きままに読書★
読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。
カテゴリー「小説」の記事一覧
- 2014.06.23 「春狂い」宮木あや子(幻冬舎)
- 2014.06.22 「時の渚」笹本稜平(文春文庫)
- 2014.06.09 「白バラが紅く散るとき」フィンケ(講談社文庫)
- 2014.06.06 「ぼくのメジャースプーン」辻村深月(講談社文庫)
- 2014.06.04 「凍りのくじら」辻村深月(講談社文庫)
- 2014.05.26 「フライ,ダディ,フライ 」金城一紀(角川文庫)
- 2014.05.25 「言葉の風景」荒井和生(青菁社)
- 2014.05.24 「子どもたちは夜と遊ぶ 上・下」辻村深月(講談社文庫)
- 2014.05.18 「ユリゴコロ」沼田まほかる(双葉文庫)
- 2014.05.17 「植物図鑑」有川浩(幻冬舎文庫)
「春狂い」宮木あや子(幻冬舎)
ひと言で言うならば……壮絶。
かの少年と少女はなんて息苦しい世界で生きていたのだろう?
壱話と弐話を読んだ時点では独立した短編の連作?と思わなくもなかったけど、
参話から六話まで点が線で繋がっていく展開は見事。
人間の強さと弱さ。愛と妄執。人と人との関係性。
文章を追いながら胸に迫るのはそういったものの在り方だった。
初読の時の印象はただひたすら綺麗な世界が描かれていると思っていた。
再読してみると、人間の抱える歪さやゆがみに目を背けたくなる。
その中でもまともな大人である結城や前原のような存在は救いだった。
「支配と暴力と痛みの中に絶望以外の感情を生み出すことができること。
即ち、それが、人としての本来の強さ」との記述が印象的。
個人的にはこれが真理……というか、真理であってほしいと思う。
内容(「BOOK」データベースより)
生まれながらにして、人を狂わすほどの美しさを内包していた一人の少女。男たちの欲望に曝され、身体を穢された美少女が、桜咲く園で望んだ未来とは―。窓の外で桜の花びらが突風に巻き上げられている。放課後の教室、私は教師の前でスカートをたくしあげる。「私をあと二年、守ってください」。制服の下に隠された、傷だらけの少女の秘密。
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「時の渚」笹本稜平(文春文庫)
【現実は苦い。ときには過酷なものだ。
だが、俺はそれを受け入れる。
その運命を生きる以外に真実は存在しないからだ。】
生き別れの息子を探し出すことを依頼された元刑事の私立探偵。
その瞬間からまわり始めたのは、真実を暴き出す運命の歯車。
あまりにも淡々と進む前半に、このままいくわけないよなぁ、と、
穿った読み方をしながら頁をめくっていくわけですが。
終盤に向けて明かされていく事実には、
何とも言いようのない悲哀と感動で涙腺が崩壊しました。
親子って、親子って……うわーん。
親から子への愛情。子から親への愛情。
胸の内から自然とこみあげる愛情は、とても深くて純粋だと思う。
もはや語り合うことのできない人からの手紙。
綴られた茜沢の父からの言葉が胸に響く。
返したい言葉を伝えることができない人への想いに押しつぶされそうになった茜沢を救った松浦老人の言葉。
しばらく浸っていたい余韻の残る本でした。
内容(「BOOK」データベースより)
元刑事で、今はしがない私立探偵である茜沢圭は、末期癌に冒された老人から、35年前に生き別れになった息子を捜し出すよう依頼される。茜沢は息子の消息を辿る中で、自分の家族を奪った轢き逃げ事件との関連を見出す…。「家族の絆」とは何か、を問う第18回サントリーミステリー大賞&読者賞ダブル受賞作品。
「白バラが紅く散るとき」フィンケ(講談社文庫)
【御言を行う人になりなさい。
ただ聞くだの者となってはいけない。】
高校生の時に読んで大きな影響を受けた本の一冊。
当時の私はドイツ国内にヒトラーに抵抗した組織があったことを知らなかった。
そんな組織を担ってたのが自分とそんなに歳の変わらない青年たちであったこと、
そして、そんな彼らの中にゾフィーという女性がいたことに大きな衝撃を受けた。
地下活動に至るまでの思考や行動も然ることながら、
逮捕され、死刑を宣告されながらも、毅然とした態度で仲間を庇い、
己の正義を信じ、凛として死に臨んでいった彼らの存在は
平和な毎日をのんびり謳歌していた私にはとても衝撃的なものだった。
彼らと同じことができただろうか?と、問うことには意味がない。
時代が違うし、置かれた状況が違う。
それでも、考えずにはいられなかった。
自分だったら……?と。
いろんなことを考えさせられた青春の一冊。
内容(「BOOK」データベースより)
自由で開放的な家庭に育ったゾフィーは、読書や絵をかくことが好きなふつうの少女でした。ヒトラーの独裁政治下、尊敬する兄ハンスの学ぶミュンヘン大学へ進んだ彼女は、兄とともに地下からビラをもってナチスに抗し、その抵抗の代価を命で支払わねばなりませんでした。姉や友人の話、手紙、日記、写真によってわずか21歳の生命を清冽に生きた女性の生き方を描く感動のノンフィクション。
「ぼくのメジャースプーン」辻村深月(講談社文庫)
【これはぼくの闘いだ】
主人公の「ぼく」が自分の持つ特別な力をつかって、
同級生の女の子の心とうさぎを壊した男と対峙する物語。
その能力を正しく使うべく、同じ能力を持つ先生から力の使い方についてのレクチャーを受けるぼく。
必然的に読み手も一緒に対話を繰り返していくことになるわけで、
それが、若干くどいなーと、感じる部分もあるんだけど、
その過程があるからこそ、ぼくの下した決断に衝撃を受けることになる。
社会的には罰せられることのなかった男と対峙した、小学校四年生男子の覚悟と決意に。
そして衝撃と共にやるせなさにで胸が痛くなる。
一生懸命ふみちゃんのことを気遣っていたぼくだって、傷ついていないはずがなかったのだ。
「よくがんばりました」
先生からのその言葉は、ぼくにとって救いだったと思う。
内容(「BOOK」データベースより)
ぼくらを襲った事件はテレビのニュースよりもっとずっとどうしようもなくひどかった―。ある日、学校で起きた陰惨な事件。ぼくの幼なじみ、ふみちゃんはショックのあまり心を閉ざし、言葉を失った。彼女のため、犯人に対してぼくだけにできることがある。チャンスは本当に一度だけ。これはぼくの闘いだ。
「凍りのくじら」辻村深月(講談社文庫)
【ねぇ、本当に大事なものがなくなって後悔して、どうしようもなくなって。
そうなった時、私はそれに耐えられるかなぁ?】
まさにSF。Sukoshi Fusigiな物語。
大人になる直前の、大人になりきれないこどもたち。
少し不完全な彼らの少し不安定な心が、彼らの感性や言葉で紡がれた物語。
彼らと同じような年代の子どもたちの誰もが、
居場所やよりどころを求める気持ちを抱えていて、
今の自分の居場所に違和感を感じている。
それでも、いつか気づくのだと思う。
いま自分のいる場所こそが、がかけがえのない場所だということに。
生きている居場所を与える光が誰のもとにも届くことを願います。
内容(「BOOK」データベースより)
藤子・F・不二雄を「先生」と呼び、その作品を愛する父が失踪して5年。高校生の理帆子は、夏の図書館で「写真を撮らせてほしい」と言う一人の青年に出会う。戸惑いつつも、他とは違う内面を見せていく理帆子。そして同じ頃に始まった不思議な警告。皆が愛する素敵な“道具”が私たちを照らすとき―。
「フライ,ダディ,フライ 」金城一紀(角川文庫)
【何度でも転んで重力を知り尽くして、いつか飼い馴らしてやればいい。
そしたら、空だって飛べるようになるよ】
読み終わっちゃうのがもったいないなぁ、と。
もう少し彼らと一緒にいたかったなぁ、と。
読了するのが惜しくなるような本でした。
うん。
読んでいてとっても楽しかった。
暴力によって傷つけられた娘さんの仇を取るために、立ち上がる47歳の鈴木さん。
事件は痛ましいし、あってはならないことだけれども。
その事件故に自分の無力を痛感した鈴木さんの
身体を鍛え、メンタルを鍛え、戦い方を伝授し、
高校総体ボクシング三連覇の石原と戦えるだけのをファイターに仕立て上げた
高校生たちとの気持ちの交流を描いた物語。
トレーニングメニューをこなしながら力を蓄え、
23%の体脂肪率を12%まで絞っていった鈴木さんを見ていると、
人間、大切な人のためならできないことはないんだなぁ、と思えてしまう。
奥さんと娘さんに対してナイスアプローチ&フォローをした高校生たちを褒め称えたい。
内容(「BOOK」データベースより)
鈴木一、47歳。いたって平凡なサラリーマン。ただし家族を守るためならスーパーマンになれるはずだった。そう信じていた。あの日が訪れるまでは―。一人娘を不良高校生に傷つけられ、刃物を手に復讐に向かった先で鈴木さんが出会ったのは―ザ・ゾンビーズの面々だった!脆くも崩れてしまった世界の中ではたして鈴木さんは大切なものを取り戻せるのか。ひと夏の冒険譚がいま始まりを告げる。
「言葉の風景」荒井和生(青菁社)
春夏秋冬。
四季折々を表す多彩な言葉が、本書では紹介されている。
移ろいゆく季節のその一瞬の情景を言い表す言葉はとても繊細で情緒豊かだ。
日本語とは、かくも美しいものなのだと、改めて思い知らされる。
自在に使いこなすことはできなくとも、せめてその言葉の存在を知っておきたい。
そして、それらの言葉の意味するところや成り立ちを彷彿とさせるような、
美しい自然写真の数々に見入ってしまう。
気忙しい日常に流されるときに紐解いたならば、ほっと息がつけて気持ちが癒されるような、
そんな本だと思います。
内容(「BOOK」データベースより)
本書は四季にまつわる、微妙な季節感や雰囲気を伝えるさまざまな言葉を選んで、写真によるイメージの散策を試みてみました。
「子どもたちは夜と遊ぶ 上・下」辻村深月(講談社文庫)
【君が生きているというそれだけで、
人生を投げずに、生きることに手を抜かずに済む人間が
この世の中のどこかにいるんだよ】
初読の時のような緊迫感はないけれども。
やわらかな部分に尖った爪を立てられたようなキリキリとした思いに息が詰まりそうになる。
それでも、色々な過去を抱えた彼らに寄り添いたくて、頁をめくる手が止まらない。
そして、彼等の痛みを自分のことのように感じたいのか、
彼らの痛みを取り除いてあげたいのか、わからなくなる。
この物語の結末に希望や救いを見出すことは、
理不尽に命を奪われた人たちのことを思えば、間違っているのかもしれない。
けれども、世間を憎み、絶望し、自らを消してしまうことを望んだ浅葱が
生きることに向き合うことができたことに安堵する自分がいる。
「君が愛したそいつは、決して不幸じゃなかった」
とてつもない犠牲を払っての言葉ではあるけれども。
月子がいて、恭司がいて、狐塚がいて。
自分は独りきりではないのだと、浅葱が気づくことができてよかったと思ってしまう。
この愛すべき息苦しい世界の中で。
すべての子どもたちに幸あれ。
「ユリゴコロ」沼田まほかる(双葉文庫)
【弟がこれからも弟であり続けるように、
この人もまた、僕の生涯を通じてもうひとりの母であり続けるだろう】
家族の在り方を書いた物語。
そして熱烈な愛の物語……だと思う。
実際は従兄弟である兄弟が、お互いを兄であり、弟であると認めているという
心情が描かれているシーンが好きだったなぁ…
「家族」という括りに対する自論は、血の繋がりより共に過ごした時間の記憶と関係性。
この兄弟の在り方と、命の期限が差し迫った父親と、施設にいる祖母との係わり方が
なんだか好きだった。
殺人の衝動に取りつかれた女でも、愛し続けた父親。
「好き」という想いは理屈ではなく衝動。
だから、彼女と最期を一緒に添い遂げられるのは、彼にとってはこの上なく幸せな末路なのだと思う。
内容(「BOOK」データベースより)
ある一家で見つかった「ユリゴコロ」と題された4冊のノート。それは殺人に取り憑かれた人間の生々しい告白文だった。この一家の過去にいったい何があったのか―。絶望的な暗黒の世界から一転、深い愛へと辿り着くラストまで、ページを繰る手が止まらない衝撃の恋愛ミステリー!各誌ミステリーランキングの上位に輝き、第14回大藪春彦賞を受賞した超話題作!
「植物図鑑」有川浩(幻冬舎文庫)
【そんなことは夢だと大人ぶった誰に諭されても笑われてもいい。
それでも、ずっと一緒にいたかった。】
タンポポやツクシを摘んで。ヨモギをちぎって。山菜を探して、ミントを育てて。
意外に自分、狩りをして食していたことに気づかされた本でした。
料理をしてくれたのは優しい彼氏ではなく、祖母や母でしたが(笑)
いまでは山菜以外は口にしなくなったそれぞれの味がなんだか優しく思い出されたなぁ…
さやかとイツキが想いを通わせ会うシーンがすごく好き。
本編よりもカーテンコールの物語が印象的だったのは、
さやかとイツキの想いが刺さったからかな?
どんな事情があっても、黙って姿を消されるのは辛い。
それでも、イツキが戻ってくるまで待ち続けたさやかの想いが実ったことがうれしかったわ。
内容(「BOOK」データベースより)
お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか。咬みません。躾のできたよい子です―。思わず拾ってしまったイケメンは、家事万能のスーパー家政夫のうえ、重度の植物オタクだった。樹という名前しか知らされぬまま、週末ごとにご近所で「狩り」する風変わりな同居生活が始まった。とびきり美味しい(ちょっぴりほろ苦)“道草”恋愛小説。レシピ付き。