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きままに読書★

読んで思ったことを徒然に。ゆるーくまったり運営中。

   

「新宿鮫Ⅹ 絆回廊」 大沢在昌(光文社)



【お前はひとりではないのだ、と署長は告げたかったのだ】


以下、ガッツリネタバレでしす。




このシリーズを読み続けて……十数年。
読後、しばらく呆然としてしまった。

桃井さんが殉職され、晶との関係も破局の様相を呈し、理解者と安らげる場所を失ってしまった鮫島。
それでも、この先も彼は刑事として生きていかなければならない決定的な業を背負ってしまった。
この人は、どうしてここまで自分を追い込みながら、生きていかなければいけないんだろう?
どうしてここまで孤高の存在であらねばならないんだろう?
切ないなぁ……

新宿署の署長が鮫島に理解を示す言葉を投げかけてくれたことはうれしかった。
だが、桃井を失った心の空洞は、決して埋まらない。

「だって、あんたは新宿鮫なんだぜ」
変わらず、まっすぐに進めという晶の言葉。
この先、この物語はどこへ進んでいくのだろう?

内容(「BOOK」データベースより)

巨躯。恐るべき暴力性と存在感―。やくざすら恐れる伝説の一匹狼が「家族を引き裂いた警官を殺す」という恨みを胸に、22年もの長期刑から解き放たれ、新宿に帰ってきた。事件を未然に防ぐべく捜査を開始する新宿署刑事・鮫島。しかし次々とおぞましい殺人事件が発生、鮫島自身も謎の集団の襲撃を受ける。大男の標的は、誰だ?絡み合う人々の絆が迎える結末とは?シリーズ最高の緊張感と衝撃!待望のノベルス化!長編刑事小説。

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「塩の街」 有川浩(角川文庫)



【何とかなるかどうかは分からない。
 だが、少なくとも自分が手を伸ばす自由はある。
 手は、動くのだ、自分が伸ばそうとさえ思えば。
 たとえ、それが届かなくても。】

世界はメチャクチャに崩壊しているというのに。
これは壮大な恋物語だ。
でも、いいなーって思う。
世界なんていらない、あなただけ。
おまえを救うために、世界を救う。
それだけの想いをぶつけあえる誰かと出逢えた二人は、本当に幸せだと思う。

秋葉と父親の和解のシーンは本当に良かった。
できることなら家族はいがみ合わないでいてほしい。
亡くなってから後悔したところでもう、取り返しがつかないのだから。

「あんな恐ろしい災害の中でも人の気持ちは一番強かった」
一番胸に残っている言葉。
諦めない限り、人は街を再興できる。生活を取り戻せる。
そう、信じている。

内容(「BOOK」データベースより)

塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。塩は着々と街を飲み込み、社会を崩壊させようとしていた。その崩壊寸前の東京で暮らす男と少女、秋庭と真奈。世界の片隅で生きる2人の前には、様々な人が現れ、消えていく。だが―「世界とか、救ってみたくない?」。ある日、そそのかすように囁く者が運命を連れてやってくる。『空の中』『海の底』と並ぶ3部作の第1作にして、有川浩のデビュー作!番外編も完全収録。

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「新宿鮫Ⅸ 狼花」 大沢在昌(光文社)



【存在するのは知っている。
 だが実際にそのものについて何かを考えようとすると
         ほとんど予備知識がないと気づくのだ。】

複雑化していく犯罪模様。
正しいものを正しくコントロールするために、蔓延る悪を悪で相殺しようとした香田の考えは
警察官としては根本的に間違っていると思う。
犯罪と対峙する以上、白は白、黒は黒であらねばならない。

因縁浅からぬ関係にあった仙田との関係に決着がつき、
常に対立をし、嫌悪しつつもどこかで相手を認め合っていた香田が職を辞した。
署内での鮫島は相変わらず孤高の存在で、
それでも理解を示してくれる藪や桃井がいてくれることにほっとする。
プライベートで安らぎであるはずの晶を遠ざけようとする鮫島。
彼女を守りたいという気持ちはわかるけど、二人には別れてほしくないんだよなぁ……

ドキドキしつつ、次巻を読むことにしよう。


内容(「BOOK」データベースより)

大麻所持で逮捕されたナイジェリア人の取調べにあたった鮫島は麻薬ルートの捜査に乗り出し、盗品を専門に売買する「泥棒市場」の存在を突き止める。この組織の背後には鮫島の宿敵、仙田がいた。一方、鮫島と同期でキャリアの香田は新設の組織犯罪対策部の理事官へ異動。香田は外国人組織の撲滅のため暴力団と手を組むことを画策していた。シリーズ最大の問題作。

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「空飛ぶタイヤ 下」 池井戸潤(講談社文庫)



【しかし、期待したものをすべて失った今、この状況を打開できるとすれば
 自分しかいないのだということを、あらためて赤松は悟ったのだ。】

社員のため。家族のため。
巨大な力に決して屈せず、戦い続けた赤松に差し掛かる光。

赤松を見捨てた銀行。救いの手を差し伸べた銀行。
見限った人たち。支えになってくれた人たち。
腐敗組織の中にも杉本や沢田や小牧のように、社の現状をなんとかしようと模索する人たちがいる。
そしてもはや組織にとって害悪でしかなかった悪しき連鎖の中にいた幹部たち。
皆、同じ人間。

人は間違う生き物で、完璧を望むことは酷だけれども。
正しく在りたいと願うことはできると思う。
誰も傷つけることなく、ただ、正しく在りたいと。

諦めずに奔走した赤松の努力が実って本当に良かったと思う。


内容(「BOOK」データベースより)

事故原因の核心に関わる衝撃の事実を知り、組織ぐるみのリコール隠しの疑いを抱いた赤松。だが、決定的な証拠はない―。激しさを増すホープグループの妨害。赤松は真実を証明できるのか。社員、そして家族を守るために巨大企業相手に闘う男の姿を描いた、感動の傑作エンターテインメント小説。

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「空飛ぶタイヤ 上」 池井戸潤(講談社文庫)



【不正やミス、欠陥は、指摘されたら負けだ。
 そうなる前に自ら公表し、謝罪しなければ手ひどいしっぺ返しが来る。】

リコール隠し。
顧客あっての会社ということを理解できないお馬鹿さんによって、多大な迷惑を被った人がいる。
会社を守るためになすべきことはリコールを隠すことではなく、公開すること。
起こってしまったことはなかったことにはできない。
大きな事故や過失につながる前にそれをどう対処するかということが、
上に立つべき人間の手腕と資質の見せ所だと思うんだけどなー。
歯がゆい思いを抱えながら下巻へ……


内容(「BOOK」データベースより)

走行中のトレーラーのタイヤが外れて歩行者の母子を直撃した。ホープ自動車が出した「運送会社の整備不良」の結論に納得できない運送会社社長の赤松徳郎。真相を追及する赤松の前を塞ぐ大企業の論理。家族も周囲から孤立し、会社の経営も危機的状況下、絶望しかけた赤松に記者・榎本が驚愕の事実をもたらす。

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「夜は短し歩けよ乙女」 森見登美彦(角川文庫)



【かつて私が愛し、そのくせ罪深くも捨てた本が、今また私の手の中にあるという不思議。
 これはもう古本市の神様のおかげ以外のナニモノでもないでしょう。】

彼女に近づくために「人事を尽くした」先輩と、そんな先輩のすべての苦労は偶然の産物の「何かの御縁」で済ませてしまった彼女と。
先輩、報われないなーと想いつつ、恋愛ってそれでいいんじゃないの?という微笑ましさ。
欲する人が頑張るのが道理だよね。(笑)

くるくるとした万華鏡やきらきらとしたカーニヴァル。
そんなイメージを彷彿とさせながら、古風な文体で語られていく物語。
奇想天外な人々が次々と登場し、広げに広げた風呂敷が
きちんと折りたたまれて収束していく様はお見事。
出逢いって出逢いを呼ぶのね。

不思議な世界でほっこりした気持ちになれる物語でした☆


内容(「BOOK」データベースより)

「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町に、下鴨神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めた。けれど先輩の想いに気づかない彼女は、頻発する“偶然の出逢い”にも「奇遇ですねえ!」と言うばかり。そんな2人を待ち受けるのは、個性溢れる曲者たちと珍事件の数々だった。山本周五郎賞を受賞し、本屋大賞2位にも選ばれた、キュートでポップな恋愛ファンタジーの傑作。

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「空の中」 有川弘(角川文庫)



【夢の中で何度も何度もやり直す。
 二度とは戻れない、通り過ぎてしまった分岐を。
 夢の中で理想的にやり直し、心から安堵して喜んで、そして目覚めて絶望を知る】

後悔、という言葉の意味を。痛みを。改めて突きつけられた本だった。
一度してしまったことは、なかったことにもやりなおすこともできない。
それが間違えていることだったらなおさらで、赦しを得ることができなければ、
その罪を生涯背負っていかなければならない。

自分が間違っていることを知っていて、それでもそのまま進む以外の道を見つけることができず、
もしかしたら、進んだその先に軌道を修正することのできる何かがあると、信じたフリをして……
まだ高校生でしかない瞬の、そんな行為が痛々しくて辛かったけれども。

そんな彼をきちんと叱ってあるべき道を説く宮じいがいて、手を差し伸べてくれる佳江がいて。
あたたかな場所へちゃんと帰ることができて本当によかった。

そして、高巳と光稀が距離を縮めていく様子が微笑ましかった。
いいなー、この二人。(笑)


内容(「BOOK」データベースより)

200X年、謎の航空機事故が相次ぎ、メーカーの担当者と生き残った自衛隊パイロットは調査のために高空へ飛んだ。高度2万、事故に共通するその空域で彼らが見つけた秘密とは?一方地上では、子供たちが海辺で不思議な生物を拾う。大人と子供が見つけた2つの秘密が出会うとき、日本に、人類に降りかかる前代未聞の奇妙な危機とは―すべての本読みが胸躍らせる、未曾有のスペクタクルエンタテインメント。

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「風の中のマリア」 百田尚樹(講談社文庫)



【でも、そんなことは自慢にもならない。
 すべての虫が生き延びるために必死で戦っているんだから】

誌的なタイトルから物語的な話を想像したけど、良い意味で裏切られました。
この一冊でオオスズメバチの一年が本当によくわかります。
本書はとてもとてもわかりやすいオオスズメバチの生態の話。
マリアという一匹のオオスズメバチの目線で、
生まれながらに自らの役割を知っているオオスズメバチが、
その役割を全うして死んでいく様が見事に描かれていました。
更に、一匹の蜂の一生だけではなく、巣の成り立ちから終焉までが子細に書かれていて、
集団生活をする昆虫のすごさを改めて思い知りました。
いやー、ホントすごい!


内容(「BOOK」データベースより)

命はわずか三十日。ここはオオスズメバチの帝国だ。晩夏、隆盛を極めた帝国に生まれた戦士、マリア。幼い妹たちと「偉大なる母」のため、恋もせず、子も産まず、命を燃やして戦い続ける。ある日出逢ったオスバチから告げられた自らの宿命。永遠に続くと思われた帝国に影が射し始める。著者の新たな代表作。

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「刑事のまなざし」 薬丸岳(講談社文庫)



【どんな理由があっても人を殺してはいけないんだ。人を傷つけてはいけないんだ】

七編の連作ミステリー。
事件と向き合う夏目は常に公平に、時に厳しく、そしてやさしく事件の当事者たちに対峙する。
七つの犯罪にはどれも複雑に絡み合う人々の心のあり様を暴き立てる。
どんなに誰かのためと思っても、罪を犯すことは悲しみしか生まないということを知らしめる。
随所で語られる彼の言葉は、どれもこれも胸に残った。
たとえどんな事情があっても、人を殺してはいけないと諭す夏目。
刑事であり、そして犯罪被害者の家族でもある彼の胸に、激しい憎しみの塊はない。
最後の物語で、彼は娘を植物状態にした犯人と対峙する。
犯人を前にして憎しみの連鎖を断ち切る言葉を叫んだ彼の気持ちの強さと一生ぬぐえない悲しみに胸を打たれた。


内容(「BOOK」データベースより)

ぼくにとっては捜査はいつも苦しいものです―通り魔によって幼い娘を植物状態にされた夏目が選んだのは刑事の道だった。虐待された子、ホームレス殺人、非行犯罪。社会の歪みで苦しむ人間たちを温かく、時に厳しく見つめながら真実を探り出す夏目。何度読んでも涙がこぼれる著者真骨頂の連作ミステリ。

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「21 twenty one」 小路幸也(幻冬舎文庫)



【何もかもうまく行くなんてありえないし、
 うまく行かない方があたりまえなんだと思っているけど、それでも。
 生きていくことが、幸せへと向かう唯一の手段だと思っている。】

仲間の死の知らせを受けてから、20人の同級生たちは彼の自殺の理由を問いかける。
何故?と。
そして、それぞれが小さな理由に思い至り、自分のせいで自殺したのでは?と、己を責める。
それは、彼の自殺を止めることのできなかった……言い換えれば、
彼の悩みを汲み取ることのできなかった自分自身への後悔。
彼を苦しめていたものは、共に過ごしていた中学自体から彼の中に棲みつづけていて、
結局彼は寂しさに勝てなかった。
たとえ、今がどんなにつらくても。
いつかはこの暗闇から抜け出せる。
そんなふうに思えるだけの小さな強さをいつだって纏っていたい。

「21 twenty one」
21という不思議な偶然で結ばれた彼らの絆がとてもすてきだと思う。


内容(「BOOK」データベースより)

二十一世紀に二十一歳になる二十一人。中学入学の日、クラス担任の先生が発見したその偶然が、僕たちに強烈な連帯感をもたらした。だが卒業して十年後、その仲間の一人が自殺した。僕たちに何も告げず。特別な絆で結ばれていると信じていた人を突然喪った時、胸に込み上げる思いをどうすればいいんだろう。“生きていく意味”を問いかける感動作。

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