【どこなんだ? その海の向こうってのは?】
誰かを守りたいと思う気持ちの、哀しいまでの負の連鎖。
哲郎の妹、薫を守るために、彼女を脅かす存在を殺めた慎二と千佳子。
妹と友人を守るため、哲郎はすべての罪を自らが被るべく、命を賭した行動に出る。
「生きることを諦めてはいない」という言葉の裏に滲む、諦念が哀しい。
妹と友人の幸せと安寧を願うだけの哲郎を、どうか放ってあげておいてほしいという、
私の想いは聞き届けられるはずもなく、彼は警察に追い詰められていく。
息子の眠る丘で、愛した女と大切な人たちに囲まれて、眸を閉じた哲郎。
行かせてあげたかった。彼の希求したペルーへ。
内容(「BOOK」データベースより)
都内に高級クラブ等を所有する伊勢商事社長、36歳の伊勢孝昭は暴力団に会社の経営を任されていた。彼には殺人の過去があったが、事件は迷宮入りしていた。しかし、孤児院時代の親友が犯した新たな殺人が、その過去を呼びおこし、警視庁・佐古警部が捜査に当たる。そんな折、伊勢はヤクザ同士の抗争に巻き込まれて―。天才音楽家の妹と友人を同時に守るため、男は最後の賭に出た。
「逃走」 薬丸岳(講談社文庫)
【相手がどんなに手を放そうとしても、
おまえが絶対に放さなければお互いにひとりぼっちにはならない】
明確な殺意を抱いていなくとも、罪を犯してしまう人たちがいる。
この物語で罪を犯した人たちは、皆、家族のために手を汚さざるを得なかった。
それが、哀しい。
どんな事情があっても、犯した罪は償わなくてはならない。
だが、その前にどうしても母親を探し出したかった裕輔。
そのための「逃走」。
そして、彼の切なる思いは、思いもよらない真実を皆に知らしめることになる。
すべては、妹を守るため。
一生彼女に会えなくなることを覚悟した裕輔に、
自分は守られるだけの存在じゃないと叫んだ彼女の想いがしっかりと伝わっていると、信じたい。
内容(「BOOK」データベースより)
死んだはずのあの男がいた。小さかった妹とふたりで懸命に生きてきた21年間はなんだったんだ?傷害致死で指名手配されたのは妹思いで正義感が強い青年。だが罪が重くなるとわかっていても彼は逃げ続ける。なんのために?誰のために?渾身の全面大改稿、ほぼ書下ろしの秀逸ノンストップ・エンタメ!
「ミントのクチビル」崎谷はるひ(ルチル文庫)
砂糖菓子みたいにふわふわした桜哉と見た目は王子様だけど、意外と短気で喧嘩っ早い邦海。
ロクでもない男を好きになったという共通項も、
そのおかげで出会えたと思えばマイナスにはならないよね。
桜哉が徹底的に甘やかされる、糖度マックスなお話でした(笑)
いや、もう、ホント甘々。
そして邦海が正しく美形王子様。
ショートで入っていた伊勢と昭生の話良かったなー。
この大人カプ、やっぱ好きだわ。
内容(「BOOK」データベースより)
夢見がちな姫路桜哉は、初恋の人・徳井にはじめてを捧げた朝、当の徳井から心身ともに傷つけられる。そこへ颯爽と踏み込んでかばってくれたのは、その瞬間まで徳井の恋人だった小島邦海。彼は徳井に絶縁を突け付け、桜哉には優しいキスをくれた。王子様のような邦海から大切にされ、自分がいかに酷く扱われてきたかを思い知った桜哉は、まずはお試しで邦海とつきあうことになり…。
「午後からはワニ日和」似鳥鶏(文春文庫)
登場人物が個性的で魅力的。
桃君と服部君は二人セットの会話が面白い。
鴇先生のかっこよさは憧れるなー。
とはいえ。
他人様の家にピッキングして勝手に上り込むのは無謀極まりないと思う。
不法侵入だし、何より相手が悪人なら危険極まりないわけだし。
感情的には動物は盗まれるより殺される方が罪が重いと思ってしまうけど、
法律的にはそうじゃないんだね……
日常の中でこんなふうに知らないことってたくさんあるんだなーと
自分の知識不足を顧みてしまった。
飼育員さんたちの動物たちに対する愛情があふれている作品でした。
内容(「BOOK」データベースより)
「イリエワニ一頭を頂戴しました。怪盗ソロモン」凶暴なクロコダイルをどうやって?続いて今度はミニブタが盗まれた。楓ヶ丘動物園の飼育員である僕(桃本)は解決に乗り出す。獣医の鴇先生や動物園のアイドル七森さん、ミステリ好きの変人・服部君など、動物よりもさらに個性豊かなメンバーが活躍する愉快な動物園ミステリ。
「冬の旅」立原正秋(新潮文庫)
とても美しい日本語を紡ぐ作家だと思います。正統派な美しさ。
10代の頃に読んだ時は完全に主人公・行助に傾倒し、彼に対する扱いを不当だと感じ、
ひたすら憤り、彼のたどった運命にやるせなさを感じて号泣しました。
改めて読み返してみると、あまりにも凛とした精神は、
時に他者を追い詰めるものなのかもしれないと、
また違ったやるせなさを感じて胸が痛くなりました。
とはいえ、彼は間違ったことはしていない。
それなのに、何故?と、彼の運命のあまりの理不尽さにやりきれなくなるけれども、
彼は自分の生き方に決して後悔はしていない。
運命を受け入れた彼の在り方もまた、静謐にすぎるほどで、なおさら胸が痛くなる。
できれば若い方に読んでいただきたい本。
自分の内面を見つめ直す、良いきっかけになる本だと思います。
内容紹介
美しく優しい母を、義兄修一郎が凌辱しようとした現場を目撃した行助は、誤って修一郎の腿を刺して少年院に送られる……。母への愛惜の念と義兄への復讐を胸に、孤独に満ちた少年院での生活を送る行助を中心に、社会復帰を希う非行少年たちの暖かい友情と苛烈な自己格闘を描き、強い意志と真率な感情、青春の夢と激情を抱いた若い魂にとって非行とは何かを問う力作長編。